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建築3Dパース検定試験の公式テキスト

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目次 – 建築3Dパース検定公式ガイドブック

目次

第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
第8章
第9章

あとがき

建築情報技術研究所 (著) , 岡島 正夫 (編集)
出版社: メディアポート (2012/10/21)、出典:出版社HP

「建築3Dパース検定」に、ようこそ!

建築の「CGプレゼンテーション」を、普段の日常業務に取り込むには、まだすこし敷居が高く感じている方が多いと思います。しかし、3次元的表現は日々の暮らしのなかでは、様々なエンターテイメントとして急速に普及し、建築における3次元的表現としての建築パースも、身近なプレゼンテーションツールとして広まり始めています。

特に、住宅のような小規模の建築では、建築パースは、商業用の完成予想図というより、基本設計段階で、建築の素人である住み手に空間を理解してもらうためのものとして、建築設計や営業における日常業務として注目されています。2次元の図面では、なかなか建築の空間を捉えにくいものですが、3次元的に表現された建築パース画ならば、だれでも直感的に建築空間を理解することができるからです。

いままでは、高度な作画技法や表現力を駆使した建築パース画を作成するのは、それを修得・習熟するために大変な労力と長い経験を積んだプロフェショナルに限られていました。今では、建築パース作成用のソフトが普及し、だれでも手軽に建築パースを作成できるようになりました。建築パースへの門戸は広く開かれているのです。

建築パース画には、建築図面と異なり、建築技術だけでなく、絵画的要素としての表現力や、作者の芸術的センスも要求されます。そのため、今日まで、いわゆる「職人芸の世界」に閉ざされていました。
このように、感覚的な印象が評価の前提になっていることもあり、出来上がったパース画が、はたして、設計図面やスケッチから正しく建築空間を把握し、設計意図を充分に表現できているかどうか、それを判断する基準や指針がありませんでした。「建築3Dパース検定」は、そのようなパース技術の優劣を、出来るだけ客観的に判断することを趣旨とし、建築パース画の作成能力評価の指針となることを目指しています。

建築パースのプロフェッショナルの方はもちろん、CGや3Dモデリングに関心をお持ちの方、あるいは、建築設計の業務に携わってこられて、これからパースの自作を考えている方、等々、多くの方々が、建築プレゼンテーションという新しいジャンルでの技術の修得を目指して、この「建築3Dパース検定」に、チャレンジしていただき、「建築パースデザイナー」という新しいプロフェッショナルへの道を切り拓いていただきたいと思います。

2012年11月15日
建築3Dパース検定委員会/委員長 岡島正夫

建築情報技術研究所 (著) , 岡島 正夫 (編集)
出版社: メディアポート (2012/10/21)、出典:出版社HP

第1章

はじめに

「建築3Dパース検定」の第1回が2012年2月に実施されました。多くの参加者からレベルの高い作品が寄せられて、「建築パース」への関心の高さを、改めて知ることになりました。応募作品のなかから優秀作品を、金・銀・銅・佳作で表彰しました。表彰作品は、公式サイトhttp://www.pads.jp/awards/で公開していますので、ぜひご覧になっていただければと思います。受験応募作品作りに大いに参考になるはずです。

本書は、受験者の方々が、第1回目の検定実施直前の3ヶ月間の準備期間を有効に過ごしていただけるよう、10回に分けて、2011年11月18日から毎週金曜日に、パース検定のためのガイダンスを週刊で連載したものに手を加えたものです。受験参考書としてはもちろん、パース画作成のヒントとして、また、将来のパースデザイナーを目指す指針として、少しでもお役にたてればと思います。

建築3Dパース検定の趣旨

従来、ややもすると、主観的な判断で評価されがちなパース画を、できるだけ客観的な基準によって評価し、パース画作成に携わる方たちの技術と能力を、社会的職業価値(キャリア)として創出し、これを世間に定着させていこうという趣旨で、この検定は企画されました。

ここでいうパース画とは、もう少し範囲を狭めて建築の空間表現としてのパース画、すなわち、「建築パース」を対象としています。建築パースは、パソコンが普及する数十年前までは、後ほど詳しく述べることになりますが、伝統的な「遠近図法」あるいは「透視図法」による手書きのパース画が主流でした。しかし、CADや建築系3Dモデリング用ソフトウェアの発展と普及によって、いまや、パース画は、3Dモデリングのデータを元に、ソフトウェアを操作することによって、アウトプットとして容易に得られるようになりました。

