全国通訳案内士試験「地理」合格! 対策
【全国通訳案内士試験のおすすめ参考書・テキスト(独学勉強法/対策)】も確認する
はじめに
全国通訳案内士とは
「全国通訳案内士」とは、日本に来た外国人のお客様に付き添い、外国語を用いて旅行のご案内を行うということを、報酬を得てつまり職業として行うことのできる人です。
そして全国通訳案内士は「全国通訳案内士試験」という国家試験に合格した人たちのことを言い、高度な外国語能力と日本(地理・歴史・文化・観光など)に関する豊富な知識を持つことを試験の合格により証明されています。そして、全国通訳案内士は都道府県の登録を受けた人たちでもあります。
全国通訳案内士試験とは
「全国通訳案内士試験」とは、観光庁が主管する国家試験であり語学関連では唯一の国家資格です。そして、1949年の通訳案内士法の施行当時から行われてきた本試験は、当初合格率は3%程度で最も難しい国家資格の一つと言われていました。法律の施行から70年という時代の流れの中で、試験方法や形式も複数回にわたって見直しが加えられ、合格率自体は当初の3%程度から30%台にまで上昇したこともありました。
通訳案内士法の改正について
日本に来た外国人のお客様に対する満足度の高い旅行の提供に貢献してきた通訳案内士制度ですが、近年の急増する訪日外国人旅行者数と、多様化するニーズに対応しきれない状況にありました。(法改正の詳しい経緯は『全国通訳案内士試験「実務」合格!対策』をご確認下さい)その状況を受け、2018年に通訳案内士法は1949年の施行から初めて改正されることとなりました。この改正を受け、これまで「通訳案内士」と呼ばれていた資格は「全国通訳案内士」という名称に改められ、試験制度も大きく見直されることになりました。
通訳案内士法の改正と試験の変化について
《試験全体の変化》
■科目数の増加
試験全体の変化としては、2018年度の試験より1次試験の邦文科目に「通訳案内士の実務」という科目が追加され、試験科目数が従来の4科目から5科目に増えました。
《地理科目の出題範囲の変化》
■ガイドライン改定による変化
今回の法改正より前にはなりますが、平成27年度(2015年度)に通訳案内士試験全体のガイドラインの改定が行われました。
■出題範囲の拡大
2014年までのガイドラインで言及されていた「中学校及び高校の地理の教科書並びに地図帳をベースとし」という記載が、2015年の改定以降削除されました。代わりに「日本の観光地等に関連する日本地理について」という文言が追加されました。それにより試験の出題内容が、一般的に中学校や高校等で学習する範囲の内容だけに留まらず、広く観光地に関連した地理の内容へとシフトしました。
■合格基準点の上昇
2014年までのガイドラインでは、100点満点の地理試験の合格基準点を60点と設定していました。しかし、ガイドライン改定後はそれが70点に引き上げられています。本書はこういった新しい時代の全国通訳案内士試験の、特に1次試験の日本地理試験に対応するために、日本最大の通訳案内士団体である新日本通訳案内士協会と、通訳案内士試験対策予備校であるTrueJapanSchoolがタッグを組んで執筆したものです。共著者であるTrueJapanSchool講師の河島泰斗氏は、日本全国を隅から隅まで知り尽くした現役の全国通訳案内士でもあります。
このプロの講師が、新しい出題傾向の日本地理にも対応できる分かりやすい解説と、豊富なエピソードやこぼれ話を詰め込んで本書を仕上げました。本書でしっかりと解法の基礎を学んだら、True Japan Schoolの公開模試や各種Eラーニング等を活用して本番の試験に対応できる力を身に付けましょう。合格まで、これから一緒に頑張っていきましょう。
新日本通訳案内士協会 会長
特定非営利活動法人日本文化体験交流塾 副理事長
山口和加子
本書を利用される皆様へ
「丸暗記」だけで日本地理の試験問題に正解できるのか?
