2020年 大原の公認会計士受験シリーズ 短答式対策 財務会計論(計算)
まえがき
公認会計士試験の試験制度が、現在のような短答式試験と論文式試験の2段階選抜方式に改訂されてから、久しく時が経過しました。過去10年間の短答式試験(簿記)の過去問を振り返ってみますと、なかなか一言では特徴を言い表せないというのが本音です。それでも、次のような出題傾向があるということに異論はないと思われます。
第1に、基本的な勉強をしっかりやっておけば、確実に正答できる問題が多く出題されているということです。毎年各論点からまんべんなく問われていますので、各論点の基本部分をしっかりと押さえていくことが重要です。第2に、その場でじっくり考えなければ正答できない応用問題も少なからず出題されているということです。このことは、臨機応変さや時間配分の見極め等、簿記という科目の実力以外に、合理的かつ効率的な問題解法能力が要求されているということを意味しています。
これらの点を考慮し、また、近年の短答式試験の傾向を踏まえると、短答式試験合格のためには、基本的な論点が理解できていればことさら短答式対策は要らないのでは…とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら短答式試験は、明らかに論文式試験とは出題傾向が違います。予め答え(選択肢)が用意されており、その中から正答を選択しなければならないという厳しい面もあれば、逆に全く手も足も出ない問題であっても、選択肢を5つとすれば5分の1の確率で正答を選択できるという面白い面もあります。ただし、後者については、その問題で他の受験生の皆さんに差をつけられてしまうという怖い面もあることに注意しなければなりません。このように考えていくと、短答式試験に対する対応力は人それぞれ異なる、すなわち、向き不向きがあると言えるでしょう。そうすると、特に不向きだと感じる受験生の皆さんにとっては、早めに短答式試験の出題傾向に慣れ親しんでおくのが得策だと思われます。
今回の『短答式対策財務会計論(計算)2020年版』は、最近の短答式試験の出題傾向をふまえて編集させていただきました。近年の試験傾向に鑑み、連結会計や企業結合会計について増補しています。本書を用いて学習することにより、受験生の皆さんの短答式試験対策が万全なものとなるよう、心から願ってやみません。
2020年(令和2年) 2月
資格の大原 公認会計士講座
財務会計論 スタッフ一同
本書の特徴と構成
最新の会計基準を含む、出題可能性の高い論点を網羅
・従来の頻出論点だけでなく、最新の会計基準も含め全100題を厳選。
試験傾向に対応した問題演習に最適
・試験傾向に対応した問題演習を行うことにより、短答式試験の得点に直接結びつく学習が可能。
本書の使い方
短答式試験の対処方法として、最も重要なことは、論文式と同様に、正確な知識を網羅的に身につけることです。また、短答式試験においては、論文式試験では出題されにくい分野からの出題も大いに予想され、様々な出題形式に慣れることも必要です。
本書には、バラエティに富んだ出題形式で各種の問題が掲載されていますので、本書で十分に練習を積んでください。そうすれば、常日頃の学習においても、どこをどのようにおさえておけば短答式試験対策として有効かが体得されてくるでしょう。そして、仕訳や計算結果の正しいものを選択させる問題に対応するためには、規定の文言や理論を、具体的な計算方法及び仕訳にまでおろしておさえておく必要があります。
最後に、限られた時間内で正解を導くためには、正攻法の勉強だけでは不十分だと思われます。短答式の問題の正答を早く見つけるためのテクニックといったようなものも必要不可欠といえるのではないでしょうか。そこで、以下、そのテクニックの例をいくつか示しておきます。
a.難問に遭遇したと判断した場合は、チェックマークをして直ちに後にまわす。
b.選択肢のうちで正しいもの(もしくは誤っているもの)”の個数を選ばせる問題の場合、選択肢を読んでいるうちに、正しいものの個数を数えるのか、誤っているものの個数を数えるのか勘違いしてしまうことがある。したがって、選択肢を読み終わった段階で数える前に、もう一度、問題文がどちらの解答を要求しているのかを確認する。
c.選択肢を利用して答えを絞り込むことができる場合がある。例えば、正しいもの2つの組合せを選ぶ場合、自分で正しいと思うものが3つあっても、そのうちの。つが含まれている選択肢が1つしかなければ、それが正解であると判断できる。
d.確実な知識を優先させて誤った選択肢を消去していくこと。
例えば、以下のようなa~dの正しい組合せの問題があったとする。
ロシアの通貨は(a)
アメリカの通貨は(b)
日本の通貨は(c)
欧州の通貨は(d)
ここで、もし、bとcについては確実な知識があり、aとdについてはおぼろげな知識しかないとしたら、先にbとcだけを見て誤りの選択肢は消去してしまう。すなわち、選択肢の1、2、5はまず消去され、3、4についてのみaとdを検討するのである。このようにすることにより、より早く、より高い確率で正解に近づくことができる。
e.解釈によっては、正しいとも誤りともいえる文章が存在する場合には、作問者がそれを正しいと考えているのか誤りと考えているのかを選択肢から判断する。
例えば、以下のような問題があったとする。
文章a~dのうち正しいものの組合せとして適当なものを選べ。
文章a→明らかに誤りと判断されるもの。
文章b→明らかに正しいと判断されるもの。
文章c→正しいとも誤りとも判断されるもの。
文章d→明らかに誤りと判断されるもの。
選択肢:
1文章aと文章b
2文章bと文章c
3文章と文章d
4文章dと文章a
ひねくれて、正答なしと考えて番号を選択しないことのないようにすべきである。正解は2であることは明らかであり、この場合は、文章cを正しいと解釈する必要がある。
財務会計論(計算)出題論点一覧表
出題論点・テーマ | 2015年第Ⅰ回 | 2015年第Ⅱ回 | 2016年第Ⅰ回 | 2016年第Ⅱ回 | 2017年第Ⅰ回 | 2017年第Ⅱ回 | 2018年第Ⅰ回 | 2018年第Ⅱ回 | 2019年第Ⅰ回 | 2019年第Ⅱ回 |
商品完買 | ||||||||||
特殊商品買 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
棚卸資産の期末評価 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
