2021年版 司法試験&予備試験 完全整理択一六法 刑法【逐条型テキスト】<条文・判例の整理から過去出題情報まで> (司法試験&予備試験対策シリーズ)




【司法試験のおすすめ参考書・テキスト(独学勉強法/対策)】も確認する

はしがき

★令和2年の短答式試験<刑法>の分析
司法試験では、総論分野から10問、各論分野から10問出題されました。

総論分野では、例年どおり、構成要件、違法性、責任、共犯、刑罰論等の分野から満遍なく出題され、各論分野では、個人的法益に関する罪が7問、社会的法益に関する罪が2問、国家的法益に関する罪が1問出題されました。予備試験では、刑法から13問出題されました。そのうち、予備試験オリジナル問題が3問出題され、結果的加重犯、住居侵入罪、盗品等に関する罪に関する理解が問われました。

★令和2年の短答式試験の結果を踏まえて
今年の司法試験短答式試験では、採点対象者3,664人中、合格者(短答式試験の各科目において、満点の40%[憲法20点、民法30点、刑法20点]以上の成績を得た者のうち、各科目の合計得点が93点以上の成績を得たもの)は2,793人となっており、昨年の短答式試験合格者数3,287人を494人下回る一方、採点対象者の合格率は約76.2%であり、昨年度の合格率約74.2%を約2.0%上回る形となりました。昨年に引き続き、今年も概ね4人に3人が合格するという結果となり、平成29年の合格率66.4%と比較すると、大幅に合格率が上昇しています。

今年の結果において最も注目されるのは、「合格点」です。今年の「合格点」は、司法試験短答式試験が憲法・民法・刑法の3科目となった平成27年から見て、最も低い「93点以上」となりました(なお、合格者の平均点は118.1点、全体の平均点は109.1点)。平成29年から令和元年まで「合格点」は「108点以上」でしたが、一気に15点も下がる形となりました。

短答式試験では、基本的事項を確実におさえておけば十分合格することができますが、「確実」のレベルが相当高いことに注意が必要です。とくに、平成27年から出題科目が憲法・民法・刑法の3科目に絞られていますが、それに伴い、1問あたりの点数割合が増加していますので、依然として短答式試験の対策が重要となるでしょう。

次に、今年の予備試験短答式試験では、採点対象者10,550人中、合格者(270点満点で各科目の合計得点が156点以上)は2,529人となっており、昨年の短答式試験合格者数2,696人を167人下回りました(なお、予備試験短答式試験の採点対象者数は、毎年微増しながら推移していましたが、今年は昨年の採点対象者数11,682人を1,132人下回る結果となり、大幅に減少する形となりました。)。合格率は約23.9%であり、昨年の合格率約23.0%を約0.9%上回る形となりました。

今年の「合格点」は「156点以上」と発表されています(なお、合格者の平均点は173.7点、全体の平均点は128.8点)。平成29年・平成30年はともに「160点以上」、昨年は「162点以上」と2点上昇した形となりましたが、今年は6点も下がりました。合格点が「156点以上」という数字は、受験者数が1万人を突破し、短答式試験合格者も2,000人を超えるようになった平成26年から見て、最も低い数字です。

次に、「合格率」を見ていきますと、今年は23.9%となっており、これは例年通りであるとの評価が妥当と思われます。司法試験短答式試験の今年の合格率が76.2%(採点対象者:合格者数=3,664:2,793)であったことと比べると、予備試験短答式試験は明らかに「落とすための試験」という意味合いが強い試験だといえます。

また、受験者数・採点対象者数は、平成27年から微増傾向にあり、合格者数も同様に微増傾向にありましたが、今年は一転して、いずれも減少する形となりました。とくに注目すべきは「受験率」で、平成27年から継続して80%以上を記録していた「受験率」が、今年は「69.3%」を記録し、10%以上も下落しました。これは、明らかにコロナ禍による影響と考えられるため、来年以降も同様の「受験率」が維持されるかは予想がつきにくいところですが、来年以降も、2,500~2,700人前後の合格者数となることが予想されます。

