民法債権法務士認定試験のおすすめ参考書・テキスト(独学勉強法/対策)
民法債務法務士試験の概要
民法債務法務士試験は、社内の民法の専門家の養成を目的とした試験であり、法務、総務、販売および管理職に関する上級試験です。民法には、一般規則、財産権、クレジット、親戚、相続などのジャンルがありますが、特に一般企業、特に契約活動が多い企業にとっては最も必要な法律です。
民法は、昨年平成29年5月に120年ぶりに大きく改正され、6月に改正法が公布されました。取引社会を支える最も基本的な法的基礎である契約に関する規定を中心に、経済・社会の変化に対応するために大きな見直しが行われています。改正法は、平成32年(2020年)4月に施行されることから、金融機関や不動産業などの、契約業務に携わる者には必須の知識となります。
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民法債務法務士試験の公式テキスト
公式テキストはありませんでした。参考図書として民法債権に関する基本的な書籍が薦められています。上級に当たる資格なので基礎的知識が必須になります。ここでは参考書籍として推薦されている民法債権のテキストをご紹介します。公務員試験や士業関連の試験(司法試験、司法書士試験、行政書士試験など)の債権法分野にテーマをしまったテキストが1番対応しております。
民法債務法務士試験のおすすめテキスト
1.「図解 民法(債権)最新版 」(大蔵財務協会)
120年ぶりの大改正となる平成29年6月2日公布「民法の一部を改正する法律」による改正後の債権法について、民法を専門的に取り扱っていない士業の方や一般の方を対象としたベーシックに解説した基本書。図表・チャートをふんだんに用いて、理解のしやすさを重視した図解シリーズの1冊です。
2.「基礎コース 民法〈2〉債権法 (基礎コース法学)」(新世社)
市民社会の基本法,民法がいま装いを新たに、第3版では,民法改正(現代語化)に対応して,よりわかりやすく総則・物権法の基礎と重要論点まとめています。判例の解説も充実させ,さらに担保物権,保証規定の改正や,不動産登記法,破産法等の関連法改正もフォローしています。
3.「新基本民法4 債権編 契約債権の法」(有斐閣)
『基本民法3』の債権総論部分を再構成し、リニューアル。債権総論を「契約債権の法」ととらえ、契約によって成立した債権の実現に関して我々の社会がいかなる法をもつべきかを考える。2色刷で重要ポイントがひと目でわかる。債権法改正にも対応。
4.「民法概論<3> 債権総論」(有斐閣)
財産法・家族法全体を通じ、学説・判例を民法典に基づくオーソドックスな体系に沿って整理・解説した本格的な体系書の債権総論編。具体的な問題点の検討、学説の整理と分析を簡潔にまとめる。利息制限法、出資法、貸金業法の改正に対応して記述を改めいます。
5.「スタートライン民法総論 第3版」(日本評論社)
初学者には難しい民法総則を、物権法・債権法・家族法と併せて学ぶことで理解力を補い、民法全体の入門も兼ねる。独学にも最適です。
6.「民法2 債権法 第3版」(勁草書房)
現時点における通説の到達した最高水準を簡明に解説した定評のあるスタンダードテキスト。利息制限法等の法改正、最新判例・学説、社会の動向にも配慮し改訂を施した。本書引用判例に、姉妹書である民法基本判例集の判例番号を明記して学習の便宜を図る。資格試験の受験生の入門書、仕上書として、学生の教科書として最適です
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目次 – 民法(債権関係)改正法の概要
はしがき
民法(債権関係)の改正法案(「民法の一部を改正する法律案」)とその整備法案は、2015年の国会提出から2年余りを経て、2017年5月26日に、参議院本会議において可決・成立した(平成29年6月2日法律第44号として公布 された)。2020年中の施行が予定されているようである*。振り返れば、 2009年11月24日の法制審議会民法(債権関係)部会の第1回会議から、2015年2月24日の法制審議会総会による法務大臣への「民法(債権関係)の改正に関する要綱」の答申を経て、今日まで、8年近くを費やす長丁場となった(筆者自身にとっては、私的な改正検討グループであるが、2002年からの民法改正委員会[債権法部会]、2006年からの民法債権法)改正検討委員会の時代も含めると、15年近く、債権法の改正に向けた本格的な議論の場に関わっていたことになる)。
本書の前身である『民法(債権関係)改正法案の概要』(2015年刊)、さらにその前身である『民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案の概要』(2014年刊)は、いずれも、法制審議会民法(債権関係)部会の審議内容の 概要を、部会審議に関わった者の目でみて、部会資料に沿い、できるだけ客観的かつ簡明に叙述することで、研究教育・実務に携わる者のみならず、民法を学ぶ学生にとってのニーズにこたえようとしたものであった。他方、理論面からの掘り下げた検討や、議論の構図や課題を細密に示すことは、筆者自身のものも含めた別著・別論文にゆだねることとしたものであった。
法改正がなった今、時を置かずに世に出されるであろうおびただしい数の 入門書、啓蒙書、概説書、教科書、体系書、注釈書、各種の連載・特集企画 に混じって、上記のような意図のもとで書かれた本書のような著書が意味を持つか否かについては、様々な考え方があり得るであろう。とはいえ、部会番議の全容を踏まえたうえで、執筆者自身の主観や分析視角にあまり左右されずにまとめられた概要を、しかも、適度の分量で一冊の書物にまとめておくことは、法学部・法科大学院等での教育・学習の場や、新法施行がは行が待ったなしとなった実務の現場や、民法その他の法分野における研究の場で、今回の改正の骨子を知るうえで、また、改正前の民法との違いを理解するうえで、当分の間は利用価値が高いのではないかと思うところである。
それゆえ、今回、『民法(債権関係)改正法案の概要』を改訂する形で 「民法(債権関係)改正法の概要」との題名で、稿を起こすこととした。前著の記載を正すなどの補正を施すとともに、記載内容を全体的に少々膨らませているが、書物としてのモチーフには、いささかの違いもない。
本書をこの時期に上梓することができたのも、前著およびその前著の作業 の際にご協力をいただいた下村信江(近畿大学法科大学院教授)、渡邊力 (関西学院大学法学部教授)、冷水登紀代(甲南大学法科大学院教授)の3日 のご尽力の賜物である。また、出版にあたっては、金融財政事情研究会の泡田純一氏には最初の著書の企画段階において相談に乗っていただき、また、 前著と本書については、高橋仁氏の手を煩わせることとなった。記して御礼申し上げる。
2017年7月
潮見佳男
*平成29年(2017年)12月20日に「民法の一部を改正する法律の施行期日を定め
る政令」(平成29年政令309号)が公布され、民法の一部を改正する法律とその 整備法の施行期日は、原則として平成32年(2020年)4月1日とされた。
1959年愛媛県西条市生まれ
1981年京都大学法学部卒業
現在、京都大学大学院法学研究科教授 京都大学博士(法学) 法制審議会民法(債權関係)部会幹事(2015年2月主)、法制審議会民 法(相続関係)部会委員(2015年4月から)、日本銀行金融法委員会委員、 大学改革支援・学位授与機構法科大学院認証評価委員会委員ほかを兼職 所属学会:日本私法学会(理事)、金融法学会(理事)、日本家族〈社会上 法》学会(理事)、比較法学会
[主著] 『契約規範D構造上展開』(有斐閣、1991年)『民事過失責構造』(信山社、1995年)
『契約責任体系』(有斐閣、2000年)
『契約法理現代化』(有斐閣、2004年)
『債務不履行D救济法理』(信山社、2010年)
『契約各論I』(信山社、2002年)
『新債権総論I』(信山社、2017年)
『新債権総論II』(信山社、2017年)
『不法行為法I(第2版)』(信山社、2009年)
『不法行為法I(第2版)』(信山社、2011年)
『プラクティス民法 債権総論(第4版)』(信山社、2012年)
『相続法(第5版)』(弘文堂、2014年)
『基本講義債權各論I(第3版)』(新世社、2017年)
『基本講義債權各論II(第2版增補版)』(新世社、2016年)
『民法(全)』(有斐閣、2017年)
目次
第1章 民法総則
第 1 意思能力・行為能力
意思能力(第3条の2)
行為能力――保佐人の同意を要する行為等(第13条)
第2 物(改正前民法第86条第3項削除)
第3 公序良俗(第90条)
第4 意思表示。
心裡留保(第93条)
錯誤(第95条)
詐欺(第96条)
意思表示の効力発生時期等(第97条)
意思表示の受領能力(第98条の2)
第5 代理
1 代理行為の瑕疵(第101条)
2 代理人の行為能力(第102条)
3法定代理人を選任した任意代理人の責任(改正前民法大105条)
4法定代理人による復代理人の選任(第105条)
5復代理人の権限等(第106名)
6代理権の濫用(第107条)
7自己契約・双方代理その他の利益相反行為(第108条)
8代理権授与の表示による表見代理(第109条)
9 権限外の行為の表見代理(第110条)
10 代理権消滅後の表見代理(第112条)
11 無権代理人の責任(第117条)
第 6 無効および取消し
1 取消権者(第120条)
2 取消しの効果(第121条)
3原状回復の義務(第121条の2)
4 追認の効果(第122条)
5取り消すことができる行為の追認(第124条)
6法定追認(第125条)
第 7 条件および期限——条件の成就の妨害等(第130条)
第 8 消滅時効
1 時効の援用(第145条)
2 時効障害——時効の完成猶予および更新
(1) 総論
(2) 裁判上の請求等による時効の完成猶予および更新(第147条)
(3) 強制執行等による時効の完成猶予および更新(男140本)
(4) 仮差押え・仮処分による時効の完成猶予(第149条)
(5) 催告による時効の完成猶予(第150条)
(6) 協議を行う旨の合意による時効の完成猶予(第131条)
(7) 承認による時効の更新(第152条)
(8) 時効の完成猶予または再新の効力が及ぶ者の範囲1(第153条)
(9) 時効の完成猶予または更新の効力が及ぶ者の範囲2(第154条)
(10) 天災等による時効の完成猶予(第161条)
3債権等の消滅時効
(1) 原則的な時効期間と起算点(第166条)
(2) 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(第724条)
(3) 人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効(第167条、第724条の2)
(4) 定期金債権の消滅時効(第168条)
(5) 判決で確定した権利の消滅時効(第169条)
第2章 債権総則
第1 債権の目的
1 特定物の引渡しの場合の注意義務(第400条)
2 法定利率(第404条)
3 選択債権(第410条)
第2 債務不履行の責任等
1 履行期と履行遅滞(第412条)
2 履行不能(原始的不能を含む)(第412条の2)
3 受領遅滞(第413条)
4 履行遅滞中または受領遅滞中の履行不能と帰責事由(第413条の2)
5 履行の強制(第414条)
6 債務不履行による損害賠償(第415条)
7 損害賠償の範囲(第416条)
8 中間利息の控除(第417条の2、第722条)
9 過失相殺(第418条)
10金銭債務の損害賠償額の算定に関する特則(第419条)
11賠償額の予定(第420条)
12代償請求権(第422条の2)
第 3 債権者代位権
1 債権者代位権の要件(第423条)
2 代位行使の範囲(第423条の2)
3 債権者への支払または引渡し(第423条の3)
4相手方の抗弁(第423条の4)
5 債務者の取立てその他の処分の権限等(第423条の5)
6被代位権利の行使に係る訴えを提起した場合の訴訟告知(第423 条の6)
7 登記または登録の請求権を保全するための債権者代位権(第423条の7)
第4 詐害行為取消権
1 詐害行為取消権の要件
(1) 受益者に対する詐害行為取消請求(第424条)
(2) 相当の対価を得てした財産の処分行為の特則(第424条の2)
(3) 特定の債権者に対する担保の供与等の特則(第424条の3)
(4) 過大な代物弁済等の特則(第424条の4)
(5) 転得者に対する詐害行為取消権の要件(第424条の5)
2 詐害行為取消権の行使の方法等
(1) 財産の返還または価額の償還の請求(第424条の6)
(2) 被告および訴訟告知(第424条の7)
(3) 詐害行為の取消しの範囲(第424条の8)
(4) 債権者への支払または引渡し(第424条の9)
3 詐害行為取消権の行使の効果
(1) 認容判決の効力が及ぶ者の範囲(第425条)
(2) 債務者の受けた反対給付に関する受益者の権利(第425条の2)
(3) 受益者の債権の回復(第425条の3)
(4) 詐害行為取消請求を受けた転得者の権利(第425条の4)
4 詐害行為取消権の期間の制限(第426条)
第 5 多数当事者の債権および債務(保証債務を除く)
1 不可分債権
(1) 連帯債権に関する規定の準用(第428条)
(2) 不可分債権者の一人との間の更改または免除(第429条)
2 連帯債権
(1)連帯債権者による履行の請求等(第432条)
(2) 連帯債権者の一人について生じた事由の効力等
(ア) 連帯債権者の一人との間の更改または免除(第433条)
(イ) 連帯債権者の一人との間の相殺(第434条)
(ウ) 連帯債権者の一人との間の混同(第435条)
(エ) 相対的効力の原則(第435条の2)
3 不可分債務(第430条)
4 連帯債務
(1) 連帯債務者に対する履行の請求等(第436条)
(2) 連帯債務者の一人との間の更改(第438条)
(3) 連帯債務者の一人による相殺等(第439条)
(4) 連帯債務者の一人との間の混同(第440条)
(5) 相対的効力の原則(第441条)
(6) 破産手続の開始(改正前民法第441条——削除)
(7) 連帯債務者間の求償関係
(ア) 連帯債務者間の求償権(第442条)
(イ) 通知を怠った連帯債務者の求償の制限(第443条)
(ウ) 償還をする資力のない者の負担部分の分担(第444条)
(エ) 連帯の免除をした場合の債権者の負担(改正前民法第445条)
