令和2年版 演習所得税法
はしがき
本協会に所属する学校は、令和2年度は207校に及び、企業で経理事務を担当する人や、将来税理士などの職業会計人になる人の養成に携わっています。本協会は、簿記会計の実践面において大きな影響力を持つ税法の学習を、経理学校の正式科目として普及するよう長年努力を続けてまいりました。
このため、本協会では毎年2回、所得税法についての能力検定試験を1級から3級に分けた形で実施し、その合格者には本協会の合格証書を授与しています。幸い、その普及率・合格率も徐々に向上しています。
わが国の税制は、納税者の一人一人が法律に定められたルールに従って、申告・納税を自主的に行う申告納税制度を基本としています。その税法が難しい法律であり、若い生徒諸君にはなじみにくいということも事実ですが、学習用テキストとして平易に書かれた解説書があれば、大分勉強しやすくなるのではないかと考えられます。
そこで、株式会社清文社のご協力を得て本協会で作成したのがこの「演習所得税法」テキストになります。発刊以来、全国各地の会員校にてご利用をいただき、好評を博しています。
本書は、初級用テキストである「入門税法」及び中級用テキストである「演習法人税法」「演習消費税法」と姉妹書になっており、「演習法人税法」「演習消費税法」と同様、「入門税法」で一応の税法予備知識を習得された方のために作成されています。
また、読む勉強と同時に、問題を解くことにより実力を養っていただくことを狙いとし、各章に演習問題を、最終章に総合演習問題を配置しました。問題の水準については、本協会の所得税法検定試験の2級ないし3級程度としています。
なお、参考までに巻末には本協会の所得税法能力検定試験の試験規則・級別出題区分表と、令和元年10月実施の試験問題の2級及び3級を掲載しました。読者諸氏の能力にあった検定試験をできるだけ多くの方が受験され、能力を確かなものとされるようお薦めする次第です。
令和2年3月
公益社団法人 全国経理教育協会
(注)1 本書印刷日現在、令和2年度の税制改正法案は、国会で審議中ですが、学習の便を考え、あえて法案の段階にて作成としたことをご了解いただきたく存じます。
2 本書は所得税についての基本的な事項の理解を主眼として作成しているため、復興特別所得税についてはないものとしています。復興特別所得税については、第二十章で解説しています。
目次
第一章 所得税のあらまし
第一節 税金の中の所得税の位置
第二節 所得税の特色
1所得の種類によって税金の計算方法が異なる
2総合課税と分離課税
3人的控除が認められる
4税率は累進税率である
5簿記と所得税
●所得の区分と所得税計算のあらまし(令和2年分)
第二章 納税義務者と課税所得
第一節 所得税の納税義務者
1個人である納税義務者
2法人である納税義務者
3源泉徴収義務者
第二節 非課税所得と免税所得
1非課税所得の内容
2所得税が免除される所得
第三節 所得の帰属
1実質所得者課税の原則
2信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属
第四節 納税地
第三章 利子所得
第一節 利子所得の意義と利子所得の金額の計算方法
1利子所得の意義
2利子所得に対する課税の方法
3利子所得の金額の計算方法
第二節 非課税となる利子所得
第四章 配当所得
第一節 配当所得の意義
第二節 非課税となる配当所得
第三節 配当所得の帰属年度
第四節 配当所得の金額の計算方法
1収入金額
2株式などを取得するための負債の利子
第五節 私募公社債等運用投資信託等の配当所得の分離課税等
第六節 確定申告を要しない配当所得
第五章 不動産所得
第一節 不動産所得の意義
1不動産の貸付けによる所得
2不動産の上の権利の貸付けによる所得
3借地契約等によって受け取る権利金と不動産所得との関係
第二節 不動産所得の金額の計算方法
1総収入金額
2必要経費
第六章 事業所得
第一節 事業所得の意義
第二節 事業所得の金額の計算
第三節 総收入金額
1収入金額の計上時期
2収入金額の範囲と計算
第四節 必要経費の計算
1主な必要経費と取扱い
2棚卸資産の評価計算
(1)棚卸資産の範囲
(2)棚卸資産の取得価額の計算のしかた
(3)棚卸資産の評価方法
(4)棚卸資産の評価方法の選定と変更手続
3減価償却資産の償却計算
(1)減価償却資産の範囲
(2)減価償却費の計算用語
(3)減価償却費の計算方法
(4)特別な減価償却費の計算
