プラスチック成形を学ぶおすすめ本 – 成形加工学や成形技能士についての参考書にも!




プラスチック成形の要点を押さえよう

生活のなかには、たくさんのプラスチック製品が使用されており、使う目的や場所によって形はさまざまです。ですが、プラスチックの成形には専門的な知識や技術を必要とします。ここでは、仕組みや仕事内容だけでなく、プラスチック技能士などの資格取得にも役立つ書籍をご紹介します。

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出典:出版社HP

新人製品設計者と学ぶプラスチック製品設計の基礎

はじめに

感(かん)・伝(でん)・変(へん)
「モノづくり」には欠かせない要素。製品設計を長年やってきた中で結晶した言葉である。「良いモノは世界を変える。そのためにはアンテナの感度を良くしておかなければならない。感度を良くするためには、いろいろな仕込み(知識や経験)が必要である。『これだっ!』と感じたことを自ら醸成させ、周囲へ伝えなければならない。モノづくりは1人ではできない。想いを熱く伝え続けることにより全体が動き始める。」

「製品設計とは何か?」を説明するのはそう簡単ではない。しかし、「感じて・伝えて・変える」から製品設計の使命の一端を感じ取ってはいただけないであろうか。

さて、本書の構成は以下の通りである。
第1編:プラスチックのモノづくりを理解するための基礎知識を学ぶ(全9話)
(製品図、金型機能、成形加工、樹脂選定、成形不良、品質評価、原価達成、金型製作、製品設計)
第2編:受注から量産までの製品設計がやるべきことを学ぶ(全9話)
(受注、要求事項、製品設計、機能検証、金型設計、試作、性能検証、金型判定、海外量産)
製品設計の現場こぼれ話:製品設計の「現場」の本音や実態の話(全4話)

本書は、前著「新人製品設計者と学ぶ プラスチック金型の基礎」の続編である。製品設計者だけではなく、プラスチックのモノづくりに関わるすべての方に、いささかなりともお役に立てば、筆者にとってこれ以上の喜びはない。

本書出版にあたり、日刊工業新聞社出版局書籍編集部の方々には、企画段階から出版まで労を多くした。この場を借り深く感謝を申し上げる。

2016年3月
技術士 伊藤英樹

伊藤 英樹 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2016/3/30)、出典:出版社HP

目次

はじめに
登場人物紹介

Ⅰ部 プラスチックのモノづくりと製品設計
1-1 「製品図」って何?
モノづくりの流れ
製品図

1-2 「金型」で作る!
金型とは何か
金型の基本機能

1-3 「成形加工」する!
5つの成形法
成形サイクル
成形機

1-4 「樹脂」を選ぶ!
樹脂とは
合成樹脂の種類
樹脂を選ぶ

1-5 「成形不良」って何?
成形不良の原因を考える
成形品設計が成形不良を引き起こす

1-6 「品質評価」って何?
部品品質と製品評価

1-7 「原価」を達成する!
原価(コスト)とは
設計する時に考慮すべき原価

1-8 「金型」を作る!
金型設計の5つのポイント

1-9 「製品設計」とは何?
図面を描くだけが仕事じゃない
カテゴリ別の技術課題

Ⅱ部 実践! プラスチック製品設計
2-1 「注文」を取る!
技術検討と見積もり
量産化難易度と品質保証体系

2-2 「要求事項」を明確にする!
情報を整理して書類にまとめる
QFD

2-3 「製品設計」をする!
QCDを満足するように具体化する
サブ機能の設計具体例

2-4 「機能」を確かめる!
補助機能とは
フック形成と抜去力
FMEA

2-5 「金型設計」をする!
成形品生産仕様とは
成形品仕様と金型設計

2-6 「試作」をする!
金型製作仕様書
デザインレビューと性能試作のポイント

2-7 「性能」を確かめる!
製品の信頼性評価
信頼性試験の判定

2-8 「金型判定」をする!
量産試作用の成形品検証
公差緩和と特採表図面

2-9 「量産」を開始する!
部品認定作業
工程認定と顧客オーディット
量産立上の任務完了

製品設計の現場 こぼれ話
「図面」を破られる!
設計と営業の「場外連携」!
新製品の評価法!
設計思想と形状定義!

著者紹介

伊藤 英樹 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2016/3/30)、出典:出版社HP

新人製品設計者と学ぶプラスチック金型の基礎

はじめに

本書は、「型技術」2009年5月号から2011年2月号に連載された「フレッシュマンに贈る!金型設計を最適にする、製品設計の基礎」が多数の読者より好評を得たため、これに加筆訂正し単行本としたものである。


これから製品設計に従事されようとする方々を主な対象として、「製品設計者が見落としやすい『プラスチック成形品設計』の留意点」ならびに「プラスチック金型の基礎」を対話形式で解説した技術書である。なお、金型やプラスチックの知識を必要とする製造、資材調達、開発などに携わる方々にとっても参考となるところが多々あるのではないかと思う。

製品設計は、顧客に最も近いところの「モノづくり」工程である。要求される事項を明確にし、顧客満足を最大とする適切な手段を講じることが、製品設計の主な機能である。眼前の手段にとらわれてしまうと選択を誤り、進歩も競争力もない製品となる。自社の全資源を時間軸で俯瞰し、目標に未達の要素を自ら確立する果敢な戦略を立て、最終的に顧客に喜んでいただける魅力ある製品とすることが肝要である。

