「医学部に行く!」と決めたらまず読む本 2020年版




CONTENTS

医学部に行く!と決めたらまず読む本

巻頭特集1 Special Interview
医師はローリスクだからこそ、 思い切ったチャレンジができる職業。 人間力ある人にこそ、めざしてもらいたい。
医師/医学博士/公衆衛生学修士/神奈川県立保健福祉大学大学院教授吉田 穂波さん

巻頭特集2 緊急レポート!
医学部入試不正問題の影響を徹底分析

巻頭特集3
2020年度からの教育改革で医学部入試はこう変わる!

Part1 いつ、何をする? 志望校の選び方は?
医学部合格への道
医学部合格ロードマップ
医学部合格のためのステップ
現地レポート、国内最大級の医学部進学総合イベント開催!「医学部進学フォーラム2019」東京会場レポート

Part2 何をどう勉強すればいい?志望校によって対策はどう変わる?
医学部に絶対合格するための勉強法
Point 1 医学部入試の最新動向
Point2 大学タイプ別の特徴と攻略法
Point 3 教科・科目別の効果的な勉強法
Point 4 面接試験対策・推薦入試対策
医学部受験最前線 本当に自分に合った予備校を選ぶためのポイント

Part 3 私はこうして合格した! 「医学部」合格体験記
Interview1 東京医科歯科大学医学部へ進学椎名希帆さん
Interview 2 大阪医科大学医学部へ進学 矢西涼花さん
Interview 3 東京慈恵会医科大学医学部へ進学中内優太さん
Interview 4 日本医科大学医学部へ進学 山本 真梨子さん
Comment東京慈恵会医科大学医学部へ進学 坪井 義高さん/昭和大学医学部へ進学 川上 亜優さん/帝京大学医学部へ進学永田 英之さん/東京医科歯科大学医学部へ進学 藤田 博雅さん/ 筑波大学医学群へ進学 宮嶋 好輝さん/昭和大学医学部へ進学 日野 麻奈美さん

Part4 医学部志望者が知っておきたい基礎知識
医師の仕事を知る、大学を知る
医師の仕事を知る
Study 1 診療科の中身を徹底分析!
Study2 政府が取り組む医師の「働き方改革」
大学を知る
Step1 医学部の履修プロセス
Step2 医師国家試験に向けての勉強
Step3 研修医は何をするのか

Part5 高額な学費をどう工面する?
医学部進学のための 安心!マネープラン
Plan1 6年間でどれくらい必要?高額な学費を用意する方法
Plan2意外な出費とアルバイト事情 医学部生の生活費
Plan 3 「地域枠」「大学独自奨学金」に注目こんなに使える!奨学金
Plan 4 サラリーマン家庭でも大丈夫!安心の医学部マネープラン

Part6 偏差値、学費、医師国家試験合格率
最新データで読む 医学部のある大学
2019年度 医学部入試難易度実態
2018・2019年度 合格者倍率
2019年度 医学部医学科 学費一覧(抜粋)
第113回 医師国家試験大学別合格率

日本経済新聞出版社 (編集)
出版社: 日本経済新聞出版社; 2020年版 (2019/9/24)、出典:出版社HP

巻頭特集1  Special Interview

医師/医学博士/公衆衛生学修士/ 神奈川県立保健福祉大学大学院教授
吉田 穂波(よしだ・ほなみ)

1998年に三重大学医学部を卒業後、聖路加国際病院で臨床を行い、名古屋大学大学院で博士号を取得。ドイツ、イギリス、アメリカに留学し、ハーバード公衆衛生大学院では修士課程を修了。その後、帰国し、2011年の東日本大震災時には地域の母子保健システムのサポートを行う。2017年より神奈川県立保健福祉大学の立ち上げプロジェクトに携わり、2019年4月に同校が開校。現在は教授として授業を担当する。医師である夫と6人の子どもとの8人家族。

医師はローリスクだからこそ、思い切ったチャレンジができる職業。人間力ある人にこそ、めざしてもらいたい。
海外留学をして学びつつ、臨床、研究、行政、教育など、さまざまな分野で医師の仕事を続けてきた吉田穂波さん。2019年4月に開校した神奈川県立保健福祉大学大学院では、教授として人材育成に取り組んでいる。
9月に誕生したお子さんを含め、6人の子の母としても奮闘する吉田さんに、これから医学部をめざす皆さんへのエールをもらった。

弟が超未熟児で生まれたことと、高2のときの左ひざのケガがきっかけに
医者になろうと思ったきっかけは、私が小学4年生のときに弟が体重950gという超未熟児で生まれたことです。NICU(新生児集中治療室)に、毎日夕方、家族で弟を見に行って、病院の食堂でカレーを食べて帰りました。35年前は1000g以下で生まれるとかなり厳しく、両親の表情から弟は生きるか死ぬかの瀬戸際なんだと感じ取りました。そのとき、助けてもらった命の重みを感じて、「医療という命にかかわる仕事はすごいんだな」と思いました。
高校に入ってテニスに打ち込んでいたら、2年生のときに左ひざ靭帯損傷のケガをして、松葉づえ生活に。そのときは、医師、看護師、柔道整復師など、さまざまな医療従事者の方にお世話になり、「いろいろな人がかかわって人を治していくんだな」と、「チーム医療」を意識しました。それまで理系の教科はあまり得意ではありませんでしたが、高2のときに医者になろうと決めて、ケガで部活ができなくなった分、集中して勉強を始めました。
うちは両親が大学の教員で、家庭ではあまりお金の話をしなかったので、医者が経済的に安定していて将来も安泰だといった印象はまったくなく、医者になるモチベーションの核が、「命を助ける」「人の健康に寄与する」というところにあったため、目標がブレないのはよかったと思います。その後も労働条件や給与体系など、収入を意識して仕事を選んでこなかったことで、臨床、研究、教育など、多様な仕事を経験することができました。