(オ) 連帯債務者の一人との間の免除等と求償権(第445条)
第 6 保証債務
1 保証人の負担と主たる債務の目的または態様(第448条)
2 主たる債務者について生じた事由の効力(第457条)
3 連帯保証人について生じた事由の効力(第458条)
4 主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務(第458条の2)
5 主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務(第458条の3)
6 保証人の求償権
(1) 委託を受けた保証人の求償権(第459条)
(2) 委託を受けた保証人が弁済期前に弁済等をした場合の求償権 川 (第459条の 2)
(3) 委託を受けた保証人の事前の求償権(第460条)
(4) 委託を受けない保証人の求償権(第462条)
(5) 通知を怠った保証人の求償の制限等(第463条)
7 個人根保証契約
(1) 個人根保証契約の保証人の責任等(第465条の2)
(2) 個人貸金等根保証契約の元本確定期日(第465条の3)
(3) 個人根保証契約の元本の確定事由(第465条の4)
(4) 保証人が法人である根保証契約の求償権(第465条の5)
8「事業に係る債務」についての保証契約の特則
(1) 個人保証の制限
(ア) 公正証書の作成と保証の効力(第465条の6)
(イ) 保証に係る公正証書の方式の特則(第465条の7)
(ウ) 公正証書の作成と求償権についての保証の効力(第465条の 8)
(エ) 公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外—経営者保証等(第465条の9)
(2) 契約締結時の情報の提供義務(第465条の10)
第7 債權讓渡
1 債権の譲渡性とその制限
(1) 債権の譲渡性(第466条)
(2)譲渡制度の意思表示がされた債権に関わる債務者の供託
(ア) 債務者の供託権(第466条の2)
(イ) 債権者の供託請求権(第466条の3)
(3) 譲渡制限の意思表示がされた債権の差押え(第466条の4)
(4) 預金債権または貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力(第 466条の5)
(5) 将来債権の譲渡性(第466条の6)
2 債権の譲渡の対抗要件(第467条)
3 債権の譲渡における債務者の抗弁(第468条)
4 債権の譲渡における相殺権(第469条)
第 8 債務引受
1 併存的債務引受
(1) 併存的債務引受の要件および効果(第470条)
(2) 併存的債務引受における引受人の抗弁等(第471条)
2 免責的債務引受
(1) 免責的債務引受の要件および効果(第472条)
(2) 免責的債務引受における引受人の抗弁等(第472条の2)
(3) 免責的債務引受における引受人の求償権(第472条の3)
(4) 免責的債務引受による担保の移転(第472条の4)
第 9 契約上の地位の移転(第539条の2)
第 10 弁済
1弁済の意義(第473条)
2 第三者の弁済(第474条)
3弁済として引き渡した物の取戻し(改正前民法第476条——削除)
4 預金または貯金の口座に対する払込みによる弁済(第477条)
5受領権者としての外観を有する者に対する弁済(第478条)
6 代物弁済(第482条)
7 弁済の方法
(1) 特定物の現状による引渡し(第483条)
(2) 弁済の場所および時間(第484条)
(3) 受取証書の交付請求(第486条)
8 弁済の充当
(1) 同種の給付を目的とする数個の債務がある場合の充当(第488条)
(2) 元本、利息および費用を支払うべき場合の充当(第489条)
(3) 合意による弁済の充当(第490条)
(4) 数個の給付をすべき場合の充当(第491条)
9 弁済の提供の効果(第492条)
10 弁済の目的物の供託
(1) 供託が可能な場合(第494条)
(2) 供託に適しない物等(第497条)
(3)供託物の還付請求等(第498条)
11 弁済による代位
(1) 弁済による代位の要件(第499条 、第500条)
(2) 弁済による代位の効果(第501条)
(3) 一部弁済による代位(第502条)
(4) 債権者による担保の喪失等——担保保存義務(第504条)
第 11 相殺
1 相殺の要件等(第505条)
2不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止(第 509条)
3差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止(第511条)
4相殺の充当
(1) 一個または数個の債権・債務の間における充当(第512条)
(2) 数個の給付をすべき場合の充当(第512条の2)
第 12 更改
1更改の要件および効果(第513条)
2債務者の交替による更改(第514条)
3 債権者の交替による更改(第515条)
4更改の効力と旧債務の帰すう(改正前民法第517条——削除)
5更改後の債務への担保の移転(第518条)
第 13 有価証券
1 総論
2 指図証券
(1) 指図証券の譲渡(第520条の2)
(2) 指図証券の譲渡の裏書の方式(第520条の3)
(3) 指図証券の所持人の権利の推定(第520条の4)
(4) 指図証券の善意取得(第520条の5)
(5) 指図証券の譲渡における債務者の抗弁の制限(第520条の6)
(6) 指図証券の質入れ(第520条の7)
(7) 指図証券の弁済の場所(第520条の8)
(8) 指図証券の提示と履行遅滞(第520条の9)
(9) 指図証券の債務者の調査の権利等(第520条の10)
(10) 指図証券の喪失(第520条の11)
(11) 指図証券喪失の場合の権利行使方法(第520条の12)
3記名式所持人払証券
(1) 記名式所持人払証券の譲渡(第520条)
(2) 記名式所持人払証券の所持人の権利の推定(第520条の14)
(3) 記名式所持人払証券の善意取得(第520条の15)
(4) 記名式所持人払証券の譲渡における債務者の抗弁の制限(第520条の16)
(5) 記名式所持人払証券の質入れ(第520条の17)
(6) 指図証券の規定の準用(第520条の18)
4 その他の記名証券(第520条の19)
5無記名証券(第520条の20)
第3章 契約総則
第 1 契約の成立
1 契約の締結および内容の自由(第521条)
2 契約の成立と方式(第522条)
3 承諾の期間の定めのある申込み(第523条)
4 承諾の期間の定めのない申込み(第525条)
5 申込者の死亡等(第526条)
6 契約の成立時期 (改正前民法第526条第1項・第527条――削除)
7 承諾の通知を必要としない場合における契約の成立時期(第527 条)
8懸賞広告
(1) 懸賞広告(第529条)
(2) 指定した行為をする期間の定めのある懸賞広告(第529条の2)
(3) 指定した行為をする期間の定めのない懸賞広告(第529条の3)
(4) 懸賞広告の撤回の方法(第530条)
第 2 定型約款
1定型約款の合意(第548条の2)
2定型約款の内容の表示(第548条の3)
3定型約款の変更(第548条の4)
第 3 同時履行の抗弁(第533条)
第 4 第三者のためにする契約
1 第三者のためにする契約の成立(第537条)
2 第三者の権利の確定(第538条)
第 5 契約の解除
1催告による解除(第541条)
2 催告によらない解除(第542条)
3 債権者の責めに帰すべき事由による不履行と解除(第543条)
4 解除の効果(第545条)
5 解除権者の故意・過失による目的物の損傷等による解除権の消滅(第548条)
第 6 危険負担
1 所有者危険負担に依拠した規定の削除(改正前民法第534条・第535条——削除)
2反対給付の履行拒絶(第536条)
第4章 契約各則
第1 贈与
1 贈与契約の意義(第549条)
2 書面によらない贈与の解除(第550条)
3 贈与者の引渡義務等(第551条)
第 2 売買
1手付(第557条)
2 権利移転の対抗要件に係る売主の義務(第560条)
3 他人の権利の売買における売主の義務(第561条)
4 買主の追完請求権(第562条)
5 買主の代金減額請求権(第563条)
6買主の損害賠償請求および解除権の行使(第564条)
7 移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の責任 (第565条)
8 買主の権利の期間制限(第566条)
9 目的物の滅失等についての危険の移転(第567条)
10 競売における買受人の権利の特則(第568条)
11 抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求(第570条)
12 売主の担保責任と同時履行(改正前民法第571条——削除)
13担保責任を負わない旨の特約(第572条)
14 権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶(第576条)
15 抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶(第577条)
16 買戻しの特約(第579条)
17 買戻しの特約の対抗力(第581条)
第 3 消費貸借
1 要物契約としての消費貸借と要式契約である諾成的消費貸借(第587条、第587条の2)
2 準消費貸借(第588条)
3 消費貸借の予約(改正前民法第589条——削除)
4 利息(第589条)
5 貸主の引渡義務等(第590条)
6 返還の時期(第591条)
第 4 使用貸借
1 使用貸借の成立(第593条)
2 借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除(第593条の2)
3 貸主の引渡義務等(第596条)
4 期間満了等による使用貸借の終了(第597条)
5 使用貸借の解除(第598条)
6 使用貸借終了後の収去義務および原状回復義務(第599条)
7 損害賠償および費用の償還の請求権についての期間の制限(第600条)
第 5 賃貸借
1 賃貸借の成立(第601条)
2 短期賃貸借(第602条)
3 賃貸借の存続期間(第604条)
4 不動産賃貸借の対抗力(第605条)
5 不動産の賃貸人たる地位の移転(第605条の2)
6 合意による不動産の賃貸人たる地位の移転(第605条の3)
7 不動産の賃借人による妨害の停止の請求等(第605条の4)
8 賃貸人による修繕等(第606条)
9 賃借人による修繕(第607条の2)
10 減収による賃料の減額請求・解除(第609条)
11 賃借物の一部滅失等による賃料の減額・解除(第611条)
12 転貸の効果(第613条)
13 賃借物の全部滅失等による賃貸借の終了(第616条の2)
14 賃貸借の解除の効力(第620条)
15 賃借人の原状回復義務(第621条)
16使用貸借の規定の準用賃貸借終了後の収去義務・収去権、損害賠償および費用の償還についての期間の制限等(第622条)
17 敷金(第622条の2)
第 6 雇用
1 履行の割合に応じた報酬(第624条の2)
2 期間の定めのある雇用の解除(第626条)
3 期間の定めのない雇用の解約の申入れ(第627条)
第 7 請負
1 注文者が受ける利益の割合に応じた報酬(第634条)
2 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任(改ー 正前民法第634条・第635条——削除)
3 請負人の契約不適合責任の制限(第636条)
4 仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合の注文者の権利の期 間制限(第637条)
5 仕事の目的物である土地工作物が契約の内容に適合しない場合の請負人の責任の存続期間(改正前民法第638条・第639条——削除)
6 担保責任を負わない旨の特約(改正前民法第640条一削除)
7 注文者についての破産手続の開始による解除(第642条)
第 8 委任
1 復受任者の選任等——受任者の自己執行義務(第644条の2)
2 受任者の報酬(第648条)
3 成果等に対する報酬(第648条)
4 委任契約の任意解除権(第651条)
第 9 寄託
1寄託契約の成立——要物性の見直し(第657条)
2 寄託物受取り前の寄託者による寄託の解除等(第657条の2)
3寄託物の使用および第三者による保管——受寄者の自己執行義務等(第658条)
4 無報酬の受寄者の注意義務(第659条)
5 受寄者の通知義務、寄託物についての第三者による権利主張(第660条)
6 寄託者による返還請求等(第662条)
7 損害賠償および費用の償還の請求権についての期間の制限(第664条の2)
8 混合寄託(第665条の2)
9 消費寄託(第666条)
第 10 組合
1 他の組合員の債務不履行(第667条の2)
2 組合員の一人についての意思表示の無効等(第667条の3)
3 業務の決定および執行の方法(第670条)
4 組合の代理(第670条の2)
5 組合の債権者の権利の行使(第675条)
6 組合員の持分の処分および組合財産の分割(第676条)
7 組合財産に対する組合員の債権者の権利の行使の禁止(第677条)
8 組合員の加入(第677条の2)
9 組合員の脱退——脱退した組合員の責任等(第680条の2)
10 組合の解散事由(第682条)
第5章 物権に関する関連規定の改正
1 地役権の時効取得(第284条)
2 地役権の消滅時効1(第291条)
3 地役権の消滅時効2(第292条)
4 不動産賃貸の先取特権の被担保債権の範囲(第316条)
5 債権質の設定(改正前民法第363条——削除)
6 債権を目的とする質権の対抗要件(第364条)
7 指図債権を目的とする質権の対抗要件(改正前民法第365条—— 削除)
8 抵当権の効力の及ぶ範囲(第370条)
9 根抵当権(第398条の2)
10 根抵当権の被担保債権の範囲(第398条の3)
11 根抵当権の被担保債権の譲渡等(第398条の7)
【経過措置の簡易一覧表―附則に定められた経過規定】
(1) 従前の例による(または改正法が適用されない)場合
(2) その他の場合
凡例
<法制審議会関連の略称>
「部会」法制審議会民法(債權関係)部会
「中間試案」 民法(債権関係)の改正に関する中間試案
「中間試案補足説明」 民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明
