コンピュータグラフィックス [改訂新版]
はじめに
本書は、公益財団法人画像情報教育振興協会(CG-ARTS)が高度情報化社会にふさわしい画像情報教育を実現するために長年に渡って展開してきた諸活動の一環として、2004年9月に出版した書籍「コンピュータグラフィックス』の改訂新版である。
旧版も、当時のコンピュータグラフィックス(CG)技術を総合的に理解させるために周到に設計された標準カリキュラムにそって編纂されており、発刊以来多くの読者に利用していただいてきた。しかし、その後のCG技術の進展には目を見張るものがあり、その状況を極力反映すべく、約10年ぶりに改訂を試みた次第である。
旧版と同様に、本書は8つのchapterとappendixから構成されている。全体は50節・299項に分かれているが、旧版と比較して新規に5節・45項が追加され、103項が加筆・修正されており、総頁数も90頁近く増えている。
新版でも、旧版で好評だった全ページカラー印刷の利点を活かすとともに、傍注において、補足説明や、互いに家接に関係する説明箇所の明示、用語の定義、数式の解釈などを通強し、参考文献・図書も一層充実させている。さらに、旧版に対して寄せられた読者諸氏からのフィードバックも踏まえ、全編にわたってより正確かつ分かりやすい記述を心掛け、図版のリデザインや紹介する最新作品の吟味にも手間を惜しまなかった。
chapter1はディジタルカメラを使った撮影を例にとって、画像生成のしくみをそこに関わる技術を俯瞰し、本書全体の地図としての役割を担っている。続くchapter2から5までの4つのchapterがCG技術のコアにあたる。chapter6では高度な画像生成を目指すうえで欠かせない画像処理技術に関する基礎事項が説明されている。
より詳しい内容については、姉妹編の「ディジタル画像処理」も参照してほしい。chapter7は、旧来の枠組みに収まらない、視覚に訴える新しいCG技術の可能性を示している。またchapter8からは、CGハードウェアとソフトウェアに関する最新の状況を知ることができる。さらにappendixでは、きわめて重要な関連分野である知覚と知的財産権の基本事項、そしてCGの歴史がまとめられ、映像を生成・共有する際の基本的マナーや知識を学習することができる。
本書はCG技術の標準的な教科書を目指して編集されているが、同時にCG-ARTSが実施している「CGエンジニア検定エキスパート」を受験しようとする方のための指南書の役割も果たしている。同検定は、CGの技術的側面に対する知識の理解度を測る検定試験であり、これまでにもさまざまな教育機関や企業等で活用されてきている。本書と合わせて、学習達成度の確認等に活かしていただければ幸いである。
最後に、多忙きわまりないなか多くの時間をかけてくださった執筆者ならびに編集委員の皆様、掲載作品をご提供いただいた皆様、原稿の校正にあたり、貴重なコメントを頂載した皆様、本書をまとめるにあたり、随所で参考にさせていただいた協会発行の既刊書籍の執筆者や編集委員の皆様、そして執筆・福集の大幅な遅れを取り戻すために献身的に作業してくださった程集担当者ならびに協会の皆様に、衷心より謝意を表します。
2015年3月「コンピュータグラフィックス」編集委員会
編集委員長 藤代一成
編集副委員長 斎藤隆文
編集副委員長 乃万司
contents
1CGとディジタルカメラモデル
1-1ディジタルカメラモデル
1-1-1ディジタルカメラでの撮影
1-1-2ディジタルカメラモデルからみたCG技術
1-2ディジタル画像の基礎
1-2-1画像のディジタル化
1-2-2ベクタ表現とラスタ表現
1-3CGと画像処理
1-3-1ディジタルカメラモデルと画像処理
1-3-2CGにおける画像処理の利用
2座標変換とパイプライン
2-12次元座種変換
2-1-12次元座標系
2-1-22次元図形の基本変換
2-1-3同次座標
2-1-42次元座根系における合成変換
2-1-52次元アフィン変換
2-1-6補足説明/変換行列の表記法
2-23次元変換
2-2-13次元座標系
2-2-2簡単なモデリング
2-2-3同次座標と3次元の基本変換
2-2-43次元座標系における合成変換
2-2-5補足説明/同次座標による平行移動の行列表現
2-3投影
2-3-1投影の原理
2-3-2ビューボリュームと投影
2-3-3投影のさまざまな性質
2-4ビューイングバイブライン
2-4-1ビューイングパイプラインの原理
2-4-2ビューイングパイプラインの利用
2-4-3クリッピング
2-4-4モデリング
2-5描画パイプライン
2-5-1典型的な描画パイプライン
2-5-2シェーダによる描画