半人前にしか扱ってもらえない憤りが留学の燃料に
大学を卒業して独身の臨床医として働いていたときは、24時間365日を自分のために使えたので、男女の差を感じずに働いていました。それが、30歳で結婚してドイツに行き、31歳で最初の妊娠・出産をして初めて女性としてのハンディキャップに気づきました。それでも結婚したくないとか、子どもはいらないと思わなかったのは、患者さんに多くのことを教えてもらっていたからです。産婦人科では、いかに子どもを授かることがレアなことなのかわかっていたので、チャンスがあれば自分も産みたいと思っていました。
子育てが大変なときも仕事を辞めなかったのは、自分がなりたかった医者という仕事だったからというのもありますし、仕事のうえですごく必要とされていると感じられたことが心の支えになっていました。医者は、自分の働き方を決められるし、治療方針を決めることもできます。そういう裁量があることがやりがいやおもしろさにつながっていました。
そして、働く場所や時間帯も自分で選びたいと思って次にチャレンジしたのが、ハーバードの公衆衛生大学院への留学でした。子どもが増えると常時病院に張りついて勤務することが難しくなったため、臨床現場にいなくても何十万人もの患者さんの役に立てる仕事をしたいと思って、社会疫学、統計学、ヘルスコミュニケーションなどを学びました。
実は、私がそこでキャリアチェンジを考えたのは、憤りからでした。私の中では300%フル回転しているのに、子どもが増えたことで、仕事上では「スタメンじゃなくなった」「2軍落ちした」と思われて悔しかったんです。それが燃料となって、留学のための受験勉強をしました。子育ては、その子の人生の基盤をつくる大切な仕事なのに、低く見られて、あまり評価されていないことが不満でしたね。
自分にとってのもう一つの転機は、2011年の東日本大震災でした。災害医療というまったく違う領域で、妊婦さんや赤ちゃんがすごく弱い立場であるにもかかわらず、ケアの仕方がわからないために支援が後回しにされてしまうことにショックを受けました。そして、災害時に妊婦さんと赤ちゃんに適した対応をするシステムがないことに気づき、ライフワークとしてそのシステム構築に取り組むようになりました。8年たった今も自治体や病院で研修をしたり、啓発を行ったりしています。

神奈川県の保健福祉大学大学院で公衆衛生学に関する人材育成に尽力
臨床医として勤務したあと、ドイツやアメリカ留学を経て、研究や行政の仕事などを行ってきました。今のメインの職場は、神奈川県の保健福祉大学大学院というところです。ここは「公衆衛生大学院」と呼ばれるところで、2年で「公衆衛生学修士」を取得できます。
私は35歳のときにハーバード公衆衛生大学院に留学してから、社会とかシステムとか制度とか法律とか多くの基盤に支えられて医療全体が成り立っているということに気づきました。
ハーバードで学んで、日本にも取り入れたいと思ったことは、医療従事者とそれ以外の人の知識の格差や、情報の勾配をなくすために必要なヘルスプロモーションやヘルスコミュニケーションです。知識や情報を得ることで日本人のヘルスリテラシーが強化されたら、もっと、みんなが健康になれるんじゃないかと考えました。
もう一つ、ボストンにいるときにお金の余裕のない生活を経験してわかったことが、経済的な状況や自分の地位、人間関係など、自分が置かれている環境がどれだけその人の身体やメンタルの健康に影響するかということ。健康のためには、その人を取り巻く社会的な環境がとても大切になってくることを学びました。
日本でもそういう領域に取り組みたいと考えていたら、神奈川県が新しい公衆衛生大学院をつくることになり、3年前から立ち上げのお手伝いを始めて、この2019年4月に開校しました。私はそこで、『健康行動学』や『社会疫学』などの講座を担当しています。

