完全図解 空調・給排水衛生設備の基礎知識早わかり
はじめに
この本は,空気調和(空調)設備,給排水衛生設備を初めて学習しようと志す人のために,現場技術者としての実務に役立つ基礎知識について,絵と図でやさしく解説した“入門の書”です.
この本は,初めて学ぶ人にも,空調設備,給排水衛生設備をより理解していただくために,次のような工夫をしてあります.
(1)空調設備,給排水衛生設備に関するテーマを細分化して,“1ページごとにテーマを設定して,学習の要点を明確にしてあります.
(2)ページごとのテーマに対し,ページの上欄にテーマの内容を絵と図で詳細に示し,すべてのページを“完全図解”することにより,容易に内容が理解できるようにしてあります.
(3)空調設備,給排水衛生設備とその構成機器を実際と同じ立体図で描いてありますので,初めて学ぶ人が臨場感をもって学ぶことができます.
この本は,次のような,内容になっています.
(1)第1章は,空調設備に関する基礎知識として,冷房負荷と暖房負荷,空調方式,空調機の制御回路,空調設備の構成機器,冷凍サイクルと冷凍機,ボイラーとその制御回路,熱搬送設備について示してあります.
(2)第2章は,空調設備のメンテナンスの基礎知識として,事後保全と予防保全,保全性を図る尺度,空調設備を構成する空気加熱器,空気冷却器・空気ろ過器・加湿器・送風機・熱搬送機器のメンテナンス,ボイラー運転保守管理と定期自主検査・性能検査,冷凍機の運転操作と保守点検について示してあります.
(3)第3章は,給排水衛生設備に関する基礎知識として,上水道・下水道と水質基準,給水設備の給水方式と給水制御,給湯設備の給湯方式と加熱器,衛生器具,排水設備の排水方式と排水制御,トラップと阻集器,通気設備,排水処理と排水基準,浄化槽について示してあります.
(4)第4章は,給排水衛生設備のメンテナンスの基礎知識として,給水設備における特定建築物の水質管理と排水槽の点検・清掃,給湯設備の維持管理と性能検査・清掃,排水槽の定期点検と清掃,衛生器具の清掃,排水トラップ・阻集器・排水管の清掃,浄化槽の保守点検・清掃の基準ついて示してあります.
このように,この本は,空調設備,給排水衛生設備について,基礎から実務に役立つ知識を納得のゆくまで習得できるように工夫してあります.多くの人々が,この本を活用され,一日も早く,空調設備,給排水衛生設備の技術を習得され,活躍していただけるならば,筆者の最も喜びとするところです.
オーエス総合技術研究所 所長 大浜庄司
目次
完全図解
空調・給排水衛生設備の基礎知識早わかり
第1章 空気調和設備の基礎知識
イラストで学ぶ 空調の制御方式のいろいろ
イラストで学ぶ 中央式空気調和機のしくみ
1.空気調和とはどういうことか
空気調和とは空気を調和する/空気調和における温度と湿度/結露と不快指数/
空気調和における気流と清浄度/熱の伝わり方/換気には自然換気と機械換気がある
2.空気調和負荷には冷房負荷と暖房負荷がある
冷房は熱を奪い,暖房は熱を加える/侵入熱負荷は室内に入ってくる熱量をいう/
室内発熱負荷には人体発熱負荷と機器発熱負荷がある/
空気調和負荷と冷房負荷・暖房負荷との関係/空気調和機による冷房方式/
空気調和機による暖房方式
3.空気調和方式のいろいろ
空気調和方式とはどういう方式か/全体制御方式・個別制御方式・ゾーン制御方式/
方位別ゾーン制御方式・使用別ゾーン制御方式/単・複熱源方式熱媒・冷媒供給方式/
冷媒方式―パッケージユニット方式・ヒートポンプ方式―/空気調和方式の種類
4.空気および水を媒体とする空気調和方式
全空気方式とはどういう方式か/単一ダクト方式には「定風量方式」と「可変風量方式」がある/
各階ユニット方式・二重ダクト方式・マルチゾーンユニット方式/
全水方式―ファンコイルユニット方式―/ファンコイルユニット方式の制御回埼/
空気・水方式とはどういうものか
5.パッケージ形空気調和機の制御回路