「地理は暗記が多くて苦手だ。」
とよく聞きます。確かに、地理は暗記すべき情報の量が多い分野であり、全国通訳案内士試験の
「日本地理」の対策においても、地名、観光資源名、人名などの暗記を避けて通ることができません。しかし、情報を個別に丸暗記するだけで試験問題に正解できるのでしょうか?例えば、「日本三名園の一つに数えられる茨城県水戸市の庭園で、梅の花で有名な庭園の名前は何か?」(正解:偕楽園)という問題があるとします。これに正解するためには、少なくとも偕楽園が茨城県水戸市に存在するという知識が必要です。また、「梅の花で有名」という関連知識も正解にたどりつく重要な手掛かりとなります。そう、試験問題に正解するためには、問題文に記載されている情報を出発点として、これらと脳内にインプットされている情報との関連性を紐解き、最適な情報を引き出さねばならないのです。
・「地理」とは「つながり」の学問である
少し難しくなりますが、地理学の定義は「地球の表面付近の物事の相互関係を研究する学問」と言えます。つまり、地理という分野の本質は「相互関係」、もっと分かりやすく言えば「つながり」なのです。地理学の最も普遍的な問いに、「ある物事がなぜそこにあるのか?」というものがあります。これは「つながり」の一種である「因果関係」を問うものです。
例えば、「偕楽園にはなぜ梅が植えられているのか?」という問いに対しては、一例として、「偕楽園を造った水戸藩9代藩主・徳川斉昭が、春に他に先駆けて咲く梅を好み、かつ非常食として梅干しを確保するために数多くの梅を植えたと言われている。」と答えることができます。この問答は、何だかお客様とガイドの会話のようだと思いませんか?
全国通訳案内士として活躍するためには、このように、ある一つの観光資源を出発点として、お客様の興味・関心がある方向に話題を広げ、楽しませる能力が不可欠です。そして、日本地理試験においては、まさにこのような「つなげる」能力が問われるのです。
・好きこそ物の上手なれ ~00地理のススメ~
では、地理に対して苦手意識を持っている人が、地理試験の正解に必要とされる「個別の地理情報」と「地理情報どうしのつながり」を、どうやって身に着けていけば良いでしょうか?そのヒントは、「好きこそ物の上手なれ」ということわざにあります。皆さんも「好きな物事の知識やスキルを、あまり苦労せずに身に着けられた」という経験があるのではないでしょうか。
ここで、あなたが好きなものを一つ思い浮かべてみてください。食べ物でも、お酒でも、着物でも、食器でも、お祭りでも、動物や植物でも、何でも構いません。ただし、日本国内で幅広く分布するものが良いと思います。例えば、あなたが無類の「おでん好き」だとすれば、全国のおでんの味付けや具材の違いを比較し、記憶するのは楽しい作業だと思います。例えば、「関西のおでんのつゆは関東と違って色が薄い。出汁の材料には昆布とうすくち醤油などが使われる。昆布はかつて北海道から「北前船」で運ばれていた。うすくち醤油は兵庫県のたつの市の特産品である」というように、試験対策として必要な情報をつなげていくことができるでしょう。もちろん、この方法が万能であるとは言いません。しかし、好きなものをきっかけに「つながり」を実感することは、地理という分野への心理的なハードルを下げ、効果的な学習法を身に着けるうえで大いに役立つでしょう。
・地理の「つなげる」能力はガイド業務でも役に立つ
地理の「つなげる」能力は、試験勉強だけではなく、ガイド現場でもとても役立ちます。ここで一つの具体例として、私自身の体験談をお話ししましょう。私は、ガイドデビューの業務として、オランダ人グループのハイキングを担当することになりました。ハイキングのルートは日本人ならば小学校低学年の生徒でも歩けるルートであり、しかも事前に「お客様は歩くのをそんなに苦にしない」との情報がありました。しかし、私はここでオランダの地形を想像しました。オランダは国土の大半が干拓地で、最高地点の標高は約300mであり、日本の地形と大きく異なります。
もしかすると、平地を歩くのは苦にしなくても、坂道を歩くのは苦手かもしれないと考え、事前の計画に加えて短縮コースを想定しておきました。そして当日、お客様の様子を観察したうえで短縮コースをご案内し、最後に「丁度良いハイキングだった」とのお言葉を頂きました。また、これは歴史の分野になりますが、この時ちょうどオランダ国王ご夫妻が来日されていたこともあって、両国関係の歴史などを復習し、話題を準備し、そのおかげで楽しく会話ができた場面もありました。このように、お客様の国・地域と日本の情報を相互につなげ、それを踏まえて準備することによって、より楽しんで頂くことができるのです。
・本書に込めた願い ~地理学習から広がる豊かな世界~