医学部をめざしていることを周りの人に宣言して決意を固める
大学受験の際、私は「国公立の医学部に行く」と決めていたので、受験勉強ではひたすら問題集を解いてセンター試験対策をしました。理系の科目は弱いと自覚していたので、ほとんどの人が取れそうな問題を落とさないように集中的に勉強して、難易度の高いところまでは手を出しませんでした。その代わり、得意な英語、国語は自分の突破口だと思ってしっかりやって、自信をつけました。今は医学部向けの進学塾もたくさんあるので、どんどん利用するといいと思います。
医学部には理系の人が進学する印象があると思いますが、理系向きの仕事かというと、実はそうでもありません。国家試験では、チームワークとか、コミュニケーションスキルとか、倫理・モラルなど「人間力」の部分がすごく求められるようになってきています。
テストでよい点数を取るだけではなく、自分が好きなことや興味があることをもっている人が医者になると、すごくおもしろいと思います。医学部を受ける人には、「自分が医者になったら、おもしろい医者になれるはずだ」という根拠のない自信をもって医学部を狙ってほしいですね。
ダメだったときに恥ずかしいからと医学部に受かるまで公言しない人もいるようですが、本気で医学部をめざしていたら、できるだけ多くの人に「医学部を受験する」「医者になりたいんだ」と話してみましょう。人に言うことで自分の決意が固まりますし、たくさんの情報も入ってきます。医学部受験の勉強がつらくても最後まであきらめない力をつけるためには、人に宣言することがおすすめです。
あとは、実際に医者になった人の話をたくさん聞くこと。医者になってよかったこと、楽しいこと、やりがい、どんな世界が広がったかなどを聞くと、自分のモチベーションも上がります。機会があれば、病院の中を歩かせてもらう、白衣を着る、医者について扱っているマンガやドラマを見るなどもおすすめです。ここぞというときに踏ん張るための材料を、たくさん貯めておくといいですね。
保護者は、医学部受験が押しつけにならないように注意しましょう。やりなさいと言われると、やりたくなくなるのが子どもなので、子どもが自ら「医学部に行きたい」と思うような感じにするといいと思うんですね。人を助けることに喜びを感じるのか、新しい治療法を発見することに興味があるのか、子どもがどういうところで医者に魅力を感じるのかを探してプッシュするといいと思います。
医者は6年間かけて健康や病気に関する知識を得ます。それは誰にとっても価値があるユニバーサルでグローバルな価値なんです。医師の資格をもつことは、世の中の大切な領域とかかわれるプレミアムチケットのようなものです。
例えば留学して一文無しになっても、医者なら、またどこかで働いて取り戻せます。もともとローリスクな仕事なら、リスクを取っていろいろなことにチャレンジできる。守りに入るのはもったいないと思うから、「自分はもっともっとぶっ飛んだ医者にならなくては」と考えているんですよ(笑)。

自分の働き方や仕事の方向性を決めることができ、自分で自分の人生の舵を切って行けることが働くやりがいにつながります。

巻頭特集2 緊急レポート!

医学部入試不正問題の影響を徹底分析 ~医学部入試はこれからどう変わるのか?~

昨年、東京医科大学に息子を裏口入学させたとして文部科学省の局長が逮捕されたことに端を発した医学部不正入試問題。私立大学を中心に複数の医学部で性別・浪人回数などにより、不適切な得点調整を長年行っていたことが判明した。その背景にはどのような事情があったのか。不正問題発覚後、大学はどのように動き、今後の医学部受験はどのように変化していくのか。数多くの医学部受験生を指導し、合格させてきた医系専門予備校メディカルラボ本部教務統括の可児良友さんに、その背景と入試への影響を聞いた。

以前から私立大医学部のほとんどが女子と多浪生に厳しかった
昨年明るみに出た医学部の不正入試問題は、医学部をめざす受験生や保護者の方々にとって非常に大きな出来事でした。
医学部入試の出題傾向は千差万別であり、女子に有利、不利といったこととは別に、高い偏差値の受験生でも自分の学力や特性と出題傾向がマッチしていなければ、合格するのが難しいのが医学部受験です。ただし、そういう傾向を除いても、医学部入試は女子の受験生や多浪生に厳しいということはあったと考えています。当校でも保護者の方からは「女の子に不利にならない医学部はどこでしょうか?」と相談されることもよくありました。
そういった不安に応えるためにも、当校では独自に受験データを収集してきました。例えば、同じ偏差値の受験生が同じ大学を受け、男子と女子でどちらが受かりやすいかを比較すると、だいたい7割くらいは男子に有利だという結果が出ていました。ただ、それが今回明らかになったように筆記試験の点数によって調整されているとまでは考えておらず、面接試験で差がついているのだろうと受け止めていました。当校では受験生に試験後、面接でどんな質問をされたかを受験レポートとして提出してもらっており、女子に対して厳しい面接をする大学が多いことがわかっていたからです。
「あなたにお子さんがいて、その子が急病で今すぐ保育園に来てほしいと連絡が入った。あなたには患者さんがいます。どうしますか?」といった質問がされる。こういう質問は男子受験生にはありません。質問は私立大のほとんどの大学で見られますし、国公立大でも見受けられます。多浪生にも厳しく、面接で「そもそもなぜ長い間、浪人しているのか?」などとはっきりと聞いてくる。それに答えられない男子受験生が失敗する例が多いようです。
そして、今回の不正入試問題を受けて、各大学が入試選抜方法について改革を行った結果、合格率に顕著な差が現れました。志願者に占める女子比率(A)と合格者に多める女子比率(B)の割合(B➗A)が100%を切ると女子に厳しいと言えるのですが、国公立大は変わりませんでした。しかし私立大の場合、従来80%から90%くらいだった比率が、今回軒並み100%を超え、平均で120%くらいになりました。以前は57.3%だった比率が106.1%に伸びた大学もあります。それだけ女子が入りやすくなったわけです。
そのため今年は繰り上げ合格者数が増えました。過去に現役男子受験生が有利となっていた事実が明らかになり、成績のよい現役の男子受験生も受験校を増やしたためです。複数校の合格者が増え、繰り上げ合格者も増えました。