パッケージ形空気調和機とはどういう機器か/送風運転動作図/送風運転・冷房運転の動作/
冷房運転動作図/暖房・加湿運転の動作/暖房・加湿運転動作図
6.空気調和設備の構成
空気調和機とはどういう機器か/空気調和設備の構成/空気調和設備の全体機能図/
空気調和機内蔵の空気冷却器・空気加熱器/空気調和機内蔵の空気ろ過器・加湿器/
空気調和設備の熱搬送設備
7.空気調和設備では冷熱源に冷凍機を用いる
冷熱源をつくり出す装置を冷凍機という冷媒の素発・圧縮で冷却する冷凍サイクル/
圧縮冷凍サイクルで冷却する圧縮式冷凍機/吸収冷凍サイクルで冷却する吸収式冷凍機/
冷凍機にはいろいろな種類がある/冷却塔は冷凍機の凝縮器冷却水を冷却する
8.空気調和設備では温熱源にボイラーを用いる
ボイラーは空調設備の暖房の温熱源となる/ボイラーにはいろいろな種類がある/
ボイラーの出力・運転に関する用語/ボイラーの燃料と燃焼/ボイラーの水処理/
ボイラーの異常現象と事故
9.ボイラーの制御回路
ボイラーの始動動作順序(1)/ボイラー始動動作主バーナ用モータ運転動作図/
ボイラーの始動動作順序(2)/ボイラーの始動動作主バーナ着火動作図/
ボイラーの停止動作順序/ボイラーの停止動作図
10.熱搬送設備は熱媒体を搬送する
熱搬送設備はどのような機器で構成されているか/
空気調和設備にはターボ型遠心式ポンプが用いられる/送風機は空気に搬送する力を与える/
ダクトは空気を搬送するための専用道路/ダンパ・吹出口・吸込口/
配管は冷温水・蒸気を搬送する専用道路
イラストで学ぶ 空調の熱媒・冷媒の運ばれ方
第2章 空気調和設備のメンテナンス
1.設備保全とはどういうことか
保全とはどういうことか/保全には予防保全と事後保全がある/状態監視保全と事後保全/
故障率は経年により変わる/保全性を測る尺度/故障にはどんな種類があるのか
2.空気調和機のメンテナンス
空気調和設備を構成する機器/空気加熱器・空気冷却器のメンテナンス/空気ろ過器のメンテナンス/加湿器のメンテナンス/送風機のメンテナンス―日常点検―
送風機のメンテナンス―定期点検―
3.ボイラーのメンテナンス
ボイラーは法令により規制されている/ボイラーの運転保守管理/
ボイラーの定期自主検査項目―ボイラー本体・燃焼装置―/
ボイラーの定期自主検査項目―自動制御装置―/ボイラーの性能検査項目(開放検査)/
ボイラーの事故のいろいろ
4.冷凍機のメンテナンス
高圧ガス使用の冷凍機は法規制を受ける/冷凍機の運転操作と点検事項/
往復動冷凍機の保守点検/遠心冷凍機の保守点検/吸収式冷凍機の保守点検/
冷凍機の災害事象には冷媒ガス漏洩事故が多い
5.熱搬送設備のメンテナンス
熱搬送設備を構成する機器/ポンプは保守点検し機能を維持する/空調ダクトは清掃する/
配管のフランジ結合部の取外し・取付け/バルブには外部漏れと内部漏れがある/
冷却塔は保守点検し冷却水の水質を維持する
イラストで学ぶ パッケージ形空調機
第3章 給排水衛生設備の基礎知識
イラストで学ぶ 給排水衛生設備
イラストで学ぶ 給水設備の給水方式
1.給排水衛生設備とはどのような設備か
給排水衛生設備は生命を維持し健康を保持する/ビルの給排水衛生設備/
上水道より給水を受け下水道に排水する/給水には使用目的により上水と雑用水がある/
給水設備は建物で必要とする水を供給する/需要家は水質管理を行い水質基準を維持する
2.給水設備にはいろいろな給水方式がある
給水方式には水道直結方式と受水槽方式がある/水道直結増圧方式・ポンプ直送方式/
高置水槽方式は重力により給水する/圧力水槽方式は圧縮空気圧力により給水する/
高層ビルの給水方式のいろいろ
3.給水設備の給水制御回路
高置水槽方式の給水制御とはどういう制御か/
高置水槽方式給水制御回路構成機器の機能と動作/揚水ポンプの運転動作順序/
揚水ポンプの運転動作図/揚水ポンプの停止動作順序/揚水ポンプの停止動作図
4.給湯設備は湯を供給する