現金及預金 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
債権·債務等 | ○ | |||||||||
貸倒れと貸倒引当金 | ○ | ○ | ||||||||
有価証券 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
デリバティブ取引・ヘッジ会計等 | ○ | ○ | ||||||||
有形固定資産 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
リース取引 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
無形固定資産 | ○ | ○ | ||||||||
研究開発費とソフトウェア | ○ | |||||||||
投資その他の資産 | ||||||||||
固定資産減損 | ○ | ○ | ○ | |||||||
線延資産 | ○ | |||||||||
社債 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
引当金 | ○ | ○ | ○ | |||||||
退職給付 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
資產除去債務 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
純資産 | ○ | ○ | ○ | |||||||
分配可能額の算定 | ○ | |||||||||
新株予約権と新株予約権付社債 | ○ | ○ | ||||||||
ストック・オプション | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
税金 | ||||||||||
税効果会計 | ○ | ○ | ○ | |||||||
外貨建取引 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
帳簿組織 | ○ | |||||||||
本支店会計 | ○ | ○ | ||||||||
製造業 | ||||||||||
本社工場会計 | ||||||||||
工事契約 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
個別キャッシュ・フロー計算書 | ○ | ○ | ||||||||
四半期財務諸表 | ○ | ○ | ○ | |||||||
会計上の変更及び誤謬の訂正 | ○ | |||||||||
1株当たり情報 | ○ | |||||||||
連結会計 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
企業結合 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
事業分離等 | ○ | ○ | ||||||||
連結キャッシュ・フロー計算書 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
セグメント情報 | ○ | ○ |
目次
問題編
解答・解説編
第1章 現金・預金
1現金の範囲
2銀行勘定調整表
3現金過不足
4現金預金総合
5当座借越・その他の預金
第2章 債権・債務
6手形
第3章 有価証券
7有価証券の評価(その1)
8有価証券の評価(その2)
第4章 有形固定資産
9減価償却
10固定資產の買換え
11スリース取引(その1)
12リース取引(その2)
13リース取引(その3)
14リース収(その4)
15減損会計(その1)
16減損会計(その2)
17減損会計(その3)
18資産除去債務(その1)
19資産除去債務(その2)
第5章 無形固定資産・繰延資産
20ソフトウェア
21無形固定資産総合
22繰延資産
第6章 社債・新株予約権
23社債(その1)
24社債(その2)
25新株予約権
26ストック・オプション(その1)
27ストック・オプション(その2)
28ストック・オプション(その3)
29新株予約権付社債
第7章 引当金
30貸倒引当金(その1)
31貸倒引当金(その2)
32貸倒引当金(その3)
33賞与引当金
34退職給付会計(その1)
35退職給付会計(その2)
第8章 資本
36分配可能額
37純資産の部の表示
38株主資本等变動計算書
第9章 商品売買
39一般商品売買(その1)
40一般商品完買(その2)
41売上原価(期末棚卸高)の算定
42売価還元平均原価法
43仕入諸掛り、売上原価の増減項目
44商品売買の記帳方法
45商品売買の逆進問題
第10章 特殊商品売買
46試用販売
47割賦販売
48割賦利息の处理
49試用販売・割賦販売
50委託販売
第11章 帳簿組織
51総論
52二重仕訳削除金額
53文章問題
54伝票会計
第12章 工事契約
55工事契約(その1)
56工事契約(その2)
第13章 本支店会計
57本支店合算の純利益
58外部公表用損益計算書売上原価
59支店分散計算制度
第14章 製造業・本社工場会計
60製造業
61当期製品製造原価
62内部利益
第15章 外貨建会計
63価証券の期末換算
64外貨建金錢債權債務期末換算
65為替予約(その1)
66為替予約(その2)
67在外支店の財務諸表項目の換算
68在外子会社の財務諸表項目の換算
第16章 企業結合・事業分離
69合併(その1)
70合併比率
71株式交換
72株式移転
73事業分離(その1)
74合併(その2)
75事業分離(その2)
76事業分離(その3)
第17章 連結会計
77利益剰余金の算定(その1)
78利益剰余金の算定(その2)
79持分の一部売却
80持分法
81評価差額の実現
82在外子会社の連結(その1)
83在外子会社の連結(その2)
84包括利益計算書
第18章 税効果会計
85税効果会計(その1)
86税効果会計(その2)
87連結税効果
88税効果会計(まとめ)
第19章 キャッシュ・フロー計算書
89個別キャッシュ・フロー計算書(その1)
90個別キャッシュ・フロー計算書(その2)
91個別キャッシュ・フロー計算書(その3)
92在外子会社のキャッシュ・フロー計算書
93連結キャッシュ・フロー計算書
第20章 1株当たり情報
941株当たり当期純利益(その1)
951株当たり当期純利益(その2)
第21章 その他
96金融商品
97繰延ヘッジと時価ヘッジ
98会計上の変更及び誤謬の訂正
99四半期財務諸表
100総合
解答(キリトリ用)