公務員ホンネの仕事術 ―「人付き合い」は生存技術(サバイバルスキル)―
はじめに〜公務員は「人付き合い」で失敗する
この本は、ホンネで書いた公務員の「人付き合い」ガイドです。
公務員の仕事は、結局のところ、「人付き合い」の良し悪しで大きく変わってしまうものです。職場における居心地も「人付き合い」に大きく左右されます。メンタルで心身を損なってしまう原因の多くは、残念ながら職場の人間関係です。
この本では、公務員の「人付き合い」のコツをホンネで書きました。公務員向けの自己啓発書はたくさんありますが、職場内外の人間関係に焦点を当てたものはほとんどありません。ホンネで書かれたものとなると本当にありません。多くの本に書かれているのは、きれいな「タテマエ」ばかりです。
公務員には高い倫理観が求められるので、「タテマエ」の理解は必要です。しかし、現実の問題の前では役に立たないことが多いことは知っておくべきです。なぜなら、ガイドを必要とする人たちは「人付き合い」が必ずしも得手ではないからです。「タテマエ」通りにやろうとしてできず、自信を失っていく若手を何人も見てきました。
公務員が失敗するのは、多くの場合、「人付き合い」のためです。単に仕事で失敗する人はいません。「人付き合い」ができていれば、必ずフォローがあるものだからです。能力があっても、「人付き合い」ができていないと、結局のところ、職場でも、他団体の職員や業者・市民・議員等との関係でも行き詰まってしまいます。一方、適度に小ズルい人たちは、うまく立ち回っていきます。
あなたが公務員として、公私共に楽しく充実した毎日を過ごしたければ、公務員のホンネの「人付き合い」を知る必要があります。「人付き合い」は公務員に必須のサバイバル術です。苦手な上司、面倒な同僚、反抗的な部下と同じ職場になっても乗り越える方法はあります。業者や市民・地域の関係者や議員の方々と良い「人付き合い」をすることも、ポイントさえ分かっていれば難しいことではありません。
公務員はなかなかホンネを話しません。だから、公務員の「人付き合い」は実地で痛い目に遭いながら身に付けるしかないのですが、それは危険な賭けです。異動の中で、いきなりとてつもなく面倒な人と仕事で関わることもあるからです。
私は、組合役員として、管理職として、また、本や雑誌連載の著者として、これまで延べ一千件を超える相談に乗ってきました。拙いながらも、経験を踏まえて『公務員1年目の教科書』、『公務員の「異動」の教科書』、『公務員の「出世」の作法』(いずれも学陽書房)と、成長して自分らしい公務員キャリアをつくるためのガイドも書いてきました。しかし、そうしたガイドだけでは、仕事や職場は必ずしもうまくいきません。繰り返しになりますが、公務員の仕事や職場の居心地は「人付き合い」に大きく左右されるからです。
私は、正直、「人付き合い」はあまり得意ではありません。しかし、その分「痛い目」には人一倍遭ってきました。その経験を踏まえて、タテマエではない、公務員のホンネの仕事術を「人付き合い」の側面から、3部に分けてお伝えします。
第1部「庁内編」では、上司・同僚・部下との「人付き合い」のポイントを説明します。「ダメ上司」「無責任上司」「気難しい上司」「細かい上司」には神経をすり減らされるものですが、「人付き合い」がうまくできれば、むしろチャンスとなります。一方、「ウマの合う上司」「面倒見のよい上司」はありがたく、「やり手の上司」は頼もしい存在ですが、付き合い方を誤れば大変なことになります。同僚・部下との「人付き合い」にも、職場の中だけに、一般的な「人付き合い」とは異なったポイントがあります。そうしたことをホンネで説明していきます。
第2部「渉外編」では、国や他の自治体、業者やマスコミ、市民や地域、議員の方々との「人付き合い」について説明します。年数を経るにつれ、係長・課長と職層が上がるにつれて、またはエキスパート・スペシャリストとして内外に認められるようになるにつれて、対外的な人間関係がより重要になっていきます。端的に言えば、能力・実績と同じぐらい人脈が重要になり、その人の価値になってくるものです。それを左右するのは、若いうちからの「人付き合い」の積み重ねです。公務員には内向き志向の人が少なくありませんが、それでも無理なく「人付き合い」を広げ、重ねていくためのコツを、ホンネで説明していきます。