「要綱仮案」 民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案
「要綱案」民法(債權関係)改正二関于石要綱案
<引用判例の表記方法>
(例)昭和44年11月14日最高裁判所第二小法廷判決最高裁判所民事判例集23 卷 11号 2023 頁→最二小判昭 44.11.14民集23 卷 11号 2023 頁
1 裁判所・裁判の略称
「大判」大審院判決
「大連判」 大審院連合部判決
「最大判」 最高裁判所大法廷判決
「最○小判」 最高裁判所第一小法廷判決
2 判例集・定期刊行物の略称
「民錄」大賽院民事判決錄
「民集」大審院民事判例集
最高裁判所民事判例集
「金法」金融法務事情
「判時」判例時報
「判」判例文
「新聞」 法律新聞
Before/After 民法改正
はしがき
債権法の現代化をめざした「民法の一部を改正する法律案」は、本年5月26日に参 議院本会議において可決・成立し、平成29年6月2日法律第44号として公布された。 改正法は、公布の日から3年以内の施行が予定されている。
民法の学習をする学部生・大学院生や、民法を自らの仕事や研究の場で用いる実務家・研究者らが、今回の民法(債権関係)の改正により、民法を用いたこれまでの事件 処理が変わるのか、それとも変わらないのか、変わる場合にはどこがどのように変わるのか、改正前の民法の下での判例は、改正後もその意義が失われないのか、そもそも、 個々の案件を処理するに当たり、改正後はどの条文を用いて処理をすればよいのか、などといった点に強い関心を抱くことは、想像するに難くない。
こうしたニーズが見込まれる中で、本書は、改正の前後で民法の解釈・適用にどのよ うな違いが生じるのかを、簡単な Case を素材として、「改正前の民法の下での問題処 理はどのようなものであったか」(Before) ・「改正後の民法の下での問題処理はどうな るのか」(After)に分けて解説するものである。本書を、改正法に対応する教科書・体 系書等と併せて読んでいただければ、改正法に関する認識がいっそう深まることが期待 できよう。また、改正前の民法に関して知見を有している読者にとっては、本書は、改正前の民法の下で有していた知見を改正後の民法の下へとスムーズに移行するための一助となるであろう。
本書が成るに当たって、執筆に協力していただいた研究者・実務家の先生方には、短期間のうちに多くの文献・資料等を調査していただいたうえに、Case の作成からコンパクトな解説に至るまでの、非常に手間のかかる作業を引き受けていただいた。テーマによっては、手探りに近い状態で執筆するという困難な作業をお願いすることとなった ものも少なくなかった。執筆者各位のご尽力に対しては、ただただ頭の下がる思いである。編者一同、心よりの御礼を申し上げる。
本書の企画は、法制審議会民法(債権関係)部会での審議が大詰めを迎えていた時期に、 編者の1人である潮見が、弘文堂の北川陽子さんと懇談する中で持ち上がったものであ る。その際、潮見の頭にあったのは、2001年にドイツで債務法が大改正された際に、改正法の成立後間もなく刊行された Barbara Dauner-Lieb 編の “Das neue SchuldrechtFalle und Losungen”(Deutscher Anwalt Verlag, 2002)であった。同書は、172 の簡単な ケースを用いて、改正前・後の法の解釈・適用を併記して解説することにより、読者が改正前・後の状況を相互に対比し、把握しやすくすることをねらったものであった。同書は、債務法改正直後の時期を中心に、研究者・実務者・学生その他各層において、多くの支持を得た。この例に倣い、今回の我が国における民法(債権関係)の改正に関しても同様の企画を立てて、多くの方々のニーズに答えてはどうであろうかということから話が始まり、今回の法改正に精通する北居功・高須順一・赫高規・中込一洋・松岡久和の隠しに編者として加わっていただき、今般、一冊の書として刊行することができた次第である。この間、北川さんには、国会での審議の経過をにらみながら、絶妙のタイミングで企画の遂行をしていただいた。この時期に本書を刊行することができたのも、ひとえに北川さんのご尽力の賜物である。
本書が世に出るに至った経緯は、以上である。編者一同、本書が学部生・大学院生、実務家、研究者その他民法に関心を寄せる多くの方々に広く活用されることを望むところである。
2017年 7月24日
編者を代表して 潮見佳男
編者
潮見佳男・北居功・高須順一・赫高規・中込一洋・松岡久和
編者紹介
潮見佳男(しおみ・よしお)
1959年生まれ。京都大学法学部卒。
現在、京都大学大学院法学研究科教授。
主著:『新債権総論I・II』(信山社・2017)、『基本講義債権各論 I 契約・事務管理・ 不当利得[第3版]』(新世社·2017)、『詳解相続法』(弘文堂·2018)、「民法(全)(第2版)』(有斐閣·2019)
北居功(きたい・いさお)
1961年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。
現在、慶應義塾大学大学院法務研究科教授。
主著:『契約履行の動態理論I弁済提供論』(慶應義塾大学出版会·2013)、『契約履行動態理論I弁済受領論」(慶應義塾大学出版会·2013)、『法典とは何か』(共編著、慶應義塾大学出版会·2014)
高須順一(たかす・じゅんいち)
1959年生まれ。法政大学法学部卒。
現在、弁護士(高須・高林・遠藤法律事務所)・法政大学大学院法務研究科教授。
主著:『ロースクール民事法」(酒井書店·2009)、「民法から考える民事執行法·民事 保全法」(商事法務·2013)、『判例にみる詐害行為取消権·否認権』(編著、新日本法規・2015)
赫 高規(てらし・こうき)
1969年生まれ。京都大学法学部卒。
現在、弁護士(弁護士法人関西法律特許事務所)。
主著:日本弁護士連合会編『実務解説改正債権法』(分担執筆、弘文堂・2017)、高須
順一編著『Q&Aポイント整理改正債權法』(共著、弘文堂·2017)
中込一洋(なかごみ・かずひろ)
1965年生まれ。法政大学法学部卒。
現在、弁護士(司綜合法律事務所)。
主著:日本弁護士連合会編「実務解説改正債権法」(分担執筆、弘文堂·2017)、高須
順一編著「Q&Aポイント整理改正債権法』(共著、弘文堂·2017)、「実務解
説改正相続法」(弘文堂·2019)
松岡久和(まつおか・ひさかず)
1956年生まれ。京都大学法学部卒。
現在、立命館大学大学院法務研究科教授。
主著:『物権法』(成文堂・2017)、『担保物権法』(日本評論社・2017)、松岡久和 = 潮見佳男 = 山本敬三『民法総合・事例演習[第2版]』(共著、有斐閣・2009)
●執筆者一覧(五十音順・敬称略)
*印:編著者
秋山 靖浩 (あきやま・やすひろ) 早稲田大学大学院法務研究科教授
安部 将規 (あべ・まさき) 弁護士(アイマン総合法律事務所)
荒木 理江 (あらき・まさえ) 弁護士(飯塚総合法律事務所)
飯島奈津子 子 (いいじま・なつこ) 弁護士(よこはま山下町法律事務所)・横浜国立大学法科大学院教授
井砂 貴雄 (いさご・たかお) 弁護士(安達法律事務所)
石川 裕一 (いしかわ・ゆういち) 弁護士(大船いしかわ法律事務所)
石田 剛(いしだ・たけし) 一橋大学大学院法学研究科教授
泉原 智史 (いずみはら・さとし) 弁護士(金融庁総合政策局総務課国際室課長補佐)
一木 孝之 (いちき・たかゆき) 國學院大學法学部教授
稲田 正毅 (いなだ・まさき) 弁護士(共栄法律事務所)・関西学院大学大学院司法研究科教授
稲村 晃伸 (いなむら・てるのぶ) 弁護士(北多摩いちょう法律事務所)
岩田 修一 (いわた・しゅういち) 弁護士(染井さくら法律事務所)
臼井 智晃 (うすい・ともあき) 弁護士(ひびき綜合法律事務所)
大澤 彩 (おおさわ・あや) 法政大学法学部教授
大西 達也 (おおにし・たつや) 弁護士(高須・髙林・遠藤法律事務所)
岡本 裕樹 (おかもと・ひろき) 筑波大学ビジネスサイエンス系教授
沖野 眞巳 (おきの・まさみ) 東京大学大学院法学政治学研究科教授(おくとみ・あきら) 上智大学大学院法学研究科教授
香川 崇 (かがわ・たかし) 富山大学経済学部教授
柿原 達哉 (かきはら・たつや) 弁護士(T&K法律事務所)
笠井 修 (かさい・おさむ) 中央大学大学院法務研究科教授
片山 直也(かたやま・なおや)、慶應義塾大学大学院法務研究科教授
角 紀代恵 (かどきよえ) 立教大学法学部教授
金山 直樹(かなやま・なおき) 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
金子 敬明(かねこ・よしあき) 名古屋大学大学院法学研究科教授
北居 功 (きたい・いさお) 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
窪田 見 (くぼた・あつみ) 神戸大学大学院法学研究科教授
栗本 知子 (くりもとのりこ) 弁護士(弁護士法人関西法律特許事務所)
桑岡 和久(くわおか・かずひさ) 甲南大学法学部教授
後藤 巻則(ごとうまきのり) 早稲田大学大学院法務研究科教授
小松 達成(こまつ・たつなり) 弁護士(篠塚・野田法律事務所)
三枝 健治(さいぐさ・けんじ) 早稲田大学法学部教授
齋藤 由起(さいとう・ゆき) 大阪大学大学院法学研究科准教授
斎藤 芳朗(さいとう・よしろう) 弁護士(徳永・松崎・斉藤法律事務所)
坂口 甲 (さかぐち・こう) 大阪市立大学大学院法学研究科准教授
潮見 佳男(しおみ・よしお) 京都大学大学院法学研究科教授
篠塚 力 (しのづか・ちから) 弁護士(篠塚・野田法律事務所)
下村 信江 (しもむら・としえ) 近畿大学大学院法務研究科教授
白石 友行 (しらいし・ともゆき) 筑波大学ビジネスサイエンス系准教授
水津 太郎 (すいず・たろう) 慶應義塾大学法学部教授
葛尾 慎一郎 (たかお・しんいちろう) 弁護士(梅田中央法律事務所)
高須 順一*(たかす・じゅんいち) 弁護士(高須・高林・遠藤法律事務所)・法政大学大学院法務研究科教授
清沢 昌彦 (たきざわ・まさひこ) 一橋大学大学院法学研究科教授
辰巳 裕規 (たつみ・ひろき) 弁護士(芦屋本通り法律事務所)
千葉 恵美子 (ちば・えみこ) 大阪大学大学院高等司法研究科招聘教授
鶴藤 倫道 (つるふじ・のりみち) 神奈川大学法学部教授
赫 高規*(てらし・こうき) 弁護士(弁護士法人関西法律特許事務所)
德田 琢 (とくだ・たく) 弁護士(德田法律事務所)
中込 一洋*(なかごみ・かずひろ) 弁護士(司綜合法律事務所)
長野 史寛 (ながの・ふみひろ) 京都大学大学院法学研究科准教授
中村 肇(なかむら・はじめ) 明治大学大学院法務研究科教授
西内 康人 (にしうち・やすひと) 京都大学大学院法学研究科准教授
野澤 正充 (のざわ・まさみち) 立教大学大学院法務研究科教授
野村 剛司 (のむら・つよし) 弁護士(なのはな法律事務所)
花本 広志 (はなもと・ひろし) 獨協大学外国語学部交流文化学科教授
林 薫男 (はやし・しげお) 弁護士(みなと横浜法律事務所)
平野 裕之 (ひらの・ひろゆき) 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
福井 俊一 (ふくい・しゅんいち) 弁護士(はばたき綜合法律事務所)
福田 誠治(ふくだ・せいじ) 駒澤大学法学部教授
福本 洋一 (ふくもと・よういち) 弁護士(弁護士法人第一法律事務所)
藤原 正則 (ふじわら・まさのり) 北海道大学大学院法学研究科教授
松井 和彦 (まつい・かずひこ) 大阪大学大学院高等司法研究科教授
松尾 弘 (まつお・ひろし) 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
松岡 久和*(まつおか・ひさかず) 立命館大学大学院法務研究科教授
松久 三四彦 (まつひさ・みよひこ) 北海学園大学大学院法務研究科教授
松本 克美 (まつもと・かつみ) 立命館大学大学院法務研究科教授
森田 修 (もりた・おさむ) 東京大学大学院法学政治学研究科教授
矢吹 徹雄(やぶき・てつお) 弁護士(弁護士法人矢吹法律事務所)・北海学園大学大学院法務研究科教授
山城 一真 (やましろ・かずま) 早稻田大学法学学術院准教授
和田 勝行 (わだ・かつゆき) 京都大学大学院法学研究科准教授
渡辺 達徳 (わたなべ・たつのり) 東北大学大学院法学研究科教授
渡邊 力 (わたなべ・つとむ) 関西学院大学法学部教授
contents
はしがき
編者紹介
執筆者一覧
目次
凡例
民法総則
I 法律行為
1 意思能力を欠いた行為の効力 小松達成
2 意思能力の一時的喪失・無効の主張権者 小松達成
3 公序良俗違反 桑岡和久
4 心裡留保 小松達成
5 表示行為の錯誤 篠塚 力
6 動機の錯誤 篠塚 力
7 惹起された錯誤と表明保証 篠塚 力
8 錯誤者の重過失 篠塚 力
9 錯誤取消しと第三者 篠塚 力
10 第三者の詐欺 泉原智史
11 詐欺取消しと第三者 中込一洋
12 意思表示の到達 泉原智史
13 表意者・受領者の能力の喪失 泉原智史
14 意思表示の受領能力 泉原智史
Ⅱ 代理
15 代理人に対する詐欺・代理人の詐欺 飯島奈津子
16 本人の悪意と代理行為の効力 飯島奈津子
17 代理人の行為能力の制限と代理の効力 飯島奈津子
18 法定代理人の行為能力の制限 飯島奈津子
19 復代理人を選任した任意代理人の責任 林 薫男
20 自己契約・双方代理・利益相反 林 薫男
21 代理権の濫用 林 薫男
22 授権代理と越権代理 矢吹徹雄
23 滅権代理と越権代理 矢吹徹雄
24 無権代理人の責任 矢吹徹雄
Ⅲ 無効および取消し
25 無効な売買契約の清算 藤原正則
26 無効な贈与契約の清算 藤原正則
27 取り消すことができる行為の追認 藤原正則
Ⅳ 条 件
28 条件の成就の妨害・不正な条件成就柿原達哉
Ⅴ 時効
29 時効の援用権者 齋藤由起
30 時効の完成猶予および更新 松久三四彦
31 裁判上の請求と裁判上の催告 松久三四彦
32 協議を行う旨の合意による時効の完成猶予 金子敬明
33 協議を行う旨の合意の繰返しと時効の完成猶予 金子敬明
34 物上保証人に対する抵当権の実行 松久三四彦
35 天災等による時効の完成猶予 松岡久和
36 消滅時効期間の短縮と二重期間化 金山直樹.