ソフトウェアのアウトプットである以上、機械的に作画してくれる(見方を変えれば、「作画されてしまう」)こともあり、作業手順が容易になった分だけ、表現としてのアイデンティティが乏しくなりがちで、それをどう創出するかについては、作画者ひとりひとりの創意工夫が必要とされ、手書きのパース画の時代とは別の、新たな課題でもあります。

3Dモデリングの技術や、テクスチャマッピング、光源設定、レンダリング等々、パース画を完成させるための操作技術や利用技術に相当高度な技能を要することは当然ですが、さらに、それを空間表現としてどうフィニッシュするかという、芸術的センスと技術の両輪を兼ね備えた表現力が大きな鍵になってきます。

そこで、「3Dモデリングのデータを元に、ソフトウェアを駆使して、建築空間を立体的に表現した結果の出力画像としてのパース画」を作成する技術と能力、さらには表現力を問うものとしての検定という趣旨で、「建築3Dパース検定」という名称とし、3Dモデリングの基礎技術から建築空間の表現力までを、幅広く問うものとしました。

何を目指すか

さて、建築パースというと、多くの方が、マンションの販売広告などにある完成予想図のような、まるで実物を撮影したようなフォトリアルなCGを、思い浮かべることでしょう。

30年前から普及し始めたCADの技術によって、建築設計図面は、パソコンのデータとして作成されるようになり、さらにソフトウェアの飛躍的な向上によって、空間情報を3次元データとして取り扱うことも、日常的な建築設計業務のなかでは、さほど特別なことでもなくなってきています。3次元データでの空間情報がやり取りされるようになると、今までの仕事の仕方とは異なった方法が生まれ、また、新たな方法を生み出していかなければ、業務がうまく進まなくなることさえあります。

冒頭に述べた、「まるで実物を撮影したようなフォトリアルなCG」も、ソフトとハードが進歩したとはいえ、いまでも、大変な労力と時間を要する作業であることにかわりはありません。ただ、設計図面情報がデータ化されて、さらには、3次元化された空間情報を得られるようになって、パース画作成のためのモデリング作業については、以前とは比べようも無いほど軽減されたことは確かです。

建築パース画の作成という仕事の観点から見れば、手書きの図面をもとに、手作業で紙の上にパース画を書き込んでいくという、古くはルネッサンス期以来の伝統的「透視画図法」による、気の遠くなるほどの手間暇をかけて、ようやく一枚のパース画に仕上げていくというプロセスが、パソコン上でのソフトウェアの操作時術を駆使するというプロセスに置き換わったことは、建築図面のCADデータ化以上に大きな変化といえるでしょう。

「まるで実物を撮影したようなフォトリアルなCG」とまでいかなくても、簡単なパース画であれば、伝統的透視図法や幾何学的知識、あるいは、歴史的教養など、まったく必要とすることなくソフトウェアの利用技術の修得と習熟によって、相当立派な絵を、誰でも手軽に手にすることができるようになりました。しかし、ここで得られるパース画はソフトウェアが自動的に作画してくれたものであり、自分だけの独自の表現というものにこだわって、そこに付加価値を加えていくには、さらにその先の一工夫が必要になるでしょう。このように、ソフトウェアによるパース画の作成は、手書きの場合に必要とされた、煩雑な製図作業や着彩技術から開放される反面、絵画的センスや作画技術と経験が積み上がらないという半面もあります。

建築パースと絵画の違い

「絵画空間の哲学」(佐藤康邦著:三元社発行)という書籍次のような記述があります。「遠近法というものが、そもそも絵画そのもののはらむパラドックスに深く根ざした物であることに気づかされる。絵画というものは、点、線、面、色彩をもって二次元の平面に一視覚世界を作り出そうという芸術に他ならないが、それはいつも三次元的な立体の世界におけるわれわれの視覚的経験の報告という使命を負わされている。したがって、絵画というものは、いつも平面であることを越え出ようとする衝動にかられつつも、平面にとどまることを余儀なくされ、そこに秩序を構成してゆかなければならないもの…絵画が芸術として讃えられる場合、もとよりこの三次元的立体を二次元的平面に移しかえるだけの機械的な技術を越える何物かが付加されることが求められている」

