ラクラク突破の1級建築士スピード学習帳
はじめに
建築士には一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類があり、各資格により設計または工事監理できる建築物に違いがある。これらの中からいずれかの建築士資格を前提としたものとして、管理建築士の資格がある。一級建築士を前提とした資格としては、構造設計一級建築士と設備設計一級建築士がある。
まず、最近出題された問題の比率について述べる。過去問題が約50%、類似した過去問題が約20%、新規問題が約20%、応用問題が約10%であった。次に、2019年度の学科試験の配点と合格基準点について述べる。それぞれの科目の正答数をその科目の得点とし、各科目の得点の合計を総得点としている。各科目及び総得点の合格基準点は、以下のとおりである。
合格基準点は、学科I(計画)では、20点満点中11点、学科III(環境・設備)では、20点満点中11点、学科III(法規)及び学科IV(構造)では、各30点満点中各16点、学科V(施工)では25点満点中13点、合計125点満点中97点である。各科目及び総得点の合格基準点すべてに達している者が合格した。
さらに、試験に対応した学習においては、上述した幅広い学習内容を限られた時間の中で、いかに効率良く行うのかが重要である。そのために、本書における施工技術や知識の詳細に関しては、多岐にわたらず、複雑な内容や細部の説明に触れないようにした。これは、受験者が限られた時間の中で最も効率よく試験問題に対応した学習ができるように、最新または最頻出の建築技術や知識に関する重要なポイントに焦点を絞って執筆をしたからである。
最後に、執筆の分担について述べる。学科I計画の分野では、「建築計画」を大島博明氏に、「積算」を佐藤考一氏にそれぞれ分担執筆していただき、「契約・マネジメント」を三原が担当した。学科Ⅱ環境・設備の分野では、「環境」を松岡大介氏に、「設備」を知久昭夫氏にそれぞれ分担執筆をお願いした。学科皿法規の分野は、築比地正氏にお願いした。学科IV構造の分野では、「構造力学・耐震設計・地盤と基礎・鉄骨鉄筋コンクリート造・木構造等」を半貫敏夫氏に、「鉄筋コンクリート構造」を服部宏己氏に、「鉄骨構造」を山本貴正氏に、「建築材料」を寺西浩司氏にそれぞれ分担執筆をお願いした。
学科V施工の分野では、「請負契約・施工契約・仮設工事・土工事・基礎工事・木工事・改修工事等」を佐藤考一氏に、「コンクリート工事・プレキャストコンクリート工事・躯体工事等」を大塚秀一氏にそれぞれ分担執筆していただき、「現場管理・品質管理・仕上工事・設備工事・各種工事・用語等」に関しては三原が担当した。
本書は、過去10年間の最頻出問題を抜粋し、その中から、過去のものと類似した問題または新作として出題される可能性が高い最新の問題に関してその傾向を徹底して分析し、これに基づき設計・工事監理業務に必要とされる基礎から応用そして発展に至るまでの建築技術・知識の重要なポイントを的確に提供できるものである。さらに、読者の皆様には、本書を使用しての学習と並行して、数多くの過去問題に取り組み、合格にむけて万全を期していただきたい。
目次
はじめに
本書の特徴と使い方
試験概要
Chapter1 計画
住宅・集合住宅
1 住棟計画
2 住戶計画
3 事例・種類
都市計画
公共建築
1 保育所・幼稚園、小学校・中学校
2 高齢者施設・医療施設
3 図書館、美術館・博物館、体育館・屋外競技場
商業建築
1 事務所・劇場・映画館等
2 物品販売店、飲食店・ホテル、駐車場等
建築計画
各部計画
1 寸法設計
2 高齡者、身体障害者対応
3 窓・建具金物・カーテンウォール
4 窓ガラス・屋根・木造建築
日本建築史
西洋・東洋建築史
契約・マネジメント
建築積算
分野別・出題傾向/平成22-令和元年
Chapter2 環境·設備
換気
室内気候・熱・結露
日照・日射・採光
照明
色彩
音の性質、透過損失、音響計画
空調設備
1 負荷·熱源·蓄熱
2 コージェネ・地域冷暖房・空調方式
給排水衛生設備
1 給水・給湯・衛生
2 排水・通気設備
電気設備
1 電庄・電源・配線
2 避雷針・昇降機・照明
防災設備
環境性能·省エネルギー
分野別・出題傾向/平成22-令和元年
Chapter3 法規
用語の定義
1 基本用語
2 延焼・防火・耐火
面積・高さ等の算定
1 面積
2 高さ
手続
1 確認申請等
2 検査・報告・届出
一般構造
1 採光、シックハウス対策
2 階段等
建築設備
1 居室の換気、便所等
2 昇降機・配管設備等
構造強度
1 木造、補強CB造
2 鉄骨造・鉄筋コンクリート造
構造計算
防火規定
1 耐火建築物等
2 防火区画・内装制限
避難規定
1 避難階段等
2 排煙設備等
3 避難安全検証法
道路等
用途地域制
規模の規制/容積率・建蔽率
高さ制限
防火地域制
建築協定・地区計画等
1 建築協定
2 地区計画等
建築士法
1 建築士
2 建築士事務所
都市計画法
消防法
バリアフリー法
耐震改修促進法
品確法
関係法令
分野別・出題傾向/平成22-令和元年
Chapter4 構造