37 短期消滅時効の廃止による期間の長期化 香川崇
38 短期消滅時効の廃止による期間の統一・単純化 香川崇
39 商事消滅時効の廃止の影響 金山直樹
40 安全配慮義務違反の時効期間と起算点 金山直樹
41 定期金債権の消滅時効 香川崇
42 契約責任と不法行為責任の消滅時効期間 松本克美
43 不法行為責任の長期期間制限 松本克美
44 人損の場合における時効期間の延長 松本克美
45 人損と物損の消滅時効期間 松本克美
債權
I 債権の目的
46 特定物債権における保存義務
47 種類債権の特定と危険の移転
48 選択債権における不能による債権の特定
Ⅱ 法定利率
49 市場金利の変動 福本洋一
50 利率の固定の基準時 福本洋一
51 後遺障害の場合の中間利息控除 窪田充見
Ⅲ 債権の効力
52 履行期と履行遅滞
53 受領遅滞と保存義務の軽減・増加費用の負担
54 受領遅滞中の履行不能
55 履行請求権と履行不能
56 債務不履行を理由とする損害賠償と免責事由
57 履行補助者の行為と債務者の損害賠償責任
58 確定的履行拒絶と履行に代わる損害賠償
59 履行遅滞と履行に代わる損害賠償
60 合意解除と履行に代わる損害賠償
61 履行遅滞・受領遅滞中の履行不能
62 損害賠償の範囲と予見可能性
63 過失相殺
64 損害賠償額の予定
65 代償請求権
Ⅳ 解除と危険負担
66 催告解除の原則 森田 修
67 催告解除の例外的否定 森田 修
68 無催告解除 森田 修
69 一部不能等による解除 森田 修
70 確定的履行拒絶と解除 白石友行
71 売買契約の目的達成不能と解除 山城一真
72 賃貸借契約の目的達成不能と解除 山城一真
73 付随的義務の違反と解除 山城一真
74 債権者の責めに帰すべき事由による債務不履行と解除 山城一真
75 解除の場合の果実・使用利益の返還 鶴藤倫道
76 解除権の消滅 鶴藤倫道
77 危険負担と反対給付の履行拒絶 潮見佳男
V 債権者代位権
78 債権者代位権における被保全債権
79 代位権行使の範囲
80 債権者の直接請求権
81 裁判外の代位権行使等と債務者の処分権限等
82 直接請求の代位訴訟と債務者の処分権限
83 登記等請求権を保全するための債権者代位権
Ⅵ 詐害行為取消権
84 詐害行為取消権における被保全債権
85 相当価格処分行為の詐害性
86 同時交換行為の詐害性
87 弁済の詐害性
88 担保供与の詐害性
89 過大な代物弁済の詐害性
90 転得者に対する詐害行為取消権の要件
91 詐害行為取消権の請求の内容
92 詐害行為取消権の行使の方法
93 詐害行為取消訴訟の競合
94 取消債権者の直接請求権
95 詐害行為取消しの範囲
96 廉価売却行為の取消しと受益者の反対給付
97 高値購入行為の取消しと受益者の反対給付
98 詐害行為取消しと受益者の債権の復活
99 詐害行為取消しと転得者の反対給付
100 詐害行為取消権の期間制限
Ⅶ 多数当事者の債権・債務
101 不可分債務と連帯債務
102 連帯債務者の1人に対する請求
103 連帯債務における相殺
104 連帯債務者の1人に対する免除
105 連帯債務者の1人についての消滅時効
106 連帯債務者の1人による一部弁済後の求償関係
107 連帯債務者の1人による代物弁済後の求償関係
108 連帯債務における事前通知・事後通知
109 連帯債務における償還無資力者の負担部分のみ
110 連帯の免除
111 不可分債務者の1人について生じた事由の効力
112 連帯債権
113 不可分債権
Ⅷ 保証債務
114 保証債務の内容の付従性
115 主たる債務に関する抗弁の援用
116 委託保証人の求償権
117 保証における事前・事後の通知
118 連帯保証
119 個人根保証契約における極度額等
120 求償権保証契約
121 公正証書の作成と保証の効力
122 公正証書の作成と保証の効力に関する規定の適用除外
123 保証契約締結時の情報提供義務
124 履行状況の情報提供義務
125 期限の利益喪失に関する情報提供義務
Ⅸ 債権譲渡
126 譲渡制限特約違反の債権譲渡後の譲渡人への弁済・相殺
127 譲渡制限特約違反の債権譲渡後の善意譲受人の地位
128 譲渡制限特約違反の債権譲受人による履行請求
129 譲渡制限特約違反の債権譲渡と債務者の承諾
130 債務者の供託権
131 破産手続開始と債権者の供託請求権
132 譲渡制限特約と債権の差押え
133 譲渡制限特約と預貯金債権
134 将来債権譲渡担保の効力
135 将来債権の譲受人に対する譲渡制限の意思表示の対抗
136 債権譲渡の承諾と債務者の抗弁
137 債権譲渡と相殺
138 将来債権譲渡と相殺
139 譲渡制限特約付債権の譲渡と相殺
Ⅹ 債務引受
140 併存的債務引受の要件
141 併存的債務引受の効果
142 免責的債務引受の要件と効果
143 免責的債務引受と担保の移転
Ⅺ 契約上の地位の移転
144 契約上の地位の移転
Ⅻ 弁済
145 第三者の弁済
146 受領権者としての外観を有する者に対する弁済
147 代物弁済
148 特定物の現状による引渡
149 弁済すべき時間
150 預貯金口座への振込みによる弁済
151 弁済の充当
152 弁済の提供
153 自助売却斉藤芳朗
154 任意代位の要件
155 複数の保証人間における求償と代位
156 保証人・物上保証人と第三取得者の代位関係
157 第三取得者または物上保証人からの譲受人の地位
158 一部弁済による代位
159 担保保存義務
ⅩⅢ 相殺
160 相殺適状および相殺制限特約
161 生命・身体侵害による不法行為債権と相殺禁止
162 悪意による不法行為債権と相殺禁止
163 差押えと相殺平野裕之
164 差押え前の原因により差押え後に取得した債権と相殺
165 相殺充当
ⅩⅣ 更改
166 債務者の交替による更改
167 更改の効力と旧債務の帰趨
168 更改後の債務への担保の移転
契約
Ⅰ 契約の成立
169 承諾の延着
170 申込者の能力喪失
171 注文に応じた商品の発送
Ⅱ 第三者のためにする契約・
172 第三者のためにする契約
Ⅲ 定型約款
173 定型約款の定義
174 みなし合意の要件
175 みなし合意から除外される要件
176 内容の表示
177 変更・経過措置
Ⅳ 売買
178 買主の追完請求権
179 買主の代金減額請求権
180 買主の解除権の行使
181 買主の損害賠償請求権の行使
182 権利移転義務の不履行に関する売主の責任
183 買主の権利の期間制限、消滅時効との関係
184 競売における買受人の権利の特則
185 権利取得の不安を理由とする代金支払拒絶権
186 特定物売買における危険の移転
187 種類売買における危険の移転
188 買戻し
V 贈与
189 特定物贈与者の引渡義務等
190 不特定物贈与者の引渡義務等
Ⅵ 消費貸借
191 消費貸借の成立
192 消費貸借の予約
193 利息付消費貸借
194 貸主の引渡義務等
195 期限前弁済
Ⅶ 賃貸借
196 存続期間
197 対抗力ある不動産賃借権と賃貸人の地位の移転
198 賃貸不動産の譲渡と賃貸人の地位の留保
199 合意による賃貸人の地位の移転
200 不動産の賃借人による妨害排除請求権等
201 敷金返還請求権
202 敷金の充当
203 賃借物の一部滅失による賃料の減額・解除
204 転貸の効果
205 賃借人の原状回復義務
206 損害賠償請求権に関する期間制限
Ⅷ 使用貸借
207 使用貸借の諾成化
208 終了事由
Ⅸ 請負
209 仕事未完成の場合の割合的報酬
210 契約不適合の場合の請負人の責任
211 契約不適合の場合の注文者による解除
212 契約不適合の場合の注文者の権利の期間制限
213 注文者の破産による解除
X 委任
214 受任者の自己執行義務、復受任
215 受任者の報酬請求
216 任意解除と損害賠償
Ⅺ 雇用
217 労務提供の不能と報酬請求
218 期間の定めのある雇用の解除
219 期間の定めのない雇用の解約申入れ
Ⅻ 寄託
220 寄託の諾成化
221 寄託物に対する第三者の権利主張
222 混合寄託
223 消費寄託
ⅩⅢ 組合
224 契約総則の規定の不適用の
225 組合員の1人の意思表示の無効・取消し
226 組合債権者による権利行使可能性
227 組合員債権者による権利行使可能性
228 業務執行
229 組合代理
230 組合員の加入
231 組合員の脱退
232 解散事由
事項索引
判例索引
条文索引
凡例
1 本書は、232 の設例(Case)について、各設例を見開き2頁で、「旧法での処理はどうだったか」(【Before】)、「新法での処理はどうなるか」(【After】)の順序で解説を行っている。
2 法令は、2017年8月1日現在による。ただし、本書の解説 (【After)) においては、民法の一部を改正する法律」(平成 29年法律第44号)および「民法の一部を改正する法 律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成29年法律第45号)による改正 の施行日(一部の規定を除き、公布日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定 める日)の前ではあるが、改正を反映して解説した。
3 判例の引用については、大方の慣例に従った。引用中の[ ]は、項目担当執筆者 が補った注記である。判例集等を略語で引用する場合には、以下の例によるほか、慣例に従った。
民錄 大審院民事判決錄
民集 最高裁判所(大審院)民事判例集
集民 最高裁判所裁判集民事
高民集 高等裁判所民事判例集
裁時 裁判所時報
判時 判時判例時報
判タ 判例タイムズ
金判 金融・商事判例
金法 金融法務事情
新聞 法律新聞
4 法令の表記についての略語は、以下の例によるほか、慣例に従った。ただし、民法 典については、2017年8月1日現在の法令を、改正の前後を通じ変更されなかった条文を含めて「旧法」と表記し、改正法が反映された民法典を(変更されなかった条文を含めて)「新法」と表記した。
整備法 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律第45号)
民施 民法施行法
不登 不動產登記法
動産債権譲渡特 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律
消契 消費者契約法
特商 特定商取引に関する法律
借地借家 借地借家法
品確 住宅の品質確保の促進等に関する法律
自賠 自動車損害賠償保障法
商 商法
商旧 整備法(平成29年法律第45号)による改正前の商法
会社 会社法
民訴 民事訴訟法
非訟 非訟事件手続法
非訟旧 整備法(平成29年法律第45号)による改正前の非訟事件訴訟法
民執 民事執行法
民保 民事保全法
破產 破產法
5 以下の文献引用については、略称を用いた。
部会資料1~88-2 法制審議会民法(債權関係)部会資料1 88-2 主示(LC),
法務省のウェブサイトにて公開されている)
第1回~第99回会議議事録法制審議会民法(債権関係)部会第1回から第99回までの議事録(いずれも法務省のウェブサイトで公開されている)
基本方針 民法(債権法)改正検討委員会編「債権法改正の基本方針」別冊 NBL126号(商事法務・2009)
検討事項 商事法務編「民法(債權関係)改正に関する検討事項一法制審議会民法(債権関係)部会資料詳細版』(商事法務・2011)
中間試案 商事法務編「民法(債權関係))改正に関する中間試案(概要付)」別冊NBL 143号(商事法務・2013)
中間試案補足説明 商事法務編『民法(債権関係)改正に関する中間試案の補足説明』
(商事法務・2013)
注釈民法(1)~(26) 「注釈民法(1)~(26)」(有斐閣.1964 ~ 1987)
新版注釈民法(1)~(28) 「新版注釈民法(1)~(28)」(有斐閣·1988 ~ 2015)
潮見·概要 潮見佳男「民法(債權関係)の改正法案概要」(金融財政事情研究会2015) 我妻・債権総論 我妻栄『新訂債権総論,民法講義Ⅳ』(岩波書店,1964)
我妻・債権各論上・中一・中二 我妻栄『債権各論上巻,中巻一,中巻二 民法講義1~3』(岩波書店、1954・1957・1962)
目次 – 一問一答 民法(債権関係)改正 (一問一答シリーズ)
はしがき
民法のうち債権関係の分野について、明治29年(1896年)の同法の制定以来およそ120年ぶりに全般的な見直しを行うものである「民法の一部を改正する法律」(平成29年法律第44号)は、平成29年5月、第193回国会(平成29年常会)において、「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成29年法律第45号)とともに成立し、いずれも同年6月2日に公布された。この民法改正法と整備法は、ごく一部の例外を除いて、平成32年(2020年)4月1日から施行される。
この民法改正は、法制審議会への諮問がされた平成21年から8年ほど、それ以前の準備作業の段階から数えれば10年余を要する大プロジェクトとなり、その改正項目の分量や社会的な影響の大きさなどから見て、法務省民事局がこれまでに経験した法改正のなかでも最大級のものであったと考えられる。その検討の過程においては、本当に数多くの関係者、関係諸団体からのご支援・ご協力を賜った。改めて心から感謝を申し上げたい。
本書は、この民法改正法と整備法による多岐にわたる改正項目について、一問一答の形式で、改正の趣旨やその内容を簡潔に説明しようとするものである。その執筆は、編著者である筒井、村松のほか、法務省民事局において編著者とともに改正法の立案事務に関与した脇村真治、松尾博憲、谷地伸之、金洪周、前田芳人、吉田岳朗を中心に、後藤智志、菅澤純也が分担して行い、全体の調整は編著者が行った。
もとより、本書は、編著者らが個人の立場で執筆したものであり、意見にわたる部分は編著者らの個人的見解にとどまるものである。
なお、執筆に当たっては、関係法案の作成作業に従事した笹井朋昭、住友俊介、合田章子、髙橋玄、池田好英、忍岡真理恵、北島洋平の各氏や、法案の国会審議に従事した堀越健二、竹下慶、宇野直紀の各氏から、貴重な助言をいただいた。また、本書の刊行に当たっては、株式会社商事法務の岩佐智樹氏、下稲葉かすみ氏のご尽力を賜った。記して感謝の意を表したい。
平成30年2月
法務省大臣官房審議官 筒井健夫
法務省民事局参事官 村松秀樹
凡例
本書中、法令の条文等を引用する場合に用いた略語は、次のとおりです。
改正法 民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)
附則 改正法附則
整備法 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成29年法律第45号)
民法 改正法による改正のない民法の規定及び、改正に関係なく規定を示す場合
新法 改正法による改正後の民法(明治29年法律第89号)
旧法 改正法による改正前の民法
新(旧)民法施行法 整備法による改正後(前)の民法施行法(明治31年法律第11号)
新(旧)商法 整備法による改正後(前)の商法(明治32年法律第48号)
新(旧)手形法 整備法による改正後(前)の手形法(昭和7年法律第20号)
新(旧)小切手法 整備法による改正後(前)の小切手法(昭和8年法律第57号)
新(旧)農地法 整備法による改正後(前)の農地法(昭和27年法律第229号)
