天文宇宙検定公式問題集 1級 天文宇宙博士〈2014~2015年版〉
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天文宇宙検定とは
科学は本来楽しいものです。楽しさは、意外性、物語性、関係性、歴史性、予言力、洞察力、発展性などが、具体的なものを通じて語られる必要があります。そして何よりも、それを伝える人が楽しまなければなりません。人と人が接し合って伝え合うことの大切さを見直してみる必要があるでしょう。
宇宙とか天文は、科学をけん引していく重要な分野です。天文宇宙検定は、単に知識の有無を検定するのではなく、「楽しく」、「広がり を持つ」、「考えることを通じて何らかの行動を起こすきっかけをつくる」検定でありたいと願っています。
個人の楽しみだけに閉じず、多くの市民に広がり、生きた科学に生 身で接する検定を目指しておりますので、みなさまのご支援をよろしくお願いいたします。
総合研究大学院大学名誉教授
池内了
天文宇宙検定1級問題集について
本書は第2回 (2012年実施)・第3回 (2013 年実施)の天文宇宙検売 1級試験に出題された過去問題と、予想問題を掲載しています。
・2ページ (見開き)ごとに問題、正解・解説を掲載しました。
・過去問題の正答率は、問題番号の下にあります。
天文宇宙検定1級は公式参考書として『超・宇宙を解く一現代天文学演習』(福江 純・沢 武文編、恒星社厚生閣刊)を採用しています。検定問題の4割程度は公式参考書の範囲内から出題いたします。本書では、公式参考書からの出題は解答ページに「→参考書1章1節」などと示しました。
天文宇宙検定 受験要項
受験資格
天文学を愛する方すべて。2級からの受験も可能です。年齢など制限はございません。
※ただし、1級は2級合格者のみが受験可能です。
出題レベル
1級天文宇宙博士(上級)
理工系大学で学ぶ程度の天文学知識を基本とし、天文関連時事問題や天文関連の教養力を試したい方を対象。
2級 銀河博士(中級)
高校生が学ぶ程度の天文学知識を基本とし、天文学の歴史や時事問題等を学びたい方を対象。
3級星空博士(初級)
中学生で学ぶ程度の天文学知識を基本とし、星座や暦などの教養を身につけたい方を対象。
4級 星博士ジュニア(入門)
小学生が学ぶ程度の天文学知識を基本とし、天体観測や宇宙についての基礎的知識を得たい方を対象。
問題数 1級/40問 2級/80問 3級/80問 4級/40問
問題形式 マークシート4者択一方式
試験時間 50分
合格基準
1級・2級/100点満点中70点以上で合格
3級・4級/100点満点中60点以上で合格
試験の詳細につきましては、下記ホームページにてご案内しております。
http://www.astro-test.org/
天文宇宙検定
CONTENTS
天文宇宙検定とは
天文宇宙検定1級問題集について/受験要項
1 觀測
[コラム]人類は宇宙に進出するのか? 池内 了
2 理論
[コラム]スベンスマルク効果 柴田一成
3 宇宙開発
[コラム] スペースガードは必要か 吉川 真
4 天文学その他
[コラム] 太陰太陽暦の置閏法 作花一志
5 天文時事
[コラム]宙探査計画決定の仕組み 松井孝典
6 関連分野
[コラム] SFと科学、想像力の壁 福江 純
Q1 電波天文学などでよくつかわれる mas は何の単位か。
① 時間
② 距離
③ 電波強度
④ 角度
Q2 図の天体の赤方偏移はどれぐらいになるか。
① 0.02
② 0.16
③ 0.26
④ 1.16
Q3 黒点と太陽の明るさの関係について、誤っているものを選べ。
① 大きな黒点がある日の太陽は黒点がないときの太陽よりも全体として少し暗い
② 時間で平均すると太陽活動の極大期は極小期よりも太陽は全体として暗い
③ 黒点がたくさん出ると太陽は X 線や紫外線で明るい
