証券アナリスト 1次対策総まとめテキスト 証券分析 2020年試験対策
はじめに
証券アナリストとは、証券投資において必要な情報を収集し、分析を行い、多様な投資意思決定のプロセスに参画するプロフェッショナルな人たちをいいます。公益社団法人 日本証券アナリスト協会では、証券アナリストとしてのスタンダードを確立するため、通信教育講座を通じて教育を行い講座終了後の試験によって、証券アナリストの専門水準の認定を行い、検定会員の資格を与えています。
証券アナリスト試験は、アナリスト協会が自主的措置として行っている資格制度であり、合格しなくとも、証券分析業務や投資アドバイスといった証券アナリストの業務はできます。それにもかかわらず証券アナリスト試験は、金融の自由化・国際化、資産の証券化、その他さまざまな要因から、金融業界を中心に非常に注目を集めてきました。
近年では、証券業界に携わる方にとっては必須の資格といっても過言ではないでしょう。証券アナリストの社会的役割や責任は、ますます大きくなっているのです。
証券アナリストに求められる知識は極めて広範囲にわたります。ですから、よりポイントを絞った効率的な学習が必要です。本書では、1次試験対策の総まとめとして、TACが過去の出題傾向を徹底分析したうえで厳選した問題を収載しています。その問題を解きながら、証券アナリスト試験の「証券分析」の出題ポイントを整理できるように構成しており、併せて解答作成に必要な力を身に付けることも主眼としています。
したがって、必ず問題を自分の力で解き、理解が不十分であれば本文を読み直し、再度問題にチャレンジしてください。また、十分な知識が身に付いていると思われる方は、解答作成のポイントまでしっかりと把握し、実力をより確かなものとしてください。
本書およびその他2科目の総まとめテキストが、皆さんの証券アナリスト試験合格のためにお役に立てることを、心より願ってやみません。
TAC証券アナリスト講座
CONTENTS
はじめに
証券アナリスト試験とは
出題傾向と対策
本書の使用方法
過去の出題一覧および重要度
重要論点チェックリスト
運用機関の機能と証券分析のテーマ
第1章 ポートフォリオ・マネジメント
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 投資の基礎概念
2 個別証券のリスク・リターン構造
3 投資家の選好
4 ポートフォリオ理論
5 CAPM
6 マーケット・モデル
7 リスク・ニュートラル・プライシング
8 マルチ・ファクター・モデル
9 ポートフォリオ・マネジメントと評価
第2章 債券分析
1. 傾向と対策
2.ポイント整理と実戦力の養成
1 債券の種類
2 債券利回りの計算
3 スポット・レートとフォワード・レート
4 債券利回りの理論
5 リスクと格付け
6 債券価格の変動
7 デュレーションとコンベクシティ
第3章 ファンダメンタル分析
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 産業分析
2 収益性の分析、株式評価のための財務分析
3 財務安全性分析
4 キャッシュ・フローを用いた分析
5 1株当たり指標およびサステイナブル成長率
第4章 株式分析
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 株式の投資尺度
2 配当割引モデル(DDM)
3 成長機会の現在価値(PVGO)
4 その他の株式価値算定法
第5章 デリバティブ分析
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 オプション取引
2 先物取引
3 金利デリバティブ
4 通貨スワップ
5 債券先物取引
6 デリバティブ取引の概要
第6章 証券市場の機能と仕組み
1. 傾向と対策
2. ポイント整理と実戦力の養成
1 証券の種類
2 証券市場の仕組み
3 証券発行市場
4 証券流通市場
5 証券市場のプレイヤー
◆索引
◆参考文献
証券アナリスト試験とは
~1次試験の概要~
本試験を受験するためには協会通信教育の申込が絶対条件!