本書の構成は以下のとおりである。
1. 本編:企画から量産へと製品化プロセスが進展するストーリーとなっており、その中の登場人物3名の対話を通して「プラスチック金型の基礎」、「プラスチック成形品設計の留意点」を学ぶ内容となっている。新人製品設計者の主人公(新谷)と自分を重ねて読み進めば、製品設計をどう進めるべきかを学ぶ良い機会となるであろう。
2. 発展編:本編のプラスαの内容として、金型・材料・加工法・設計法などのトピックを取り上げた。
3. 製品設計の現場こぼれ話:製品設計に長年従事した筆者の経験からいくつかを取り上げた。「現場」設計者の本音や実態を知ることで、製品設計をより身近に感じてもらえればと思う。

本書出版にあたっては日刊工業新聞社「型技術」編集長・猪刈健一、同編集部・木村孝生ならびに書籍編集部・木村文香諸氏の労を多くいただいた。また、当時編集長・原田英典および連載時編集長・貫井洋一郎両氏には「型技術」連載の機会と与えていただいた。深く感謝を申し上げる。

一口に製品といっても、さまざまな分野・用途・バラエティがあり、そこには制品を魅力あるものとして成り立たせるべく活躍されている設計者の存在がある。本書が、その実現にあたり少しでもお役に立てば、筆者の喜びはこれにすぐるものはない。

2011年1月
技術士 伊藤 英樹

伊藤 英樹 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2016/3/30)、出典:出版社HP

目次

はじめに

登場人物
型山大助
金型設計を担当する中堅社員。プラスチック射出成形金型を専門とする。
新谷誠一
今春入社の新人。製品設計部署に配属となる。「金型」とは初めて出会う。
掛橋要三
製品設計と金型設計の両部門をマネジメントする部門長。

第1章 金型って何?
1.1 「パーティング」って何?
発展編;「パーティング」って何?
製品設計の現場 こぼれ話
パーティング面と製品操作感触

1.2 「テーパ」をつける!
発展編;「テーパ」をつける!
製品設計の現場 こぼれ話
キャビティから抜けなくなった事例と対処法

1.3 「アンダーカット」でいく!
発展編;「アンダーカット」でいく!
製品設計の現場 こぼれ話
アンダーカット形状フックと引掛け保持力

1.4 「ゲート」を決める!
発展編;「ゲート」を決める!
製品設計の現場 こぼれ話
ランナーの材料再生と熱履歴

1.5 「ヒケ」る。どうする!?
発展編;「ヒケ」る。どうする!?
製品設計の現場 こぼれ話
シボ掛けとヒケ修正判断タイミング

1.6 「突出し」でノックアウト!
発展編;「突出し」でノックアウト!
製品設計の現場 こぼれ話
コンカレントなモノづくり

第2章 成形って何?
2.1 「成形収縮」を知る!
発展編;「成形収縮」を知る!
製品設計の現場 こぼれ話
海外での生産実態

2.2 「ウェルド」が出るぞっ!
発展編;「ウェルド」が出るぞっ!
製品設計の現場 こぼれ話
日用品PPケースのゲートとウェルド

2.3 「変形」するって!?
発展編;「変形」するって!?
製品設計の現場 こぼれ話
長尺キーのそりとONせず不良

2.4 「出図」する!
発展編;「出図」する!
製品設計の現場 こぼれ話
海外顧客とのビジネス実態

2.5 「エアーベント」って何?
発展編;「エアーベント」って何?
製品設計の現場 こぼれ話
誤挿入防止のためのキートップ部品仕様

2.6 「ヘジテーション」!?
発展編;「ヘジテーション」!?
製品設計の現場 こぼれ話
同材摺動のための潤滑設計アイデア

2.7 「入れ子」でつくる!
発展編;「入れ子」でつくる!
製品設計の現場 こぼれ話
海外生産立上げ奮闘記

2.8 「金型製作仕様書」!
発展編;「金型製作仕様書」!
製品設計の現場 こぼれ話
製品のコストダウン

第3章 いざ金型製作スタート
3.1 「削る!仕上げる!組上げる!」
発展編;「削る!仕上げる!組上げる!」
製品設計の現場 こぼれ話
モノづくりの大切な要素

3.2 「成形トライ!」
発展編;「成形トライ!」
製品設計の現場 こぼれ話
外観部品と機能部品の一体化

3.3 「判定」する!
発展編;「判定」する!
製品設計の現場 こぼれ話
試作と量産と品質評価

3.4 最終検証。海外生産へ!
発展編;最終検証。海外生産へ!
製品設計の現場 こぼれ話
海外工場での製品立上げの実態

索引

伊藤 英樹 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2016/3/30)、出典:出版社HP

図解 プラスチック成形材料

再版によせて

「はじめに」でも記載されているとおり,本書はプラスチック成形材料を使いこなす人のための書として企画されたものであり,それぞれの材料についてトップメーカーのスペシャリストが成形加工を切り口として執筆を行っていることから,その内容は高い独自性とともに,普遍性も併せ持っている.したがって,事情により販路の途絶えていた本書が森北出版から再版されることになったことは,本書の編集に携わったものとして望外の喜びであり,本書が引き続き,プラスチック成形加工に携わる研究者・技術者の道標となり続けることを願ってやまない.

なお,上記のとおり,本書の執筆陣はそれぞれのメーカーを背負って解説を行っていることに鑑み,「執筆者一覧」は,2006年の発行当時に対応したものを掲載していることをお断りしておきたい.

