声優検定3級テキスト




目次

まえがき

第一章 声優とは

(一) 声優の歴史
(二) 声優の仕事分野
(三) 声優になるための技能
(四) 関連業界の歴史

第二章 日本語の特徴

(一) 日本語は大国言語
(ニ) 関西弁が標準語?
(三) 音声日本語の特徴
(四) 母音、アイウエオ

第三章 発生と発音

(一) 豊かな、美しい声
(二) 明確な、発音
(三) 放送と音声日本語
(四) 東京型アクセント

第四章 活舌訓練

(一) 口承物の早口言葉
(二) 有名早口言葉一蘭
(三) 鼻濁音、母音無声化
(四) 撥音、促音、長音

第五章 文字と文章

(一) 故事、諺、慣用句
(二) 漢字の読みに挑戦
(三) 地名人名のいろいろ
(四) 敬語を正しく使う

第六章 インターネットの活用

(一) はじめに
(二) インターネットとは
(三) ブログとは
(四) インターネットの危険性

第七章 業界用語集

 

日本声優検定協会 (著)
日本声優検定協会; B5版 (2009/5/20)、出典:出版社HP

まえがき

この本を手にした皆さんは、日夜プロの声優めざしてがんばっていらっしゃることでしょう。

しかしながら、初心者の方は、今の自分の技能がどの程度なのか?何年かトレーニングをつんだ方も、どれだけ技能が上達したか?わからないですね!そのような疑問に客観的にお答えするために声優検定が創設されました。

全くの初心者の方から何年もトレーニングを積んだ方までを対象に声優検定の各級を定めています。高校を卒業され声優スクール・専門学校に通われている方を対象に三級を創設し、その後、準二級~二級~準一級〜一級と進んでいただけるようになっています。

初心者の方は、このテキストを、しっかり読んで学び、「声優検定」に合格することから、まず始めて下さい。声優検定三級の問題は、ごく普通の[選択方式]ですから、当テキストもそれに合わせたものとしています。分かり易いだけでなく楽しく読める、そんな方向でこのテキストを作成していますから、ご安心を。

声優は、ただ何となくぼそぼそと喋っているだけの一般の人とは、ずいぶん声の出し方が違います。テレビ・ラジオの前にいる人達に向かって声を届けるのが仕事です。健康的な大きな声が求められます。プロの声優の方々は、全員が正しい効果的な「発声」のため先ず、姿勢・共鳴・腹式呼吸法などの学習からスタートし、その訓練を常に欠かさないのです。日本語の「縦書き・五十音表」は、ただ単に文字をタテヨコ綺麗に並べたものではありません。

右一行目のア行「アイウエオ」から、縦の行と横の段を揃えた「音声の表」なのです。特に、一行目の[アイウエオ]は、音声の基本中の基本である「母なる声」の「母音」です。「ア行音」が澄んだ声であれば、横並びの[アカサタナハマヤラワ]も、全て魅力ある綺麗な声になります。これが、喉に余分な力が入れば(締め付けたような雑音が混じれば)、横並びの音声の全てが雑音の混じった汚れた声になってしまいます。「発声練習」の開始は、一般的にこの母音「ア行」から始めます。「母音」に関する詳細については、テキストの本文に十分のスペースを用意しています。

また、この「ギョーカイ」を目指す者としては、「早口言葉」などは「平気のへいざ」ペラペラっとリズミカルに片付けたいものです。もし、始めから思うようにくちが回ればこれは万々歳。貴方は声優の仕事に向いているー既に、スターティング・ブロックについているのです。でも、声優養成所で勉強している人達の殆どが、実はそうではありません。苦労に苦労を努力に努力を重ね、舌の回転を学ぶ「滑舌法」に連日挑んでいるのです。頑張りましょう。

例えば[ラリルレロ]で、ベロが巻き舌気味になってしまうと声の品格が低下し、[ハヒフヘホ]のハ行で息が鼻に抜けてしまうと、ふにゃふにゃの迫力不足の声になってしまいます。五十音表の「ア行」に続く、タテニ行目「カ行」以下の行は、皆さんお馴染みの大変楽しい「早口言葉」や、当テキストに多く並ぶ「滑舌練習文」です。正確・明確な「発音」にするよう理論の学習と実戦的練習で、「声優検定」の証を一日も早く手にし、理想を!夢を!追いかけましょう。