2-5-3描画パイプラインとさまざまな手法
3モデリング
3-1形状モデル
3-1-1ワイヤフレームモデル
3-1-2サーフェスモデル
3-1-3ソリッドモデル
3-1-4形状モデルと表示
3-2ソリッドモデルの形状表現
3-2-1CSG表現
3-2-2境界表現
3-2-3スイープ表現
3-3境界表現のデータ構造と局所変形
3-3-1境界表現のデータ構造
3-3-2オイラー操作
3-4曲線・曲面
3-4-1曲線・曲面の表現形式
3-4-22次曲線
3-4-3パラメトリック曲線
3-4-4パラメトリック曲面
3-4-5レンダリングにおける曲面の扱い
3-5ポリゴン曲面の表現
3-5-1ポリゴン曲面
3-5-2分割曲面
3-5-3詳細度制御
3-5-4平滑化処理
3-5-5パラメータ化
3-5-6セグメンテーション
3-5-7電子透かし
3-5-8形状検索
3-6ボリュームを用いた形状表現
3-6-1ボクセル
3-6-2八分木
3-6-3メタボール
3-6-4陰関数表現
3-6-5等値面抽出
3-7そのほかの形状表現法
3-7-1パーティクル
3-7-2ポイントベーストモデリング
3-7-3フラクタル
3-8補足説明
3-8-1補足説明/補集合を用いた集合演算
3-8-2補足説明/代数曲線・代数曲面と一般式
3-8-3補足説明/超2次曲線
3-8-4補足説明/2項定理を用いたド・カステリョのアルゴリズムの導出
3-8-5補足説明/2次曲面・トーラス面
3-8-6補足説明/除関数曲面の法線ベクトル
3-8-7補足説明/描画ソフトウェアで用いられる3次ベジェ曲線
3-8-8補足説明/細分割曲面の具体例
4レンダリング
4-1写実的表現法
4-1-1写実的表現のレベル
4-1-2リアリティの要素
4-1-3写実的表現のためのモデリング
4-1-4レンダリングを構成する処理
4-2隠面消去
4-2-1バックフェースカリング
4-2-2隠面消去法
4-2-3優先位アルゴリズム
4-2-4スキャンライン法
4-2-5Zバッファ法
4-2-6レイトレーシング法
4-3シェーディング
4-3-1シェーディングの基礎と概要
4-3-2環境光
4-3-3拡散反射
4-3-4鏡面反射
4-3-5完全面反射・透過・屈折
4-3-6錯乱・減衰
4-3-7スムーズシェーディング
4-4影付け
4-4-1本影と半影
4-4-2平行光線・点光源による影
4-4-3大きさをもつ光源による影
4-5マッピング
4-5-1マッビングの概要
4-5-2テクスチャマッピング
4-5-3バンプマッピング
4-5-4環境マッピング
4-5-5ソリッドテクスチャリング
4-6イメージベーストレンダリング
4-6-1イメージベーストレンダリングの概要
4-6-2テクスチャマッピングアプローチ
4-6-3画像再投影アプローチ
4-6-4パノラマ画像アプローチ
4-6-5ビューモーフィングアプローチ
4-6-6レイデータベースアプローチ
4-6-7イメージベーストライティング
4-7大域照明計算
4-7-1レンダリング方程式
4-7-2ラジオシティ法
4-7-3モンテカルロ法に基づくレンダリング技法
4-7-4マルコフモンテカルロ法に基づくレンダリング技法
4-8補足説明
4-8-1補足説明/隠線消去
4-8-2補足説明/レイトレーシング法におけるレイと物体との交差判定
4-8-3補足説明/放射量と測光量の対比
4-8-4補足説明/レンダリング方程式
4-8-5補足説明/ラジオシティ法
5アニメーション
5-1CGアニメーションの構成
5-1-1アニメーションとは
5-1-2仮現運動とコマ撮り
5-1-3さまざまなアニメーションの表現形態
5-1-4CGアニメーションに適用される各種アニメーション技法
5-1-5カメラワーク
5-2キーフレームアニメーション
5-2-1キーフレーム法とスケルトン法
5-2-2キーフレームの補間
5-2-3形状変形アニメーション
5-2-4自由形状変形
5-3手続き型アニメーション
5-3-1進化・成長のアニメーション
5-3-2自然現象のアニメーション
5-3-3パーティクルの応用
5-3-4AIを利用したアニメーション
5-4キャラクタのアニメーション
5-4-1フォワードキネマティクス
5-4-2インバースキネマティクス
5-4-3パスアニメーション
5-4-4モーションキャプチャデータによるアニメーション
5-4-5筋肉変形アニメーション
5-4-6表情のアニメーション
5-4-7布地のアニメーション
5-4-8髪の毛のアニメーション
5-4-9群集(フロック)アニメーション
5-5物理ベースアニメーション
5-5-1体の物理シミュレーション
5-5-2弾性体の物理シミュレーション