2011年5月
監修者 鞠谷雄士・竹村憲二

鞠谷 雄士 (監修), 竹村 憲二 (監修), (社)プラスチック成形加工学会 (編集)
出版社 : 森北出版 (2011/6/15)、出典:出版社HP

はじめに

プラスチック成形材料の成形加工における基本工程は,『流す・形にする・固める』であり,これら工程においては,成形材料の化学構造よりは,直鎖状か分岐状かといった分子の形や分子の長さ・長さ分布の影響が大きい.しかしながら,最終製品を設計する際には,剛性,耐熱性,耐薬品性といった化学構造に起因する材料固有の特性を理解することも重要であり,それをベースに成形品の形状が決まり,形状付与のための成形加工を考えることになる.したがって,成形加工を深く追求するには,個々の材料について,材料の性質,とくに構造と成形加工性,物性と成形加工性に関する理解を深めることが重要であろう.

本書は,社団法人プラスチック成形加工学会の学会誌『成形加工』に,講座「成形材料」として2年半にわたり連載された記事を中心に,一部,成形材料に関する解説記事として掲載された講座以外の記事も加えて構成したものである.この講座の企画に当たっては,「成形材料」の化学構造や性質に関する一般的な解説を行うのではなく,成形加工を切り口とした「構造と物性」,「構造と成形加工性」の関係に力点を置いた内容とすることを計画した.そこで,すべての原稿について,各成形材料を製造しているトップメーカーの方々に執筆を依頼することとした.その結果,本書は「成形材料」を使いこなす人のための座右の書として,独自性の高い内容になったのではないかと自負している.なお,連載講座の掲載から本書の発行までに長い時間が経過したわけではないが,昨今の業界の統合・再編の動きの影響を受け,所属が執筆当時と変わっている方も多い.

本書の内容は,「汎用樹脂」「汎用エンジニアリングプラスチック」,「特殊エンジニアリングプラスチック」,「熱可塑性エラストマー」,「熱硬化性樹脂」,「複合・未来樹脂材料」に分類されている.しかしながら,世の中で使用されているプラスチック成形材料を網羅することは難しく,一部割愛せざるを得なかった材料もあることをご容赦願いたい.また,ガスバリヤ性関連の機能性材料は本書の構成の便宜上,特殊エンジニアリングプラスチック分野に含めた,

成形材料は,成形加工工程を経て,形にされて始めて意味を持つものである.材料の持つ顕在的および潜在的な性能・機能は『成形加工工程』により引き出される.本書が成形加工に携わる方々の参考になれば幸いである.

2006年4月
監修者 鞠谷雄士・竹村憲二

執筆者一覧(執筆順)

鞠谷 雄士(編集委員・東京工業大学)
竹村 憲二(編集委員・メディックス昭和)
永井 進(プラスチック技術協会)
林田 晴雄(三善加工)
樋口 弘幸(出光興産)
児玉 邦雄(プライムポリマー(元)グランドポリマー)
山田 雅也(プライムポリマー)
山根 一正(鐘淵化学工業)
中村 辰美(大洋塩ビ)
押田 孝博(リスパック)
干場 孝男(クラレメタアクリルカンパニー)
石賀 成人(テクノポリマー)
元重 良一(テクノポリマー)
浜田 直士(プライムポリマー)
伊崎 健晴(三井化学)
平山 新一(宇部興産)
中村 賢(宇部興産)
小林 博行(ポリプラスチックス)
中 道朗((元)ポリプラスチックス)
井上 純一(帝人化成)
弘中 克彦(帝人化成)
中橋 順一(旭化成ケミカルズ)
唐岩 正人(三井化学)
平井 陽(東レ)
若塚 聖(ポリプラスチックス)
多田 正人(クレハ)
玉井 正司(三井化学)
前田 光男(住友化学)
西尾 孝夫(三井デュポンフロロケミカル)
小松 正明(日本ゼオン)
小原 禎二(日本ゼオン)
南 幸治(日本ゼオン)
渡邊 知行(クラレ)
田井 伸二(クラレ)
山口 辰夫(三菱化学)
青木 昭二(昭和電工)
山下 勝久(東洋紡績)
野々村千里(東洋紡績)
水本 邦彦(三井化学)
須田 義和(旭化成ケミカルズ)
高山 茂樹(旭化成ケミカルズ)
佐藤 義雄(ジャパンエポキシレジン)
村田 保幸(ジャパンエポキシレジン)
廻谷 典行(信越化学工業)
南雲 健(昭和高分子)
澤田 雄次(ブリヂストン)
岩崎 和男(岩崎技術士事務所)
大島 一史(JBAバイオプロセス実用化開発事業)
加藤 誠(豊田中央研究所)
臼杵 有光(豊田中央研究所)
野村 学(出光興産)

※所属は2006年5月現在

鞠谷 雄士 (監修), 竹村 憲二 (監修), (社)プラスチック成形加工学会 (編集)
出版社 : 森北出版 (2011/6/15)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 プラスチック成形材料―概論― 永井進

第2章 汎用樹脂
2-1. 低密度ポリエチレン(LDPE) 林田 晴雄
2-2. 高密度ポリエチレン(HDPE) 樋口 弘幸
2-3. ポリプロピレン(PP) 児玉 邦雄,山田 雅也
2-4. ポリ塩化ビニル(PVC) 山根 一正,中村 辰美
2-5. ポリスチレン(PS) 押田 孝博
2-6. メタクリル樹脂(PMMA) 干場 孝男
2-7. ABS樹脂(ABS) 石賀 成人,元重 良一
2-8. メタロセン樹脂 浜田 直士,伊崎 健晴

