日経TEST公式テキスト&問題集 2020-21年版

まえがき

日経TEST(日経経済知力テスト)とは、日本経済新聞社が実施している、ビジネスに必要な経済知識と、それを仕事に応用して考える力(知力)を客観的に測り、スコアで示すテストです。2008年秋から、公益社団法人日本経済研究センターとともに実施する「全国一斉試験」を開始しています。

 

 

【日経テスト対策のおすすめ参考書・テキスト(独学勉強法・対策)】も確認する

経済はめまぐるしく変動しています。多くのビジネスパーソンの皆さんは、日本経済新聞などを通じて日々、経済情報の吸収に努められていると思いますが、周囲に比べて「どこまで」できているか、過去の自分と比べて「どれだけ」成長したかは、客観的に評価しにくいものです。また、これから取り組む方や、就職を控えた学生の皆さんは、「どこから」手をつければよいか、見当がつきにくいと思います。

そうした皆さんに、「自分の力がビジネス社会でどのレベルにあるか」を数値化して示すのが、日経TESTです。受験結果は英語能力のテストなどと同様、項目反応理論(IRT)に基づく統計処理を行った1000点満点の「経済知力スコア」で示します。業種、役職、就業年数によりどの程度のスコアが求められるのかの目安も設けています。

スコアで実力が分かり、「どこまで」という目標が設定できるので、レベルアップの必要を痛感されている方、これから学ぼうという方には特に適したテストです。問題形式はすべて四肢択一式で100問、時間は80分。得意分野・不得意分野の診断も提供します。

出題ジャンルは経済・金融・産業の動きから、消費、科学技術、国際情勢まで幅広く、皆さんのそれぞれの仕事を掘り下げるうえで必要と思われる分野をカバーしています。また、日経TESTは知識に基づき考える力を測るのが特長で、独自の「5つの評価軸」を設けてその力を測定しています。このような幅広い分野を対象に、仕事に応用して「考える力」を客観的に測るテスト機能は、日経TEST以外にないものです。

出題の材料は「生きた経済」です。経済・ビジネスの最新のニュースを題材に問題を更新しているので、日々起きる経済ニュース経済ニュースへの感度を高め、そのつど考える習慣をつけておくことが、経済知力(ビジネス知力)のアップに有効です。

そのため本書も毎年、「年版」を発行し、経済の新しい動きを盛り込んだ解説と、練習問題を収録しています。経済の動きを理解するための基本的な知識や考え方は1年で変わるものではありませんが、知識も考え方も「使う」ことで、理解が深まります。

昨年版(2019-20年版)を、この1年の新しい動きに合わせて前面改定しました。毎年ご購入いただいてきた方も重複感なく読んでいただけると思います。もちろん今年新たに手にとられた方にとっては、格好の入門書になります。

日経TESTはいわゆる検定試験と異なり、この一冊をマスターすれば合格というものではありません。しかし、本書を読み通すことで、複雑に見える世界経済・日本経済の全体像がつかめ、難しいと感じていた日々の経済ニュースも頭に入りやすくなるはずです。

そのため本書は昨年版までと同様、練習問題とその解説も含めて、新しい知識を吸収しながら楽しく読めるストーリー性を意識しています。日経TESTを当面受験する予定のない方にとっても、最近の経済のポイントをつかむ一冊として、お役に立つはずです。

日経TESTは全国一斉試験と、企業・団体・大学などが社員・職員・学生向けに随時実施できる「日経TEST企業・団体試験」を実施しています。社員教育・研修の一環としての導入も増えています。人材育成のリーダーとなる皆様もお手にとり、導入の検討材料にしていただければ幸いです。