給湯設備にはどのような方式があるのか/局所式直接加熱給湯方式/
中央式間接加熱給湯方式/ボイラー利用中央式間接加熱給湯方式/
給湯設備の加熱機器にはいろいろある/給湯配管の考慮すべき事項
5.衛生器具は給排水を必要とする箇所に設ける
衛生器具とはどういう器具か/大便器の形式とその給水方式―水受け容器―
大便器の洗浄方式―水受け容器―/小便器の形式と洗浄方式―水受け容器―
洗面器の形状と取付け方式―水受け容器―/浴槽と給水栓の種類
6.排水設備は排水を処理する
排水にはこんな種類がある/排水の種類による排水方式/排水方法による排水方式/
重力式排水方式による排水配管/排水配管施工の留意事項
機械式排水方式の排水制御回路
7.排水設備にはいろいろな機能がある
直接排水と間接排水/排水設備にトラップはなぜ必要なのか/
管トラップはサイホン式トラップに属する/
隔壁トラップは非サイホン式トラップに属する/トラップはこのような原因で破封する/
阻集器は排水中の有害物質の流下を阻止する
8.排水の通気設備は排水の流れを円滑にする
排水の通気設備とはどういう設備か/なぜ排水管内の気圧は変動するのか/
通気方式にはどのような種類があるのか/通気系統は種々な機能をもつ通気管よりなる/
排水配管・通気配管系統はどうなっているか/地下階での排水は排水槽に貯留する
9.排水処理は河川などの水質汚濁を防ぐ
排水を河川などに放流すると水質汚濁を生じる/公共用水域への排水基準/
排水の汚染度を示す指標項目/汚水処理に係わる微生物/
大腸菌群と残留塩素による消毒効果判定
10.浄化槽は汚水・生活雑排水を浄化する
単独処理浄化槽と合併処理浄化槽がある/浄化槽は生物化学的処理により浄化する/
生物学的処理には好気性処理と嫌気性処理がある/
生物膜法は担体に微生物を繁殖させ分解する/活性汚泥法は微生物を浮遊させ分解する/
嫌気ろ床接触曝気方式の浄化槽
イラストで学ぶ 給湯設備の給湯方式
第4章 給排水衛生設備のメンテナンス
1.給水設備のメンテナンス
ビルなどでの飲料水の水質は所有者が維持する/給排水衛生設備の維持管理に関連する法令/
特定建築物における飲料水は水質管理する/貯水槽等飲料水に関する設備は点検する/
貯水槽は清掃する/飲料水系統配管は維持管理する
2.給湯設備のメンテナンス
給湯設備は湯を必要箇所に供給する/給湯設備は維持管理し汚染を防止する/
給湯温度を管理するとともに滞留水を防止する/給湯設備は清掃し水質検査をする/
貯湯槽は法令により性能検査を受ける/浴場施設は衛生的環境を確保する
3.排水槽のメンテナンス
排水槽は地階で生ずる排水を貯留する/排水槽の悪臭・衛生害虫の発生を防止する/
排水槽清掃のために事前準備をする/排水槽内を清掃する/
排水ポンプは適切に運転し貯留水腐敗を防止する/
排水槽の発生障害は原因を追究し対策をとる
4.衛生器具・排水関連設備のメンテナンス
衛生器具は清掃し清潔を保つ/大便器を清掃する/小便器・洗面器を清掃する/
排水トラップを清掃する/グリース阻集器を清掃する/排水管を清掃する
5.浄化槽のメンテナンス
浄化槽管理者は浄化槽を管理する責任がある/浄化槽管理者は浄化槽の保守点検を行う/
浄化槽の使用に関する準則/浄化槽の保守点検の技術上の基準/
浄化槽の清掃の技術上の基準/浄化槽管理者は浄化槽の法定検査を受ける
イラストで学ぶ 排水方式
索引
ビル管理15の心得
1メンテナンスは安全第一
2メンテナンスは重点主義で
3目標を決めて計画的な実施
4生きた点検基準を作ろう
5日常点検は手まめに
6設備をたいせつにする習慣を身につけよう
7温度,湿度やちり,ほこりに注意
8うまず,たゆまず勉強と経験を積み上げよう
9五感をフルに使って名診断
10記録や資料を整備
11メンテナンスの経験を新設備に生かそう
12仕事の改良に終わりなし
13予備品管理に注意し,いつでも使えるように
14メンテナンスの効果の表し方を研究しよう
15非常のときの処置を常に日ごろから訓練しておこう