新(旧)民事執行法 整備法による改正後(前)の民事執行法(昭和54年法律第4号)
新(旧)破産法 整備法による改正後(前)の破産法(平成16年法律第75号)
新(旧)非訟事件手続法 整備法による改正後(前)の非訟事件手続法(平成23年法律第51号)
一問一答民法(債権関係)改正
もくじ
第1章 総論
Q1今回、民法(債権関係)の一部改正が行われたのはなぜか。
Q2今回の改正の要点は何か。
Q3改正法案の提出に至る経緯は、どのようなものか。
Q4改正法案の国会における審議の経過及び内容はどのようなものであったか。
第2章 民法総則
第1 意思能力
Q5意思能力を有しない者がした法律行為は無効とする旨を明文化した理由は、どのようなものか(新法第3条の2関係)。
第2 公序良俗
Q6公序良俗に反することによる法律行為の無効について、「事項を目的とする」との文言を削除した理由は、どのようなものか(新法第90条関係)。
第3 意思表示
Q7意思表示に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第93条~第98条の2関係)。
Q8心裡留保による意思表示に関しては、どのような改正をしているか(新法第93条関係)。
Q9錯誤による意思表示に関しては、どのような改正をしているか(新法第95条関係)。
Q10動機の錯誤を理由とする意思表示の取消しは、動機となった事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていなければすることができないとした理由は、どのようなものか(新法第95条関係)。
Q11詐欺による意思表示に関しては、どのような改正をしているか(新法96条関係)。
Q12意思表示の効力の発生に関しては、どのような改正をしているか(新法97条、第98条の2関係)
第4 代理
Q13代理に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第13条第1項第10号、第99条~第118条等関係)。
Q14制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為について、行為能力の制限の規定によって取り消すことができるとした理由は、どのようなものか(新法第102条、第13条第1項第10号等関係)。
Q15代理権の濫用に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第107条関係)。
Q16利益相反行為に関する規定を見直した理由は、どのようなものか(新法第108条関係)。
第5 無効及び取消し
Q17無効及び取消しに関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第119条~第126条関係)。
Q18無効な行為(取り消されて無効とみなされた行為を含む。)に基づいて債務が履行された場合の原状回復義務に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第121条の2関係)。
Q19追認は取消権を有することを知った後にしなければその効力を生じない旨を明文化した理由は、どのようなものか(新法第124条関係)。
第6 条件
Q20条件の成就により利益を受ける当事者が不正に条件を成就させた場合に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第130条第2項関係)。
第7 時効
Q21時効に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第144条~第174条、第724条、第724条の2関係)。
Q22消滅時効の援用をする「当事者」について、「保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む」との文言を加えた理由は、どのようなものか(新法第145条関係)。
Q23時効の中断及び停止を改め、時効の完成猶予及び更新とした理由は、どのようなものか(新法第147条~第161条関係)。
Q24時効の完成猶予事由及び更新事由は、具体的にはどのようなものか(新法第147条~第161条関係)。
Q25協議を行う旨の合意を時効の完成猶予事由とした理由は、どのようなものか。また、その内容は具体的にどのようなものか(新法第151条関係)。
Q26天災等による時効の停止(完成猶予)に関して、障害が消滅した時から2週間との期間を、障害が消滅した時から3箇月間とした理由は、どのようなものか(新法第161条関係)。
Q27旧法第170条から第174条までに定められた職業別の短期消滅時効の特例をと旧商法第522条に定められた商事消滅時効の特例を廃止した理由はどのようなものか(新法第170条~第174条関係)。
Q28債権の原則的な消滅時効期間について、「権利を行使することができる時」から10年という時効期間に加えて、「権利を行使することができることを知った時」から5年という時効期間を設けた理由は、どのようなものか(新法第166条第1項第1号関係)。
Q29主観的起算点からの消滅時効の進行開始の要件である「債権者が権利を行使することができることを知った」と認められるためには、どのような、認識が必要となるか。また、「権利を行使することができる」といえる状態でなくとも、主観的起算点からの消滅時効が進行することがあるのか(新法第166条第1項第1号関係)。
Q30定期金債権及び定期給付債権の消滅時効に関しては、どのような改正をしているか(新法第168条関係)。
Q31人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効の特例に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第167条、第724条の2関係)。
Q32旧法第724条後段の長期の権利消滅期間を消滅時効期間とした理由は、どのようなものか(新法第724条第2号関係)。
第3章債権総論
第1 債権の目的
Q33債権の目的に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第399条~第411条関係)。
Q34旧法第400条に規定する善管注意義務について「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる」との文言を加えた理由は、どのようなものか(新法第400条関係)。
Q35選択債権の特定の要件を見直した理由は、どのようなものか(新法第4条関係)。
第2 債務不履行の責任等
Q36債務不履行の責任等に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第412条~第422条の2関係)。
Q37履行不能に関する基本的な規定を新設した理由及びその内容は、どのようなものか(新法第412条の2第1項関係)。
Q38原始的不能の場合の損害賠償請求に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第412条の2第2項関係)。
Q39受領遅滞の効果に関しては、どのような改正をしているか(新法第413条、第413条の2第2項関係)。
Q 40債務不履行による損害賠償請求の要件に関する規定を見直した理由は、どのようなものか(新法第415条第1項関係)。
Q41債務の履行に代わる損害賠償に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第415条第2項関係)。
Q42特別の事情に基づく損害賠償請求の要件に関する規定を見直した理由は、どのようなものか(新法第416条第2項関係)。
第3 法定利率(中間利息控除を含む。)
Q43法定利率に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第404条、第417条の2、第419条、第722条第1項関係)。
Q44法定利率を年3%に引き下げた理由は、どのようなものか(新法第404条第2項関係)。
Q45法定利率について緩やかな変動制を採用した理由は、どのようなものか。また、その具体的な内容はどのようなものか(新法第404条関係)。
Q46法定利率の見直しの基準となる「基準割合」は、どのように定まるのか(新法第404条第5項関係)。
Q47利息の算定に用いる法定利率を「利息が生じた最初の時点における法定利率」とし、遅延損害金の算定に用いる法定利率を「債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率」とした理由は、どのようなものか(新法第404条第1項、第419条第1項関係)。
Q48将来の逸失利益等の損害賠償額の算定に当たって中間利息控除を行う際に、法定利率によりこれをすることにした理由は、どのようなものか(新法第417条の2、第722条第1項関係)。
Q49中間利息控除に用いる法定利率の基準時を損害賠償請求権が生じた時点とした理由は、どのようなものか(新法第417条の2、第722条関係)。
第4 債権者代位権
Q50債権者代位権に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第423条~第423条の7関係)。
Q51債権者代位権の要件等に関しては、どのような改正をしているか(新法第423条関係)。
Q52債権者代位権の行使方法や債務者の処分権限の帰趨等に関してはどのような改正をしているか(新法第423条の2~第423条の6関係)。
Q53登記・登録請求権の保全を目的とする債権者代位権に関する規定を新た理由は、どのようなものか(新法第423条の7関係)。
第5 詐害行為取消権
Q54詐害行為取消権に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第424条~第426条関係)。
Q55詐害行為取消権の基本的な要件に関しては、どのような改正をしているか(新法第424条関係)。
Q56詐害行為取消権の要件に関して、行為類型ごとの要件の特例を定めた理由は、どのようなものか。また、その内容はどのようなものか(新法第424条の2~第424条の4関係)。
Q57詐害行為の目的物を受益者から取得した者(転得者)に対して詐害行為取消請求をするためには、どのような要件が必要となるか(新法第424条の5関係)。
Q58詐害行為取消権の行使方法等に関しては、どのような改正をしているか(新法第424条の6第425条関係)。
Q59詐害行為取消権を行使した債権者が直接請求権に基づいて支払を受けた金銭の債務者に対する返還債務と債務者に対する自己の債権とを相殺することはできるか(新法第424条の9関係)。
Q60財産処分行為が取り消された場合には、受益者は、債務者に対し、反対給付の返還を請求することができるとした理由は、どのようなものか。また、転得者は、債務者に対し、反対給付の返還を請求することができるか(新広第425条の2、第425条の4第1号関係)。
Q61債務消滅行為が取り消された場合に、受益者又は転得者がその行為によって消滅していた受益者の債務者に対する債権を行使することができるとして、理由は、どのようなものか(新法第425条の3、第425条の4関係)。
Q62詐害行為取消権の期間の制限に関しては、どのような改正をしているか(新法第426条関係)。
第6 多数当事者の債権及び債務(保証債務を除く。)
Q63保証債務を除く多数当事者の債権及び債務に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第427条~第445条関係)。
Q64同一の債務の目的について数人の債務者がある場合における債務の分類をどのように見直したか。また、同一の債権の目的について数人の債権者がある場合における債権の分類をどのように見直したか(新法第427条、第428条、第430条、第432条、第436条関係)。
Q65連帯債権に関する規定を新設した理由は、どのようなものか。また、連帯債権に関する規律の内容はどのようなものか(新法第432条~第435条の2関係)。
Q66連帯債務に関しては、どのような改正をしているか(新法第438条~第445条関係)。
Q 67不可分債権・不可分債務に関しては、どのような改正をしているか(新法第428条~第430条関係)。
第7 保証
Q68保証に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第446条~第465条の10関係)。
Q69連帯保証人について生じた事由の主債務者に対する効力に関しては、どのような改正をしているか(新法第458条関係)。
Q70主債務の履行状況に関する情報の提供義務に関する規定を新設した理由はどのようなものか。また、その内容はどのようなものか(新法第458条の2関係)。
Q71主債務者の期限の利益喪失時における情報提供義務に関する規定を新設した理由は、どのようなものか。また、その内容はどのようなものか(新法第458条の3関係)。
Q72保証人が個人である根保証契約(個人根保証契約)一般について、極度額に関する規律を設けた理由は、どのようなものか(新法第465条の2関係)。
Q73貸金等根保証契約以外の個人根保証契約について、元本確定期日に関する規律を設けなかった理由は、どのようなものか(新法第465条の3関係)。
Q74個人根保証契約一般について、元本確定事由に関する規律を設けた理由は、どのようなものか。また、その内容はどのようなものか(新法第465条の4関係)。
Q75保証人が法人である根保証契約において極度額の定めがないときは、その法人が主債務者に対して取得する求償権を個人が保証する保証契約の効力が生じないとした理由は、どのようなものか(新法第465条の5期但部人が個人である事業のために負担した貸金等債務の関係)。
Q76保証人が個人である事業のために負担した貸金など債務について保証契約を締結する際に、公証人が保証人になろうとするものの保証石を確認する手続きを新設した理由はどのようなものか(新法第465条の6等関係)。
Q77保証意思確認のために作成される保証意思宣明公正証書の作成手続きはどのようなものか(新法第465条の6関係)。
Q78保証意思宣明公正証書を作成する際に、公証人は、保証人になろうとする者の保証意思をどのように確認するのか(新法第465条の6関係)。
Q79「事業のために負担した(する)貸金等債務」とは、どのようなものか。また、それに該当するか否かは、どのように判断するのか(新法第465条の6関係)。
Q80事業以外の使途のために貸付けがされ、保証意思宣明公正証書を作成せずに保証契約が締結された場合において、その貸し付けられた金員が事業に使われてしまったときは、当該保証契約の効力はどのようになるのか(新法第465条の6関係)。
Q81事業のために負担した貸金等債務についての保証契約の保証人が主債務者に対して取得する求償権に係る債務について個人が保証する場合にも、保証意思宣明公正証書の作成を要するとした理由は、どのようなものか(新法第465条の8関係)。
Q82保証人が個人であっても保証意思宣明公正証書の作成が不要であるのは、保証人が主債務者とどのような関係にある場合か(新法第465条の9関係)。
Q83「主債務者が法人である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者」について、保証意思宣明公正証書の作成が不要である理由は、どのようなものか。また、具体的に、どういった者がこれに該当するのか(新法第465条の9第1号関係)。