断面の性質、応力度
弾性座屈
ラーメン構造の応力
1 梁の応力
2 静定ラーメン
トラス構造の応力
構造物の変形
塑性解析
荷重・外力
構造設計・構造計画
耐震設計
地盤・基礎
1 地盤
2 基礎構造の設計
鉄筋コンクリート構造
1 梁
2 柱
3 耐震壁
4 耐震設計
5 その他の構造
鉄骨構造
1 鋼材の性質、許容応力度
2 座屈・梁の変形
3 接合部・接合方法
4 柱脚、耐震設計
鉄骨鉄筋コンクリート構造
木構造
その他の構造
コンクリート
金属材料
木材
分野別・出題傾向/平成22-令和元年
Chapters5 施工
請負契約
施工計画
現場管理
品質・材料管理
申請・届出
敷地・地盤調査
仮設工事
土工事・山留め
基礎・地業工事
鉄筋工事
型枠工事
コンクリート工事
1 要求性能・種類・品質・調合
2 運搬・打込み・養生
3 各種コンクリート
鉄骨工事
1 材料、工作、溶接接合
2 高力ボルト接合、錆止め塗装
3 現場施工、耐火被覆、溶融亜鉛めっき工法
木工事
防水工事
左官・タイル・張り石工事
ガラス・建具・金属工事
内外装工事・屋根工事
設備工事
PCa工事
改修工事
1 耐震改修
2 各種工事
用語
分野別・出題傾向/平成22-令和元年
執筆者一覧
※本書の内容は、原則として、令和元年11月10日現在の法令・データ等に基づいています(なお、表などの資料の数値は、試験の関係上、最新のものとは限りません)。
※著者及び出版社は、本書の使用による一級建築士試験の合格を保証するものではありません。
※本書の出版に当たっては正確な記述に努めましたが、著者や出版社などのいずれも、本書の内容に対してなんらかの保証をするものではなく、一切の責任を負いません。
本書の特徴と使い方
要点解説
1 出題範囲に即した、分かりやすいタイトルなので、解説されている分野がひと目で分かり、学習しやすい。
2 各分野の重要度を5段階で表示しているので、重要度の高い分野を重点的に繰り返し学習できる。
3 本文で解説できなかったところは、側注で補足。本文と併せて覚えておきたい内容や重要な用語の意味を説明している。試験直前に重要ポイントを復習することができる。
4 各項目について、コンパクトなボリュームで分かりやすく解説している。短い文章なので、暗記もしやすい。
5 図表を豊富に掲載。難解な内容も図表にすることで視覚的に理解、暗記することができるので効率的に学習できる。
本書は、過去10年以上の一級建築士試験の出題傾向を分野別に分析した結果をもとに、各分野の専門家が「満点合格」ではなく、必ず合格ラインを突破する「絶対合格」をめざして執筆いたしました。各節は、「ポイントを押さえた要点解説」と「要点解説に即した問題」の二部構成となっており、前者で暗記を、後者で記憶の定着を図ります。
問題
6 要点解説(前頁)でのポイントをしっかり理解できているかを、問題を解くことで確認できる。問題は、最頻出問題と実践問題に分けて掲載しているので、重要度の高い問題から学習できる。実践問題では、解説頁の内容+aの範囲をカバーしているので、応用力が身に付く。
7 解答・解説。正誤の理由や解答を導き出すポイントを絞ってコンパクトな解説となっている。重要度の高い問題を掲載しているので、そのまま暗記するだけで、試験の直前対策としても効果的。「目で覚える!重要ポイント」で、より理解が深まる。
試験概要[1級建築士]
1級建築士とは、国土交通大臣の免許を受け、建築物に関し、設計・工事監理、その他の業務を行う資格を有する者のことである。建築士法第3条に基づき二級建築士や木造建築士が高さや延べ面積等に制限があるのに対し、一級建築士には特に制限がない。建築士法第15条の2第1項に基づき、国土交通大臣から指定を受けた、公益財団法人建築技術教育普及センターが実施している一級建築士試験に合格し、免許登録をしなければならない。
資格取得までの流れは下図のとおりで、学科の試験の合格者のみが、設計製図の試験を受験することができる。ただし、学科の試験に合格し設計製図の試験を失敗した者は、翌年と翌々年の学科の試験が免除される。学科の試験からと設計製図の試験のみでは申込の手続が異なり、別々の受験申込書が定められているので注意が必要である。
受験申込→前年度学科の試験合格者(学科の試験実施→学科の試験合格発表)→設計製図の試験→合格発表→建築士免許登録[※] ※実務経験が必要な場合は、実務を経てからの登録となる
1 受験資格
建築士法の改正(平成30年12月14日公布)により、令和2年3月1日以降、建築士試験を受験する際の要件であった実務の経験について、免許登録の際の要件に改められることとなった。これまでは試験の前に実務の経験が必要だったが、原則として試験の前後に関わらず、免許登録の際までに実務の経験を積んでいればよいことになった。
例えば、指定科目を修めて大学を卒素した者は、大学卒業直後から実務経験を経なくても受験が可能になる(試験に合格し、その前後で建築の実務を2年以上経れば1級建築士として登録が可能)。これに併せて、建築士資格に係る実務経験の対象実務の見直しも行われた。ただし、施行は令和2年3月1日となるため、下記はあくまで令和元年11月現在の情報として留意してほしい。詳細は建築技術教育普及センターまたは国土交通省のホームページ等を参照のこと。
