ビジネス×数学=最強
目次
第1章 数学的「情報整理」術 まとめ上手になろう
【第1節】 まずは分類のイロハから【MECEな分類】
【第2節】 新しい発想を生み出す整理1【掛け算的整理】
【第3節】 新しい発想を生み出す整理2【次元を増やす】
【第4節】 目標別資料作成法【グラフの使い分け】
【第5節】 数字を使って説得力をもたせる【数値化】
【第6節】 「暑い日はビールが売れる」は本当か?【相関係数】
第2章 数学的「発想」術 ひらめき上手になろう
【第1節】 数字の代わりに文字を使う本当の理由【一般化】
【第2節】 「過去の経験」が有難かったり迷惑だったりする理由【帰納】
【第3節】 「上司の説教」が有難かったり迷惑だったりする理由【演繹】
【第4節】 「答え」の見つけ方【必要条件と十分条件1】
【第5節】 白か黒かを確実に判断する方法【必要条件と十分条件2】
【第6節】 論理的(数学的)であるための最初の一歩【定義の確認】
第3章 数学的「問題解決」法 生きかた上手になろう
【第1節】 隠れているものを見る【余事象の利用】
【第2節】 ふたつめの「逆の視点」【立場を変える】
【第3節】 否定から真理を導く【背理法】
【第4節】 ミクロの視点をもつ【微分】
【第5節】 マクロの視点をもつ【積分】
【第6節】 最悪を回避する【ゲーム理論】
おわりに
おすすめブックガイド
はじめに
あなたにとって「数学力」とは何ですか?多くの方が数学と聞いて連想するのは、方程式、関数、図形、ベクトル、確率、数列、微分・積分……などの単元名と、それに関連する数式やグラフのようです。
あなたはどうですか?「数学力」とは数学の問題が解ける力のことだと思っていませんか?本書の目的は、これが誤解であることに気づいてもらうことと、あなたがすでにもっている「数学力」を使えるようになってもらうことです。
数学力とは、単に関数や方程式やベクトルの問題が解ける力のことではなく、物事を論理的に考えられる力、すなわち、論理力のことです。極言すれば、三角関数も、2次方程式も、等差数列も、この能力を磨くための道具にすぎません。
では「論理力」とはいったい何でしょうか?一概にはいえないかもしれませんが、
・人に自分の考えが伝えられる
・人のいっていることがわかる
という2つの力のことだと私は思っています。
人の上に立って自分の考えを皆に伝え、人々を引っぱっていくためには、自分の考えを相手にきちんと伝えられる論理力が不可欠です。また、たとえ自分と考え方がちがっても人の意見が理解できるのも論理力のなせる業です。人間は有史以前より主義主張のちがいから多くの争いを生んできましたが、論理力をもって、相手の考えることや欲していることが理解できれば、そして自分の考えを伝えることができれば、悲惨な争いの多くは未然に防げたでしょう。
私は数学教師としていささか針小棒大にすぎますが、数学を通して論理力を身につけた人が増えることは世界平和につながると信じています。こんなふうに書くと、「方程式を解いたり、図形の性質を証明したりしなくても、論理力を磨くことはできるんじゃないの?」という声が聞こえてきます。たしかにそうかもしれません。でも、論理力を効率よく育てるためには、まずは誤解が入り込む余地のない言葉=数学を使って論理を積み上げる訓練をするのが最も近道なのです。だからこそ、世界中の学校で文系、理系の区別なく数学は必須科目になっています。
本書の使い方
ヒラメキを必然に変えるために
数学力=論理力と書いてきましたが、論理的に考えることが理系の専売特許だなんて私はさらさら思っていません。むしろ、文系の人のなかに眠る数学力=論理力を呼び覚ましてもらいたいといつも思っています。だからこそ私は本書の筆を執りました。
いま、「そんなこといったって……数式を見ると、頭痛がしてくるし……」と思ったあなた、ご安心ください。本書には数式はほとんど登場しません(わずかに登場するにしても中学レベル以下です)。その代わり、できるだけ読者の皆さんの身近にある日常を引き合いに出し、そのなかに隠れている数学的なものの考え方(=論理的な考え方)を紹介するように心がけました。
そして何より、「数学的なもの」を敬遠しがちな方にも読みやすいように、イラストや図版を多用しながら「わかりやすさ」には最も配慮して書いたつもりです。また、各節(全部で18節あります)の最後には、会議の資料、プレゼン、マーケティング、商品開発…..といったビジネスに直結する数学的スキル、さらには、接待、上司の説教、飲み会…..といった仕事上のごく日常的なシーンを切り口に、「問題」を設けてあります。ぜひ、クイズに答えるような気持ちで考えてみてください。
繰り返しますが、本書に紹介する「数学的」な考え方のほとんどは、すでにあなたのなかにあるはずです。しかし、多くの方は、それに対して無意識です。無意識のうちに数学的に考えることで得られたアイディアは、本人にとっても、周囲にとってもヒラメキに感じられ〈不確実なものですが、意識して数学的に考えられるようになれば「ヒラメキ」は〈必然のもの〉になります。
ビジネスのあらゆるシーンで意識的に数学力を発揮できるようになれば、これほど心強いことはないでしょう。
いま、この本を手にしてくれているあなたにも、ぜひそうなってもらいたいタイトルに「最強」という言葉を使ったのは、そんな私の願いと期待の表れです。本書を読み終えたとき、「あ、この考え方は「数学的」なのか。これからは意識して使ってみよう」と思ってもらえれば、筆者としてこれ以上の喜びはありません。