2020年3月
日本経済新聞社 日経TEST編集長 石塚慎司

日本経済新聞社 (編集)
出版社: 日本経済新聞出版社 (2020/3/24)、出典:出版社HP

目次

まえがき
本書の読み方・使い方

ガイダンス 日経TESTとは
1.日経TESTの概要/2.日経TESTの問題構成/3.日経TESTの出題ジャンル14.日経TESTのスコア/5.個人成績表の見方

第1章 基礎知識

入門解説 GDPと企業業績から経済の全体像をつかむ
経済活動を積み重ねた「方向」が景気/経済全体を見るGDP、「数字でつかみ、語る」の第一歩/「生産」は所得として「分配」され「支出」される/GDP、総額で世界3位、1人当たりでは20位台/長引くデフレで低迷、総額は2010年に日中逆転、半分以下に/失業率下がりほぼ「完全雇用」、求人倍率はいぜん高水準「景気回復」は月例経済報告で公式判断/景気の先行きを読む「短観、業況判断指数に注目/円高と円安立場によりメリット・デメリット/為替レート、投資マネーで大きく変動/株価は経済の動きを先取り、全体の動きを示す日経平均/個人投資家の株式保有はなお低迷、「日銀」の保有拡大目立つ/米国が利下げ、金融緩和で世界的に株価上昇/企業を見る基本は決算情報、要点は「決算短信」で/本業のもうけは営業利益、株主は純利益を注視/財政状態はBS、お金の流れはキャッシュフロー計算書/業種・会社により変わる利益率にも注目/「取締役」は株主に代わって経営を監視/株主はROEを重視、事業全体の収益力はROA/ESG投資、環境・社会・ガバナンスに着目/「働き方」の法律、実務常識として不可欠/生産技術、第4次産業革命下のものづくりを考える基礎にも/マーケティング、基本的な用語の概念をまずつかむ

練習問題・解説

ステップアップ解説 中央銀行と金融政策まず基礎から理解
金利とお金の量で「緩和」と「引き締め」/日銀、デフレに対応し「ゼロ金利」と「量的緩和」/短期政策金利マイナス、長期政策金利0%前後に/政府と中央銀行の関係、注目集める米国

第2章 実践知識

入門解説 世界経済と業界を知り企業戦略の背景をつかむ
【米国経済】消費が70%を占める、世界最大規模の経済/第判断の材料に/大型減税効果で景気回復は史上最長を広がる/米国は「農業国」、大統領選でも配慮

【中国経済】安定成長に転換、「製造強国の仲間入り」打ち出す/広域経済圏「一帯一路」を推進/投資王導経済から消費主導経済へ/「年表」から読む中国

【欧州経済】「EU単一市場」の規模、英国離脱でも存在感/英国、2020年末までを移行期間にEU離脱/日本とEPA、米国の保護主義への対抗軸となるか

【アシア・新興国経済】ASEAN、6億人の市場/ロシアは原油依存、「G20」で世界経済の8割【自動車】新興国市場の比重増す/中国、NEV義務付けを開始/「車を作る」から「移動サービスを提供へ」

【電機・精密・電子部品】「コモディティー化」でBtoBにシフト/日立は社会・インフラに加え、ITサービス基盤を展開/ソニーはゲーム・音楽の「継続課金」で稼ぐ/参入相次ぐ「医療」、ポスト・スマホで「自動車」に脚光

【銀行】マイナス金利が経営圧迫、メガバンクは「海外で稼ぐ」戦略/地方銀行の構造的古境続く、「同一県内再編」は動き出す/「スーパーアプリ」への対抗も課題

【小売り】伸び悩む大型スーパー、再編も/転機を迎えるコンビニ、ドラッグストアは拡大続く/アマソン・エフェクト、日本でもさらに波及

練習問題・解説

ステップアップ解説 一段と進むデジタル変革技術も経済を変える.
あらゆる産業でデジタルトランスフォーメーション「共有」が新たな要素、Maasが既存産業の枠組み破壊も/「GAFA独占」に警戒、BAT」は国家主導で脅威

第3章 視野の広さ
入門解説 「地理」の視点で経済のつながりを理解
開催地が変わった「COP」、南米市民デモと世界経済/「EV時代の油田」で注目の資源国/エチオピアなども注目のアフリカ新興国経済/「何が起きるか」をつかむと広がる視野