第3章 汎用エンジニアリングプラスチック
3-1. ポリアミド(PA) 平山 新一,中村 賢
3-2. ポリアセタール(POM) 小林 博行,中 道朗
3-3. ポリカーボネート(PC) 井上 純一,弘中 克彦
3-4. 変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE) 中橋 順一
3-5. ポリエチレンテレフタレート(PET) 唐岩 正人
3-6. ポリブチレンテレフタレート(PBT) 平井 陽

第4章 特殊エンジニアリングプラスチック
4-1. 液晶ポリマー(LCP) 小林 博行,中 道朗
4-2. ポリフェニレンサルファイド(PPS) 若塚 聖, 多田 正人
4-3. ポリイミド(PI) 玉井 正司
4-4. ポリエーテルサルホン(PES) 前田 光男
4-5. ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) 前田光男
4-6. ふっ素樹脂 西尾 孝夫
4-7. シクロオレフィンポリマー(COP) 小松 正明,小原 禎二, 南 幸治
4-8. エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVOH) 渡邊 知行,田井 伸二
4-9. 接着性ポリオレフィン 山口 辰夫,青木 昭二

第5章 熱可塑性エラストマー
5-1. ポリエステル系熱可塑性エラストマー 山下 勝久,野々村 千里
5-2. オレフィン系熱可塑性エラストマー 水本 邦彦
5-3. スチレン系熱可塑性エラストマー 須田 義和,高山 茂樹

第6章 熱硬化性樹脂
6-1. エポキシ樹脂 佐藤 義雄,村田 保幸
6-2. シリコーン樹脂 廻谷 典行
6-3. フェノール樹脂 南雲 健
6-4. 不飽和ポリエステル樹脂 澤田 雄次
6-5. ポリウレタン(PUR) 岩崎 和男

第7章 複合・未来樹脂材料
7-1. 生分解性樹脂(バイオプラスチック) 大島 一史
7-2. ナノコンポジット材料 加藤 一誠,臼杵 有光
7-3. 長繊維強化熱可塑性樹脂 野村 学

第8章 成形材料の現状と展望 竹村 憲二

鞠谷 雄士 (監修), 竹村 憲二 (監修), (社)プラスチック成形加工学会 (編集)
出版社 : 森北出版 (2011/6/15)、出典:出版社HP

トコトンやさしいプラスチック成形の本 (今日からモノ知りシリーズ)

はじめに

我々の日常生活で、プラスチックはすでに当たり前の、空気のような存在になっているのではないでしょうか。皆さんの周りを見てください。コンビニで買うコーラやお茶のペットボトル、シャンプーの容器、お菓子の袋、部屋のなかにあるテレビ、洗濯機、冷蔵庫の筐体(ケース)もプラスチックですし、会社に行けばパソコンの筐体やキーボード、コピー機、自動車のインストルメントパネル(インパネ)やドア、携帯電話など、ありとあらゆるところにもプラスチックが使われていることに、あらためて驚きます。

英語のプラスチックには本来の意味に、「可塑」があります。これについては、本文でも説明しますが、現在では、プラスチックの本来の言葉の意味の「可塑」からは離れた意味になっています。現在では、皆さんがプラスチックと聞いて、感じる意味に変化しているのです。可塑状態のものでなくても、プラスチックと感じている、そのプラスチックの意味です。言葉というのは、もともと、人間が、ものを表現する道具として発達してきたものです。ですので、時代によって、ものの概念が変化してくると、それに伴って言葉の意味も変化していきます。

漢字も、もともとは、象形文字から発達してきましたが、現在では目にすることのないものからできた漢字もあります。

本文を読み進んでいくとわかると思いますが、プラスチックを使って、ものを作るというプラスチック成形は、古くて新しいものなのです。古いという理由は、プラスチックが発明される前にも、同じような成形方法が存在していたからです。プラスチック成形も、その応用であり延長なのです。

しかし、プラスチックは新しい材料なので、以前の材料とは違う性質を持っています。この性質を考えながら、進歩、淘汰されてきたのが、現在のプラスチック成形なのです。

プラスチック成形にも、いろいろなものがありますが、もしかすると、将来、分子構造も自由に作ることができて、3Dプリンターも超高速で安くできるようになれば、すべてのプラスチック成形は、ひとつに統一されてしまうかも知れません。現在では、まだ夢のような話ですが……。

筆者が小さいころは、「我々が生きている間には、色のついたテレビ(カラーテレビ)は出現不可能だろう」とさえいわれていました。今では、それどころか、壁にかけられるテレビや、スマートフォンやタブレットのように、持ち歩ける時代にまでなっています。

このような最先端の製品から考えると、プラスチックの成形は、まだまだ原始的なものなので、今後大きく変化した新しい方法も出現してくるかも知れません。ただ、モノづくりは、工学的にも経済的にも効率的な方法が選択されるので、そのまま現状の成形方法も生き残っていくかも知れません。原始的であっても、経済的に効率的であれば生き残ります。皆さんにも、そのような観点でも、いろいろなプラスチック成形というものを知ってもらえれば幸いです。

本書に関しましては、日刊工業新聞社の野﨑伸一氏に当初よりアドバイスをいただき、やっと出版にこぎつけることができましたことを感謝致します。

2014年3月
技術士・プラスチック成形特級技能士 横田 明

横田 明 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2014/6/28)、出典:出版社HP

目次

第1章 プラスチックとプラスチック成形
1 セルロイドの成形方法「最初の熱可塑性プラスチック」
2 プラスチックとその成形方法のいろいろ「成形方法は身の周りの方法」
3 いろいろなプラスチック(その1)「簡単な構造のポリエチレン」
4 いろいろなプラスチック(その2)「ポリプロピレン、ポリスチレン」
5 ホモポリマーとコポリマー「高分子の枝分かれ」
6 結晶性と非晶性「紐の並び方と結晶性」
7 蛇と高分子「熱可塑性と熱硬化性」
8 低分子から高分子へ「熱硬化性プラスチックの成形方法」
9 プラスチックのいろいろな呼び方「プラスチックとは?」
10 分子を延ばして伸ばして強く強く「延伸と配向」