医学部は大学の附属病院に優秀な医師を確保する必要がある
そもそもなぜこうした問題が起こったのか。そこに医学部の事情もあると考えています。医学部は附属病院を備え、卒業後、その附属病院に勤めてくれる医師をある程度確保しておく必要がある。よい医師を抱えておかないと地域の医療機関にも派遣できないので、卒業後、大学病院で働いてほしいという意向は私立大だけではなく国公立大でも強いと思います。そこで、優秀な女子に期待するところなのですが、女子は合格しても環境的な事情から大学病院に残ってもらえないということもありました。そういう傾向が頭に残っている面接官が面接で質問すると、そこで差をつけてしまうということがあったのではないかと思います。

医学部受験はイコール就職試験職業観、倫理観を早く自覚する
今年の受験結果を見ると、調整はすんだと考えられます。すなわち、これまでと比較すると、現役男子受験生には厳しい状況が続くことになります。そこで、今後予測される変化は大きく2つあります。
1つは難易度の上昇です。これまで10年間は国の措置で定員を増員できましたが、今後減らす大学が増える。すでに今年、定員を減らした大学が出ています。さらに2021年度入試から受験制度が変わり、2020年度入試ではランクを下げても合格したいと思う受験生が増えるため、全体的に難易度が上がっていく。ただ、私はたとえ浪人しても医学部をあきらめないでほしいと思っています。新入試制度では記述式など考えさせる問題が多く、時間をかけて勉強してきた浪人生のほうが有利だと考えるからです。
もう1つは人物評価をより重視するようになること。すでに筑波大学では昨年まで英語と数学が各300点、面接が200点満点だった配点を、今年から面接を適性検査と面接試験に変えて500点満点としています。他大学でも同様の例があり、より人物評価の高い、意欲ある人を育てていくという方針に変わってきています。
入学するとほぼ全員が医師か研究者になる医学部受験は、受験イコール就職試験とも言えます。どういう医師になりたいのか、社会の中で医療の役割とは何かを早い段階から自分に問い、受験に臨むことが求められます。そのうえでどの大学が自分にマッチしているのかを、大学のアドミッション・ポリシーやオープンキャンパスなどの情報を集めて、慎重に考えていくことが必要となるでしょう。

巻頭特集3

2020年度からの教育改革で医学部入試はこう変わる!

2020年度より、小学校を皮切りに新学習指導要領が順次実施。一方で、大学入試は2021年度(2021年4月入学生対象)より「大学入試センター試験」から、新しく「大学入学共通テスト」に移行します。間近に迫った「教育の2020年問題」、その中で医学部入試はどう変わるのか。今後の医学部入試とその対応について、駿台教育研究所進学情報事業部部長の石原賢一さんに解説していただきました。

迫る大学入試改革の全容
「センター試験」は「大学入学共通テスト」へ

未来社会を生き抜く力の評価を重視する「共通テスト」
現在行われている「大学入試センター試験」は、2020年度入試(2020年1月実施)が最後の実施となります。高校での基礎レベルの学習内容の確認を目的に、1990年度入試より実施されてきたセンター試験ですが、評価が、「知識・技能」に偏重していると言われてきました。これからの社会ではグローバル化が進み、自ら新しいものを生み出すことができる人材が不可欠になると言われています。そのような社会では「思考力・判断力・表現力」「主体性をもって多様な人々と協働して学び、行動できる力」に、よりウエイトを置いた評価を行うことが重要なのです。つまり、今までのセンター試験では、そういった力の評価には限界があるとされたのです。
もう一つ、高校教育の質的転換という社会的要請も理由です。小・中学校では現行の学習指導要領において、すでに記録、要約、説明、論述、討論といった言語活動の充実が図られており、新学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」、いわゆるアクティブ・ラーニングの視点による授業改善や新しい時代に必須となる資質・能力の育成をめざし、教科・科目の新設、目標や内容の見直しなどの取り組みも行われます。
ところが、高校では、先生の授業を一方的に聞くという受動的な学習が中心で、生徒が主体的に学んでいく環境が整っていないという指摘があります。そこで、高校ですでに小・中学校で実績があるグループ活動や探究的な学習などを導入することで、自ら課題を発見し、解決するというアクティブ・ラーニングの視点に立った学習・指導方法の改善を進めるという方針が定められ、全国的にも具体的な実践が始まっています。
大学においては、各大学が「卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)」「教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)」を策定し、この三つの方針を明確に外部発信し、大学と高校との接続を改善することで、多様な学生を受け入れつつ、教育の質的転換も図る必要性があることが指摘されています。
こうした大学・高校双方の課題を克服するために、入試改革を含む高大接続改革が不可欠だと言われているわけです。つまり、高校までに「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」という「学力の3要素」をしっかりと育成し、大学教育においてはそれらの一層の成長を図るため、それをつなぐ大学入試も、多面的・総合的に評価する方式に改善を行うことになったのです。

将来必要な能力を評価センター試験との相違は?

