証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 財務分析 2020年試験対策




はじめに

証券アナリストとは、証券投資において必要な情報を収集し、分析を行い、多様な投資意思決定のプロセスに参画するプロフェッショナルな人たちをいいます。

公益社団法人 日本証券アナリスト協会では、証券アナリストとしてのスタンダードを確立するため、通信教育講座を通じて教育を実施し、講座終了後の試験によって証券アナリストの専門水準の認定を行うことで、検定会員の資格を与えています。

証券アナリスト試験は、公益社団法人日本証券アナリスト協会が自主的措置として行っている資格制度であり、合格していなくても、証券分析業務や投資アドバイスといった証券アナリストの業務はできます。それにもかかわらず証券アナリスト試験は、金融の自由化・国際化、資産の証券化、その他様々な要因から、金融業界を中心として非常に注目を集めており、証券アナリストの社会的役割や責任は、ますます大きくなっています。

証券アナリストに求められる知識は極めて広範囲にわたります。そのため、よりポイントを絞った効率的な学習が必要です。本書では、1次試験対策の総まとめとして、TACが過去の出題傾向を徹底分析した上で厳選した問題を収載しています。その問題を解きながら、証券アナリスト試験の「財務分析」の出題ポイントが整理できるように構成しており、併せて解答作成に必要な力を身につけることも主眼としています。

したがって、必ず問題を自分の力で解き、理解が不十分であれば本文を読み直し、再度問題にチャレンジして下さい。また、十分な知識が身に付いていると思われる方は、解答作成のポイントまでしっかりと把握し、実力をより確かなものとして下さい。

本書及びその他2科目の総まとめテキストが、皆さんの証券アナリスト試験合格のためにお役に立てることを心より願っております。

TAC証券アナリスト講座

TAC証券アナリスト研究会 (著)
出版社: TAC出版; 2020年試験対策版 (2019/11/16)、出典:出版社HP

CONTENTS

はじめに
証券アナリスト試験とは
出題傾向と対策
本書の使用方法
過去の出題一覧及び重要度
重要論点チェックリスト

第1章 財務会計総論
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 企業会計原則
2 貸借対照表
3 損益計算書
4 その他の計算書類等
5 日本の会計制度
6 財務諸表の監査

第2章 資産会計
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 金融資産
2 債権の評価
3 有価証券
4 デリバティブ
5 棚卸資産
6 固定資産
7 減価償却
8 リース会計
9 減損会計
10 繰延資産
11 経過勘定

第3章 負債会計
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 金融負債
2 社債の評価
3 引当金
4 退職給付会計

第4章 純資産会計
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 株主資本
2 計数の変動
3 剰余金の配当
4 評価・換算差額等
5 新株予約権
6 包括利益

第5章 損益会計
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 収益・費用の認識と測定
2 販売形態別の収益認識基準
3 外貨建取引の換算
4 外貨建財務諸表の換算

第6章 企業結合会計
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 企業結合
2 合併会計
3 連結財務諸表
4 連結の範囲
5 資本連結
6 成果連結
7 持分法
8 税効果会計
9 連結キャッシュ・フロー計算書

第7章 財務諸表分析
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 財務諸表分析の分析手法
2 財務諸表分析上の資本と利益の概念
3 収益性分析
4 生産性分析
5 安全性分析
6 損益分岐点分析
7 成長性分析

第8章 株式価値評価
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 配当割引モデル(DDM)
2 割引キャッシュフロー・モデル(DCFM)
3 残余利益モデル

附属資料
財務分析の指標
◆索引

証券アナリスト試験とは
~1次試験の概要~

本試験を受験するためには協会通信教育の申込が絶対条件!

受験資格
証券アナリスト試験を受験する場合には、公益社団法人日本証券アナリスト協会の1次レベルの通信教育を受講することが条件となっています。なお通信教育の受講に際しては、だれでも受講することができ、年齢や学歴などの制限は一切ありません。

*通信教育講座受講申込期間…例年5月1日~
(詳細につきましては、日本証券アナリスト協会にお問い合わせください。
*通信講座受講期間…約8ヶ月間

●1次試験日程…毎年2回、例年4月下旬、9月下旬~10月上旬

●出願締切…例年3月上旬、8月中旬
(日本証券アナリスト協会のマイページから申込)

●合格発表…例年5月下旬、10月下旬~11月上旬

●試験実施場所…<国内>札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、松山、福岡
<国外>ニューヨーク、ロンドン、香港

●試験科目

①証券分析とポートフォリオ・マネジメント
②財務分析
③経済(科目合格制)

●留意事項…以下のような場合、それまでの1次試験の合格実績はすべて無効となる。

①ひとつの科目の受講開始後、4年間に残りすべての科目を受講しない場合
②受講後連続6回の試験で合格しなかった科目について、直ちに通信教育を再受講しなかった場合

●近年の協会通信及び受験状況(1次レベル)

年度 検定試験*
受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
2017年春 7,379 3,559 48.2
2017年秋 5,012 2,586 51.6
2018年春 7,698 3,951 51.3
2018年秋 3,990 2,043 51.2
2019年春 8,269 3,909 47.3

*検定試験の受験者数・合格者数は、科目別の延べ人数

協会通信教育講座に関するお問い合わせは…
公益社団法人日本証券アナリスト協会
Tel.03-3666-1511 Fax.03-3666-5843 https://www.saa.or.jp