予備試験短答式試験では、法律基本科目だけでなく、一般教養科目も出題されます。点数が安定し難い一般教養科目での落ち込みをカバーするため、法律基本科目については苦手科目を作らないよう、安定的な点数を確保する対策が必要となります。このような現状の中、短答式試験を乗り切り、総合評価において高得点をマークするためには、いかに短答式試験対策を効率よく行うかが鍵となります。そのため、要領よく知識を整理し、記憶の定着を図ることが至上命題となります。

★必要十分な知識・判例を掲載
刑法の出題の多くは、具体的事例における学説からの帰結・あてはめや判例の立場からの結論を問うものです。そのため、条文や判例、主要な学説を正確に理解し、適切にあてはめて結論を導く力が試されます。

このような問題に対応するため、本文中に具体的事例を多く盛り込み、できるだけ表の形でまとめ、複数の事案の違いが意識できるように工夫しています。盛り込んだ事例は、過去の司法試験で実際に出題されたものをベースにしており、狙われやすい具体例を効果的に学習できるようになっています。また、重要論点における学説の対立・あてはめについても図表にまとめ、比較しながら知識を整理できるように工夫しています。さらに、判例に関する知識は特に重要ですので、百選掲載判例及び重判掲載判例を多数ピックアップし、判旨を紹介しています。

★司法試験短答式試験、予備試験短答式試験の過去問情報を網羅
本書では、司法試験・予備試験の短答式試験において、共通問題で問われた知識に〈共マーク、予備試験単独で問われた知識に〈予マーク、司法試験単独で問われた知識に〈司マークを付しています。複数のマークが付されている箇所は、各短答式試験で繰り返し問われている知識であるため、より重要性が高いといえます。

★最新判例インターネットフォロー
短答式試験合格のためには、最新判例を常に意識しておくことが必要です。そこで、LECでは、最新判例の情報を確実に収集できるように、本書をご購入の皆様に、インターネットで随時、最新判例情報をご提供させていただきます。

2020年10月吉日
株式会社東京リーガルマインド
LEC総合研究所司法試験部

東京リーガルマインド LEC総合研究所 司法試験部 (著, 編集)
東京リーガルマインド; 第22版 (2020/11/26)、出典:出版社HP

司法試験・予備試験受験生の皆様へ

LEC司法試験対策総合統括プロデューサー
反町雄彦 LEC専任講師・弁護士

◆競争激化の短答式試験
短答式試験は、予備試験においては論文式試験を受験するための第一関門として、また、司法試験においては論文式試験を採点してもらう前提条件として、重要な意味を有しています。いずれの試験においても、合格を確実に勝ち取るためには、短答式試験で高得点をマークすることが重要です。とりわけ、司法試験の短答式試験は、科目が憲法・民法・刑法の3科目に絞られたことにより、益々競争が激化することが予想されます。これまで以上に、短答式試験対策の重要性が増してくるといえるでしょう。

◆短答式試験対策のポイント
司法試験における短答式試験は、試験最終日に実施されます。論文式試験により心身ともに疲労している中、短答式試験で高得点をマークするには、出題可能性の高い分野、自身が弱点としている分野の知識を、短時間で総復習できる教材の利用が不可欠です。また、予備試験における短答式試験は、一般教養科目と法律基本科目(憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法)から出題されます。広範囲にわたって正確な知識が要求されるため、効率的な学習が不可欠となります。本書は、短時間で効率的に知識を整理・確認することができる最良の教材として、多くの受験生から好評を得ています。

