競売不動産取扱主任者のおすすめ参考書・テキスト(独学勉強法)
改訂版 競売不動産の基礎知識 – はじめに
「競売不動産取扱主任者」、聞きなれない名称かと思います。
通常、不動産業に従事するには「宅地建物取引士」(以下、「取引士」)の資格を保有する必要があります。これは国家資格であり、不動産を取り扱う際の必須資格と私は考えております。
しかし、今日、不動産の取扱いや運用の多様化が進むなかで、「取引士」の業務範囲を超える相談も多くあるのが現状です。例えば、相続や投資、リフォーム、そして競売不動産の取得に関するものなど、不動産の間口は広がっております。
「競売」と聞くと、多くの方は非常に敷居が高いイメージをお持ちになるかもしれません。しかし、近年、手続や法整備が進み、不動産取引情報の公開化も進むなか、一般消費者からの関心が大変高まっている市場です。
インターネットを媒介として一般消費者の競売市場への参入がさらに加速すると予測される今日、一般消費者がネットの情報などを頼りに自分自身で入札した結果、トラブルや予想外の出費などが起こっているのも競売不動産の現状です。トラブルを未然に防ぎ、一般消費者が安心して競売制度を利用するために競売不動産のアドバイスを的確に行える人材=「競売不動産のプロ」が必要とされています。
これからの時代、真の「不動産のプロ」として活躍していくため、取引士だけでなく、不動産に係るあらゆる知識、その1つとして競売不動産に関する知識も不可欠になっていくと考えられます。
私ども「一般社団法人 不動産競売流通協会」は、競売不動産取扱主任者の資格制度を通じて、一般消費者に適切なアドバイスを行うことができる「競売不動産のプロ」を養成するとともに、一般消費者等に対する啓発・教育活動を続けております。
本書は、不動産従事者や金融機関従事者、各士業の方々が日常業務を営むうえでのテキストとして、執筆いたしました。
本書は2012年に発行した「競売不動産の基礎知識」の改訂版です。前回よりも約250ページほど増えましたが、その分、見やすく、理解しやすくなっているかと思います。
本書を手にされた皆様が、この魅力的な競売不動産市場において、大きな飛躍の一歩を進み始められますことを、心より願っております。
一般社団法人 不動産競売流通協会
代表理事 青山一広
※協会が運営している競売情報サイト「981.jpの会員数は2018年6月現在約90,000名となっております。
改訂版競売不動産の基礎知識
~競売不動産取扱主任者 公式テキスト~
目次
第1編 不動産競売の概要
1 不動産競売・競売不動産とは
不動産競売・競売不動産とは何か
2 不動産競売による物件購入と通常の物件(流通不動産)購入とはどう違うのか
3 不動産競売手続はどのように行われるのか
(1) 売却準備手続
(2)売却手続
4 不動産競売に参加するにあたってどのような準備が必要か
(1) 予算額の検討
(2) その他の注意したいもの
(3) 投資目的の不動産競売
(4) 不動産競売とローン
5 不動産競売にはどのような法令がかかわるのか
6 競売物件はどうやって調べるのか
(1) 3点セットの概要
(2) 競売物件の資料はどこで見ることができるのか
(3) 競売物件の資料はどうみればいいのか
7 競売物件はどうやって手に入れることができるのか(競売申込手続)
(1) 期間入札の参加方法
(2) 入札期間等の公告
(3) 期間入札の方法
(4) 入札手続
(5) 開札手続
(6) 売却決定期日
(7) 代金の納付
(8) 特別売却
(9) 内覧制度
(10) 保証金の返還
(11) 開札前の競売手続の停止・取消し・取下げ
(12) 剰余主義
(13) 売却の見込みがない場合の競売手続の停止及び取消しの制度
(14) 代金納付の効果
(15) 登記の嘱託
(16) 代金不納付の効果
8 競売物件購入後の手続
8-1 物件が滅失・損傷した場合の対処方法
(1) 物件が滅失した場合
(2) 物件が損傷した場合
8-2 競売物件を誰かが不法に占有している場合はどうすればよいのか
(1) 占有者に権原がない場合
(2) 不動産の引渡命令制度(民事執行法83条、188条)