Q84保証意思宣明公正証書の作成が不要となる主債務者が個人である場合の主債務者と「共同して事業を行う」者とは、どのようなものか(新法第465条の9第3号関係)。
Q85主債務者が個人である場合の主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者について、保証意思宣明公正証書の作成が不要である理由は、どのようなものか。また、その具体的な要件はどのようなものか(新法第465条の9第3号関係)。
Q86主債務者が事業のために負担する債務についての保証を委託する際に自己の財産や収支の状況等に関する情報を提供しなければならないとした理由は、どのようなものか(新法第465条の10関係)。
第8 債権譲渡
Q87債権譲渡に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第466条~第469条関係)。
Q88譲渡制限特約の効力に関しては、どのような改正をしているか(新法第466条~第466条の5関係)。
Q89譲渡制限特約に関する規定の改正により、中小企業の資金調達は円滑なものとなるのか(新法第466条~第466条の5関係)。
Q90譲渡制限特約が付された金銭債権が譲渡されたときに、債務者が供託することができる旨の権利供託に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第466条の2関係)。
Q91譲渡制限特約が付された金銭債権が譲渡された後に、譲渡人について破産手続開始の決定があったときは、譲受人が債務者に供託させることができるとした理由は、どのようなものか(新法第466条の3関係)。
Q92譲渡制限特約が付された債権に対する強制執行をした差押債権者に対して、債務者が譲渡制限特約を理由に債務の履行を拒むことはできないなどとした理由は、どのようなものか(新法第466条の4関係)。
Q93預貯金債権に譲渡制限特約が付された場合に関する特則を新設した理由は、どのようなものか(新法第466条の5関係)。
Q94将来債権の譲渡が可能であることについて規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第466条の6第1項・第2項、第467条関係)。
Q95将来債権の譲渡がされた後に債務者と譲渡人との間で締結された譲渡制限特約の効力に関しては、どのような改正をしているか(新法第466条の6第3項関係)。
Q96異議をとどめない承諾の制度(旧法第468条第1項)を廃止した理由は、どのようなものか(新法第468条関係)。
Q97債権の譲渡における相殺権に関しては、どのような改正をしているか(新法第469条関係)。
Q98新法第469条第2項の「対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権」や「譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権についても、相殺を可能とした理由は、どのようなものか。また、具体的にどのようなものが想定されているのか(新法第469条第2項関係)
第9 債務引受
Q99債務引受に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第470条~第472条の4関係)。
Q100債務引受に関しては、どのような規定が設けられたのか(新法第470条~第472条の4関係)。
第10 弁済
Q101弁済に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第473条~第504条関係)。
Q102第三者の弁済に関しては、どのような改正をしているか(新法第474条関係)。
Q103弁済の充当に関しては、どのような改正をしているか(新法第488条~館491条関係)。
Q104弁済供託に関しては、どのような改正をしているか(新法第494条、第497条、第498条関係)。
Q105弁済による代位に関しては、どのような改正をしているか(新法第499条~第501条関係)。
Q106一部弁済による代位に関しては、どのような改正をしているか(新法第502条関係)。
Q107いわゆる担保保存義務に関しては、どのような改正をしているか(新法第504条関係)。
第11 相殺
Q108相殺に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第505条~第512条の2関係)。
Q109不法行為に基づく損害賠償債権を受働債権とする相殺の禁止の範囲に関しては、どのような改正をしているか(新法第509条関係)。
Q110差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止に関しては、どのような改正をしているか(新法第511条関係)。
Q111相殺の充当に関しては、どのような改正をしているか(新法第512条関係)。
第12 更改
Q112更改に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第513条~第518条関係)。
第13 有価証券
Q113有価証券に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第520条の2~第520条の20関係)。
第4章 債権各論(契約)
第1契約の成立
Q114契約の成立に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第521条~第532条関係)。
Q115契約自由の原則に関する規定を新設した理由は、どのようなものか。また、その内容はどのようなものか(新法第521条、第522条第2項関係)。
Q116対話者に対して承諾の期間を定めないでした契約の申込みに関する規定を設けた理由はどのようなものか。また、その内容はどのようなものか(新法第525条関係)。
Q117申込者が死亡等をした場合の意思表示の効力に関する規定を見直した理由は、どのようなものか(新法第526条関係)。
Q118隔地者間の契約についても到達主義によることとした理由は、どのようなものか(旧法第526条等関係)。
Q119懸賞広告に関しては、どのような改正をしているか(新法第529条~第530条関係)。
第2 契約の効力
Q120契約の効力に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第533条~第539条関係)。
Q121同時履行の抗弁について定めた旧法第533条本文に「債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。」との文言を加えた理由は、どのようなものか(新法第533条関係)。
Q122危険負担に関しては、どのような改正をしているか(新法第536条関係)。
Q123新法においては、雇用契約において、使用者の責めに帰すべき事由により労務の提供ができなくなった場合に、労働者が報酬債権の履行を請求することができるとの解釈は否定されるのか(新法第536条第2項関係)。
Q124第三者のためにする契約に関しては、どのような改正をしているか(新法第537条、第538条関係)。
第3 契約上の地位の移転
Q125契約上の地位の移転に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第539条の2関係)。
第4 契約の解除
Q126契約の解除に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第540条~第548条関係)。
Q127債務不履行について債務者に帰責事由がない場合にも債権者は契約の解除をすることができるとした理由は、どのようなものか(新法第541条~第543条関係)。
Q128催告解除の要件に関して、債務不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは契約の解除をすることができない旨の規定を設けた理由は、どのようなものか(新法第541条関係)。
Q129無催告解除の要件に関する規定を具体化しつつ整理した理由は、どのようなものか(新法第542条関係)。
第5 定型約款
Q130定型約款に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第548条の2~第548条の4関係)。
Q131定型約款に関して、どのような規定が設けられたのか(新法第548条の2~第548条の4関係)。
Q132「定型約款」の定義の内容は、どのようなものか(新法第548条の2関係)。
Q133「定型約款」に該当する具体例としては、どのようなものがあるか(新法第548条の2第1項関係)。
Q134事業者間取引で用いられている契約書のひな形は「定型約款」に該当するか(新法第548条の2第1項関係)。
Q135従来当事者間で「約款」と呼ばれていたが新法の「定型約款」の定義に含まれないこととされたものについては、どのようなルールが適用されることになるか(新法第548条の2第1項関係)。
Q136定型約款中の条項が契約の内容となるための要件は、どのようなものか(新法第548条の2第1項関係)。
Q137「相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって 第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす」旨の規定を設けた理由は、どのようなものか(新法第548条の2第2項関係)。
Q138新法第548条の2第2項において考慮要素として明示された「定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念」とは、どのようなものか(新法第548条の2第2項関係)。
Q139定型約款の内容の表示請求に関する規定の内容は、どのようなものか(法第548条の3関係)。
Q140定型約款の変更に関する規定の概要は、どのようなものか(新法第548条の4関係)。
Q141定型約款の変更の要件の内容は、具体的には、どのようなものか(新法第548条の4関係)。
Q142定型約款の変更について、不当条項規制の規定(新法第548条の2第2項)を適用しない旨の規定を置いた理由は、どのようなものか(新法第548条の4第4項関係)。
第6 贈与
Q143贈与に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第549条~第551条関係)。
Q144贈与者の担保責任に関しては、どのような改正をしているか(新法第551条関係)。
第7 売買
Q145売買に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第557条~第585条関係)。
Q146手付に関しては、どのような改正をしているか(新法第557条関係)。
Q147他人の権利の売買に関しては、どのような改正をしているか(新法第561条関係)。
Q148目的物が契約の内容に適合しない場合における買主の権利に関しては、どのような改正をしているか(新法第562条~第564条関係)。
Q149売買の目的物が契約の内容に適合しない場合に買主が有する履行の追完請求権に関する規定を新設した理由は、どのようなものか。また、その内容はどのようなものか(新法第562条関係)。
Q150目的物が契約の内容に適合しない場合における買主の代金減額請求権に関しては、どのような改正をしているか(新法第563条関係)。
Q151目的物が契約の内容に適合しない場合における損害賠償請求及び契約の解除に関してはどのような改正をしているか(新法第564条関係)
Q152買主に移転した権利が契約の内容に適合しない場合における買主の権利に関しては、どのような改正をしているか(新法第565条関係)
Q153買主の権利の期間制限に関しては、どのような改正をしているか(新法第566条関係)。
Q154目的物の滅失等についての危険の移転に関しては、どのような改正をしているか(新法第567条関係)。
Q155競売における担保責任に関しては、どのような改正をしているか(新法第568条関係)。
第8 消費貸借
Q156消費貸借に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第587条~第592条関係)。
Q157諾成的消費貸借に関しては、どのような改正をしているか(新法第587条の2関係)。Q158消費貸借における利息に関しては、どのような改正をしているか(新法第589条関係)。
Q159消費貸借における貸主の担保責任に関しては、どのような改正をしているか(新法第590条関係)。
Q160消費貸借の目的物の期限前の返還に関しては、どのような改正をしているか(新法第591条第2項・第3項関係)。
第9 使用貸借
Q161使用貸借に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第593条~第600条関係)。
Q162使用貸借を諾成契約とした理由は、どのようなものか(新法第593条、第593条の2関係)。
Q163使用貸借の担保責任に関しては、どのような改正をしているか(新法第596条関係)。
Q164借用物の返還時期及び使用貸借の終了に関しては、どのような改正をしているか(新法第597条、第598条関係)。
Q165使用貸借が終了したときの借主の収去義務及び原状回復義務に関しては、どのような改正をしているか(新法第599条関係)。
Q166貸主の損害賠償請求権に係る消滅時効の完成猶予に関しては、どのような改正をしているか(新法第600条第2項関係)。
第10 賃貸借
Q167賃貸借に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第601条~第622条の2関係)。
Q168賃貸借の存続期間の上限を伸長した理由は、どのようなものか(新法第604条関係)。
Q169賃貸借の対抗要件を備えた賃貸不動産が譲渡された場合における賃貸人たる地位に関しては、どのような改正をしているか(新法第605条の2関係)。
Q170賃貸借の対抗要件を備えていない賃貸不動産が譲渡された場合における不動産の賃貸人たる地位の移転に関しては、どのような改正をしているか(新法第605条の3関係)。Q171賃借人による修繕に関しては、どのような改正をしているか(新法第607条の2関係)。
Q172賃借物の一部滅失等による賃料の減額に関しては、どのような改正をしているか(新法第611条第1項関係)。
Q173賃借物の一部滅失等による契約の解除及び全部滅失等による契約の終了に関しては、どのような改正をしているか(新法第611条第2項、第616条の2関係)。
Q174賃貸借の終了時における賃借人の原状回復義務及び収去義務に関しては、どのような改正をしているか(新法第621条、第622条等関係)。
Q175賃貸借の敷金に関しては、どのような改正をしているか(新法第622条の2等関係)。
第11 雇用
Q176雇用に関して、改正をしているものには、どのようなものがあるか(新法第623条~第631条関係)。
Q177履行の割合に応じた報酬に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第624条の2関係)。