④ 黒点の総面積が同じならば、大きな黒点が少しあるときの方が小さな黒点がたくさんあるときよりも太陽は暗い
Q4 次の図は太陽面の中央を通った直線に沿った表面輝度を表したグラフである。周縁減光係数はいくらになるか。
① ほぼ0
② 0.2
③ 0.4
④ 0.6
Q5 太陽コロナには、Kコロナ、Fコロナ、Eコロナなどの種類がある。 Eコロナはどういうコロナか。
① エディントンの頭文字に由来するダストが散乱するコロナ
② 電離したイオンの輝線で光っているコロナ
③ 電子散乱で光っているコロナ
④ 非常に広がった (extend)黄道光まで続くコロナ
A1 ④角度
電波天文学などでは電波干渉計の分解能が非常によくなって、秒角よりももっと細かい構造が見えるようになってきた。そのような場合にはミリ秒角(mas; milli arc second)も使われる 1ミリ秒角=(1/1000) 秒角=(1/3600000)に相当する。(→参考書1章1節)
A2 ②0.16
水素バルマー線の一つのHa線が、波長660nmから760nmに移動しており、赤方偏移は、 z= (760-660) 1660≒ 0.151となる。(→参考書1章10節)
A3 ②時間で平均すると太陽活動の極大期は極小期よりも太陽は全体として暗い
黒点は数日から数週間の寿命で太陽面上に生まれては消滅していく。また、全体として約11年の周期でその数が増えたり減ったりすることが知られていて、黒点の多い時期を太陽活動の極大期、ほとんど出ない時期を極小期という。黒点は明るく輝く太陽表面の一部を遮ったようなものなので、大きな黒点があると太陽は全体として少し暗くなる(最大1%ほど)。しかし、時間平均すると太陽は活動極大期の方が0.1%ほど極小期よりも明るいことが観測から分かっている。これは極大期に太陽面の周辺でよく見られる明るい領域(白斑)が増加することによる。黒点のある領域を活動領域といい、その上空のコロナは温度と密度が高いので、X線や紫外線では黒点がたくさんあるときは全くないときと比べて、全体として数十倍から100倍明るくなる。大きな黒点の方が小さな黒点よりも暗い傾向がある。従って総面積が同じならば大きな黒点が少しあった方が太陽は少しだけ暗い。
A4 ②0.2
田線減光係数uは、太陽面中央の輝度をI(0)、太陽外縁の輝度をI(a)とすると、u=[I (O) -I (a)] / I (0)で定義される。図からはI (0) ~ 55000、I (a) ~ 42000ぐらいを読み取れるので、u~ (55000-42000) / 55000~0.236となり、だいたい0.2となる。より正確には周縁減光のカーブを当てはめて決める。(→参考書2章14節)
A5 ②電離したイオンの輝線で光っているコロナ
自由電子が太陽光球の光を散乱することによって輝いている白色光コロナを、Kコロナと呼ぶ (KはKontinuierlich;連続的という意味のドイツ語の頭文字)。一方、惑星間空間には太陽近傍も含め微小な塵(dust)が多数存在している。このダストもまた太陽光を散乱する。ダストの散乱によって生じるコロナがFコロナである(Fは Fraunhofer)。Fコロナはそのまま黄道光につながっている。さらにKコロナやF コロナより輝度は落ちるが、高温コロナ中でさまざまに高階電離したイオンから放射される輝線で光っているEコロナもある(E はemissionの頭文字)。(→参考書2章15節)
Q6 太陽風中のプラズマ粒子は、地球磁気圏と相互作用して地球の高層大気を変動させる。以下のうち、直接的には関係しない現象を選べ。
① 磁気嵐
② オーロラ
③ デリンジャー現象
④ オゾンホール
Q7 太陽系内の天体について述べた文で、誤っているものを選べ。
① 火星は太陽系最大の火山をもち、表面温度は場所や季節によって約140~20℃まで変化する
② 金星は主として二酸化炭素による厚い大気で覆われている
③ タイタンは表面が厚い氷で覆われているが、地下には海が存在する可能性が高い