新たな受験資格要件と免許登録要件(令和2年3月1日施行)
受験資格要件 | 免許登錄要件 | ||
学歴(卒業学校) | 学歴(卒業学校) | 実務経験 | |
1級 | 大学・短期大学・高等専門学校(指定科目を修めて卒業した者) | 大学 | 2年以上 |
短期大学(3年) | 3年以上 | ||
短期大学(2年)・高 等専門学校 |
4年以上 | ||
二級建築士 | 二級建築士 | 2級建築士として4 年以上 |
|
国土交通大臣が同等と認める者 | 国土交通大臣が同等と認める者 | 所定の年数以上 | |
建築設備士 | 建築設備士 | 建築設備士として4 年以上 |
実務経験の要件(令和2年3月1日施行)
1―建築物の設計に関する実務
2―建築物の工事管理に関する実務
3―建築工事の指導監督に関する実務
4―建築物に関する調査又は評価に関する実務
5―建築工事の施工の技術上の管理に関する実務
6―建築・住宅・都市計画行政に関する実務
7―建築教育・研究・開発及びそのほかの業務
なお、建築士法の改正(令和2年3月1日施行)による見直しで追加された実務は、施行日前に行っていたとしても、実務経験にカウントされない。施行日以後に行われた実務から実務経験年数にカウントされる。
2 受験手数料
17,000円
*受験しなかった場合、返還不可。(ほかに、払込手数料が必要)
3 試験当日の持ち物
[必要なもの] ・受験票・黒鉛筆(HB又はB程度、シャープペンシルを含む。)
・消しゴム [持ち込めるもの] ・法令集
(学科III(法規)の問題を解答する場合に限る。ただし、認められる法令集は、見出し、脚注等の簡単な書込み及び印刷以外に解説等がなく、かつ、条文の順序の入替等のないもの。)
・鉛筆ケズリ [持ち込めないもの] ・卓上計算機
・計算尺
・計算機能等のある時計
・電動消しゴム
・携帯電話等無線通信機器
・その他、上記以外のもの
*試験場への飲物の持ち込みについては、ペットボトル等のふた付きのものに限り認められる。
4 試験日と合否
例年4月頃に試験日が発表され、各都道府県の建築士会で受験申込書が配布される。住所地の都道府県建築士会が指定する場所で受験申込の受付を行っている(住所地以外の受付場所では受け付けてもらえない)。インターネットによる申込は、下記「問い合わせ先」のホームページから。
学科の試験は7月頃、設計製図の試験は10月頃の日曜日に行われている。国土交通大臣の行った合否の判定結果を通知され、不合格者には試験の成績が併せて通知される(学科は9月頃、製図は12月頃)。ただし、欠席者(学科の試験においては一部の科目欠席者を含む)へは通知されない。
5 問い合わせ先
公益財団法人建築技術教育普及センター
東京都千代田区紀尾井町3-6
紀尾井町パークビル
Tel:03-6261-3310
http://www.jaeic.or.jp/
学科の試験の時間割(令和元年の場合)
学科 | ||||||||
平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | ||||||
受験者 | 合格者 | 合格率 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
25,804 | 4,806 | 18.60% | 26,096 | 4,213 | 16.10% | 26,923 | 4,946 | 18.40% |
平成30年 | 令和元年 | |||||||
受験者 | 合格者 | 合格率 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | |||
25,878 | 4,742 | 18.30% | 25,132 | 5,729 | 22.80% | |||
製図(令和元年試験については、令和元年11月10日現在未発表) | ||||||||
平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | ||||||
受験者 | 合格者 | 合格率 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
9,308 | 3,774 | 40.50% | 8,653 | 3,673 | 42.4% | 8,931 | 3,365 | 35.70% |
平成30年 | 令和元年 | |||||||
受験者 | 合格者 | 合格率 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | |||
9,251 | 3,827 | 41.40% | ー | ー | ー | |||
総合合格率(令和元年試験については、令和元年11月10日現在未発表) | ||||||||
平成27年 12.4% | 平成28年 12.0% | 平成29年 10.8% | 平成30年 12.5% | 令和元年 ー |