◆短答式試験の知識は論文式試験の前提
司法試験・予備試験の短答式試験では、判例・条文の知識を問う問題を中心に、幅広い論点から出題がされています。論文式試験においても問われうる重要論点も多数含まれています。そのため、短答式試験の対策が論文式試験の対策にもなるといえます。先ほど述べましたように、司法試験短答式試験の科目は憲法・民法・刑法に絞られました。しかし、それ以外の科目も論文式試験では条文・判例知識が要求されます。短答式試験過去問を踏まえて解説した本書を活用し、重要論点をしっかり学んでおけば、正確な知識を効率良く答案に表現することができるようになるため、解答時間の短縮につながることは間違いありません。司法試験合格が最終目標である以上、予備試験受験生も、司法試験の短答式試験・論文式試験の対策をしていくことが重要です。短答式試験対策と同時に、重要論点を学習し、司法試験を見据えた学習をしていくことが肝要でしょう。

◆苦手科目の克服が肝
司法試験短答式試験では、短答式試験合格点(令和2年においては憲法・民法・刑法の合計得点が93点以上)を確保していても、1科目でも基準点(各科目の満点の40%点)を下回る科目があれば不合格となります。本年では、憲法で47人、民法で435人、刑法で376人もの受験生が基準点に達しませんでした。し本年の結果を踏まえると、基準点未満で不合格となるリスクは到底見過ごすことができません。試験本番が近づくにつれ、特定科目に集中して勉強時間を確保することが難しくなります。苦手科目は年内に学習し、苦手意識を克服、あわよくば得意科目にしておくことが必要です。

◆本書の特長と活用方法
完全整理択一六法は、一通り法律を勉強し終わった方を対象とした教材です。本書は、司法試験・予備試験の短答式試験における出題可能性の高い知識を、逐条形式で網羅的に整理しています。最新判例を紹介する際にも、できる限りコンパクトにして掲載しています。知識整理のためには、核心部分を押さえることが重要だからです。本書の活用方法としては、短答式試験の過去問を解いた上で、間違えてしまった問題について確認し、解答に必要な知識及び関連知識を押さえていくという方法が効果的です。また、弱点となっている箇所に印をつけておき、繰り返し見直すようにすると、復習が効率よく進み、知識の定着を図ることができます。

このように、受験生の皆様が手を加えて、自分なりの「完択」を作り上げていくことで、更なるメリハリ付けが可能となります。ぜひ、有効に活用してください。司法試験・予備試験は困難な試験です。しかし、継続を旨とし、粘り強く学習を続ければ、必ず突破することができる試験です。

皆様が本書を100%活用して、試験合格を勝ち取られますよう、心よりお祈り申し上げます。

東京リーガルマインド LEC総合研究所 司法試験部 (著, 編集)
東京リーガルマインド; 第22版 (2020/11/26)、出典:出版社HP

CONTENTS

はしがき
司法試験・予備試験受験生の皆様へ
本書の効果的利用法
最新判例インターネットフォロー

●総論
第1部 体系編
第1章 犯罪論総論
1犯罪論の体系
2構成要件

第2章 故意犯の構造
1基本的構成要件
1-1実行行為
1-1-1実行行為総説
1-1-2不作為犯
1-1-3間接正犯
1-1-4原因において自由な行為
1-1-5実行の着手

1-2因果関係
1-2-1因果関係総説
1-2-2条件関係
1-2-3因果関係論

1-3故意
1-3-1故意総説
1-3-2錯誤
1-3-3故意以外の主観的構成要件要素

2違法性
2-1違法性の概念
2-1-1違法性の本質
2-1-2違法性の要素
2-1-3可罰的違法性

2-2違法性阻却の一般原理

2-3一般的正当行為

2-4緊急行為
2-4-1正当防衛
2-4-2緊急避難
2-4-3自救行為
2-4-4義務の衝突

3責任
3-1責任総説
3-2責任能力
3-3責任故意
3-4期待可能性

第3章 過失犯の構造
1過失犯総説
2過失犯の構造
3過失犯の成立要件
4過失の競合

第4章 修正された構成要件
1犯罪遂行の発展段階
1-1未遂犯
1-1-1未遂犯総説
1-1-2狭義の未遂犯(障害未遂)
1-1-3中止犯(中止未遂)