④ イオには現在も噴煙を上げて活動している火山がある
Q8 全光度 (等級)が6等の球状星団があったとする。この球状星団に含まれる星の数が1万個とすると、星1つの平均の等級はいくらか。ただし星の重なりはないものとする。
① 4等 ② 8等
③ 12等
④ 16等
Q9 みかけの等級が10.0等の星Aと12.5等の星Bが天球上の同じ位置にあり、地球上からは分離できずに1つの星として観測されるものとする。この天体は何等級の星として観測されるか。
① 22.5等
② 10.1等
③ 9.9等
④ 7.5等
Q10 みかけの等級が1等星より明るい23個の星 (V< 1.5)の中でスペクトル型がO型は何個か。
① 12個
② 6個
③ 3個
④ 0個
Q6 ④オゾンホール
太陽風中のプラズマは、電磁流体力学的に地球磁場と相互作用して磁気嵐やデリンジャー 象、オーロラなどの現象を引き起こす。オゾン層はおもに成層圏に分布する。地球大気中の 酸素分子は太陽からの紫外線を吸収して酸素原子に光解離されるが、この酸素原子は酸素の子と結合してオゾンとなる。このオゾンの層が部分的に薄くなり、穴があいたような状態になる様子を「オゾンホール」と呼ぶ。オゾンホールの発生は、人類が放出したフロンやハロンが原因となって発生する塩素ラジカルが触媒となって、オゾンが破壊されることで引き起こされる。(→参考書2章12節、16節)
Q7 ③タイタンは表面が厚い氷で覆われているが、地下には海が存在する可能性が高い
土星の衛星であるタイタンは濃密な窒素の大気をもち、表面には液体のメタンが存在する。地下に海が存在すると考えられているのは木星の衛星エウロパや、土星の衛星エンケラドスである。
A8 ④16等
星の等級は5等異なると明るさで100倍異なると定義されている。したがって10等異なると明るさで1万倍異なる。問題にある球状星団の星1つにおける平均の明るさを1万分の1と考えると10等暗くなるので答えは16等と導かれる。(→参考書3章18節)
A9 ③9.9等
Aよりも明るさはい合成した。
観測
少なくとも合成等級でAよりも暗くなることはないので、①、②は誤り。2つの星には2.5等の等級差があるため、明るさは10倍異なる。つまり、求めたい天体の明るさはAとその 1/10の明るさの星Bの合計になり、合成等級ではAよりもわずかに明るいことが期待される。しかし、④の場合、合成した天体がAの10倍も明るいことになり、誤りであるとわかる。したがって、消去法で③が正解。
正確には対数の計算が必要となるが、いま、Aの明るさをFa、Bの明るさを Fbとして合成等級m は以下のように計算できる。
ポグソンの式より、
10=-2.5 log10(Fa / F0)、
12.5 = -2.5 log10(Fb / F0)
ここではF00(ゼロ)等級の星の明るさ (等級のゼロ点に対応する明るさ)。これらの式から、 Fa/F 0= 10-4、Fa/F0=10-5。
いま求めたい合成等級mは、 m = -2.5 log10((Fa + Fb)/F0)なので、
m = -2.5 log10(10-4 + 10-5)
= -2.5 log10(1.1 × 10-4)
= -2.5 log10(10-4)-2.5 log10(1.1)
=10-2.5log10 (1.1)。
ここで、log10(1.1)=0.041なので、
m = 10-2.5×0.041=10-0.1 %3D9.9。(→参考書3章18節)
A10 ④0個
みかけの等級が1.5等よりも明るい恒星は、太陽および1等星αCen AおよびαCen Bの
からなる。αCenを含めると23個となる。そのうちスペクトル型がB型は8個、A型は5
幅、K型は4個、F・G・M型はそれぞれ2個であるがO型はない。最も明るいO型は2.1等のζOri である。3.0年までの星174個の中でもO型は3% (5個のみ)である。