受験資格
証券アナリスト試験を受験する場合には、公益社団法人日本証券アナリスト協会の1次レベルの通信教育を受講することが条件となっています。なお、通信教育の受講に際しては、だれでも受講することができ、年齢や学歴などの制限は一切ありません。
*通信教育講座受講申込期間…例年5月1日~
(詳細につきましては、日本証券アナリスト協会にお問い合わせください。)
*通信講座受講期間…約8カ月間
●1次試験日程…毎年2回、例年4月下旬、9月下旬~10月上旬
●出願締切…例年3月上旬、8月中旬
(日本証券アナリスト協会のマイページから申込)
●合格発表…例年5月下旬、10月下旬~11月上旬
●試験実施場所…<国内>札幌、仙台、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、松山、福岡
<国外>ニューヨーク、ロンドン、香港
●試験科目
①証券分析とポートフォリオ・マネジメント
②財務分析
③経済 (科目合格制)
●留意事項…以下のような場合、それまでの1次試験の合格実績はすべて無効となる。
①ひとつの科目の受講開始後、4年間に残りすべての科目を受講しない場合
②受講後連続6回の試験で合格しなかった科目について、直ちに通信教育を再受講しなかった場合
●近年の協会通信および受験状況(1次レベル)
年度 | 検定試験* | ||
受験者数(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
2017年春 | 7,379 | 3,559 | 48.2 |
2017年秋 | 5,012 | 2,586 | 51.6 |
2018年春 | 7,698 | 3,951 | 51.3 |
2018年秋 | 3,990 | 2,043 | 51.2 |
2019年春 | 8,269 | 3,909 | 47.3 |
*検定試験の受験者数・合格者数は、科目別の延べ人数
協会通信教育講座に関するお問い合わせは…
公益社団法人 日本証券アナリスト協会
Tel. 03-3666-1511 Fax.03-3666-5843 https://www.saa.or.jp/
●出題傾向と対策
証券アナリスト試験1次レベルは、「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」、「財務分析」、「経済」の3科目からなり、科目ごとの受験が可能である。形式は2003年より、すべてマークシート方式による選択問題となっている。この「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」の内容は大きく6つの分野に分類できるため、出題は大問で全6問、すべての分野から一通り出題される。
また、公益社団法人日本証券アナリスト協会の通信教育カリキュラム改訂後の試験では、小問数では100問程度となっている。制限時間は180分なので、単純に考えると1問に2分はかけられず、全問をまともに処理することが難しい。とくに計算問題などでは、ある程度スピードが要求され、これに対処するには「過去問」あるいはこの「総まとめテキスト」などで、計算処理に慣れるしかない。
計算問題は面倒ではあるが、それまではっきりしなかった考え方が、計算問題をこなしているうちにだんだん見えてくるということが往々にしてあるので、億劫がらずにとりあえず電卓を叩いてみることをお勧めする。
この科目は冒頭で言及した6分野のすべてから万遍なく出題される。このため特定の分野に偏った知識で臨むのはあまり得策ではなく、また、いわゆる「ヤマ」も張りづらい。したがって、受験する立場としては、まずは基本となるファイナンス理論の根幹を確実に押さえ、あとは枝葉をつけていくといった正攻法の学習方法が、遠回りなようで実は意外と早道であろう。
ただ、現代ポートフォリオ理論や現在価値云々といった、オーソドックスなファイナンスの問題に加え、かなり細かい論点も含まれており、出題量の多さから見て問題の見極め、ひいては取捨選択も重要な合否の要素になっていると言ってよい。大半が選択肢からの択一式なので、いざ本番では、とにかく自分が解答可能な問題から効率よく正確に処理し、何とか解けそうな問題は一応考え、歯が立ちそうもない問題はイチかバチか、といった判断も必要であろう。この意味で、証券アナリスト試験もやはりある種の受験テクニックを身につけておいた方がよさそうだ。
なお「計量分析と統計学」は、1次レベルで母集団および正規分布を扱い、標本および検定については2次レベルで扱われる。こうした背景に鑑み、1次レベルでは正規分布については確実な知識にしておくことが望ましいが望ましいだろう。
(表)過去の問題構成と配点
問題 | 分類 | 2017年(春) | 2017年(秋) | 2018年(春) | 2018年(秋) | 2019年(春) |
第1問 | 日本の証券市場 | 15問(15点) | 15問(15点) | 15問(15点) | 15問(15点) | 15問(15点) |
第2問 | 起業のファンダメンタル分析 | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) |
第3問 | 株式分析 | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) |
第4問 | 債権分析 | 18問(35点) | 18問(35点) | 18問(35点) | 18問(35点) | 18問(35点) |
第5問 | デリバティブ分析 | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) | 15問(30点) |
第6問 | ポートフォリオ・マネジメント | 20問(40点) | 20問(40点) | 20問(40点) | 20問(40点) | 20問(40点) |
合計 | 98問(180点) | 98問(180点) | 98問(180点) | 98問(180点) | 98問(180点) |
●本書の使用方法
この総まとめテキストの各章の構成は次のようになっている。
Point
例題
解答および解説
前述の出題傾向と対策に鑑み、もっぱら計算に重点をおき、問題を通して各論点の核心部分を理解するという方針でまとめている。
Point
その章の基本的な論点、公式などをほぼ万遍なく網羅している。ここでわかっている事柄について✓点をつけるなり、わからない事柄にマーカーで印をつけるなりして、知識を整理してほしい。基本的には結論のみを列挙し、公式の導出過程などは一切省いているが、必要に応じて式のもつ意味や背後にある考え方について言及している。“単語カード”的に使うのもひとつの方法であろう。
例題
その章の重要・頻出論点について、ほぼカバーできるように配慮して出題している。よくわからない問題や難しいと感じる問題があれば、まずPoint の該当箇所にあたられたい。また解けなかったり、間違えた問題は解答 および解説を参照しながら解き直すことを薦める。なるべく実際に計算を行うことにより、背後にある考え方を把握できるような問題を中心にしている。
解答および解説
解答に至るまでの計算プロセス、考え方などオーソドックスなパターンをなるべく詳細に解説してある。間違えたり、わからなかったところは順を追ってよく確認しておいた方がよい。問題を解くための考え方や公式、計算プロセスの意味については、Pointのところと重複するが、重要なものに関しては敢えて再掲している。
機関投資家など運用機関は、マクロ経済分析から個別企業の業績予測に下りていくトップダウンアプローチを採る場合、経済分析→アセットアロケーション(資産配分)→セクターアロケーション(業種配分)→銘柄選択というような形でポートフォリオの構成を決めていく。それにしたがって運用機関の機能と本書で取り上げる証券分析各章のテーマの関係をみていくと、概ね前記のようになる。