新たな共通テストは学力の3要素を重視
センター試験に代わる「大学入学共通テスト」では、今までの「知識・技能」中心から、「思考力・判断力・表現力」をより重視した評価への移行をめざしています。こうした評価を行うために、出題について従来のセンター試験から変更される部分があります。まず、国語・数学1(数学I、数学I・A)では一部に記述式問題が導入されます。国語は現代文で記述式問題による大問が1題増加し、試験時間が100分と20分延長されます。数学1は大問数の変更はありませんが、小問として記述式問題が3問加わり、試験時間は70分と10分延長されます。
また、一番の話題は英語が4技能評価になる点です。従来の「読む・聞く」の2技能評価から「読む・聞く・話す・書く」の4技能評価へ変更します。これにともない、共通テストに加えて、英検やGTEC、TOEFLといった民間の英語4技能資格・検定試験を活用することになりました。なお、公平性の観点から共通テストと併用される民間の資格・検定試験は、高3の4~2月の間の2回までの受験に制限されています。
共通テストと同時に利用する民間の資格・検定試験は、大学入試センターの英語成績提供システムに参加しているもの(これを「英語認定試験」と呼びます)に限られ、受験にあたっては、事前に発行された「共通ID」が必要となるので要注意です。なお、私立大等では、従来と同じく、出願時に個人で各資格・検定試験の成績表等を提出する大学もあるので、事前に募集要項等での確認が必要です。
共通テストで出題される教科・科目はセンター試験と変更はなく、国語・地理歴史・公民・数学・理科・外国語の6教科30科目です。なお、2022年4月入学生から高校の学習指導要領が改訂されることにともない、2025年度入試からは共通テストの出題教科・科目や実施形態の変更が検討されています。

国公立大での共通テストの利用指針
この共通テストで導入される国語と数学1の記述式問題を、国公立大では基本的に「一般選抜(一般入試)」の全受験生に課す方針を示しています。
試験結果の具体的活用方法については、各大学・学部が定めますが、国語は大問に対する5段階評価を点数化して、マークシート式問題の得点に加点することが基本形です。記述式問題の自己採点は複雑な採点基準もあって、正確に行うことは難しく、実際の採点結果と大きなズレが生じる可能性が指摘されています。

また、記述式問題の自己採点には、試験時間内に自分の解答を書き写してくる時間が必要です。普段から模擬試験などで自分の解答を書き写す練習を行うことがポイントになります。また、記述式問題に限らずマーク式問題において問題文が長くなる傾向が見られることから読解のスピードを上げることも重要になります。テキストや資料をすばやく読み、理解する力が求められます。
今後は、難関大を中心に個別試験(2次試験)においても、「記述・論述力重視」の方針が広がると思われます。すでに、個別試験においても複数の素材を活用して、自分の考えをまとめ表現する力を評価する作問への改善が行われています。
また、大学の求めに応じて、共通テストを運営する大学入試センターが個別試験用の国語の記述式問題と採点基準を提供し、作問が厳しい単科大学などで個別試験問題として活用する方法も検討されています。このように共通テストに加え、各大学の個別試験でも難易度の高い記述式問題が増えることになると、受験生の負担が大きくなることが考えられます。
英語は、国立大では、共通テストの英語と民間の英語4技能資格・検定試験を利用した「英語認定試験」(以下「認定試験」)の両方を一般選抜の全受験生に課す方針です。認定試験については、「1一定水準以上の結果を出願資格とする」「2共通テストの英語の得点に加点する」のいずれか、または1、2の両方を組み合わせて活用するとしています。
出願要件の場合は、指定されたレベルに達しなければ出願できません。加点の場合は、その配点は各大学・学部で決めることになっています。英語認定試験を受験していれば出願可能ですが、加点の配点によっては、個別試験前に大きなハンディを負う結果になる場合もあります。
認定試験については、国立大が共通テストと共に利用する際には、英語成績提供システムへの参加が認められたすべての資格・検定試験が対象となります。認定試験は、試験ごとに出題形式・構成、検定料、実施会場や実施数、回数などが異なりますが、得点アップのためには、共通テストとは一緒に利用できない低学年時から同じ試験の受験経験を増やし、問題傾向や実施形式に慣れることも必要です。

医学部志望者数は減少難易度や対策は?
2020年度入試の受験人口は前年度比0.8%減ですが、現在の高2生が受験する2021年度入試(2021年1月~3月実施)は2.4%減とさらに大きく減る見込みです。
医学部は近年、人気が下落傾向にあります。ここ10年で最も人気が高かったのは2012年度で、国公立の医学部医学科の前期志願倍率は5.7倍でした(文部科学省発表)。2019年度では、前期志願倍率は4.5倍となっています。
これは、約1800人の定員増を行っていることも原因の一つです。2021年度までは定員数を維持するということですので、倍率が上がることはないと予想されています。
今後、医学部志望者が急激に増えることも現状では考えにくそうです。医学部は入学イコール医療系の職に就くことが前提となりますので、大学卒業生の就職率が好調で、就職先が豊富な都市部では特に人気が低下傾向にあります。一方、都市部に比べて就職先の選択肢が少ない地方部では、医学部志願者は減っていません。
医学部受験をめざす受験生には、現行課程や臨時定員増が続く2024年度まではチャンスと言えるでしょう。
そして、2021年度入試以降のポイントは英語認定試験をきちんと受験することです。現役生は基本的には高校からの指示に従うことになりますが、既卒生で自宅浪人する場合などは、各主催団体からの最新情報を入手するために定期的にホームページをチェックしたり、出身高校の進路指導室を訪れて相談したりするといった努力も必要でしょう。
依然不透明な部分がある大学入試改革ですが、ハイレベルな学力を以前から要求されていた医学部入試には大きな影響はないと考えられます。医学部志願者は、入試制度の変化に惑わされず、まずは医学部入試に挑めるだけの学力をつけることが先決です。そのうえで、志望校の情報に対してアンテナを張っておくことも医学部入試をクリアする条件の一つと言えます。