第2章 注射器とねじで加工する射出成形
11 射出成形とは「プラスチック成形の王様」
12 射出装置「注射器とねじ込み機」
13 射出成形用の金型「非常に強い圧力に耐える金型」
14 射出成形で製品が作られるまで「射出成形のサイクル」
15 製品が取り出しできる金型「アンダーカットの処理方法」
16 金型内部のプラスチックの流れ道「ランナーとゲート」
17 多材質射出成形「二回射出する成形方法」
18 サンドイッチ成形と大理石調成形「色模様のできる射出成形」
19 ガスアシスト射出成形と水射出成形「高圧のガスや水を使う成形方法」
20 プラスチック・ファスナーの成形「フープ成形するシステム」
21 プラスチック磁石「射出成形で作る磁石」
22 中空品の射出成形「金型内で組み立てる成形方法」
23 成形品の不良品「良品と不良品、合格品と不合格品」

第3章 トコロテンに似た押出し成形
24 金太郎飴式押出し成形「トコロテンのように押し出す」
25 パイプの押出し成形「ダイとサイジング」
26 押出し成形品のいろいろな形「アンダーカットのある成形」
27 梱包用のプラスチック紐とみかんを入れるネット「延伸した紐とダイに工夫が施されたネット」
28 ペレットを作る押出し成形「米粒状ペレットの作り方」
29 電線の押出し成形「押出しと引き抜きを合わせた成形」
30 シート、フィルムの作り方「薄い板と極薄の板」
31 押出しで作る発泡スチロール「発泡スチロールのいろいろ」

第4章 ふくらまして作るブロー成形
32 ブロー成形とは「中空製品をふくらますブロー成形」
33 多層ブロー成形とは「ガスを通さないための工夫」
34 複雑な形のブロー成形品「コンピューター制御の複雑形状」
35 ペットボトルの成形「二度に分けて加工する」
36 スーパーなどで使うポリ袋「極薄フィルムをふくらませる」

第5章 つぶして作る圧縮成形と吸い込んで作る真空成形
37 つぶして作る圧縮成形「主に熱硬化性プラスチックの成形」
38 SMC成形とトランスファー成形「射出成形に近いトランスファー成形」
39 熱プレス成形「圧縮成形とSMC成形に類似」
40 卵パックの真空成形「吸い込んで成形する真空成形」
41 真空成形と圧空成形「自動車にも多く利用されている成形法」

第6章 その他のプラスチック成形
42 レーザーなどで加工して作る成形方法「三次元プリンター方式」
43 注型「お湯を注ぐようにして作る成形方法」
44 ハンドレイアップ、スプレーアップ「モーターボートなどを作る成形方法」
45 浸漬成形法「漬けこんでまとわりつかせる成形」
46 パウダースラッシュ、回転成形「粉末を使う成形方法」
47 反応成形法「液体を混ぜ合わせて流し込む成形方法」
48 発泡スチロール成形「押出し成形とは違う発泡スチロール成形」
49 引抜成形「引っ張って抜き取る成形方法」
50 カレンダー成形ほか「押出し成形とは別のシート成形方法」

第7章 接着と溶着
51 プラスチックの接着「接着はプラスチック製品の手作業の原点」
52 接着剤「くっつける相手との相性がとても大事」
53 機械的な溶着「熱を加えたり、摩擦発熱を利用」
54 その他の溶着「材料自体の発熱を利用する方法」

第8章 加飾
55 プラスチックの塗装と印刷「加飾にも、さまざまな種類がある」
56 プラスチック製品への印刷「立体形状のプラスチックへの印刷方法」
57 特別な加飾「複雑な立体形状への印刷など」
58 文字加工、植毛、シボ「プラスチック製品の表面に付加価値をつける方法」
59 プラスチックのめっき「プラスチックを金属に見せる方法」

第9章 プラスチック成形品のリサイクル
60 腐らないプラスチック「プラスチックは錆びない、腐らないが取り柄だった」
61 プラスチックの廃棄処理「腐らないものを発明した代償」
62 三つのリサイクル「どうやって自然を味方につけるか」
63 プラスチックの表示「国によって違う材料表示」
64 ペットボトルと発泡スチロールのリサイクル「ペットボトルと発泡トレイは日常生活の一部
65 バイオプラスチック「どうやって自然から作るか、どうやって自然に戻すか」

[コラム] ●日常生活とプラスチック
●射出成形はプラスチック成形の王様
●押出し成形は速度と混練が命
●いかに効率よく経済的に作るのか
●成形方法の呼び方
●経済性と成形方法
●接着は分子レベルで考える
●加飾する意味
●プラスチックの光と影

参考文献

横田 明 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2014/6/28)、出典:出版社HP

プラスチック成形加工学の教科書

はじめに

本書は、プラスチックに関係した研究開発、技術開発などの業務に従事されている社会人の方や、高分子化学などを専門に勉強されている化学系の大学生の方はもちろんのこと、プラスチックに少しでも関心をもっている一般の皆様を対象にしています。筆者は1984年に民間企業に就職して以来、約30年間もプラスチックの成形加工に関係する研究開発業務に携わって参りました。その間、工法の分野としては射出成形、押出し成形、ブロー成形及びSMC圧縮成形などを、また材料としてはPPやPVCのような汎用プラスチックから液晶ポリマーのようなスーパーエンプラと呼ばれるものまでを、幅広く経験してきました。