(5)減価償却の方法の選定と届出
<参考>減価償却資産の償却率表(抄)
4貸倒損などの取扱い
(1)貸金等の範囲
(2)貸倒れの判定
第五節 特別な所得計算の方法
1現金主義による所得金額の計算
2青色申告特別控除
第七章 給与所得
第一節 給与所得の意義
第二節 課税されない給与
第三節 経済的利益
第四節 給与所得の金額の計算方法
1収入金額
2給与所得控除額
3所得金額調整控除
4給与所得者の特定支出の控除の特例
第五節 給与所得と確定申告
第八章 退職所得
第一節 退職所得の意義
第二節 職所得の金額の計算方法
1収入金額
2退職所得控除額
3勤続年数の計算
第三節 源泉徴収税額の求め方
第四節 退職所得の分離課税
第九章 山林所得
第一節 山林所得の意義
第二節 山林所得の金額の計算方法
1給取入金額
2必要経費
3山林所得の特別控除額
第三節 山林所得の分離課税と五分五乗方式
第十章 讓渡所得
第一節 譲渡所得の意義
1資産の譲渡による所得で譲渡所得に含まれないもの
2時価で譲渡があったとみなされる場合
3借地権の設定による権利金の取扱い
4国外転出時課税制度
5非課税となる譲渡所得
第二節 譲渡所得の区分
1土地建物等の譲渡所得の分離課税
2総合課税の譲渡所得
3譲渡所得の短期と長期の区分のまとめ
第三節 譲渡所得の金額の計算方法
1土地建物等の譲渡所得の金額
2総合課税の譲渡益の金額
3譲渡所得の総収入金額
(1)総収入金額の収入すべき時期(譲渡の時期)
(2)無償又は低額で資産を譲渡した場合
4譲渡所得の必要経費
(1)取得費
(2)改良費
(3)譲渡費用
5資産の譲渡代金の回収不能等の場合の所得計算の特例
6譲渡所得の特別控除
第四節土地建物等の譲渡所得の計算上生じた損失
第十一章 一時所得
第一節 一時所得の意義
第二節 一時所得の金額の計算方法
第十二章 雜所得
第一節 雜所得の意義
第二節 雑所得の金額の計算方法
第十三章 課税標準と損益の通算
第一節 課税標準(所得金額給合)
第二節 損益の通算
第三節 純損失又は雑損失の繰越控除
1純損失の繰越控除
2雜損失の繰越控除
第四節 純損失の繰戻控除
第十四章 所得控除
第一節 維損控除
第二節 医療費控除
第三節 社会保険料控除
第四節 小規模企業共済等掛金控除
第五節 生命保険料控除
1一般生命保険料
2介護医療保険料
3個人年金保険料
第六節 地震保険料控除
第七節 寄附金控除
第八節 障害者控除
第九節 寡婦(寡夫)控除
第十節 勤労学生控除
第十一節 配偶者控除
第十二節 配偶者特別控除
第十三節 扶養控除
第十四節 基礎控除
第十五 所得控除の順序
●令和2年分所得税の各種控除額一覽
第十五章 税額の計算
第一節 所得税の税率
第二節 課税所得金額に対する税額の計算
第三節 課税山林所得金額に対する税額の計算
第四節 課税退職所得金額に対する税額の計算
第五節 分離課税の譲渡所得の税額の計算
課税長期譲渡所得金額に対する税額
第十六章 税額控除
第一節 配当控除
第二節 住宅の取得等に係る税額控除
1住宅借入金等特別控除
2特定増改築等住宅借入金等特別控除
3住宅耐震改修特別控除
4住宅特定改修特別控除
5認定住宅新築等特別控除
第三節 源泉徴収税額
第十七章 所得税の申告、納付、還付
第一節 予定納税
第二節 確定申告
第三節 修正申告と更正の請求
第四節 所得税の延納
第五節 所得税額の還付
第十八章 青色申告制度
第一節 青色申告の要件
第二節 承認と却下
第三節 承認の取消し
第四節 青色申告の取りやめ等
第五節 備付帳簿書類等
第六節 青色申告の特典
第十九章 所得税の源泉徴収と申告・納付
第一節 源泉徴収される所得とその概要
第二節 申告納税
1源泉徴収だけで課税関係が完結し、確定申告を要しない所得
2給与所得者の確定申告
3退職所得のある人の確定申告
4公的年金等に係る雑所得のある人の確定申告
5所得税の還付を受ける場合の確定申告
6納付の方法
第三節 年末調整
第二十章 復興特別所得税の概要
1課税標準
2基準所得税額
3税率
4復興特別所得税の課税標準の端数計算
5復興特別所得税の確定金額の端数計算及びその端数処理
6復興特別所得税額の申告
7納付
8源泉徴収
第二十一章 総合演習問題
公益社団法人 全国経理教育協会主催 所得税法能力検定試験
○令和2年度所得税法能力検定試験受験要項
○試験規則
○実施要項
○所得税法能力検定試験級別出題区分表
○合和元年10月実施試験問題