大学入試改革の医学部入試への影響は?1
AIとの違いをスキルとして身につける
お話をうかがったのは駿台教育研究所進学情報事業部部長石原賢一さん
経済産業省が日本の将来のロードマップを提示した中で、2040年をめどに「第四次産業革命」が起きると予測を示していることも大学入試改革が盛んに言われるようになった一因です。第四次産業革命の結果、人工知能(AI)の活用が進み、従来は人間が行っていた仕事の過半数がAIに取って代わられる可能性があると言われています。しかしながら、人間が持つ思考力・判断力・表現力は、この段階でもまだAIに取って代わられるものではないとも考えられており、こういった能力を高めていこうということが大学入試改革の考え方なのです。つまり、従来の学校教育ではあまりに知識・技能に偏重していた、その部分を見直そうということです。
もう一つは「主体性を持って多様な人と協働して学ぶ態度」の育成です。日本人は一般的に奥ゆかしく、自己主張をしないという特徴があり、主体性をもつことを苦手としてきました。しかし、現在はグローバル化が進み、国内に多くの外国人が生活・労働しています。これからの社会においては自分の意見をもち、表現するとともに、国籍・人種・年齢・性別・宗教・文化などがさまざまに異なる集団の中で、協働して物事を成し遂げることが重要です。そして、そのためのコミュニケーション能力も必要で、そのためにも大学入試改革が行われるのです。

大学入試改革の医学部入試への影響は?2
共通テストへの最大の対策は「読解力・記述カ」の強化
記述式問題の導入、英語4技能化ばかりが話題になっていますが、共通テストへの移行で最も求められているのは、確かな「読解力」を養成することです。
記述式問題の導入といっても、東大や京大のような論述対策が必要ではありません。英語4技能化も2019年9月時点の発表では英検準2級程度の英語力が要求されている程度で、決して高いハードルではありません。
一方で、現在の高校生の読解力低下は著しく、それの対抗策として共通テストの試行調査(プレテスト)を見ると、問題文を長くしたり、複数の文章をもとに考察させようとする問題が出題されたりしました。これは、今の高校生が生活している社会全体で文字データを通じて、「もの」を知るという必要性が小さくなってしまったからです。
大人でもプライベートで文章を書くという機会が減少しており、学校教育の中で「書く」ことを実践させざるを得ない状況なのです。例えば、70年ほど前までは社会人のたしなみとしてあった毛筆は、今や実生活で使うシーンがほぼなくなってしまいました。年賀状も普通にPCを使いプリンターで印刷しています。将来は、音声入力すれば、AIが文人や達人風に文章を作ってしまう、そんな時代が来るかもしれません。しかし、現在はまだそうではなく、読解力・記述力に関しての社会からの要求が高くなっています。

大学入試改革の医学部入試への影響は?3
英語の民間資格・検定試験の必要レベルは高くない
医学部を受験する場合、従来のセンター試験では英語得点率は85%以上が必要です。この高学力が必要であることを考えると、認定試験導入の影響は小さいと考えられます。ほとんどの大学では、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のレベルA2(英検準2級合格に相当する英語力)があれば、出願に支障はありません。だから、A2を高3の早期に取得することが求められるわけです。
しかし、英語認定試験では主催団体に受験希望者全員を受け入れなければいけないという「供給義務」が課されておらず、希望者が思うように受け入れられないかもしれないという問題があります。東京都や神奈川県、そして大阪府といった大都市部では、希望者すべてを受け入れ可能な会場確保が難しいとも聞いています。従来は高校実施が可能で、学校の先生が試験監督し、その結果を受験や就職に活用してきました。しかし、公平性の観点から全国統一日程、主催団体が手配した監督者で試験を実施することとなり、思うような会場設定が難しくなっています。2020年に東京オリンピック・パラリンピックがある首都圏ではより厳しいと言えます。
全国高等学校長協会では、2019年9月に、英語認定試験の利用に関しては実施を見送ることを文部科学省に要望しました。この件の動向に関しては、今後も注意する必要があるでしょう。
また、大学入試改革においては、調査書等をより活用して、受験生の高校での学習や多様な活動に関する評価の充実を図るという方針が出されています。しかし、医学部入試では医師への適性を評価するために全大学ですでに面接が実施されており、今までも志望理由書などの提出が必要な大学も多くありました。そういった意味では従来と大きな変化はありません。

医学を英語で学びグローバルに活躍できる医師をめざす
今、海外の医学部を経て、医師をめざすルートが注目を集めている。入試面、教育面、経済面で、さまざまなメリットがあるからだ。どのような制度になっているのか、特色を紹介しよう。