(3) 引渡命令の執行手続
8-3 競売物件に賃借人がいる場合はどうなるか
(1) 抵当権設定前に賃借権が発生している場合
(2) 抵当権の設定後に賃借権が発生した場合
(3) 賃貸借(賃借権)が抵当権者(買受人)に対抗できる場合
(4) 建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡の許可(借地借家法20条)
8-4 買い受けた物件に残置物があった場合の対処方法
(1) 勝手に処分するとどうなるのか
(2) 交渉による方法
(3) 法的手段による方法
9 買受人等を保護するための保全制度
(1) 売却のための保全処分(民事執行法55条)
(2) 担保不動産競売の開始決定前の保全処分(民事執行法187条)
(3) 占有移転禁止の保全処分(民事執行法83条の2)
(4) 買受けの申出をした差押債権者のための保全処分(民事執行法68条の2)
(5) 最高価買受申出人又は買受人のための保全処分(民事執行法77条)
10 担保不動産競売手続のまとめ
確認問題&正解
第2編 民事執行手続に関する法律
第1章 民事執行法
1 民事執行法の概要
(1) 民事執行法と不動産競売
(2) 強制執行の流れ
2 不動産競売手続(申立準備から差押えまで)
(1) 申立方法
(2) 申立権者
(3) 申立前の準備
(4) 申立書の作成
(5) 競売申立ての取下げ(民事執行法20条、民事訴訟法261条)
(6) 競売開始決定
(7) 差押えの効力
(8) 二重開始決定
(9) 当事者の承継
(10) 競売開始決定に対する不服申立て
3 不動産競売手続(売却準備から売却処分まで)
(1) 滞納処分と不動産競売の競合
(2) 最先順位の仮差押えの登記等が競売手続に及ぼす影響
(3) 競売開始決定後の倒産手続
(4) 債権関係調査
(5) 権利関係調査
(6) 売却条件の判断
4 売却手続
(1) 売却の方法
(2) 売却決定
(3) 超過売却留保制度(民事執行法73条1項、188条)
(4) 買受けの申出がない場合の競売手続の停止及び取消し(民事執行法68条の3、 188条)
5 配当等手続
(1) 配当等手続の種類
(2) 配当異議
6 配当等以外の手続の終了
(1) 申立ての取下げ
(2) 手続の取消し
7 不動産競売手続の不服申立手続
不当執行と違法執行
第2章 滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律 (滞納調整法)
1 滞納処分と競売手続との調整
滞納処分による差押えがされている不動産に対する競売
2 競売続行決定手続
(1) 概要
(2) 滞納調整法による続行決定に係る問題
3 競売の開始決定があった不動産に対する滞納処分による差押え
(1) 競売の開始決定があった不動産に対する滞納処分による差押え
(2) 滞納処分続行承認の決定
第3章 民事訴訟法
1 民事訴訟制度
2 民事訴訟手続の流れ
(1) 訴えの提起
(2) 口頭弁論
(3) 民事訴訟の審理構造
(4) 民事訴訟の審理ルール
(5) 口頭弁論終結
(6) 判決
(7) 仮執行宣
3 判決以外の訴訟の終了
(1) 訴えの取下げ
(2)請求の放棄・認諾(民事訟法266条)
(3) 訴訟上の和解
4 少額訴訟(民事訴訟法368条~381条)
5 支払督促(民事訴訟法382条~396条)
(1) 支払督促の手続
(2) 支払督促の効力
6 ADR(裁判外紛争解決手続)
(1) あっせん
(2) 調停
(3) 仲裁
(4) ADR法
第4章 民事保全法
1 民事保全手続の意義
2 民事保全の特質
(1) 密行性
(2) 緊急性
(3) 付従性
(4) 暫定性
3 保全命令
(1) 仮差押命令
(2) 仮処分命令
(3) 保全命令の管轄裁判所
4 保全命令の申立て
(1) 疎明
(2) 担保の提供
(3) 送達
5 解放金
6 保全執行
(1) 仮差押えの執行
(2) 仮差押解放金
7 仮処分の執行
確認問題&正解
第3編 不動産競売を理解する前提となる法令知識1(民事法)
第1章 民法
1 権利・義務
