すらすら減価償却




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はじめに

「減価償却はわかりにくい」という声をよく聞きます。減価償却がわかりにくい理由は2つあると考えられます。

1番目は、減価償却制度――特に、税務上の減価償却制度―が複雑なものになっていることです。減価償却の実務は、税務実務を中心に動いています。ところが、度重なる税制改正により相当複雑なものになってしまったのです。加えて、減価償却には税制上の様々な特例措置があります。この結果、初めて減価償却実務に携わる方にとって、減価償却は「複雑怪奇な世界」となってしまうようです。

2番目は減価償却費の性格に原因があります。会社で発生する費用の大半は、支出とほぼ同時に発生します。仮にズレがあったとしても、せいぜい数ヶ月程度と考えられます。ところが、減価償却費は、支出(固定資産支出)と費用(減価償却費)のタイミングが数年、あるいは場合によっては数十年単位で違ってきます。しかも、固定資産の投資額は大きいので、支出と費用の差額も大きくなります。この結果、「損益計算と資金収支計算の関係」がわかりにくくなっているのです。これが減価償却をわかりにくいものにしている2番目の理由です。

本書は、理解しにくいといわれる減価償却の本質を無理なく理解していただくため、以下の点に配慮しました。
・減価償却や会計・税務の基礎知識がない方でも読めるように、第1章を導入の章として設けました。
・数値例を極力単純化し、計算過程も可能な限り示すことで、(電卓等を使わなくとも)理解が進むようにしました。
・図表を多く用いることで、直感的な理解ができるように配慮しました。

前述のとおり、減価償却実務は税務実務が中心なので、本書の頁数も第2章(税務編)が最も多くなっています。しかし、会計面や経営面から見た減価償却も重要です。

第3章では、会計特有の減価償却の考え方について説明しています。主に大企業向けの話題になりますが、有価証券報告書などに書かれている減価償却の意味を理解するヒントになると思います。第4章は、減価償却と経営の関係に関する話題です。税務や会計とは一味違う世界から、減価償却の意味を見ていきたいと思います。なお、第4章については、(第2章と第3章を読まなくても)単独で理解できるように記述しています。

本書では様々な用語や概念が出てきますが、細かい用語などは気にせずに、まずは減価償却の全体像を把握してみてください。その後で、興味のあるところをじっくり読んでいただければ、減価償却に対する理解が深まると思います。

なお、本書は、平成26年1月1日現在の法令等に基づいて解説しています。

平成26年1月
公認会計士・税理士
清水久員

清水久員 (著)
出版社 : 中央経済社 (2014/2/26) 、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 減価償却を理解するための「準備」
1決算書と減価償却の関係
①貸借対照表とは?
②損益計算書とは?

2固定資産と減価償却をイメージしょう!
①減価償却とは徐々に費用にすること
②簡単な設例で減価償却をイメージしよう!
③減価償却累計額と未償却残高の関係とは?
④決算書にどのように表示されるか?

3減価償却の基礎を押さえよう
①固定資産の価値が下がる理由とは?
②減価償却の意義——規則正しい費用配分とは?
③減価償却の3要素と減価償却方法

4定額法と定率法による計算例
①定額法による計算とは?
②定率法による計算とは?
③定額法と定率法の比較
コラム定額法、定率法以外の減価償却方法

第2章 まず、税務上の減価償却を理解しよう!
1会計上と税務上の利益の違いとは?
①会計と税務では目的が違う!
②会計と税務の利益計算
③税務上の利益の計算をイメージしよう!

2最初に行う固定資産の取得価額の計算
①固定資産の取得価額は購入代金だけではない!
②取得価額に含めなくてもよい費用もある!
③特殊な方法(自社建設、贈与)による取得価額とは?

3取得価額の計算における注意点
①10万円未満の減価償却資産など(少額減価償却資産)
②20万円未満の減価償却資産(一括償却資産の特例——3年均等償却)
③30万円未満の減価償却資産(中小企業者等の特例)
④取得価額は通常取引される単位で判定する。
⑤取得価額の計算と消費税の処理
⑥使用可能期間が1年未満の減価償却資産

4減価償却費を左右する耐用年数
①税務上の耐用年数は細かく決まっている!
②中古資産の耐用年数の求め方とは?
③耐用年数の短縮が認められる場合とは?

5判定が難しい修繕費と資本的支出
①修繕費と資本的支出
②修繕費と資本的支出の区分判定

6減価償却制度の今と昔
①大きく変わった減価償却制度
②旧定額法(平成19年3月31日以前の取得)
③旧定率法(平成19年3月31日以前の取得)
④定額法(平成19年4月1日以後の取得)
⑤250%定率法(平成24年3月以前の取得)
⑥200%定率法(平成24年4月以後の取得)

7正しく理解しておきたい資本的支出と減価償却
①資本的支出に関する減価償却についての税制改正
②元の資産を平成19年3月末以前に取得した場合
③元の資産を平成19年4月以後に取得した場合
④平成19年4月1日以後で同一事業年度に複数回の資本的支出を行った場合
⑤計算例による確認

8申告調整と特殊な減価償却
①申告調整の意味と申告調整が必要な場合とは?
②償却超過額と償却不足額の計算例
③租税特別措置法の特別償却とは?
④リース資産の減価償却とは?
コラム税務が会計に歩み寄ったリース取引

第3章 次に、会計上の減価償却を理解しよう!
1会計は「原則重視」です!
①会計と税務の目的の相違と減価償却)
②会計上の耐用年数は企業が独自に決める!
③税務の扱いが変わった場合の会計上の減価償却計算
④減価償却方法(定額法、定率法等)の変更

2減価償却と減損の違い
①減損の意義と減価償却との違いとは?
②減損の影響
③減損会計と税務

3減価償却と国際財務報告基準(IFRS)
①原理原則主義を徹底するIFRS
②IFRSにおける減価償却方法とは?
コラム国際財務報告基準と国民気質

第4章企業経営における減価償却の意味
1損益と資金から見た減価償却
①経営者になったつもりで減価償却を考える
②支出と費用のタイムラグとは?
③損益と収支の違いとは?
④減価償却の自己金融機能とは?

2減価償却と税金の関係
①実効税率の考え方とは?
②減価償却による節税効果とは?
③固定資産に対する投資判断とは?

3時間価値の導入による減価償却の効果
①貨幣の時間価値とは?
②割引率の意味とは?
③現在価値への割引計算の基本
④設備投資の可否(税金を考慮しない場合)
⑤設備投資の可否(税金を考慮した場合)
⑥減価償却方法の違いが正味現在価値に与える影響
⑦減価償却方法の違いによる影響を直接把握する
⑧減価償却と企業価値向上

4減価償却と損益分岐点分析のポイント
①業種によって違う有形固定資産の保有割合
②固定費と変動費の区分と損益分岐点
③損益分岐点を理解しよう!
④損益分岐点を計算しよう!
⑤目標利益額を達成する売上高と利益計画
コラム操業を停止するか否かの判断

清水久員 (著)
出版社 : 中央経済社 (2014/2/26) 、出典:出版社HP