ディジタル映像表現 -CGによるアニメーション制作- [改訂新版]




目次 – contents

introduction CG映像制作のワークフロー
本書の目的と構成

1 実写撮影

Overview
1-1 写真撮影の基礎
1-1-1 写真撮影の基礎
1-1-2 ライティングの基礎
1- 2 動画撮影の基礎
1-2-1 映像作品の特徴
1-2-2 ショットサイズ
1-2-3 イマジナリーライン
1-2-4カメラオペレーション
1-2-5映像表現とライティング
1- 3 カラーコレクション
1-3-1カラーコレクションの日的
1-3-2 カラーコレクションの方法
1-3-3 基本的なカラーコレクション
Keywords

2 映像福集

Overview
2-1 映像編集の基礎
2-1-1 映像編集の目的
2-1-2 モンタージュ理論
2-1-3 連続性の維持
2-2 映像編集の実際
2-2-1 映像編集の基本的な流れ
2-2-2 カットをつなぐ基本的手法
2-2-3 演出のための映像編集手法
2-3 映像と音の演出
2-3-1 映像コンテンツにおける音の役割
2-3-2 音の種類
2-3-3 音素材の準備
2-3-4 音による演出
Column より効果的な編集のために
Keywords

3 モデリング

Overview
3- 1 モデリングの基礎
3-1-1 座標系
3-1-2 グループ化と階層構造
3-1-3 モデリング要素
3-1-4 マテリアル要素
3-1-5 マッピング
3-1-6 マッピングの適用方法
3-2 モデリング手法
3-2-1 モデリングチ法
3-2-2 後工程を考慮したモデリング
3-3 モデリングの実際
3-3-1 モデリングの基本的な進め方
3-3-2 キャラクタのモデリング
3-3-3 背景のモデリング
3-3-4 メカニックのモデリング
Column より効果的なモデリングのために
Keywords

4 リギング

Overview
4-1 リギングの基礎
4-1-1 リギングの目的
4-1-2 変形のための手法
4-1-3 制御のための手法
4-1-4 コントローラ
4-2 リギングの実際
4-2-1 キャラクタのリギング
4-2-2 メカニックのリギング
4-2-3 カメラのリギング
Column より効果的なリギングのために
Keywords

5 CGアニメーション

Overview
5-1 CGアニメーションの基礎
5-1-1 アニメーション
5-1-2 オブジェクトのアニメーション
5-2 CGアニメーションの手法
5-2-1 手付けアニメーション
5-2-2 プロシージャルアニメーション
5-2-3 シミュレーションによるアニメーション
5-2-4 サンプリングによるアニメーション
5-3 キャラクタアニメーション
5-3-1 キャラクタアニメーションの基本理念
5-3-2 キャラクタアニメーションの手法
5-4 フェイシャルアニメーション
5-4-1 フェイシャルエクスプレッション
5-4-2 リップシンク
5-5 CGアニメーションの実際
5-5-1 対象の違いとアニメーション表現
5-5-2 手描きアニメ手法の応用
Keywords

6 シーン構築 マテリアル表現/ライティング/レンダリング/合成

Overview
6-1 シーンデータの構築
6-1-1 シーンのレイアウト
6-2 マテリアル表現
6-2-1 マテリアル設定のポイント
6-2-2 高度なマテリアル表現
Column より効果的なマテリアル表現のために
6-3 ライティング
6-3-1 ライティングにおける演出とストーリーテリング
6-3-2 ライトの特性
Column より効果的なライティングのために
6-4 レンダリング
6-4-1 投影変換とクリッピング
6-4-2 レンダリングアルゴリズム
6-4-3 CGカメラの特性
6-4-4 レンダリング時に実現される表現手法
Column より効果的なレンダリングのために
6-5 合成 (コンポジット)
6-5-1 合成の目的
6-5-2 合成の基礎
6-5-3 合成の実際
6-5-4 実写材とCGの合成
6-6-5 手描きアニメとCGの融合
Keywords