1-2不能犯

1-3予備・陰謀

2共犯
2-1共犯総説
2-1-1共犯の意義と種類
2-1-2共犯の本質
2-1-3共犯の従属性

2-2共同正犯
2-2-1共同正犯総説
2-2-2共同正犯の成立要件
2-2-3共同正犯の成否に関する問題の具体的検討

2-3狭義の共犯
2-3-1教唆犯
2-3-2従犯

2-4共犯論の諸問題
2-4-1共犯と錯誤
2-4-2共犯の離脱・中止
2-4-3共犯と身分
2-4-4予備と共犯
2-4-5不作為犯と共犯

第2部 知識編
●序論
第1章 通則(1条~8条)
第2章 刑(9条~21条)
第3章 期間計算(22条~24条)
第4章 刑の執行猶予(25条~27条の7)
第5章 仮釈放(28条~30条)
第6章 刑の時効及び刑の消滅(31条~34条の2)
第7章 犯罪の不成立及び刑の減免(35条~42条)
第8章 未遂罪(43条~44条)
第9章 併合罪(45条~55条)
第10章 累犯(56条~59条)
第11章 共犯(60条~65条)
第12章 酌量減軽(66条~67条)
第13章 加重減軽の方法(68条~72条)

●各論
第1章 皇室に対する罪(73条~76条)削除
第2章 内乱に関する罪(77条~80条)
第3章 外患に関する罪(81条~89条)
第4章 国交に関する罪(90条~94条)
第5章 公務の執行を妨害する罪(95条~96条の6)
第6章 逃走の罪(97条~102条)
第7章 犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪(103条~105条の2)
第8章 騒乱の罪(106条~107条)
第9章 放火及び失火の罪(108条~118条)
第10章 出水及び水利に関する罪(119条~123条)
第11章 往来を妨害する罪(124条~129条)
第12章 住居を侵す罪(130条~132条)
第13章 秘密を侵す罪(133条~135条)
第14章 あへん煙に関する罪(136条~141条)
第15章 飲料水に関する罪(142条~147条)
第16章 通貨偽造の罪(148条~153条)
第17章 文書偽造の罪(154条~161条の2)
第18章 有価証券偽造の罪(162条~163条)
第18章の2 支払用カード電磁的記録に関する罪(163条の2~163条の5)
第19章 印章偽造の罪(164条~168条)
第19章の2 不正指令電磁的記録に関する罪(168条の2~168条の3)
第20章 偽証の罪(169条~171条)
第21章 虚偽告訴の罪(172条~173条)
第22章 わいせつ、強制性交等及び重婚の罪(174条~184条)
第23章 賭博及び富くじに関する罪(185条~187条)
第24章 礼拝所及び墳墓に関する罪(188条~192条)
第25章 汚職の罪(193条~198条)
第26章 殺人の罪(199条~203条)
第27章 傷害の罪(204条~208条の2)
第28章 過失傷害の罪(209条~211条)
第29章 堕胎の罪(212条~216条)
第30章 遺棄の罪(217条~219条)
第31章 逮捕及び監禁の罪(220条~221条)
第32章 脅迫の罪(222条~223条)
第33章 略取、誘拐及び人身売買の罪(224条~229条)
第34章 名誉に対する罪(230条~232条)
第35章 信用及び業務に対する罪(233条~234条の2)
第36章 窃盗及び強盗の罪(235条~245条)
第37章 詐欺及び恐喝の罪(246条~251条)
第38章 横領の罪(252条~255条)
第39章 盗品等に関する罪(256条~257条)
第40章 毀棄及び隠匿の罪(258条~264条)

東京リーガルマインド LEC総合研究所 司法試験部 (著, 編集)
東京リーガルマインド; 第22版 (2020/11/26)、出典:出版社HP