プラスチック成形加工技術は、以前は経験則に依存するところの多い分野でした。しかし平成元年にプラスチック成形加工学会が創立されたのをきっかけとして、プラスチックの成形技術は1つの学問分野として取り扱われるようになりました。プラスチック成形加工学会からも「テキストシリーズ プラスチック成形加工学」という教科書が、現時点で4冊発刊されています。この教科書を筆者は今までに何度となく読み返しており、筆者の座右の書となっている良書です。しかしながら、そもそも難解なレオロジーを対象にせざるを得ず、また大学の先生方がご執筆されていらっしゃることもあり、格調高く仕上がっており、一般の皆様が読みこなすのには少し無理があります。

そこで筆者は、成形加工学としてのアカデミズムの本質を忘れることはなく、筆者のプラスチック成形の実務経験などを交えて、一般の方でも重要な点を理解して頂くことを目的に本書を執筆しました。専門用語と数式は必要最小限にとどめています。高分子が引き起こす難解な現象の本質を、理論とともに感性にも訴えて、わかりやすく説明するのが本書のねらいです。ガラス転移点とかクリープ現象など、今までの本を何度読んでもすっきりとわからなかったことが、本書を読めばすんなりと理解できるはずです。肩の力を抜いて、本書を楽しんで頂ければ望外の喜びです。

井沢 省吾 (編集)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2014/9/25)、出典:出版社HP

「プラスチック成形加工学の教科書」
目次

はじめに

第1章 プラスチックの成形加工とは
Section1 「流す・形にする・固める」
~プラスチック成形加工の基本

Section2 流す
~高温化し材料を流しやすくする工程

Section3 形にする
~自分の想い通りの形をつくる工程

Section4 固める
~自分の想い通りの形に固める工程

第2章 プラスチックを「流す」
Section5 プラスチックは熱を伝えにくい
~「熱」と「温度」の基本を学ぶ

Section6 温度変化の遅い樹脂材料
~温度伝導率αとは何か

Section7 流動化のメカニズム(1)
~外部加熱だけでは、ぜんぜん足りない

Section8 流動化のメカニズム(2)
~摩擦熱と塑性変形による発熱が必須

Section9 非晶性樹脂材料とは
~ばらばらな分子配置が好きなわんぱく坊主

Section10 結晶性樹脂材料とは
~規則正しい分子配置が好きな優等性タイプ

Section11 非晶性樹脂の流動化
~ミクロブラウン運動をするために流動する

Section12 結晶性樹脂の流動化(1)
~結晶(固体)が融解して液体になる

Section13 結晶性樹脂の流動化(2)
~実際の融点はラメラ晶の厚さで決まる

Section14 樹脂材料の流動特性(1)
~成形加工で最も重要な概念一緩和時間

Section15 樹脂材料の流動特性(2)
~緩和時間と粘度は簡単に測定できる

Section16 樹脂材料の流動特性(3)
~高分子は回転しながら、流動する

Section17 樹脂材料の流動特性(4)
~粘度は、流す速さで変わってしまう

Section18 樹脂材料の流動特性(5)
~粘度は低温でねばねばに、高温でしゃびしゃびに

第3章 プラスチックを形にする
Section19 レオロジーとは
~粘弾性材料の流動や変形を論ずる学問

Section20 ばね模型とダッシュポット模型
~弾性体と流体の素性を簡潔に表現

Section21 マックスウェル模型とフォークト模型
~粘弾性をわかりやすく説明するモデル

Section22 変形量が時間とリニアに増加する
~マックスウェル模型での説明

Section23 変形量が時間とともに指数関数的に変化
~フォークト模型での説明

Section24 組み合せ模型
~樹脂材料は物質時間が分布している

Section25 想い通りの形にならない
~やっかいな記憶現象

Section26 想い通りの「形にする」ために
~記憶現象抑制のテクニック

Section27 「形にする」プロセスの材料挙動
~変形の優先順位と形状スケール

Section28 現実の「形にする」プロセスの分類方法
~形にするツールと力の加え方で分類

第4章 プラスチックを「固める」
Section29 熱可塑性樹脂を固める
~「固める」とは固体的性質を強めること

Section30 非晶性樹脂の形状固定化(1)
~ガラス転移点で固体化(ガラス化)

Section31 非晶性樹脂の形状固定化(2)
~ガラス転移点で比容積が変化する

Section32 非晶性樹脂の形状固定化(3)
~ガラス転移点は、分子構造で決まる

Section33 非晶性樹脂の形状固定化(4)
~なぜガラス転移点で固体になるのか?

Section34 非晶性樹脂の形状固定化(5)
~流動領域、ゴム状平坦領域そしてガラス状領域へ

Section35 結晶性樹脂の形状固定化(1)
~そもそも高分子は結晶化しにくい

Section36 結晶性樹脂の形状固定化(2)
~高分子の階層的な構造と結晶の階層的な構造

Section37 結晶性樹脂の形状固定化(3)
~球晶構造と繊維構造

Section38 結晶性樹脂の形状固定化(4)
~ラメラ晶はどのように成長するか?

Section39 結晶性樹脂の形状固定化(5)
~結晶化温度はどのように決まるのか

Section40 結晶性樹脂の形状固定化(6)
~結晶化温度をグラフから求めてみよう

Section41 結晶性樹脂の形状固定化(7)
~体積収縮の大きい結晶性樹脂

Section42 結晶性樹脂の形状固定化(8)
~急冷し過ぎると、結晶化せずにガラス化する

Section43 結晶性樹脂の形状固定化(9)
~なぜTg~Tmの範囲でしか結晶化しないのか?