日本の医学部と比較して入試のハードルが低い
2006年、「ハンガリー医科大学事務局」(HMU)が東京・新宿に開設され、ハンガリーの医学部を経て、医師をめざす制度がスタートした。
留学先はセンメルワイス大学、セゲド大学、ペーチ大学、デブレツェン大学の4国立大学の医学部。年々、日本からの入学者が増加しており、現在では約400名以上の日本人学生が在籍し、今年度は86名が入学する予定だ。
これだけ人気が高まっているのは、どのような点にメリットを感じているからなのだろうか。
最も大きいのは、日本の医学部と比較して入試のハードルが低いことだ。それはHMUが設立された理由とも関係している。
「私たちは日本の医学部の入試制度に疑問を感じていました。国公立大学医学部に合格するためには、センター試験で文系科目も含めて数多くの科目が課され、すべての科目で高得点を上げる必要がありますけれども、古文や漢文、数学などが苦手な人が、良い医師になれないかというと、決してそんなことはありません。厳しい入試を突破するために、多浪生活を強いられ、貴重な時間を浪費するよりも、入試のハードルが低い海外の医学部を活用する方がよほど合理的です。入学前の古文や漢文、数学でその人の資質を試されるよりも、医学部に入学してから、病理学ができるかどうか生理学の単位が取れるかどうかで、その人の資質を見る方が合理的だとは思いませんか?また、医師とは人を診る職業ですから、人間としての総合力が勝っている人の方が、医師に相応しいことは明らかです。その思いがHMU設立の契機になったのです」。
ハンガリーの医学部には、最初から本コースに入学することも可能だが、英語力などの問題があり、9割以上の学生が予備コースで半年、あるいは1年学んでから、本コースに進んでいる。予備コースの試験は英語、理科(生物、化学、物理から2科目選択)と面接だ。英語は英検®2級ぐらいのレベル、理科は、高1・高2の基礎が理解できていれば8割以上得点できるレベルの問題だという。何よりも重視されるのは面接で、コミュニケーション力、人間性、医師をめざす意欲などが問われる。成績上位者から順に定員を満たすまで合格とする形ではなく、基準点を満たしていれば人数に関係なく合格となる。逆にいえば、基準に達していなければ、たとえ定員を満たしていなくても合格とはならない。要は、人間的に優れていれば、当初の学力がそれほど優秀でなくてもチャレンジできるというシステムである。
一方の本コースの入試は、1次は予備コースと同じ科目で、2次で生物、化学の筆記試験と、教授によるマンツーマンの口頭試問が課される。基本的な理科系の用語を説明できることが合格の条件になる。

英語で医学教育を受けることが大きな強みになる
このように、日本の医学部に比べれば、入試問題も易しく、入学しやすいことから、これまではいわゆる「日本の医学部入試失敗組」の学生が多かった。しかし、ここ数年は、誰もが知るような難関進学校の生徒や、日本の有力医学部にも合格していながら、あえてハンガリー留学を選択する生徒も増えている。
そうした生徒が魅力を感じているのは、ダブルライセンスの取得のチャンスがあり、グローバルな活躍が期待できることだ。
ハンガリーはEUの加盟国であり、卒業と同時に取得できるハンガリーの医師免許は、EU圏内のすべての国で通用する。もちろん、医師国家試験に合格すれば、日本の医師免許も取得できる。

日本の医師国家試験合格のためのフォローも万全
なお、ハンガリーの医学部では、英語で授業を受ける。これが、日本で医師になってからも大きな強みになっている。
なぜなら、研究論文を仕上げる場合、今や英語で書くのが当たり前の状況になっているからだ。国際学会はもちろん、国内で開催される学会も英語が共通語になりつつある。外国人観光客などの増加により、急患の外国人と適切なコミュニケーションが図れる医師は重宝される。こうしたさまざまな背景により、英語が使える医師を確保したいと、ハンガリーの医学部卒業者は、数多くの病院から引く手あまたの状況になっているのだ。

経済面のメリットも大きい奨学金制度も充実
もう1つ大きいのが経済面のメリットだ。予備コースの学費は年間70万円、本コースは大学によって異なるが、年間180万~200万円だ。生活費などを含めて、予備コース+本コースの7年間学んだと仮定した場合のトータルの費用は2200万~2600万円。日本の私立大学医学部に通った場合と比較すると、割安といえる。
奨学金制度も充実している。2014年9月入学者からは、ハンガリー政府による日本人学生向けの奨学金制度がスタート。医学部6年間の授業料が全額免除されるほか、生活費、住居費の補助金が合わせて月額約3万4000円支給される。地方都市なら手頃なアパートが借りられる金額だ。昨年度は3名が受給しており、破格の待遇の割には受給しやすい奨学金制度になっている。
ただし、全員が受けられるわけではないから、奨学金を前提に予備コースに入ると、学業を続けられなくなる可能性もあるので、その点は注意しておきたい。
EUと日本のダブルライセンスを取得し、英語を駆使できる医師として、グローバルに活躍できることは大きな魅力に違いない。そんな自分の将来像をモチベーションに、頑張る覚悟を持った人にこそ適した制度といえよう。むしろ、このような方式で医師を育成し、世に送り出すのが、本道といえよう。