7 リアルタイムCG

Overview
7-1 リアルタイムCGの基礎
7-1-1 リアルタイムCGとは
7-1-2 リアルタイムCGの考え方
7-2 リアルタイムCGの実際
7-2-1 ハードウェアの基本構成
7-2-2 リアルタイムCGに適した技法
Column より効果的なリアルタイム表現のために
Keywords

8 プロダクションワーク

Overview
8-1 作品制作におけるプロダクションワーク
8-1-1 プロダクションワークの概要
8-1-2 プロダクションワークの実際
8-1-3 プロダクションマネージメント
8-2 スタッフの名称と役割
8-2-1 制作スタッフ
8-2-2 CG制作に関わるスタッフ
Keywords

9 知的財産権

Overview
9-1 知的財産権の概要
9-1-1 知的財産権とは
9-2 著作権
9-2-1 著作権法
9-2-2 著作物の利用
9-2-3 著作権侵害
9-2-4 ©️(マルシーマーク) 著作権表示
9-3 産業財産権と不正競争防止法
9-3-1 産業財産権
9-3-2 不正競争防止法
Keywords

appendix
a-1 ファイル形式・規格
a-1-1 ファイル形式
a-1-2 規格
a-2 数理造形
a-2-1 手続き的造形手法

参考図書
写真撮影・提供/画像制作・提供一覧
index

筆者
出版社: 画像情報教育振興協会; 改訂新版 (2016/9/20)、出典:出版社HP

introduction

CG映像制作のワークフロー

始めに、3次元CG映像制作の基本的なワークフローを例示し、実際の制作の流れを解説する。本書では、おもに[2]プロダクションと、[3] ポストプロダクションについて取り上げる。

i-1-1 CG映像制作のワークフロー

本書では、後述するワークフローにとらわれず、ディジタル映像制作を学ぶ際に適した順序を考慮し,解説している。そのため、ワークフロー上は後半に実施する工程を先に解説しているケースもある。さらに、理解を高めるために関連する内容をまとめているケースもある。

学習する際には、映像制作のワークフローを念頭に置いて学習してほしい。また,chapter8では、プロダクションワークにおけるワークフローを、さらに掘り下げて解説している。具体例については、そちらを参照してほしい。

つぎに、一般的なワークフローについて、[1]プリプロダクション, [2]プロダクション, [3] ポストプロダクションに大別して解説する(図i_1)。

[1]プリプロダクション(プリプロ)
プリプロダクション(pro-production)では、映像制作のための準備作業が行われる。後述するプロダクションに入る前に、作品のストーリー、登場人物, 台のデザイン、設定などが決定される。プリプロダクションは作品の根幹部分を決める重要な作業であるため、映画やテレビ番組制作の場合は、作品の中核スタッフが長期間かけて内容を練り上げることが多い。プリプロダクションでの準備が万全であるほど、プロダクションを円滑に進めることができる。

・企画書
全画書は、作品の企画をまとめた文書である。テーマ, コンセプト, 仕様などをまとめた概略に加え, 作品の全体像やストーリー,キャラクタなど、作品の具体的な内容が記される。商業作品の場合は、予算やスケジュール、制作体制、ビジネス展開といったプロデュース要素も含まれる。

・シナリオ(脚本)
シナリオは、映像作品の時間軸上の流れをシーンごとに記述した、作品の設計図ともいえる文書である。 シーンごとに、シーン番号、場所(屋内・屋外)、時間帯、キャラクタの発するセリフ、シーンの状況やキャラクタの動作を示す下書きを記し、映像の内容を表現する。

・デザイン、設定
デザインは、作品のキャラクタや背景美術などのビジュアル面を設計する工程である。作品全体のイメージを共有するため、プロダクションデザイン、キャラクタデザイン、美術デザイン、メカニックデザイン、 エフェクトデザインなど、あらゆるビジュアル要素を設計する。