Section44 結晶性樹脂の形状固定化(10)
~結晶化と配向は深い縁で結ばれている

第5章 動的粘弾性とは
Section45 動的粘弾性がなぜ必要なのか?
~技術者は短時間で粘弾性特性を把握したい

Section46 正弦波のひずみを与えたときの応力変化
~位相がずれるのは粘性がある証拠

Section47 マスターカーブ
~広範囲で緩和時間がわかる便利な曲線

Section48 WLFの法則
~すべての非晶性樹脂に適応できる法則

Section49 非晶性樹脂の緩和時間の分布
~高分子鎖1本の挙動がわかる

Section50 動的粘弾性測定で何がわかるのか?
~高分子鎖のミクロな動きが読み取れる

第6章 成形加工における移動現象
Section51 固体輸送部(供給部)
~粟おこしのような塊、ソリッドベッド

Section52 溶融部(圧縮部)
~溶融フィルムから溶融プールに成長

Section53 溶融体輸送部(計量部)
~スクリュー溝に平行な流れ、垂直な流れ

Section54 可塑化バレル壁近傍の熱移動
~熱移動の収支がわかる鳥瞰図が大切

付録章 プラスチック成形加工の歴史と最近のトピックス
Section55 プラスチック材料の歴史(1)
~象牙の替わり、セルロイド樹脂

Section56 プラスチック材料の歴史(2)
~ベークランドが興したベークライト産業

Section57 プラスチック材料の歴史(3)
~高圧ゆえに難産だったポリエチレン

Section58 プラスチック材料の最近のトピックス
~自動車をより高性能にするエンプラ

Section59 押出し成形の歴史と最近のトピックス
~マカロニは押出し成形でつくられる

Section60 射出成形の歴史と最近のトピックス
~現在は第3世代の射出成形機

Section61 ブロー成形の歴史と最近のトピックス
~古代からあるブロー成形

Section62 熱硬化性樹脂の成形技術の歴史と最近のトピックス(1)
~圧縮成形、射出成形及びトランスファー成形

Section63 熱硬化性樹脂の成形技術の歴史と最近のトピックス(2)
〜RTM(レジントランスファーモールディング)

Section64 熱硬化性樹脂の成形技術の歴史と最近のトピックス(3)
~FW(フィラメント・ワインディング)成形

Section65 熱硬化性樹脂の成形技術の歴史と最近のトピックス(4)
~プリプレグ・オートクレーブ成形

おわりに
参考文献

井沢 省吾 (編集)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2014/9/25)、出典:出版社HP

よくわかるプラスチック射出成形金型設計

まえがき

プラスチックの射出成形加工は,単純形状の日用品のみならず複雑な自動車および家電部品などを効率よく生産する成形法として発展してきた.この成形品の品質や生産性を左右する重要な生産要素が金型であり,さらにいえば金型設計の善し悪しである.このように重要な金型設計も,工業高校や大学の工学部で教育されることはなく,もっぱら企業内での実践的教育訓練(OJT)により,その技術が伝承されてきたのである.

この場合のOJTは,既存設計図を手本にした“見よう見まね”の設計が一般的であり,必ずしも基本的な金型設計の考え方や意思決定の方法が教えられるわけではない.また,CAD設計が一般化してきた今日では,設計における意思決定の一部もCADソフトのなかに組み込まれている場合があり,基本的な金型設計の考え方がますますわかり難くなってきている.

このように基本的な金型設計の考え方も知らず,技術知識も不足したまま“見よう見まね”で設計するだけでは応用力も小さく,またCADソフトのなかでブラックボックス化した意思決定のシステムに頼った設計では,技術の進歩も限られている.

若い設計者には,基本的な金型設計の考え方や関連の基礎技術を知ることが重要であり,それをベースにして先輩技術者の蓄積した技術を学べば理解も早く,的確な設計が可能になる.

本書では,このような観点から金型構想設計における基本的な金型設計の考え方や関連の基礎技術を重点に解説している.ただし,それだけでは実際の金型設計におけるさまざまな局面で理論を実践的に応用する具体性に乏しいので,組立図設計や部品図設計の具体例を示し,解説を加えている.

最後に,本書は「型技術」誌に連載したものを取りまとめたものであるが,単行本の出版にあたり格別のご尽力を賜った日刊工業新聞社出版局,武藤朔恵氏に厚くお礼を申し上げます.

2002年10月
福島 有一

はじめに

プラスチック射出成形金型には,時計部品のような非常に小さなものから自動車や大型家電部品などを成形する大きな金型まで多くの種類がある.また,プラスチック材料についても熱可塑性樹脂だけでなく,熱硬化性樹脂の射出成形も行われており,それぞれ特色のある金型が使われている.

本書ではとくに断らない限り熱可塑性樹脂を対象にし,小型から中型の射出成形金型の設計法を主体に解説していく.ただし熱可塑性樹脂の金型であれば,金型の大きさにかかわらず基本的な金型設計の考え方はほとんど同じであり,また熱硬化性樹脂の場合も,ゲートランナー設計や温調設計,金型材料を除いた構造設計に関する考え方はほとんど同じである.

金型設計には,金型構造や工作法の理解はもとより成形システム全体の理解,プラスチック材料の知識など広範な技術,知識が必要とされる.本書では,このような金型設計をとりまく技術については用語解説にとどめ,“基礎知識”として欄外にまとめている.若手技術者は,これら技術に関しても専門書を求め,いつでも参照できるようにしておけば,本書の理解も深まるであろう.

