ISO環境法クイックガイド2019




2019年版発刊に寄せて

ISO14001などの環境マネジメントシステム(EMS)を企業で担当する関係者は、この1年間も環境法の対応に追われてきた。

ISO14001:2015年版の移行期限である2018年9月までに、ISO認証取得企業は2015年版への移行を終えた。2015年版では環境法順守をさらに強化し、法順守を担う人々の力量アップを明確に求めている。企業にとって環境法はますます重要なものとなった。

法改正も相変わらず激しい。2017年には建築物省エネ法が施行し、大規模建築物への規制を強化した。2018年12月には改正省エネ法が施行し、荷主規制を強化した。

2020年以降の国際的な温暖化対策の枠組みを定めたパリ協定が動き出そうとしている。2017年6月にトランプ米国大統領が同協定からの脱退を宣言したものの、深刻化する温暖化を前に対策強化への社会の声は強まり、経済活動もその流れの中にある。今後も世界と日本の温暖化対策が強まることは間違いない。

公害規制も厳しくなっている。2017年には土壌汚染対策法が改正され、有害物質使用特定施設を廃止した土地への規制も強化される。

廃棄物処理の分野では、2017年には、電子マニフェスト一部義務化などで、廃棄物処理法が改正された。2018年6月には改正海岸漂着物処理推進法が成立し、マイクロプラスチック対策が明記された。

化学物質規制では、水俣条約を受けた改正大気汚染防止法や水銀環境汚染防止法、水銀廃棄物への規制対応が重要だ。特に廃蛍光灯に代表される水銀使用製品産業廃棄物の対応ができていない企業が多い。

本書は、2003年の初版発行以来、EMS等に取り組む関係者の皆様のご好評を頂き、毎年版を重ねて来た。本年もこうした1年間の法改正を反映させるとともに、より使いやすくなるように留意して2019年版としてまとめた。これからも環境問題の対応に苦労されている皆様に、少しでも役立てば幸甚である。

ISO環境法研究会一同

ISO環境法研究会 (編集)
出版社: 第一法規 (2019/3/20)、出典:出版社HP

凡例

本書の内容現在
○本書の内容現在は原則として2019年1月1日施行現在です。例外については、目次及び各法令の冒頭のページに内容現在等について個別に記載しています。

2色の使い方について

(1)2018年1月2日以降に施行となった改正等による内容の新規追加及び主な変更点(一部、例外あり) 例:

 助言・勧告 基本方針を勘案し、再資源化の実施に関する助言・勧告をすることができる 法19
命令 基本方針を勘案し、適正な実施をしない場合分別解体の方法の変更その他の措置 法20罰

 

(2)青字のゴシック要注意点 例:

特定施設設置等 対象 日最大排出量50㎡以上の工場・事業場 法5①罰
許可・届出 報告書を届出書類に添付 法5③
(1)特設施設の設置の許可 法5①罰
(2)特定施設の使用の届出 法7②罰
(3)特定施設の構造等の変更(軽微な変更を除く)の許可(構造、使用方法、汚水等の処理の方法、排出水の量等) 法8①罰
(4)軽微な変更の届出 法8④罰
(5)氏名、住所等の変更、特定施設の廃止、排出水汚染状況の変更届出 法9罰
(6)承継の届出 法10③罰

 

オリジナル注釈について
○適用条件・ポイントにおいて、※又は※で説明している部分は、筆者による注意書きであり、法令の条文中にはありませんが、業務上留意すべき事項として掲載しています。

法令等の略号

(1)略号
法……表題にあるそれぞれの法律
令……法律施行令
則……法律施行規則

(2)法令等の略し方
条番号………1、10の5(通常の算用数字)
項番号……1、2、(マル付き数字)
号番号…(1)、(2)、(10)(括弧付き数字)

<例>
法8条の2第3項→法8の23
令12条1項2号→令121(2)

(3)表について
本書の表は、法令の別表を流用したものと、本書オリジナルの表があります。本書の【表1】は「××法別表1」ではありません。法令の別表を流用している場合は、
【表1】(令別表2)
というように()内に但し書きをしています。

罰マークについて
当該遵守事項に罰則が設けられている場合、条項の欄に、クを付し、簡単にわかるよう示しています。なお、「法1~法31とある場合は、法1条、2条、3条のいずれかに罰則があることと、示しています。

ISO環境法研究会 (編集)
出版社: 第一法規 (2019/3/20)、出典:出版社HP

目次

第1章 基本的事項法令の種類
1環境基本法
2環境影響評価法(環境アセスメント法)
3特定工場における公害防止組織の整備に関する法律(公害防止組織法)
4環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律(環境教育等促進法)
5環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律(環境配慮促進法/環境情報提供促進法)
6国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(環境配慮契約法)