(1) 不動産競売の意義
(2) 金銭の貸借の法的評価と回収手続
(3) 物権と債権
2 物権総論
(1) 物権の意義
(2) 物権の種類
3 不動産に関する物権変動の対抗要件
4 抵当権
(1) 抵当権の意義
(2) 抵当権の特徴
(3) 被担保債権
(4) 抵当権の効力の及ぶ範囲
(5) 抵当権の処分(民法376条1項)
(6) 共同抵当
5 競売にかかわる抵当権の制度
(1) 法定地上権(民法388条)
(2) 抵当建物使用者の引渡(明渡)猶予(民法395条)
6 抵当不動産の第三取得者との関係
(1) 代価弁済(民法378条)
(2) 抵当権消滅請求(民法379条~383条)
7 根抵当権(民法398条の2~398条の22)
(1) 根抵当権の意義
(2) 通常の抵当権との相違点
8 その他の物権
(1) 担保物権
(2) 用益物権
(3) 仮登記担保(担保仮登記)
9 不動産賃貸借・借地借家法
(1) 不動産賃貸借と借地借家法
(2) 賃貸借の成立要件
(3) 不動産賃借権の対抗要件
(4) 賃貸人と賃借人の基本的な権利・義務
(5) 賃借権の存続期間
(6) 賃借権の譲渡・転貸
(7) 目的物の譲渡
(8) 敷金関係
(9) 借地関連規定(借地借家法)
(10) 借家関連規定(借地借家法)
10 民法の他の規定
(1) 無効事由と取消事由
(2) 強制履行
(3) 債務不履行
第2章 建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)
1 区分所有法の意義
2 区分所有法上の用語
(1) 区分所有権
(2) 専有部分
(3) 区分所有建物
(4) 区分所有者
(5) 占有者
(6) 共用部分
(7) 建物の敷地
3 区分所有法の全体構造
4 管理に関する規定
5 権利・義務に関する規定
(1) 専有部分と共用部分
(2) 専有部分
(3) 共用部分
(4) 専有部分と共用部分の一体処分
(5) 専有部分と敷地利用権の分離処分禁止(区分所有法22条1項)
(6) 管理費
(7) 滞納管理費等の承継
(8) 共同利益違反行為に対する措置
(9) 賃借人の地位
第3章 不動産登記法
1 不動産登記の意義
2 不動産登記簿と登記記録
3 登記記録の構造
(1) 表題部と権利部
(2) 表示に関する登記
(3) 区分建物(分譲マンション等)の登記
(4) 仮登記
(5) 登記の手続
(6) 登記事項の証明等
(7) 差押え・仮差押え・仮処分の登記の記載例
確認問題&正解
第4編 不動産競売を理解する前提となる法令知識2(その他の法令)
第1章 公法上の規制
1 概要
2 市街化区域・市街化調整区域
3 用途地域
(1) 建ぺい率
(2) 容積率
4 接道義務
5 防火地域・準防火地域
(1) 耐火建築物
(2) 準耐火建築物
6 違法建築物と既存不適格建築物
7 農地
(1) 農地のままでの買受け
(2) 転用を前提とする買受け
(3) 買受適格証明書を取得した者が最高価買受申出人又は特別売却の買受申出人と定められた場合
(4) 落札後
8 他の主な規制法令
(1) 宅地造成等規制法
(2) 生産緑地法
(3) 森林法
(4) 文化財保護法
第2章 その他の法令
1 宅地建物取引業法(宅建業法)
(1) 宅地建物取引業法の目的
(2) 宅地建物取引業務
(3) 不動産競売代行業と宅建業
(4) 競売物件を転売する場合の宅建業法上のポイント
2 消費者契約法
(1) 消費者契約法の目的
(2) 用語
(3) 消費者契約法上の規制
(4) 民法との関係
3 競売代行業務に係る法令
(1) 総説
(2)「委任」契約と「請負」契約
(3) 弁護士法第72条
確認問題&正解
第5編 競売不動産の移転、取得等に関する税金等
1 登錄免許税
(1) 意義
(2) 内容
2 不動產取得稅
(1) 意義
(2) 内容
3 固定資産税、都市計画税
(1) 固定資産税
(2) 都市計画税
確認問題&正解
付録 競売用語集
※本書の内容は、平成30年4月1日現在施行の法令によるものです。
法改正等は、当協会ホームページにて随時ご案内いたします。