2002年10月
著者

福島 有一 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2002/11/1)、出典:出版社HP

目次

まえがき
はじめに

第1章 プラスチック射出成形加工と金型
1.1 射出成形加工と金型の位置づけ

1.2 成形加工工程と金型の役割
1.2.1 成形材料
1.2.2 可塑化工程
1.2.3 射出工程
1.2.4 保圧工程
1.2.5 冷却工程
1.2.6 取出し工程

1.3 金型の機能
1.3.1 形状付与機能
1.3.2 熱交換機能
1.3.3 流路形成機能
1.3.4 離形機能
1.3.5 排気機能
1.3.6 その他

第2章 金型設計の手順
2.1 金型業務のフロー
2.1.1 客先仕様(ユーザースペック)
2.1.2 金型見積書作成
2.1.3 見積書発行
2.1.4 金型設計
2.1.5 出図
2.1.6 工務手配
2.1.7 金型製作
2.1.8 デバッグ
2.1.9 金型検定

2.2 金型設計のフロー
2.2.1 標準的なフロー
2.2.2 実際的なフロー

第3章 客先仕様の検討
3.1 成形品仕様
3.1.1 製品図の理解
3.1.2 製品図の理解
3.1.3 製品図の変更

3.2 成形品生産仕様
3.2.1 月産予定数量
3.2.2 成形品寿命
3.2.3 使用成形機
3.2.4 取出し方式
3.2.5 インサート
3.2.6 目標成形サイクル

3.3 金型基本仕様

第4章 金型構想設計
4.1 金型基本構造
4.1.1 コールドランナー
4.1.2 ホットランナー

4.2 金型材料と熱処理
4.2.1 金型材料
4.2.2 熱処理,表面処理

4.3 ゲートランナーシステム
4.3.1 ゲートシステム
4.3.2 ランナーシステム

4.4 成形品形状部詳細
4.4.1 パーティングライン
4.4.2 抜き勾配
4.4.3 成形収縮率

4.5 キャビティ,コア詳細
4.5.1 キャビティレイアウト
4.5.2 キャビティ,コア構造

4.6 金型温調
4.6.1 基礎事項
4.6.2 温調方式
4.6.3 温調設計

4.7 突出し機構
4.7.1 突出し方式
4.7.2 突出し機構の設計

4.8 アンダーカット処理
4.8.1 アンダーカットの分類
4.8.2 アンダーカット処理方式の特徴と用途
4.8.3 スライドコア機構の設計
4.8.4 傾斜コア機構の設計

4.9 エアベント
4.9.1 エアベントの方式
4.9.2 エアベントの設計

4.10 金型構造詳細
4.10.1 成形設備関連
4.10.2 機構部品設計

4.11 設計計算
4.11.1 使用成形機関連
4.11.2 金型強度
4.11.3 その他

第5章 組立図設計
5.1 組立図設計の基本
5.1.1 組立図の役割,機能
5.1.2 組立図設計の手順
5.1.3 組立図設計の方法
5.1.4 組立図設計における考慮事項

5.2 組立図設計の実例①
5.2.1 客先仕様検討
5.2.2 金型基本構造設計
5.2.3 キャビティ,コア設計
5.2.4 金型レイアウト設計
5.2.5 金型構造設計

5.3 組立図設計の実例②
5.3.1 客先仕様検討
5.3.2 金型基本構造設計
5.3.3 キャビティ,コア設計
5.3.4 金型レイアウト設計
5.3.5 金型構造設計

5.4 組立図設計の実例③
5.4.1 客先仕様検討
5.4.2 金型基本構造設計
5.4.3 キャビティ,コア設計
5.4.4 金型レイアウト設計
5.4.5 金型構造設計

5.5 組立図設計の実例④
5.5.1 客先仕様検討
5.5.2 金型基本構造設計
5.5.3 キャビティ,コア設計
5.5.4 金型レイアウト設計
5.5.5 金型構造設計

第6章 部品図設計
6.1 部品図設計の基本
6.1.1 基礎事項
6.1.2 部品図設計のポイント

6.2 部品図設計の実際
6.2.1 キャビティ,コア部の部品図設計
6.2.2 プレート類の部品図設計
6.2.3 機構部品類部品図設計

第7章 電極設計
7.1 放電加工の基礎
7.1.1 放電加工の分類
7.1.2 放電加工の原理
7.1.3 放電加工の特徴
7.1.4 加工メカニズム
7.1.5 電気特性
7.1.6 放電加工特性
7.1.7 放電加工部の組織
7.1.8 放電加工のポイント

7.2 電極設計の基礎
7.2.1 材質
7.2.2 加工法
7.2.3 構造(形状)
7.2.4 減寸量(縮小しろ)の設定
7.2.5 必要数量
7.2.6 位置決め基準
7.2.7 加工液の供給方法
7.2.8 電極ホルダ

7.3 電極設計の実際
7.3.1 放電加工部の検討
7.3.2 電極の設計構想検討
7.3.3 電極設計実例

第8章 検図
8.1 検図の基本
8.1.1 検図の機能(役割)と効果
8.1.2 図面の欠陥
8.1.3 検図の方法
8.1.4 組織的検図法の進め方

8.2 検図の実際
8.2.1 金型基本仕様の確認
8.2.2 組立図の検図
8.2.3 部品図の検図

あとがき
索引

福島 有一 (著)
出版社 : 日刊工業新聞社 (2002/11/1)、出典:出版社HP