第2章 地球温暖化・省エネルギー・フロン
7地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法/地球温暖化対策推進法)
8気候変動適応法
9エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)
10建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)
11電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再生可能エネルギー特措法/再生エネ特措法/FIT法)
12特定物質等の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法)
13フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出・抑制法)

第3章 大気汚染
14大気汚染防止法(大防法)
15自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地はにおける総量の削減等に関する特別措置法(自動車NOx.PM法)
16特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(オフロード法/特定特殊自動車排出ガス規制法)

第4章 水質汚濁
17水質汚濁防止法(水濁法)
18下水道法
19湖沼水質保全特別措置法
20瀬戸内海環境保全特別措置法
21海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(海洋汚染防止法)
22浄化槽法
23特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法(水道水源法)
24水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律(水道原水法)
25水道法
26河川法
27海岸法

第5章 土壌汚染
28土壌汚染対策法
29農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(農用地土壌汚染防止)
30肥料取締法

第6章 騒音・振動・地盤沈下・悪臭防止
31騒音規制法
32振動規制法
33工業用水法
34建築物用地下水の採取の規制に関する法律(ビル用水法)
35悪臭防止法

第7章 廃棄物処理
36廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法/廃棄物処理法)
37産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律(産業廃棄物処理特定施設整備法)
38特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル注)
39美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境並びに海洋環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(海岸漂着物処理推進法)
40ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB処理特別措置法)
41平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(放射性物質汚染対処特措法)

第8章 循環型社会
42循環型社会形成推進基本法
43資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)
44容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法/容リ法)
45特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)
46使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法)
47建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)
48食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)
49使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)
50国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)

第9章 化学物質・安全衛生・危険物
51化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法/化学物質審査規制法)
52特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(化管法/PRTR法)
53ダイオキシン類対策特別措置法
54水銀による環境の汚染の防止に関する法律(水銀環境汚染防止法)
55毒物及び劇物取締法(毒劇法)
56食品衛生法
57農薬取締法
58有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律
59労働安全衛生法(安衛法)
60消防法
61高圧ガス保安法
62建築物における衛生的環境の確保に関する法律(ビル管理1.法)
63放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(放射線障害防止法)

第10章 自然環境・生物多様性
64生物多様性基本法
65自然環境保全法
66自然公園法
67鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(烏話保護法)
68絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)
69遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)
70特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)
71水循環基本法
72温泉法
73委林法
74合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律(クリーンウッド法)

第11章 土地利用
75工場立地法
76都市計画法
77都市公園法
78都市綠地法
79建築基準法
80生產綠地法
81景觀法
82文化財保護法

環境法豆知識

その1新規に制定・施行された新法・改正法等
その2ISO14001:2015、「順守義務」のポイントとは?
その3環境基準とは何?
その4適用される環境条例をどうやって見つける?
その5「パリ協定」と米国脱退~それでも温暖化対策は進む
その6気候変動適応法成立!温暖化問題、ついに「適応策も正面へ
その72018年改正省エネ法、荷主規制を強化へ
その8建築物省エネ法、基準不適合の建物が建てられない
その9フロン排出・抑制法、ユーザー義務のポイントは?
その10改正オゾン層保護法施行!代替フロンHFCの製造・輸入規制へ
その11アスベスト規制、解体工事の発注者は要注意!
その12自治体の上乗せ基準とは?
その13改正大気汚染防止法、水銀排出を規制
その14水濁法、「事故時の措置」に注意!
その15水濁法の有害物質規制、続々強化
その16改正水道法が成立!コンセッション方式とは?
その17改正土壌汚染対策法成立!「3条1項ただし」と規制強化
その18騒音規制などの感覚公害は、法律と条例両方に目配せを
その19見逃されがちな臭気規制への切り替え
その20産廃処理場への実地確認はどこまですればよいか!
その21世光灯などの水銀使用製品産業廃棄物、対応のポイント
その22改正廃棄物処理法、電子マニフェスト一部義務
その23廃棄物条例、実地確認義務の動きに要注意
その24プラスチック対策が強化?海岸漂着物推進
その25高濃度PCB廃棄物・使用製品の処分期限間
その26化審法改正~規制強化と規制緩和がセット
その27安衛法、化学物質リスクアセスの拡大に注意!
その28改正石綿則、企業の石綿対策に深刻な影響
その29生物多様性基本法と事業者
特別編地方自治体の環境条例の概要
特別編海外の環境関連規制の概要

ISO環境法研究会 (編集)
出版社: 第一法規 (2019/3/20)、出典:出版社HP