5-5-3衝突判定
5-6リアルタイムアニメーション
5-6-1リアルタイムアニメーションの手法
5-6-2レンダーマンとリアルタイムシェーダー
5-6-3ゲーム物理
5-7実写映像との合成
5-7-1実写映像との合成時の条件
5-7-2カメラバラメータの整合
5-7-3照明条件の整合
6画像処理
6-1ディジタル画像の表現
6-1-1画像のダイナミックレンジと階調表示
6-1-2色の表現
6-1-3画像の圧縮とファイル形式
6-22次元画像の生成と描画
6-2-1ラスタ化による図形の描画
6-2-2画像生成時のアンチエイリアシング
6-2-3塗りつぶし処理
6-2-4ブラシ処理
6-2-5グラデーション生成
6-3画ごとの濃淡変換と色変換
6-3-1ヒストグラム
6-3-2トーンカーブ
6-3-3各種の濃淡変換
6-3-4西表ごとの変換による特殊効果
6-3-52値化
6-3-6色変換
6-3-7擬似カラー
6-4領域に基づく画像変換(空間フィルタリング)
6-4-1空間フィルタリング
6-4-2平滑化
6-4-3エッジを保存した平滑化
6-4-4エッジ抽出-
6-4-5鮮鋭化
6-4-6領域に基づく変換による特殊効果
6-5画像の何学的変換
6-5-1画像の何学的変換
6-5-2画像の再標本化と補間
6-5-3本化時のアンチエイリアシング
6-6画像の編集
6-6-1画像間演算
6-6-2画像のセグメンテーション
6-6-3イメージモザイキング
6-6-4自然な画像サイズ変更
6-6-5接続が自然な画像合成
6-6-6画像の領域補完
6-6-7画像からのテクスチャ合成
6-6-8深層学習による画像編集
6-7補足説明
6-7-1補足説明/画像ファイル形式一覧
7視覚に訴えるグラフィックス
7-1コンピュテーショナルフォトグラフィ
7-1-1カメラの基礎―露出
7-1-2カメラの基礎一フォーカス
7-1-3コンピュテーショナルフォトグラフィの考え方
7-1-4光線の記録とその利用
7-1-5符号化撮像
7-2ノンフォトリアリスティックレンダリング
7-2-1NPRの概要と特徴
7-2-2NPRの目的と種々の表現技法
7-2-3線を入力とするNPR
7-2-42次元画像を入力とするNPR
7-2-53次元形状を入力とするNPR
7-2-6形状の表現
7-2-7アニメーションへの対応
7-2-8NPAの描画実現方法の分類
7-3可視化
7-3-1サイエンティフィックビジュアライゼーション
7-3-2可視化処理の流れとデータマッピングの選択
7-3-33次元スカラデータの可視化
7-3-4ベクトル・テンソルデータの可視化
7-3-5情報可視化
7-3-6周辺技術との接点
8CGシステム
8-1CGシステム
8-1-1CGシステムの応用
8-1-2CGシステムの構成
8-1-3コンピュータネットワーク
8-2CG用ソフトウェア
8-2-1ソフトウェアの構成
8-2-2プログラム記述言語
8-2-3グラフィックス用API
8-2-4CGアプリケーションソフトウェア
8-2-53次元モデル記述言語・フォーマット
8-3リアルタイム3次元CGシステム
8-3-1並列処理
8-3-23次元CGハードウェアの変遷
8-3-33次元CGハードウェア上での処理の流れ
8-3-4GPUを利用したCG処理
8-3-5CGハードウェアの性能評価
8-43次元データ入力装置
8-4-13次元ディジタイザ
8-4-2モーションキャプチャ装置
8-4-33次元座標入力装置/フォースディスプレイ
8-4-4関節角入力装置
8-53次元データ出力装置
8-5-1メガネ方式両眼立体視
8-5-2メガネなし方式裸眼立体視
8-5-3ヘッドマウントディスプレイ
8-5-43次元ディスプレイのためのフォーマット
8-5-5ホログラフィ
8-5-6ボリュームディスプレイ
8-5-7切削加工装置
8-5-83Dプリンタ
8-6記録メディア
8-6-1画像記録メディア
appendix
a-1知覚
a-1-1服の構造と視野
a-1-2色の見え
a-1-3形の見え
a-1-4大きさの恒常性
a-1-5動きの見え
a-1-6見えの3次元性
a-1-7視線の動き
a-2知的財産権
a-2-1知的財産権の概要
a-2-2著作物利用のルールと権利処理の流れ
a-2-3著作権侵害
a-2-4©(マルシー)マークによる著作権表示
a-3CGの歴史
a-3-11940年代~1960年代 CGの誕生
a-3-21970年代前半 CG技術の実用化に向かって
a-3-31970年代後半~1980年代 グラフィックス製品の怪立と実用化
a-3-41990年代~現在 CGの産業応用
参考文献・参照文献
index