設定は、ビジュアル面に限らず、キャラクタの性格や言動、舞台の時代設定やメカの動作など、多岐にわたる項目を文章や数値、ビジュアルを利用して設計する。

・絵コンテ
絵コンテは、アニメなどの2次元映像や、3次元CG映像では必須とされる映像の設計資料である。シナリオがシーン単位で設計されるのに対し、絵コンテはカット単位で設計される。画面構成や、画面内のキャラクタの動きとセリフ、カメラワークに加え、動きに要する時間, 効果音のタイミングといった時間軸の設計も行う。実写作品の場合は, ロケーションや撮影機材, 俳優の演技など、実際の撮影現場でリハーサルをしなければ詳細を決定しづらいことが多いため、コンチを制作しないこともある。しかし、実写とCGを合成する場合は、事前に絵コンテを作成し、精密に設計することが重要である。

・プリビジュアライゼーション(プリビズ)
作品によっては、絵コンテに加え、プリプロダクション段階で映像を作成する場合もあり、これをプリビジュアライゼーション(previsualization), 略してプリビズ(pre-vis)とよぶ。フル3次元CGや実写とCGを合成する映像制作でプリビズを用いる場合、ディテールを省略したモデルにアニメーションを設定し、簡易的なレンダリングを施して映像を生成する。映像にすることで、画面構成やカットのつながりの良し悪しを具体的に確認できる。 モデルやアニメーションは、仮データを利用する場合もあれば、事前にデータを作成して利用する場合もある。

[2] プロダクション
プロダクション(production)は、映像を実際に制作する工程である。

・レイアウト
設定、絵コンテプリビズなどを参照しながら、3次元CG空間内に キャラクタや小道具、背景などのモデルを配置することをレイアウトとよぶ。動きのあるシーンでは、設定済みのアニメーションデータを読み込んだり、仮の動きを設定したりする。後述するカメラワークとライティングも、この段階で仮設定する。これらの作業結果を見て、モデルの配置や演出を再考したり、各カットの尺(長さ)やアニメーションのタイミングを調整する場合もある。

また、モデリングやアニメーションの作業完了後に、各要素を組み合わせる作業のこともレイアウトとよぶ。

・モデリング
モデリングとは、3次元CG空間のなかに、キャラクタや小道具, 背景といったモデルを生成する作業である。デザインや設定に合わせて、適切なモデリングの要素や手法を選択することが重要である。

・マテリアル
マテリアルとは物体の素材、材質のことであり、CGではとくに物体の光学的特性,材質感のことを指す。マテリアルはそのモデルの質感を決定付ける大きな要素であるため、デザインや設定に合わせ, 適切なパラメータ設定や表現方法を選択することが求められる。マテリアルはモデル作成時のほか、シーン構築の際にも設定される。

・リギング
リギングとは、複雑なアニメーション生成のためのセットアップ作業である。キャラクタ内部のスケルトン構造や、各種デフォーメーション、階層構造、コンストレインなど、さまざまなものを複合的に組み合 わせ、求められる動きを効率的に実現できるしくみを構築する。

・アニメーション
キャラクタなどのモデルに動きを付けることをアニメーションとよぶ。キーとなるポーズをいくつか作成し、それらをコンピュータで補間することによってアニメーションを設定する。コンチやプリビズか ら演出意図を読みとり、最適な設定や手法を選択することが大切である。また、必要に応じて、シミュレーションや、モーションキャプチャなどの手法を組み合わせる場合もある。

・カメラワーク
3次元CG空間内に配置されたモデルを撮影するため、カメラの位置や向き、レンズの設定などを決め、構図をとることをカメラワークとよぶ。カメラワークは、絵コンテなどの指示をもとに設定する。プロダクション開始直後のレイアウト段階でラフに設定しておくと、画面に映り込む範囲や方向が明確になるため、モデリングやマテリアルなど、 ほかの作業の参考になる。

・ライティング
演出方針を踏まえ、3次元CG空間内にライトを設定し、モデルの見え方を決めることをライティングとよぶ。ライティングに際しては、背景美術の設定やイメージボードなどの参考画像を参照し、何をどのように表現したいのかを把握しておくことが重要である。ライティングの種類によっては、カメラワークと連動して設定するものもある。