本書の執筆においては、試験で出題の可能性が高い情報を掲載するとともに、皆さんに様々な「つながり」を見出してもらうための手掛かりを出来るだけ記載することを心掛けました。もし、皆さんが本書を読む中で「面白い!」「好きだ!」「興味がある!」と思う物事があれば、ほんの少しでも良いので、試験勉強からはみ出して好奇心が赴くままにインターネットや書籍などで調べてみてください。また、できれば実際に訪問したり味わったりしてみてください。そんなことをするのは遠回りだと思われるかもしれませんが、試験対策、そして合格後のガイド業務の土台づくりに大きく役立つ経験となるでしょう。
本書をきっかけとして、皆さんが地理の知的な冒険に旅立ち、日本や世界のことをもっと「好き」になり、この「好き」に強力に後押しされて試験に合格し、全国通訳案内士として活躍されることを願っています。
河島泰斗
本書の使い方
A
各地方の主要都市、国立公園、世界遺産、地形、気象といった概要をまとめています。本書は日本全国を7つの地方に分類し、各地域1章を設けて解説しています。この最初のページで地域の全体像を確認しておきましょう。
B
・できる限り写真やイラスト、地図などを掲載し、視覚的にも印象に残るようにしています。
・地図は各地方のなかでさらにエリアごとに分けて掲載しているので地名と場所をこまめに確認できます。
C
・キーワードごとにリストにしてあるので覚えやすい構成になっています。
・「解説」や「テーマで整理」などもコラム感覚で読めるので、すんなりと頭に入ってきます。
・星をつけて、全国通訳案内士試験対策における重要度を示しています。
・過去の全国通訳案内士試験を踏まえ、今後も引き続き出題・言及されると考えらされる項目に星印をつけています。
・これらは、地理の知識・情報を「幹」となる基本的事項ばかりです。最初に星印がついている項目を固め、その後無印の項目へ広げるという勉強法も効果的かと思います。
D
各章の終わりにチェックテストを掲載しています。地方ごとに読み進め(好きな地方からでも構いません)、その章の知識がしっかりと記憶として定着したかどうかを確認しましょう。
E
チェックテストの答えです。
試験概要
・全国通訳案内士試験とは
「全国通訳案内士として必要な知識及び能力を有するかどうかを判定すること」(通訳案内士法第五条)を目的とした国家試験。
■受験資格
不問。
■試験科目
第1次(筆記)と第2次(口述)に分かれて構成される。第1次(筆記試験) ★該当資格者は免除あり。
・外国語(英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語)
・日本地理
・日本歴史
・産業・経済・政治及び文化に関する一般常識並びに通訳案内の実務。
・2018年の法改正により、筆記(第1次)試験に「通訳案内の実務」が追加。
第2次(口述試験)
通訳案内の実務(筆記試験で選択した外国語による、通訳案内の現場で必要とされるコミュニケーションを図るための実践的な能力を判定するための面接形式の試験)。
■試験日
第1次(筆記):8月中旬頃第1次(筆記)合格発表:11月上旬頃第2次(口述):12月上旬頃最終合格発表:翌年2月上旬頃*例年のおおまかなスケジュールですが、毎年変動しますので、詳しくは日本政府観光局(JNTO)HPをご確認ください
(https://www.jnto.go.jp/jpn/projects/visitor_support/interpreter_guide_exams/index.html).
■受験手数料
11,700円(税込)
・1次試験(筆記)とは
評価方法
・試験は、外国人観光旅客が多く訪れている又は外国人観光旅客の評価が高い観光資源に関連する日本地理についての主要な事柄(日本と世界との関わりを含む。)のうち、外国人観光旅客の関心の強いものについての基礎的な知識を問うものとする。
・試験の方法は、多肢選択式(マークシート方式)とする。
・試験時間は、40分とする。
・試験の満点は、100点とする。
・問題の数は、40問程度とする。
・内容は、地図や写真を使った問題を中心としたものとする。
■合否判定
・合否判定は、原則として70点を合格基準点として行う。
目次
はじめに
本書を利用される皆様へ
本書の使い方
試験概要
本章に入る前に
1章 北海道
1道央および旭川周辺
2道南
3道北
4道東
チェックテスト
2章 東北地方
1青森県
2岩手県
3宮城県
4秋田県
5山形県
6福島県
チェックテスト
3章 関東地方
1東京都
2神奈川
3千葉県
4埼玉県
5群馬県
6栃木県
7茨城県
チェックテスト
4章 中部地方
1新潟
2富山県
3石川渠
4福井
5山梨
6長野県
7岐阜県
8静岡県
9愛知県
チェックテスト
5章 近畿地方
1京都府
2滋賀県
3三重県
4奈良県
5和歌山県
6大阪府
7兵庫県
チェックテスト
6章 中国・四国地方
1鳥取県
2島根県
3岡山県
4広島県
5山口県
6徳島県
7香川県
8愛媛県
9高知県
チェックテスト
7章 九州・沖縄地方
1福岡県
2佐賀県
3長崎県
4熊本県
5大分県
6宮崎県
7鹿児島県
8沖縄県
チェックテスト
さらに合格を確実なものにするために ~3 Step advice~
著者紹介および関連組織紹介