アクセントについては、放送局のアナウンサーもDJも声優も、「東京型アクセント」を学ばないことには仕事になりません。明治以降の「言文一致」の義務教育が、良くも悪くも「書き言葉」としては、僅か数十年で急ピッチで広く全国制覇?に成功しました。更に、ラジオ・テレビが全国普及していった結果、ごく自然に我々の暮らしの中に東京語が(東京型アクセントも含め)日本全土にくまなく浸透していったのです。

現今の若者たちの多くが、(全く学習経験無しで)放送言葉の影響から「東京語らしき言葉」と「東京型アクセントらしきもの」を使いこなす、そんな時代になってきたことを最近特に強く感じます。その裏には、昔人間とは異なる「現代人の音感の向上」があるのは事実です。

声優は、いとも簡単に「声だけ操る仕事」と思ったら大間違い。アクセント記号の付け方を学び、その正しい読み方も、一歩一歩の日々の努力が必要なのです。声優のプロを目指す限り、どれ程才能に恵まれていても、その感覚だけで勝負は出来ません。この際、確実なプロの音声を自分のものにして下さい。次に、この声優の世界では「音声言語」の他にまだまだ要求されるものがあります。ずばり「文字言語」です。

漢字・熟語など文字を正しく読むことや、故事・ことわざ・有名地名・人名にも詳しく、当然程々の「敬語」も使いこなせないと演技チを招きかねません。つまり、漢字検定的な知識も演技以前の能力としての必要部分なのです。字画の多い難しい漢字は、細部まで正確に書けなくても構いませんが、「読み」に関しては程々のレベル・実力は、絶対にほしいのです。

当テキストは声優実践編としての、三級の「音声の基本」から始まって、準二級~二級~準一級〜一級へと、徐々にプロ演技者への道をまっしぐら。「詩の朗読」・「CMの読み」・「DJフリートーク」の教材や「アニメ用台本」など可能な限り数多く例題を取り揃えました。「声優」への道の基本は「大きな声・明確な発音法」と「表情豊かな、話し方・演技力」の習得です。

そして更に「オーディションでの心得」や、声優演技現場での基本知識として、いわゆる「ギョーカイ用語」から「現代IT社会」との関連にいたるまで、声優への学習知識に関係したあらゆるジャンルを網羅して、皆さんの期待に応えたつもりです。それでは、皆さん[声優検定三級]でのご健闘と、準二級~二級~準一級〜一級へと段階を踏んでのご健闘を切に祈ります。

尚、声優検定試験の日程・内容等の最新情報は、ホームページをご覧ください。
ホームページアドレスは、http://seiyuu.tvです。

文献
[日本人はどこからきたか]埴原和郎小学館創造選書
[江戸語標準語]水原明人講談社現代新書
[ものがたり芸能と社会]小沢昭一白水社
[わたしの日本語]加太こうじ立風書房
[標準語はいかに成立したか]真田信治創拓社出版
[日本語発音アクセント辞典]NHK放送文化研究所・編NHK出版
[明解日本語アクセント辞典]金田一春彦・監修、秋永一枝・編三省堂
[全国アクセント辞典]平山輝男・編東京堂出版
[声を出して読む日本語の本]塩原慎次朗創拓社出版
[アナウンサーの日本語講座]塩原慎次朗創
[音声アクセントクリニック]酒井裕凡人社
[凡人社[日本語アクセント教室]小森法孝新水社

●おことわり
このテキストは、声優などのいわゆる「業界」の慣習に従って、ドラマの台本に合わせ「縦書き」としております。[縦書き原稿]の読み書きを、テキスト段階から身に付けて頂きたいのです。ルビ(振り仮名)は[カタカナ]、[引く音の長音]は、実際の音声に合わせて全て長棒となる[―印]を使用しています。ギョーカイ常識、一般の国語常識は少々異なります。スタジオ現場に直結したものです故、ご了承下さいますように。

また、「鼻濁音のガ行]ではカ行の文字の右肩に[。印]付け表示し、母音無声化にはその該当文字の右横に[三角形の印]を付けました。

日本声優検定協会 (著)
日本声優検定協会; B5版 (2009/5/20)、出典:出版社HP