これは、絵画の芸術性と遠近法との関係を哲学的に考察したものですが、まさに「三次元的立体を二次元的平面に移しかえるだけの機械的な技術を越える何物かが付加されることが求められている」という記述は、ソフトウェアを駆使して建築パース画を仕上げることの本質に通じるところでもあります。建築パース画は純粋芸術としての絵画とは異なり、元となる建築空間に忠実な姿として、3次元的表現で立体的に見せるという役割があり、これを放棄して、作画者が勝手に自己表現の手段としてはいけないという制約があります。

しかし、だからといって、「三次元的立体を二次元的平面に移しかえるだけの機械的な技術」の結果としてのパース画では、設計者が意図する建築空間を、パース画を見る人にうまく伝えられるものにはなりません。ここに、建築プレゼンテーションとしての「建築パース」の難しさがあります。

建築情報技術研究所 (著) , 岡島 正夫 (編集)
出版社: メディアポート (2012/10/21)、出典:出版社HP

プレゼンテーションに必要な能力

建築パース専用のソフトウェアは、平面図や部屋の間取りを入力するだけで、あとは、ソフトウェアが予め設定されたルールに基づいて、家の形を自動的に作成してくれるという、初心者にとっては誠に便利な機能を備えています。しかし、この方法では、設計した意図とソフトウェアが自動的に作り出す家の形が一致しないという問題を解決しなければなりません。そのためには、ソフトウェア任せで家の形を決めてしまうのではなく、ソフトウェアに対して、設計者の意図に沿った家の形を自動的生成するように、設定をきめ細かく調整する方法と操作技術を、日ごろから磨いて、身に着けておくことが大切です。

また、設計図面やスケッチから、建築空間を頭の中で立体的に想像できる、読解力が必要です。建築や住宅関連の雑誌などには、沢山の住宅や建築の実例が掲載されています。これらの実例に出来るだけ接して、その図面と写真を良く見ておくという経験は、この図面読解力を養うには大いに役立ちます。
ソフトウェアの操作技術と、図面読解力によって、設計図やスケッチから忠実に空間を立体的に表現出来るようになれば、パース作成者としての第一関門はクリアーしたことになります。

この先のステップに進むには、絵画的なセンスが必要になってきます。空間に忠実な立体的表現に対して、さらに、設計趣旨や意図が伝わるような感覚的な表現を加えていかねばなりません。添景や背景にどのような画像を配置し、光線や陰影をどう表現するか。色や素材感をどう表し、視点やアングルをどのようにしたら、空間が分かりやすく理解できて、設計趣旨や意図が伝わるか。これらの絵画的な表現力が、建築パース画の質を大きく左右します。また、この仕上げの良し悪しで、せっかくの「空間に忠実な立体的表現」が台無しになってしまうこともあります。まさに「画竜点睛」ということです。

空間を出来るだけ客観的に表現するということと、設計趣旨や意図を形で伝えるという、両方の技能をバランスよく、一枚の絵として作成できることが理想です。出来るだけ実物らしく見せるということも大切ですが、「まるで実物を撮影したようなフォトリアルなCG」が、すべてのパース画の終着点、あるいは頂点ではありません。建築プレゼンテーションの領域では、そのようなフォトリアルな表現が重要な位置にあることも確かですが、もっとさまざまな表現のパース画の需要もたくさんあるのです。

また、逆の言い方をすれば、そのような新しい表現としてのパース画を生み出すことできれば、新たな需要を喚起することもできるのです。ソフトウェアを使って、誰でもが、手軽に立派なパース画を作成することができるようになった今こそ、新しい建築の立体的空間表現としてのパース画が求められています。

ソフトウェアについて

建築パースの製作に利用するソフトウェアにはどんなものがあるでしょうか。建築パース画を作成することに特化した専用ソフトは意外に少なく、ほとんどが、3Dモデリングを主眼としたもので、建築パースは、そのモデリングされたデータを、立体的表現を画像出力した結果の成果物(アウトプット)という位置付けが主流です。2次元のCADがバージョンアップを重ねて、その発展形として3Dモデリングの機能を備えているというものもあます。2次元の図面を作成することに機能を止めているCADソフトの場合は、そのCADソフト単体では建築パースを作成することはできません。また、「フォトリアルなCG」画像を作成するには、レンダリング機能の充実したソフトウェアが必要です。