●出題傾向と対策
1次レベルの本試験については、解答方式が全問マークシート方式となっている。2019年度(春)試験の出題形式別の問題数と配点は、次のとおりである

問題 出題形式 問題数 配点
1 正誤・敵文選択問題 17 34点
2 個別計算問題 6 12点
3 総合計算問題 8 18点
4 財務分析の総合問題 26 26点

財務分析1次では上記のように、4つの出題形式があり、どの論点がどの形式で出題されているのかを確認し、出題形式ごとに対策を立てることが有効であるまた、限られた時間の中で効率的に合格レベルに到達するためには、毎回出題されている論点については、確実に得点する力を身につけることが重要である。

さらに、本試験では90分という短い時間で数多くの問題(2019年度(春)討論は57問)を解かなければならないため、全部の問題に均等に時間を配分していたのでは、時間切れになってしまう可能性が非常に高い。そのため、難易度の高くない問題、言い換えれば他の受験生も確実に得点できる問題を優先的に解いて、難易度の高い問題は後回しにする工夫が必要である。

このような観点から、受験対策に当たっては、毎回出題されている論点や難易度の高くない問題について重点的に学習しておくことが有効であるといえる。

本書では、個別論点ごとに、出題形式に基づいた頻出問題を中心にポイントを解説している。形式別の傾向と対策については、概ね次のようなことがいえる。

1. 正誤・適文選択問題

各論点の基本的事項についての問題が幅広く出題されている。財務諸表の構造、有価証券、棚卸資産、減価償却、リース会計、収益認識、退職給付会計、包括利益、企業結合会計、株式価値評価といった論点は頻出であり、必ず整理しておきたい。ミスを誘発するような表現はあまり見受けられず、正しいもの1つ、正しくないもの1つを選択することから、比較的解答しやすいものとなっている。

反面、数問は、難易度のかなり高いものも出題され、本試験では消去法により、解答を絞り込むことも想定される。この出題形式では、瑣末な内容に固執せず、1点1分のペースを守りたい。

2. 計算問題

大問の出題のうち、第2問及び第3問が計算問題という傾向が続いている。第2問が1論点につき1つの設問、第3問が1論点につき複数(概ね3つ)の設問が出題される形式となっている。有価証券、棚卸資産、減価償却、リース会計、退職給付会計、企業結合会計、株式評価モデルといった論点が繰り返し出題されている。

第2問は、近年6問の出題と多めだが、各問とも問題文がコンパクトにまとめられており、比較的短時間で解答可能となっている。上記論点に絡む計算式については、ぜひとも整理しておきたい。

第3問は、比較的難易度が高いものが出題されている。1論点につき問1~問3の形式が多く、各問が独立していることも多い。本試験では、問1が難問であっても、問2や問3が単独で解答できる場合もあり、視野を広くして冷静に臨みたい。

3. 財務分析の総合問題

例年、最後の第4問に出題される。近年は26点(1点×26問)の配点となっており、高得点を目指したい。

演習段階では、まず、問題文を通読し、ある程度標準化された構成であることを把握したい。この出題形式における“全体量への慣れ”は、時間の短縮化とともにケアレスミスを回避するうえでも非常に重要である。次に、財務指標であるが、計算式を図式化する等、丸暗記の負担を軽減できるよう工夫して整理しておきたい。

具体的な解答手順については、語群選択や財務指標の計算そのものは全体的に容易であるため、問題冒頭よりスムーズに解答できるはずである。計算の指示や検算用の数値、さらには、指標の単位といったヒントが随所に設定されており、解答の手助けになる。他の出題形式同様、難問奇問の類に執着せず、確実に特典を積上げることが肝心である。

総合問題であるがゆえに、時間を要するのはやむを得ない。本試験では、他の問題との兼合いもあるが、配点(26点なら26分)+15分程度が解答時間の上限であろう。解答時間にゆとりを持つべく、試験時間の早期の段階で取り組みたい。

●本書の使用方法

本書は、「財務会計」、「財務諸表分析」及び「株式価値評価」の3つから構成されている。第1章から第6章までは「財務会計」の範囲を扱っており、個別の論点と企業結合会計から構成されている。

また、第7章では「財務諸表分析」の範囲で、財務諸表より、様々な財務指標を算出し、その財務指標を使った企業の財務内容の分析を扱っている。そして、第8章では「株式価値評価」の範囲で、ファイナンスの基礎を扱っている。

さらに、各章は「1.傾向と対策」、「2.ポイント整理と実戦力の養成」に分かれており、「2.実戦力の養成」では、本試験で出題が予想される論点を扱っているので、ポイント整理と併せて、十分に学習しておくことが必要である。なお、ポイント整理と実戦力の養成における構成は、次のようになっている。

Point
例題
解答及び解説

前述の出題傾向と対策に鑑み、各論点の核心部分が理解できるようにまとめている。

Point
その章の基本的な論点や公式などをほぼ万遍なく網羅している。ここでは、わかっている事項について✓点をつけるなり、わからない事項にマーカーで印をつけるなり、知識を整理していただきたい。基本的には結論のみを列挙し、説明などは省いているが、必要に応じて解説を加えている。

例題
その章の重要・頻出論点について、ほぼカバーできるように配慮して出題している。よくわからない問題や難しいと感じる問題であれば、まずPointの該当箇所を再確認するか、あるいは、解答及び解説を参照しながら解き直すことが必要である。

解答及び解説
解答に至るまでの計算プロセスや考え方などをなるべく詳細に解説している。間違えたところやわからなかったところはPointのところと重複するが、基本に立ち返って知識の整理を再確認していただきたい。

TAC証券アナリスト研究会 (著)
出版社: TAC出版; 2020年試験対策版 (2019/11/16)、出典:出版社HP