Q178期間の定めのある雇用において、5年を経過した後にすることができる契約の解除に関して、労働者が解除の予告をすべき時期を解除の3箇月前から2週間前に改めた理由は、どのようなものか(新法第626条関係)。
Q179期間の定めのない雇用における解約の申入れに関する規律を見直した理由は、どのようなものか(新法第627条関係)。
第12 請負
Q180請負に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第632条~第642条関係)。
Q181注文者が受ける利益の割合に応じた報酬に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第634条関係)。
Q182請負人に対する瑕疵修補請求及び損害賠償請求に関する規定を削除した理由は、どのようなものか(旧法第634条関係)。
Q183仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約目的を達成することができない場合の契約の解除に関する規定を削除した理由は、どのようなものか(旧法第635条関係)。
Q184仕事の目的物の種類又は品質に関する請負人の担保責任の制限に関しては、どのような改正をしているか(新法第636条関係)。
Q185仕事の目的物の種類又は品質に関する請負人の担保責任の期間制限に関しては、どのような改正をしているか(新法第637条関係)。
第13 委任
Q186委任に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第643条~第656条関係)。
Q187復受任者の選任等に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第644条の2関係)。
Q188受任者が既にした履行の割合に応じた報酬に関する規定を改めた理由は、どのようなものか(新法第648条第3項関係)。
Q189成果に対して報酬を支払う旨の合意がされた場合に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第648条の2関係)。
Q190「委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)をも目的とする委任を解除したとき」にも損害賠償をしなければならないとした理由は、どのようなものか(新法第651条関係)。
第14 寄託
Q191寄託に関して、改正をしている事項には、どのようなものがあるか(新法第657条~第666条関係)。
Q192寄託の成立要件に関しては、どのような改正をしているか(新法第657条、第657条の2関係)。
Q193受寄者が寄託物を第三者に保管させる場合の規律に関しては、どのような改正をしているか(新法第658条関係)。
Q194寄託物について女子物について権利を主張する第三者がある場合の規律に関しては、どのような改正をしているか(新法第660条関係)。
Q195寄託物の一部滅失又は損傷があった場合の寄託者の損害賠償請求権や受寄の費用償還請求権について、その行使期間の制限等に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第664条の2関係)。
Q196混合寄託に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第665条の2関係)。
Q197消費寄託に関しては、どのような改正をしているか(新法第666条関係)。
第15 組合
Q198組合に関して、改正している事項には、どのようなものがあるか(新法第667条~第688条関係)。
Q199組合契約の効力に関しては、どのような改正をしているか(新法第667条の2、第667条の3関係)。
Q200組合の業務の決定・執行と組合の代理に関しては、どのような改正をしているか(新法第670条、第670条の2関係)。
Q201組合の債権者及び組合員の債権者の権利行使に関しては、どのような改正をしているか(新法第675条、第677条関係)。
Q202脱退した組合員の責任等に関する規定を新設した理由は、どのようなものか(新法第680条の2関係)。
第5章 経過措置
Q203新法の施行期日はいつか(附則第1条関係)。
Q204新法の施行日前に締結された契約や、既に発生していた債権債務についても、新法が適用されるのか。
Q205新法の施行日前に締結された契約について、新法の施行日以後に契約の更新がされた場合には、新法が適用されるのか。
Q206消滅時効に関する経過措置はどのようなものか(附則第10条、第35条関係)。
Q207債権譲渡に関する経過措置はどのようなものか(附則第22条関係)。
Q208定型約款に関する経過措置はどのようなものか(附則第33条関係)。
事項索引
目次 – 民法判例百選II 債権 第8版 (別冊ジュリスト238号)
目次
はしがき
債権
I債権の目的
1種類債権の特定——制限種類債権の場合(最三小判昭和30・10・18潮見佳男
II債権の効力
2公務員に対する国の安全配慮義務(最三小判昭和50・2・25)吉政知広
3契約交渉破棄における責任(最三小判昭和59・9・18)池田清治
4契約締結にかかる説明義務違反(最二小判平成23・4・22)角田美穂子
5履行補助者の行為についての債務者の責任(大判昭和4・3・30)荻野奈緒
6賃貸人修繕義務不履行と賃借人の損害回避減少措置(最二小判平成21・1・19)田中洋
7民法416条2項の予見時期(大判大正7・8・27)難波譲治
8契約解除した場合の損害額算定時期(最二小判昭和28・12・18)坂口甲
9履行不能の場合の損害額算定時期(最一小判昭和47・4・20)久保宏之
10代償請求権(最二小判昭和41・12・23)田中宏治
Ⅲ責任財産の保全
11金銭債権について債権者代位権を行使できる範囲(最三小判昭和44・6・24)三枝健治12金銭債権を保全する債権者代位権と債務者の無資力要件(最一小判昭和50・3・6)工藤祐巌
13被害者による保険金請求権の代位行使(最三小判昭和49・11・29)小至庸平
14詐害行為取消権の性質(大連判明治44・3・24)沖野眞已
15特定物債権と詐害行為取消権(最大判昭和36・7・19)森田修
16特定物債権者の詐害行為取消しと自己に対する所有権移転登記請求(最一小判昭和53・10・5)早川眞一郎
17債権譲渡通知と詐害行為取消権(最二小判平成10・6・12)北居功
18詐害行為の一部取消しと価額償還(最三小判昭和63・7・19)片山直也
IV第三者との関係における債権の保護
19第三者の債権侵害と不法行為(大判大正4・3・10)新堂明子
V多数当事者の債権関係
20連帯債務者間の求償と通知(最二小判昭和57・12・17)平林美紀
21共同不法行為者の一人に対する債務免除の効力(最一小判平成10・9・10福田誠治
22解除による原状回復義務と保証人の責任(最大判昭和40・6・30) 杉本好央
23期間の定めのない継続的保証契約と保証人の解約権(最二小判昭和39・12・18) 平野裕之
24根保証における元本確定前の履行請求と随伴性(最二小判平成24・12・14) 齋藤由起
VI債権譲渡・債務引受
25譲渡禁止特約付債権の譲渡と債務者の事後承諾(最一小判平成9・6・5) 野澤正充
26将来発生する債権の譲渡(最三小判平成11・1・29) 下村信江
27債権譲渡における異議をとどめない承諾の効力(最二小判昭和42・10・27) 和田勝行
28債権譲渡と相殺(最一小判昭和50・12・8) 岩川隆嗣
29債権譲渡の対抗要件の構造(最一小判昭和49・3・7) 石田剛
30同順位の債権譲受人間における供託金還付請求権の帰属)(最三小判平成5・3・30) 藤井徳展
31重畳的債務引受(最三小判昭和41・12・20) 沖野眞已
VII債権の消滅
32建物賃借人の地代弁済と第三者弁済(最二小判昭和63・7・1)住田英穂
33指名債権の二重譲渡と民法478条(最二小判昭和61・4・11)本田純一
34預金担保貸付けと民法478条の類推適用(最一小判昭和59・2・23)野田和裕
35現金自動入出機による預金の払戻しと民法478条(最三小判平成15・4・8)河上正二
36弁済による代位(最三小判昭和59・5・29)森永淑子
37担保保存義務免除特約の効力(最二小判平成7・6・23)髙橋眞
38時効消滅した債権による相殺と相殺適状の要件(最一小判平成25・2・28)加毛明
39差押えと相殺(最大判昭和45・6・24)北居功
Ⅷ契約総則
40事情変更の原則の要件(最三小判平成9・7・1)小粥太郎
41契約上の地位の移転(最二小判昭和46・4・23)丸山絵美子
IX契約の解除
42付随的債務の不履行と解除(最三小判昭和36・11・21)渡辺達徳
43債務の不履行の軽微性と解除(最二小判昭和43・2・23)福本忍
44複合的契約における債務不履行と契約解除(最三小判平成8・11・12)鹿野菜穂子
45他人の権利の売買の解除と買主の使用利益の返還義務(最二小判昭和51・2・13)田中教雄
46約款一般の拘束力——約款による意思の推定(大判大正4・12・24)松田貴文
X契約各論
(1)贈与
47贈与と書面(最二小判昭和60・11・29)森山浩江
(2)売買
48手付の交付と履行に着手した当事者による解除(最大判昭和40・11・24)奥富晃
49買主が悪意の場合における他人の権利の売主の債務不履行責任(最一小判昭和41・9・8)高秀成
50売買後に規制された土壌汚染と契約不適合(最三小判平成22・6・1)桑岡和人
51買主による目的物の受領と契約不適合の担保責任(最二小判昭和36・12・15)吉政知広
52数量に関する契約不適合における損害賠償責任(最一小判昭和57・1・21)森田宏樹
53契約不適合の担保責任の期間制限と消滅時効(最三小判平成13・11・27)松井和彦
54建物の敷地の欠陥と敷地賃借権の契約不適合(最三小判平成3・4・2)中田邦博
55買主の引取義務(最一小判昭和46・12・16)平野裕之
(3)消費貸借
56制限超過利息を任意に支払った場合と貸金業法43条(最二小判平成18・1・13)小野秀誠
(4)賃貸借
57第三者による目的物の占有と妨害排除(最二小判昭和28・12・18)赤松秀岳
58他人名義の建物登記と借地権の対抗力(最大判昭和41・4・27)副田隆重
59賃貸人たる地位の主張(最三小判昭和49・3・19)岡本裕樹
60信頼関係破壊の法理(最二小判平成8・10・14)渡辺達徳
61正当事由と建物賃借人の事情(最一小判昭和58・1・20)武川幸嗣
62立退料の提供申出の時期(最三小判平成6・10・25)橋口祐介
63消費者契約である建物賃貸借契約における更新料条項の効力(最二小判平成23・7・15)大澤彩
64債務不履行による賃貸借契約の解除と承諾がある転貸借の帰趨(最三小判平成9・2・25)千葉恵美子
65賃借家屋明渡債務と敷金返還債務との同時履行(最一小判昭和49・9・2)髙篤英弘
66土地賃借権の移転と敷金の承継(最二小判昭和53・12・22)小林和子
67サブリースと賃料減額請求(最三小判平成15・10・21)内田貴
(5)請負
68注文者の責めによる仕事の完成不能と請負人の報酬請求権・利得償還義務(最三小判昭和52・2・22)米倉暢大
69請負契約における所有権の帰属(最三小判平成5・10・19)曽野裕夫
70瑕疵修補に代わる損害賠償請求権と報酬請求権との同時履行(最三小判平成9・2・14)森田修
(6) 委任
71受任者の利益のためにも締結された委任と解除(最二小判昭和56・1・19)一木孝之
(7)寄託
72誤振込金の返還請求と預金債権(最二小判平成8・4・26)岩原紳作
73預金債権の帰属(最二小判平成15・2・21)加毛明
74預金口座の取引経過についての金融機関の開示義務(最一小判平成21・1・22)瀬戸口祐基
(8)組合・和解
75組合財産の帰属(大判昭和11・2・25)金子敬明
76和解と錯誤(最一小判昭和33・6・14)曽野裕夫
XI不当利得
77運用利益の返還義務(最三小判昭和38・12・24)大久保邦彦
78不当に利得した代替物を処分した場合の返還義務(最一小判平成19・3・8)原恵美
79転用物訴権(最三小判平成7・9・19)松岡久和
80騙取金銭による弁済と不当利得(最一小判昭和49・9・26)平田健治
81第三者に交付された貸付金の返還(最三小判平成10・5・26)藤原正則
82所有物返還請求権と民法708条(最大判昭和45・10・21)水津太郎
XII不法行為
83過失の意義 大阪アルカリ事件(大判大正5・12・22)山本周平
84医療機関に要求される医療水準の判断 姫路日赤未熟児網膜症事件(最二小判平成7・6・9)手嶋豊
85建物の設計・施工者の責任(最二小判平成19・7・6)窪田充見
86通常有すべき安全性 イレッサ薬害訴訟(最三小判平成25・4・12)橋本佳幸
87因果関係の立証 東大病院ルンバール事件(最二小判昭和50・10・24)米村滋人
88生存の相当程度の可能性(最二小判平成12・9・22)石橋秀起
89景観利益 国立マンション事件(最一小判平成18・3・30)秋山靖浩
90意見ないし論評の表明と名誉毀損(最三小判平成9・9・9)和田真一
91名誉毀損による損害(最三小判平成9・5・27)久保野恵美子
92未成年者の不法行為と監督義務者の責任 サッカーボール事件(最一小判平成27・4・9)久保野恵美子
93認知症患者の起こした事故と家族の責任 JR東海事件(最三小判平成28・3・1)中原太郎
94取引先の外観信頼(最一小判昭和42・11・2)樫見由美子
95使用者から被用者への求償権の制限(最一小判昭和51・7・8)中原太郎
96共同不法行為の要件(大阪地判平成7・7・5)米村滋人
97世同不法行為と使用者責任の競合と求償(最二小判昭和63・7・1)大澤逸平
98民法416条と不法行為(最一小判昭和48・6・7)前田陽一
99企業損害(間接損害)(最二小判昭和43・11・15)吉田邦彦
100損害の意義 労働能力の喪失(最三小判昭和56・12・22)若林三奈
101事故の被害者が別の事故で死亡した場合の損害額の算定(最一小判平成8・4・25)樫見由美子
102年少女子の逸失利益と家事労働分の加算(最二小判昭和62・1・19)水野謙
103不法行為の被害者の相続人が遺族補償年金を受けた場合の損益相殺的調整(最大判平成27・3・4)山口斉昭
104後遺症と示談(最二小判昭和43・3・15)山城一真
105過失相殺の要件(最大判昭和39・6・24)橋本佳幸
106過失相殺と身体的特徴の料酌(最三小判平成8・10・29)窪田充見
107共同不法行為と過失相殺(最三小判平成13・3・13)大塚直
108民法724条の消滅時効の起算点(最二小判昭和48・11・16)建部雅
109民法724条後段の除斥期間の起算点(最三小判平成16・4・27)林誠司
110差止請求―国道43号線訴訟(最二小判平成7・7・7)根本尚徳
111請求権競合—免責約款(最一小判平成10・4・30)山本豊
文献略称
収載判例索引
事件記録符号
表紙・扉・本文レイアウト 河井宜行
民法判例百選Ⅰ 総則・物権[第8版]
総則
Ⅰ一般条項
1権利の濫用(1) 宇奈月温泉事件 大村敦志
2権利の濫用(2) 信玄公旗掛松事件 長野中武
3信義則 賃貸借契約の終了と転借人のへの対抗 佐藤光夫
Ⅱ人
4人格権 北方ジャーナル事件 山本敬三
5意思能力のない者の行為 河上正二
6後見人の追認拒絶 熊谷士郎
Ⅲ法人
7法人の目的の範囲 後藤元伸