大きく分けると、3次元のデータを持つ「3DCAD」と高度なレンダリング機能を備えた「3Dモデラー」の2系統となります。前者は、あくまでも2次元図面を作成することを主眼にしていますし、後者は、「フォトリアルなCG」画像を作成すること目的として開発されています。

対象業種を建築に特化した、「建築3DCAD」や「建築3Dモデラ―」という、建築図面の作成と3Dモデリングに機能を絞り込んで、作業効率を高めているソフトウェアもあります。また、ソフトウェアが出力できる立体的表現の画像については、簡単なシェーディング(面の陰影表現)レベルから、高度なフォトリアルレンダリング(リアルな素材感や、微妙な光線と陰影のニュアンス)まで、そのクォリティに差があります。

パース画を「一枚の絵」と考えれば、3DモデリングのCADを利用しなくても、手書きの技法を駆使して、イラストや画像を作成するソフトウェアだけでも、建築パースの作成は可能です。但し、この場合は、元になる建築の3Dモデルのデータがないので、別のアングルで書き直す場合や、視点・画角の調整による修正・変更といった要望に対して、そのたびに、ゼロから書き直さなければならず、実務的にはあまりおすすめできる方法ではありません。

ひとつのソフトウェアで、全ての要求を満足させることは難しく、複数のソフトウェアを駆使して、最終的な成果物に仕上げるという方法が、実務では一般的です。3DモデラーやCADが出力したパース画像をそのまま最終成果物にするのではなく、その画像に、画像処理ソフトを使って、色彩やコントラストなどの調整を行ったり、背景や添景を書き加えたりします。この作業を「レタッチ」といいますが、このレタッチ処理の優劣が、建築パース画のクォリティに影響し、見る人の印象を大きく左右するほど重要な要素です。

よい建築パースとはなにかということに、絶対的な基準というものはありません。ただ、前述したように、元の建築空間をどれだけ忠実に立体的表現で再現できているか、また、設計意図と趣旨を適切に伝えられているか、この2点をしっかりと踏まえていることが、よい建築パースの必須条件であることは間違いありません。ソフトウェアの優劣(高性能・多機能・高画質等々)を競うことが、「よい建築パース」への道ではありません。高級車でハイウェイを疾走するのもかっこいいですが、森の小道を散歩するのも素敵です。要は、いろいろな選択肢があってよいということです。また、長い実務経歴や高度な技能を持っているに越したことはありませんが、そのような職人技がなければ「よい建築パース」は作れないというわけでもありません。

建築パースの作者自身が、建築空間の忠実な把握と設計意図の正しい理解に基づいて、ソフトウェアのパーフォーマンスで得られる成果物を素材として、どう料理すれば、美味しい!パース)ができるか。そのためのノウハウとセンスを大いに磨いていただきたいと思います。

完全(100%)な情報は無い

建築パースデザイナーとして仕事をするならば、「完全(100%)な情報は無い」ことを肝に銘じておかなければなりません。パースを作成するには、その元となる建築の図面や仕様書(これらをまとめて「設計図書」といいます)が必要ですが、この設計図書から得られる情報だけでは、3Dモデリングができないという場合もあります。

特に、設計が進行中の過程で、空間検討用に建築パースを使うという場合は、寸法が決まっていない部分があったり、仕上げや色などが決まっていないことがあります。このような段階で建築パースを作成しなければならない場合、作業が「お手上げ」状態になってしまっては、建築パースデザイナーとしては仕事になりません。「不明なところは適切に処理する」という対応が出来るようにならなければなりません。

どのような処理が適切かを判断するのは、作画者自身です。良い意味での「ごまかし」ができる能力が必要なのです。そのためには、ある程度「建築の常識」を理解している必要もあるでしょう。壁の厚みの寸法が指定されていなければ、常識的な寸法を当てはめるとか、色の指定がなされていなければ、原色や極彩色の使用は控えるとか、そういう常識です。日ごろから建築に興味をもって、沢山の実例を見ておくというのは、この常識を会得するのに役立ちます。

「建築空間の忠実な立体表現」と「設計意図の適切な伝達」という根本がしっかりできていて、背景や添景の配置センスとレタッチ処理がうまければ、不完全(あるいは不十分)な情報からでも、しっかりと「よい建築パース」を作ることができるのです。

建築情報技術研究所 (著) , 岡島 正夫 (編集)
出版社: メディアポート (2012/10/21)、出典:出版社HP