第3部「自己啓発編」では、庁内外での公務員同士の「人付き合い」をどう広げ、深めるかについて、また、研究者・学会・出版社や異業種・地域での学びの場での付き合い方について説明します。ダイヤモンドを磨けるのはダイヤモンドだけであるように、人を磨けるのも人でしかありません。ともすれば面倒な人間関係を楽しめるようにしながら、仕事でも役立つように広げ、深めていくには、ちょっとしたコツがあるのです。そうした人脈を持っていれば、仕事はもっと楽しくラクになります。
公務員の仕事は、結局のところ、「人付き合い」の良し悪しで大きく変わってきます。職場における居心地も「人付き合い」に大きく左右されます。仕事や職場での居心地を悪くするのも「人付き合い」ならば、仕事や職場を超えて、自治体の世界と地域で楽しく自分なりにやっていけるようにしてくれるのも、「人付き合い」です。
ようこそディープな公務員の「人付き合い」の世界へ。「人付き合い」は公務員が楽しく仕事をする上で不可欠な生存技術です。
ホンネで、時に赤裸々に書いていますので、本書の内容の取り扱いにはご注意ください。
堤 直規
公務員ホンネの仕事術~人付き合い編~ 目次
はじめに
第1部 庁内編
第1章 上司との付き合い方。
まず上司への「幻想」を捨てる
「ダメ上司」こそ絶好の機会
「無責任上司」には退路を用意する
「気難しい上司」はその懐に入る
「細かい上司」はチェック役にする
「ウマが合う上司」には要注意
上司に勧められたら試してみる
「やり手の上司」とは少し間を置く
第2章 同僚との付き合い方。
「弱点」を一つ見せておく
「借り」を作ってから「返す」
「おかげ」経験をストックする
「変わった同僚」を友とする
「現場の人」と飲む・遊ぶ
第3部 部下との付き合い方。
「腐ったみかん」にはすぐ対応する
「できない部下」こそかわいがる
「できる部下」には釘を刺す
部下の個人情報に注意を払う
「明るい上司」を演じ続ける
第4章 付き合いの広げ方・保ち方
「人付き合いマップ」を描く
「見てもらえる場」に自らを置く
「キーパーソンたち」と付き合う
「ゆるい関係」の間合いを保つ
「虚礼廃止」を真に受けない似
第2部 渉外編
第5章 他の自治体職員等との付き合い方
「相手よりも丁寧」に接する
「大事な関係」は秘めて育てる
視察は行く前後に「勝負」する
視察は受けてそれを縁にする
「面白い人」と付き合っていく
第6章 業者・マスコミとの付き合い方
「営業」からは情報を引き出す
「若手のやり手」をマークする
「一流の仕事」でWin-Winになる
「プレスリリース」は数を打つ
「誤報」が出たら好機と考える
第7章 市民・地域との付き合い方
「市民」その人に関心を向ける
「地域ネタ」を毎週三つ用意する
「意識高い方」と喧嘩友達になる
「団体内部」に詳しいと思われる
「通う店」をいろいろ持っておく
第8章 議員との付き合い方:
議員の「プライド」を侵さない
「若手議員」に丁寧に対応する
議会・役所以外の「接点」を持つ
「提供できる情報」を見つけておく
話さずに「呼吸」で察してもらう
第3部 自己啓発編
第9章 業務外での庁内外の職員との付き合い方
「面白い人」に会いに行く
「お偉方」との関係は秘めておく
「参加する場」は次第に絞り込む
「ついで」「接点」で関係を保つ
「パイプをつなぐ」人になる
「語れる趣味」を持つ
第10章 研究者・学会・出版社等との付き合い方
「語れる仕事」をストックする
「学会」に足掛かりを築く
「寄稿依頼」は基本的に受ける
「テーマ」を持って書きためる
第11章 異業種・ネットでの付き合い方
異業種は「違い」を面白がる
「つながり」の中で自分の評判をつくる
「ブログ」はコツコツ書きためる
「SNS」は時間を決めて行う
おわりに