8権利能力なき社団の成立要件 山田誠一
9権利能力なき社団の取引上の債務 西内康人
IV物
10一筆の土地の一部についての取引 秋山靖浩
11建築中の建物 田高寛貴
Ⅴ法律行為
12公序良俗違反(1)不倫な関係にある女性に対する包括遺贈 原田昌和
13公序良俗違反(2) 証券取引における損失保証契約 山本敬三
14公序良俗違反(3) 男女別定年制度 水野紀子
15暴利行為 武田直大
16取締法規違反の法律行為の効力 石川博康
17強行法規違反の法律行為の効力 大村敦志
18内心の意思の不一致 大中有信
19法律行為の解釈と慣習 上田誠一郎
20法律行為の解釈と任意規定 石川博康
21民法94条2項の類推適用 野々上敬介
22民法94条2項・110条の類推適用 佐久間毅
23詐欺における善意の第三者の登記の必要性 竹中悟人
24動機(法律行為の基礎とした事情)についての錯誤 山下純司
25意思表示の到達 滝沢昌彦
Ⅵ代理
26代理権の濫用 吉永一行
27白紙委任状と代理権授与表示 後藤巻則
28外形信頼と民法109条などの法理 東京地裁厚生部事件 野澤正充
29民法110条の基本代理権 事実行為 北居功
30民法110条の正当理由の判断 早川眞一郎
31代表理事の代表権の制限と民法110条 中原太郎
32代理権授与表示の範囲を超えてされた代理行為と表見代理 臼井豊
33消滅した代理権の範囲を超えてされた代理行為と表見代理 山下純司
34無権代理人の責任 難波譲治
35本人の無権代理人相続 前田陽一
36無権代理人の本人相続 後藤巻則
37無権利者を委託者とする販売委託 契約の所有者による追認の効果 岩藤美智子
VI無効および取消し
38他人の権利の処分と追認 佐久間毅
39未成年当時にした行為についての法定追認の成否 潮見佳男
VIII条件
40故意の条件成就 上野達也
IX時効
41時効援用の効果 松久三四彦
42時効の援用権者 森田宏樹
43時効完成後の債務承認 金山直樹
44消滅時効の起算点 じん肺罹患による損害賠償請求権 松本克美
45自己の物の時効取得 本田純一
46前主の無過失と10年の取得時効 松久三四彦
47賃借権の時効取得 大久保邦彦
48土地賃借権の時効取得と抵当不動産の買受人への対抗 阿部裕介
物権
I物権総則
(1)物権的請求権
49物権法定主義鷹の湯事件 松尾弘
50土地崩壊の危険と所有権に基づく危険防止請求 根本尚徳
51物権的請求権の相手方土地上の建物を譲渡後も登記名義を保有する者 横山美夏
(2)物権変動の時期
52物権変動の時期 横山美夏
(3)不動産物件変動
53特約によらない中間省略登記請求権 小粥太郎
54民法177条の物権変動の範囲 一般論 七戸克彦
55法律行為の取消しと登記 金子敬明
56解除と登記 鶴藤倫道
57時効取得と登記 村田健介
58不動産所有権の取得時効完成後に設定された抵当権と再度の取得時効の完成 松岡久和
59共同相続と登記 占部洋之
60民法177条の第三者の範囲(1)-背信的悪意者 石田剛
61民法177条の第三者の範囲(2)一背信的悪意者からの転得者 幡野弘樹
62民法177条の第三者不法占拠者 山野目章夫
63登記のない地役権と承役権の譲受人 村田大樹
(4)動産物権変動
64民法178条の引渡し一占有改定 石綿はる美
(5)明認方法
65明認方法 伊藤栄寿
Ⅱ占有権
66占有一法人の代表機関 山口敬介
67相続と民法185条にいう「新たな権原」 大場浩之
68占有改定・指図による占有移転と即時取得 大塚直
69民法194条に該当する善意占有者の使用収益権 笠井修
70占有の訴えに対する本権に基づく 笠井正俊
Ⅲ所有権
71分筆後の残余地の特定承継と袋地所有権の通行権 秋山靖浩
72建築途中の建物への第三者の工事と所有権の帰属 髙橋智也
73建物の付合—賃借人のした増築 水津太郎
74共有者相互間の明渡請求 片山直也
75共有者の一人による不実登記の抹消手続請求 七戸克彦
76共有物分割の方法―全面的価格賠償 鎌野邦樹
77金銭所有権 川地宏行
IV入会権
78入会団体による総有権確認請求権 山田誠一
V留置権
79留置権の対抗力 藤原正則
80民法295条2項の類推適用 古積健三郎
VI先取特権
81動産売買先取特権の物上代位(1)請負代金債権 直井義典
82動産売買先取特権の物上代位(2)一般債権者の差押え 道垣内弘人
VII質権
83債権質設定者の質権者に対する担保価値維持義務 藤澤治奈
VII抵当権
84抵当権の付従性 鳥山泰志
85抵当権の効力の及ぶ範囲(1)―従物 古積健三郎
86抵当権の効力の及ぶ範囲(2)―敷地賃借権 占部洋之
87抵当権の物上代位(1)——賃料債権 中山知己
88抵当権の物上代位(2) ——債権譲渡との優劣 今尾真
89抵当権に基づく妨害排除請求 田高寛貴
90抵当権に基づく動産の返還請求 青木則幸
91法定地上権(1)―1番抵当権設定時に土地と建物の所有者が異なっていた場合 松本恒雄
92法定地上権(2)―共同抵当建物の再築 道垣内弘人
93法定地上権(3)一土地・建物とも共有の場合 髙橋眞
94共同抵当における物上保証人所有不動産の後順位抵当権者の地位 池田雅則
95共同抵当権目的物が同一物上保証人に属する場合の後順位抵当権者の地位 清水恵介
IX譲渡担保
96譲渡担保の認定 小山泰史
97譲渡担保権者の清算義務 山野目章夫
98不動産譲渡担保の実行 鳥谷部茂
99集合動産の譲渡担保 池田雅則
100集合債権の譲渡担保 角紀代恵
X所有権留保
101動産留保所有権者に対する土地所有者の明渡し等の請求 和田勝行
民法判例百選Ⅲ 親族・相続[第2版]
親族
Ⅰ婚姻
1子に嫡出性を付与するための婚姻の効力 前田陽一
2本人の意識不明の間に受理された婚姻届の効力 滝沢昌彦
3婚姻の無効と追認 前田泰
4離婚により解消したのちの重婚の取消し 神谷遊
5女性の再婚禁止期間の合憲性 久保野恵美子
6夫婦同氏制の合憲性 蟻川恒正
7夫婦同居に関する審判の合憲性 菱田雄郷
8別居中の婚姻費用分担の義務とその程度 冷水登紀代
9夫婦相互の日常家事代理権と表見代理 窪田充見
10夫の所得と共有財産 犬伏由子
11夫と通じた者に対する妻の慰謝料請求権 窪田充見
II離婚
12生活保護の受給を継続するための方便としてなされた離婚届の効力 久保野恵美子
13協議離婚届書作成後の翻意と離婚届の効力 森山浩江
14離婚原因としての精神病 犬伏由子
15有責配偶者の離婚請求 高橋朋子
16推定される嫡出子の監護費用の分担請求と権利濫用 水野紀子
17離婚訴訟における財産分与と過去の婚姻費用分担の態様の斟酌 水野紀子
18財産分与と離婚慰謝料との関係 常岡史子
19離婚に伴う財産分与(金銭給付合意)と詐害行為取消しの範囲 森田修
20父母別居中の面会交流権 山口亮子
21面会交流の間接強制 高田昌宏
III婚姻予約・内縁
22婚約の成立 本沢巳代子
23婚姻外の男女関係(「パートナーシップ関係」)の解消と不法行為責任 山下純司
24内縁の法的性質・不当破棄 大島梨沙
25内縁の解消と財産分与 大村敦志
26遺族給付の重婚的内縁配偶者への帰属 嵩さやか
27近親婚にあたる内縁配偶者の遺族厚生年金受給資格 森山浩江
IV実子
28推定の及ばない嫡出子の範囲 木村敦子
29親子関係不存在確認請求と権利濫用 西希代子
30虚偽の嫡出子出生届等と認知の効力 木村敦子
31母の認知 石井美智子
32死後認知の相手方 高田裕成
33認知者による認知無効 水野紀子
34男性死亡後に保存精子を用いた人工生殖によって生まれた子の親子関係 小池泰
35外国における代理出産によって出生した子の出生届 早川眞一郎
36性同一性障害による性別変更と嫡出推定 渡邉泰彦
37認知者の死亡後における認知無効の訴え 畑瑞穂
V養子
38節税目的の養子縁組の成否 床谷文雄
39虚偽の嫡出子出生届と養子縁組の成否 本山敦
40他人の子を嫡出子として届出した者の代諾による養子縁組の効力 青竹美佳
41特別養子の要件 中川忠晃
42特別養子審判の準再審事由 中島弘雅
VI親権・後見・扶養
43親の命名権——悪魔ちゃん事件 河上正二
44幼児引渡請求の性質 山口亮子
45人身保護法による子の引渡請求と拘束の顕著な違法性 棚村政行
46連帯保証等と利益相反行為 角紀代恵
47遺産分割と利益相反行為 合田篤子
48親権者の一方に利益相反関係ある場合における代理方法 佐久間毅
49物上保証行為と親権者の法定代理権濫用 石綿はる美
50父母による養育費支払の合意と子からの扶養料請求 中川直子
51過去の扶養料の求償 常岡史子
相続
Ⅰ 相続人
52遺言書の破棄・隠匿行為と相続欠格 石川博康
53廃除原因としての「重大な侮辱」 川淳一
54生存配偶者の姻族関係終了と祭祀承継 許末恵
55特別縁故者への遺産分与対象としての共有持分権 山田誠一
56相続財産法人の法的地位と被相続人からの物権取得者との関係 田高寛貴
II相続の効力
57嫡出でない子の法定相続分 幡野弘樹
58「遺産確認の訴え」の適否 山本克己
59共同相続人間における相続回復請求権 副田隆重
60慰謝料請求権の相続性 米村滋人
61生命保険金請求権の相続性 水野貴浩
62連帯債務の相続 福田誠治
63遺産たる金銭と遺産分割前の相続人の権利 道垣内弘人
64遺産中の不動産の賃料債権の帰属 尾島茂樹
65金銭債権の共同相続 宮本誠子
66預貯金債権の共同相続 白石大
67株式等の共同相続 田中亘
68遺産中の特定財産の持分権の譲受人による分割請求 小粥太郎
69遺産分割協議と詐害行為取消権 佐藤岩昭
70遺産分割後の負担不履行を理由とする解除 沖野眞已
71遺産たる建物の相続開始後の使用関係 髙橋眞
72遺産分割と登記 作内良平
73相続放棄と登記 山本敬三
74遺贈と登記 山野目章夫
75「相続させる」旨の遺言と登記 水野謙
III相続の承認と放棄
76民法915条1項の「自己のために相続の開始があったことを知った時」の意義 小賀野晶一
77再転相続人の相続放棄 本山敦
78限定承認をした相続人が死因贈与による不動産取得を相続債権者に対抗できるか 武川幸嗣
IV遺言
79自筆証書遺言の方式―押印 櫛橋明香
80カーボン複写による自筆証書遺言と自書の要件 池田清治
81公正証書遺言の方式 羽生香織
82死亡危急者遺言の方式 山本顯治
83共同遺言 石畝剛士
84遺言の解釈 浦野由紀子
85受遺者の選定を遺言執行者に委託した遺言の効力 大塚智見
86負担付死因贈与の受贈者による贈与者生前の負担履行と贈与撤回の可否 鹿野菜穂子
87「相続させる」旨の遺言の解釈 水野謙
88「相続させる」旨の遺言と債務 白須真理子
89「相続させる」旨の遺言ある場合の遺言執行者の職務権限 平野秀文
90遺言執行者がある場合の相続人の遺産処分 田中宏治
V遺留分
91相続債務がある場合の遺留分侵害額の算定方法 松川正毅
92遺留分権利者の減殺請求権の性質 西希代子
93遺留分減殺請求権を債権者代位権の目的とすることの可否 幡野弘樹
94特別受益者への贈与と遺留分減殺の対象 浦野由紀子
95遺留分減殺請求の目的物の価額算定の基準時 内田貴
96相続人に対する遺贈と民法1034条の目的の価額 横山美夏
97相続分指定・特別受益と遺留分減殺 床谷文雄
98減殺の順序——死因贈与の取扱い 足立公志朗
99価額弁償―目的財産の各個につき許される 石田剛
100価額弁償請求権の取得時期 小池泰
101遺留分減殺の目的物についての取得時効の援用と減殺請求 森田宏樹
はしがき
民法判例百選I・II「第7版」,同III[初版]は2015年の新春に刊行されたので、まだ3年ほどが経過したにすぎない。しかしこの間に,2015年3月には民法(債権関係)改正案が国会に提出され、2017年5月に可決成立、2020年4月には施行されることとなった。また、民法(相続関係)改正についても、約3年に及んだ法制審議会での審議を経て、2018年2月には要綱が取りまとめられた。さらには、いくつかの重要な判例も現れている。民法を学習する方々の便宜を考えるならば,本百選を改版する緊急の必要が生じていると考えられる。
今回の改版にあたっては、中田裕康教授に代わって森田宏樹が編集に加わったが、6名が協働でIからIIIまでを編集するという第6版以降の方針に変わりはない。しかし、出版にあたっては,これも第6版以降の表示方法を踏襲して、各巻の編者を、Ⅰは潮見と道垣内、IIは窪田と森田、IIIは水野と大村としている。
全体の編集方針は前の版と同様,次のとおりである。全3巻で約300件の判例を選択し、各巻に割り当てる。重複はしないようにする。複数の領域にわたるテーマの判例は、判例としての意義がより大きい領域の巻に配置する。ただし、各巻の構成のバランスも考慮する。その結果、たとえば、相続と登記に関する判例は、1件をⅠに、4件をIIIに配置することとなった。
より具体的な編集方針の基本としたのは,民法判例百選I・IIの初版以来の方針、すなわち,「民法典の欠缺を埋める判決や、民法典を実質的に修正している判決を取り上げることによって、条文だけからは捉えることの不可能であるかまたは困難であるところの民法の現実の姿を示すこと」を中心としつつ、「有名な判決は,ある程度取り上げること」である。選択にあたって直面した諸問題(判例の展開のある場合にどの段階の判決を採るか、特別法との関係など)への対応については、I・II[第6版]の「序」に記載した方針を踏襲することにしたが、今回の編集にあたって特に留意したのは、前述の通り、民法(債権関係)改正に対応することであった。
改正法はいまだ施行されていないので、収録される判決はすべて(現時点では現行法である)改正前民法の規定を前提としたものであるが、そのうちのかなりの数の判決が改正の影響を受けるものと思われる。改正によって削除あるいは大幅に変更された条文に関する判決も一定数は存在する。今回の収録判例の選択にあたっては、改正によって従前ほどの価値を持たなくなると考えられる判決も、いくつかの例外を除いて削除していない。
このような判決も含めて,従前の判例が法改正によってどのような影響を受けるのかを理解すること、すなわちその位置づけや意義についてどのような変更が生じるのか、あるいは,判例の中で維持される部分はどこであり、維持されない部分はどこなのかといったことを具体的に把握することが、民法を学習するにあたって重要であろうと考えたからである。また、民法(相続関係)改正の動向についても、中間試案から要綱に至る過程で生じた変化も含めて、必要な範囲で考慮に入れるように努めた。
第7版と比較しての本巻(II)の変更は、次のとおりである。
(1)事項は同じかほぼ同じだが、第7版後の新しい判決または別の判決に換えたもの―4件(13(旧14),18(旧19),65(旧61),92(旧89))
(2)新しい事項に関する判決で、第7版当時出ていたものを入れたもの―7件(28,43,46,49,62,68,74)
(3)新しい事項に関する判決で,第7版後に出たものを入れたもの―2件(93,103)
(4)第7版に収録されていたが、本書には収録しなかったもの―4件(旧30,旧36,旧41,旧56)。
結果、第7版より5件増の111件を収録した。判例の選択については、様々な考え方がありうるところであり、読者からの忌憚のないご批判をいただければ幸いである。
最後に、ご多忙のなか、流動的な法状況を考慮に入れて、充実した原稿をお寄せくださった執筆者各位に対し、心からの感謝の意を表したい。重要な法改正に対応する形でアップデイトされた本書が、民法の判例を学ぼうとされる方々にとって引き続き役立つものとなることを期待している。
2018年2月
民法判例百選編者一同