改訂2版 手話技能検定公式テキスト5・6・7級
はじめに
●手話を取り巻く社会の変化
最近、テレビのドラマで耳の聞こえない人たちが取り上げられるようになったり、幼稚園や小学校で子どもたちが手話で歌ったりと、社会のなかで少しずつですが手話が広がってきました。
私が手話通訳の仕事を始めた1981年ごろは、「シュワツウヤクです」 というと必ず一度は相手に聞き返されていましたし、多くの耳の聞こえない人たちからは「人前で手話をすると、まわりの人たちからジロジロと見られて恥ずかしいからイヤだ」という話をよく聞きました。
そのような時代から、社会が広くしょうがいをもった方を受け入れるようになり、町のなかで車イスや盲導犬、手話を見かけるようになったのは本当にうれしいことですし、それだけ日本の社会が成熟した大人の社会になったのだと思います。
●自分のレベルを確認したい
そのようななかで、皆さんは耳の聞こえない人や手話に出会われたわけですね。皆さんは、なぜ手話に興味をもちましたか? 皆さんの目的はなんでしょうか? 耳の聞こえない人と友だちになりたい、ボランティア活動をしたい、ボケ防止のために指先を動かしたい…とさまざまだと思います。
しかし、いままでいくら熱心に手話を勉強しても、いったい自分がどの程度の手話レベルなのかを測るものがありませんでした。そのため、「私は手話の経験が3年です」と経験年数で表すことがふつうでしたが、 しかし同じ経験年数3年でも、週に2回勉強した人と、月に1回の人とでは当然達成したレベルも異なってきます。
そこで、2001年から「手話技能検定」という新しい試験がスタートしました。皆さんが、手話学習の到達度の確認や目標として、この検定をじょうずに活用してくだされば幸いです。また、この試験は手話通訳者の検定試験ではありません。音声テープを聴きながらそれ を手話に翻訳するというものではありませんので、聴覚にしょうがいをもった方でも受験することが可能です。
●手話の学習について
ことばの学習は、まず文字学習からです。このテキストでは、実際の検定試験に沿って、第1章 (7級)ではまず指文字の学習からスタートしています。指文字とは、五十音1音1音に対応してつくられた記号です。これは、主に手話にない日本語、たとえば人名や外来語などを表現するときによく使われます。初心者の皆さんにとっては、一度覚えると、そのことばの手話表現がわからなくても、とりあえず指文字を使って相手に伝えることができるとても便利なものです。第1章では、指文字のバリエーションとして、「ガ」のような濁音、「パ」のような半濁音の表現のしかたも紹介していますが、これは6級の試験範囲になります。
第2章(6級)では、「あいさつ」や「家族」「月日・曜日」などの手話表現と、一から千の位までの数字の表現を合わせて、約100語の基本単語を紹介しています。もちろん、単語だけでは会話は成立しませんが、とりあえずこの6級の範囲である「基本単語」をマスターすることから 始めましょう。
第3章(5級)では、6級の約100語に加え、さらに5級の範囲にある約 100語の単語と35の例文が紹介されています。ここからが、いよいよ本格的な手話学習といえるでしょう。なお、手話は、日本語とは異なった文法をもつ独立した言語です。同じ意味内容を相手に伝える場合必ずしも日本語と同じ表現でなかったり、語順が入れ替わったりするところあります。このあたりに気をつけながら、学習を深めていってください。
なお、試験には、公表された試験範囲以外からは出題されません。本書の姉妹編『手話技能検定公式ガイド&過去問題集』に試験範囲が掲載されています。ただし、試験範囲は改訂される場合がありますので、受験にあたっては最新の試験範囲集をご確認ください。試験範囲集は手話技能検定協会のホームページ(http://www.shuwaken.org/)からダウンロードできます。
なお、この改訂2版は、2010年の試験範囲改訂に合わせて、単語の追加・削除・使用級の変更を行ったものです。
手話に興味をもって本書を手にした皆さんが、検定試験にチャレンジ して、耳の聞こえない人たちとより豊かに心を触れ合わすことができますことをお祈りいたします。
2010年8月
NPO手話技能検定協会 理事長
谷 千春
CONTENS
はじめに
第1章 指文字学習
指文字学習をはじめる前に
●新しい指文字学習法
●指文字を見る方向
●自分の名前
●指文字の位置
●準備体操
●左ききの人は
《7級レベル》
第1課 ノ、リ、ン
第2課 コ、ス、フ、ヘ、ル、レ、ロ
第3課 テ 、ネ、ホ、メ、ユ
第4課 キ、セ、ソ、ヌ、ハ
第5課 手話数字
第6課 二、ミ、ヨ、ム、シ、ク、チ、ヒ
第7課 ア、イ、ウ、エ、オ
第8課 カ、サ、タ、ナ
第9課 マ、ヤ、ラ、ワ
第10課 ハ、ヲ
第11課 ケ、ト、モ、ツ
第12課 まちがいやすい指文字
《6級レベル》
第13課 指文字規則(濁警、華濁等)
第14課 指文字規則(長音)
第15課 指文字規則(幼警)
第16課 短文練習
第17課 歌の練習
第18課 まとめ
第2章 6級レベルの基本単語
基本単語学習をはじめる前に
●本格的な学習のスタート
●手の形や向きに注意して
●表現の個人差
●自然に表情がつけられれば
●力をぬいてリラックス
第1課 あいさつ
第2課 天候
第3課 疑問.
第4課 手話数字
第5課 1週間の曜日」
第6課 日・週・年
第7課 人
第8課 家 族
第9課 色
第10課 方角
第11課 感情
第12課 動 作
第13課 まとめ
第3章 5級レベルの基本単語と例文
文法学習をはじめる前に
●手話文法
●複数の手話表現
●日本手話と日本語対応手話
●中間手話144
●日本手話の基本文法
第1課 疑問と時間
第2課 自然に関する単語と家族・仕事・趣味
第3課 程度を示す単語
第4課 基本動詞
第5課 形容詞
第6課 いろいろな質疑応答
第7課 いろいろな話題提供
第8課 まとめ(試験対策)
第1章・練習(読み取り)問題の解答
指文字表
アメリカ指文字表
さくいん
手話技能検定試験について