・レンダリング
3次元CG空間内に配置されたモデルやライト、カメラなどの情報をもとに計算を行い、最終成果物である2次元画像を得ることをレンダリングとよぶ。レンダリングにも多様な選択肢があるため、目的に応じた適切な表現手法を選択することが重要である。

[3] ポストプロダクション(ポスプロ)
ボストプロダクション(post-production)は,映像を仕上げる工程である。

・合成(コンポジット)
合成(コンポジット)とは、複数の画像素材にさまざまな処理を加えながら重ね合わせ、最後に1枚の画像を生成する一連のプロセスのことを指す。2次元CGや3次元CG素材のほか,実写撮影の素材や、手描き素材をスキャンした画像などを用いることがある。最終的に必要とされる画像を理解し、必要な素材や加工の方法を想定できることが重要である。

・セリフ、効果音、BGM
映像制作にとって、音は画像と同じくらい重要である。セリフはシナリオ、効果音は絵コンテ、BGM(Background Music)は企画段階の資料から、必要とされる内容が明らかになる。それらの素材を、編集作業が始まる前に制作しておくことが求められる。

・編集
編集とは、完成した画像素材をつなぎ合わせ、音と合わせて1つの映像にまとめ上げていく作業のことを指す。作品内容を視聴者が理解できるように正しく組み立てること、素材を正しく扱うことが要求される。また、最終的に必要とされているファイル形式や仕様を理解することも重要である。

 

■本書の目的と構成

本書は、公益財団法人 画像情報教育振興協会(CG-ARTS)が3次元CGによる映像表現の教科書として編集したもので、同協会が実施しているCGクリエイター検定エキスパートを受験しようとする学習者のための教科書でもある。同検定は、CGによる映像表現を行うために必要な知識の理解度を測る試験である。本書による学習と検定試験の受験を通じて、自分自身の知識の習得度を把発し、学習や進学・就職活動に活かしていただくことが、本書の目的となっている。

本書の構成に関しては、右の表をご覧いただきたい。chapter1とchapter2では、実写撮影,映像編集といった実写による映像表現に焦点をあてて解説している。これらは、後述する3次元CG制作にも応用できる、映像表現の基礎知識である。chapter3からchapter6では、3次元CGによる映像表現について解説している。また、本書の大半はノンリアルタイムCG制作を前提として記述しているが、chapter7ではリアルタイムCG制作についても紹介している。chapter8以降では、3次元CGによる映像表現をするうえで有用な関連知識について解説している。なお本書では、どのソフトウェアを使用する人にとっても有用となる、世羅的な知識が学べるように配慮している。

3次元CGで映像をつくり、人に何かを伝えるためには、ソフトウェアの操作に加え、多くの知識を修得する必要がある。それらの知識のうち、学生のうちに修得しておいてほしいものを制した教科書というのが、本書の位置付けである。また、企業やCGプロダクションなどにおける新人教育の教材としての利用も想定している。なお、3次元CGの技術的な面をさらに深く学びたい場合は、同協会発行の「コンビュータグラフィックス [改訂新版]」をお勧めしたい。同書はCGエンジニア検定エキスパートの教科書であり、3次元CGの技術を体系的に解説している。

映像制作に絶対的な方法論があるわけではないが、先人たちの積み重ねのなかで育まれたルールや約束事は確かに存在する。それらの知恵を本書で修得し、自身の映像表現に結び付けてくださることを願っている。

2015年1月
ディジタル映像表現-CGによるアニメーション制作-[改訂新版] 編集委員会
編集委員長 木村 卓

実写による映像表現
chapter1 実写撮影
chapter2 映像編集

3次元CGによる映像表現
chapter3 モデリング
chapter4 リギング
chapter5 CGアニメーション
chapter6 シーン構築
chapter7 リアルタイムCG

関連知識
chapter8 プロダクションワーク
chapter9 知的財産権
appendix ファイル形式・規格・数理造形

筆者
出版社: 画像情報教育振興協会; 改訂新版 (2016/9/20)、出典:出版社HP