練習問題・解説

ステップアップ解説 新しい時代の流れヒット商品に反映
ラグビーW杯、キャッシュレス、令和/「街中」からヒットは生まれた/消費増税「値段以上の価値」求める/ヒゲダン、シブコ、八村、ニュースターは実力派

第4章 知識を知恵にする力

例題解説 経済・ビジネスを動かす共通点を見いだす
家電量販店で広がる「電子棚札」、導入の理由は?/ダイナミックプライシング、プロ野球や駐車場でも/「事前確定運賃」はMaaS導入にも不可欠/「共通するキーワード」を探す/共通しない「IoT」「プラットフォーマー」/オープンイノベーション、集積や交流の「場」も重要

練習問題・解説

ステップアップ解説 働き方改革と労働生産性「人事改革」が次の課題に
人口減少補う労働参加、働き方改革と「70歳雇用」で後押し/「正社員の労働生産性」引き上げが不可欠/改革次第で伸びしろ、ジョブ型雇用など導入進むか/単純労働に新たな在留資格スタート/外国人労働者は既に166万人

第5章 知恵を活用する力

例題解説 仮説をビジネスに適用先を読む力を鍛える
リスクオフとリスクオン/「金」は東京で史上最高値、商品相場は低下/リスクオフ=円高とは限らない局面も/背景と理由を考える/地球温暖化への懸念が背景、世界の人口増加にも危機感/中国での豚肉需給逼迫も背景

練習問題・解説

ステップアップ解説 先を読むための前提知識エネルギー・環境・人口
シェール革命で一変、原油を巡るパワーバランス/温暖化ガス排出実質ゼロ、足踏みしながらも対応進む/意欲的な欧州、日本は石炭火力など化石燃料依存に悩み/2060年の世界と日本

まとめ・学習のポイント
日経TESTの実施要項、種類など
索引

日本経済新聞社 (編集)
出版社: 日本経済新聞出版社 (2020/3/24)、出典:出版社HP

本書の読み方・使い方

日経TESTの実際の試験では、このあと説明する「5つの評価軸」に基づき、1つの評価軸につき20問ずつ、合計100問を毎回、出題しています。本書はその評価軸を1章ずつ、5章に分けました。

「知識」を問う第1章~第3章では、冒頭でその評価軸の出題趣旨を説明した後、問題を解くうえで必要な経済知識を獲得する前提となる知識やコツを盛り込んだ「入門解説」を掲載しました。

その後に、実際の日経TESTの出題形式に準じた「練習問題」を20問ずつ掲載。奇数ページに問題、その裏のページに正解と解説という構成です。さらにその後に、2020~21年時点でポイントとなるテーマを掘り下げた「ステップアップ解説」を掲載しています。

「考える力」を問う第4章~第5章については、「入門解説」の代わりに、「例題解説」を掲載しました。実際の出題形式に沿ってどのように解答を得るかという考え方に加えて、とりあげたテーマについても掘り下げて解説します。最後に、学習法に関するアドバイスなどを補足した「まとめ・学習のポイント」を掲載しました。

「練習問題」は、解答の解説とセットで読んでいただくことで、入門解説では触れられなかったポイントを補足しています。各問題には「キーワード」をつけました。実際の日経TESTは能力測定が目的なので、問題形式は本書と同じですが、100問を80分で解いていただくため、短時間で答えられる問題、少し考える問題を取り混ぜ、テンポよく答えられるようになっています。本書内の問題は「学習」が目的です。印象に残るように、実際のテスト問題より、ややひねった設問もありますので、ご承知おきください。

また、解説・問題の内容はおおむね2020年1月までの情報に基づいていることをお断りしておきます。

日本経済新聞社 (編集)
出版社: 日本経済新聞出版社 (2020/3/24)、出典:出版社HP