ハンガリー国立大学医学部卒業生の主な勤務先
東北大学病院・大阪大学医学部附属病院・筑波大学附属病院・東京医科歯科大学医学部附属病院・岡山大学病院・広島大学病院・名古屋大学医学部附属病院・鹿児島大学病院・北海道大学病院・横浜市立大学附属病院・順天堂大学医学部附属順天堂医院・東京慈恵会医科大学附属病院・昭和大学病院附属東病院・埼玉医科大学病院・聖マリアンナ医科大学病院・浜松医科大学医学部附属病院・筑波記念病院・亀田総合病院・川崎市立川崎病院・県立広島病院・札幌厚生病院・尾道総合病院・神奈川県立足柄上病院・手稲渓仁会病院・市立福知山市民病院・東名厚木病院・土庫病院・宮城厚生協会・公立昭和病院・平和会吉田病院・東京都立小児総合医療センター・神奈川県立こども医療センター・広島市立広島市民病院・大阪府済生会富田林病院・赤穂市民病院・淀川キリスト教病院・湘南鎌倉総合病院・藤沢湘南台病院・静岡市立静岡病院・佐野厚生総合病院・春日部中央総合病院・さいたま赤十字病院・熊谷総合病院・仙台徳洲会病院・宇治徳洲会病院・大浜第一病院・京都民医連中央病院・水島協同病院・野崎徳洲会病院・ロンドン大学附属病院・セゲド大学附属病院

現役医大生の声ハンガリー国立大学医学部
センメルワイス大学4年生
池田晴香さん(大阪府大阪女学院高等学校)

世界で通用する医師になる
「人の役に立つことによって、自己の生き方をも深める」という人生の目標を持ち、苦しんでいる人のために「医師になる」強い意志と決意を持ってハンガリーに渡った池田さん。現在センメルワイス大学4年生の池田さんにハンガリーでの学びを詳しく伺うことができたので、ぜひその内容を紹介しよう。

なぜハンガリー医科大学を志望しましたか?
小学校でインターナショナルスクールに通っていたことから、英語が身近で、英語力を生かした仕事に就きたいと考えていました。高校の進路指導室で知ったハンガリー医科大学の、英語で医学が履修できる環境にとても魅力を感じハンガリー医科大学を志望しました。

現在はどのようなスケジュールで学んでいますか?
センメルワイス大学では、6年生のローテーションとは別に4、5年生はフロック制度を導入しています。ブロック制度では各臨床科目を2、3週間ずつクラス毎にまわります。4年生後期のブロック科目は、皮膚科・整形外科・外科・内科でした。その他の薬理学や公衆衛生などの科目は学期を通して授業を受けています。

一番印象に残っている、もしくは影響を受けた授業・実習について教えてください。
なんと言っても、4年生後期の外科実習で鼠径ヘルニアと胆嚢摘出の腹腔鏡手術の第一アシスタントとして入ったことです。このような手術の第一アシスタントは、内視鏡を持ち、執刀医の術野を確保するとても大事な役割をもちます。執刀医の見たい術野を予測し、的確に術野を写し出すのは、とても難しかったですが、2件とも無事に終わりホッとしました。一緒に手術に入った執刀医の先生や看護師の方から「よくやった」と言われた時には、とても達成感がありました。

授業以外にはどのような活動があるのでしょうか?
センメルワイス大学には学生団体があり、様々なイベントの企画をしています。その一つに白衣授与式があり、3年生までの基礎医学が終わった生徒は医学部長から直々に白衣を贈呈されます。その白衣を着て実習に参加しているのですが、とても身が引き締まる思いです。
また私は、今年度病理学と生理学のチューターを担当していました。これまでは授業を受けるばかりの立場でしたが、初めて自分の言葉で教えることになり、より深い理解を求められ、自分の勉強にもなりました。

ハンガリー医科大学の魅力はどこにありますか?
ハンガリー医科大学で勉強するのは決して楽なことではありませんが、自分の可能性を大きく広げるチャンスをいくらでも見つけることのできる場所だと思っています。アメリカやヨーロッパの国々を含む海外で医師になるチャンスも大きいと思います。
また、様々な国籍の学生との交流を通して、各国の文化に触れ、その違いを理解し、受け入れようとする適応力も培われたと思います。このように多角的に人間力を成長させる環境は、国際医療に携わっていきたいという思いを抱く私にとって最適な環境です。

これから医学部をめざす後輩たちへ、メッセージをお願いします。
ハンガリー医科大学に来る生徒は様々な事情を持ち、入学します。そして6年間ハードに勉強し続け無事卒業することができる生徒の共通点は皆、医師になりたいという強い意志を持ち、モチベーションが高いことです。日々少しずつ確実に進んでいけば、自分の可能性を世界に無限大に広げるチャンスがあります。ですから、医師になりたいという気持ちは誰にも負けないと思っている皆さんは、ぜひハンガリー医科大学に挑戦してみてください。
※学年は取材当時のものです。

日本経済新聞出版社 (編集)
出版社: 日本経済新聞出版社; 2020年版 (2019/9/24)、出典:出版社HP