CFA受験のためのファイナンス講義―計量分析編




はしがき

本書は確率・統計と称される計量分析のうち、CFAレベルIとレベルⅡで問われる部分をカバーしている。証券アナリストとして必要な基礎知識であり、レベルIにおいて特に重要な分野の一つである。特にBaselⅡ、Ⅲと銀行/証券業界においてはリスクの計量化への理解がいっそう重要となってきており、計量分析は国際金融の場で働く者にとっての必須知識となってきている。

各講は「この講のポイント」「本文」「演習」「重要概念・重要公式まとめ」から構成されている。まず各講冒頭に掲げた「この講のポイント」を読んでほしい。これは学習者・受験者に到達してほしい最終目的地を示している。CFA®試験合格に必要な知識は、これ以上でもこれ以下でもない。次に「本文」を飛ばして「重要概念・重要公式まとめ」「演習」に移る。演習問題がある程度解けるのであれば本文を飛ばしてどんどん先へ読み進めばよい。とにかく最後まで読了して、理解している部分とそうでない部分の仕分けを行うことが重要だ。そのうえで、理解不足箇所の本文をじっくり読み進めていってほしい。

CFA®の計量分析は欧米経営大学院(MBA)で必須科目として学習する「確率・統計」の内容とほぼオーバーラップしており、基礎的知識がある受験生にとっては点数の稼げる項目だが、大学時代にこの分野に触れたことのない受験生(日本の社会人受験生の多く)には鬼門である。基礎的知識のない受験生はCFA協会の英文教材やStudyGuideといった英文参考書に入る前に、まず2週間あまり集中的に(12月試験なら夏期休暇、6月試験なら正月休暇等を使って)この分野をマスターするのが効率的である。

その際、計量分析を不得手とする受験生・社会人にとって本書が有益なものとなることを願っている。この本を出版するにあたって、石濱圭一氏(三井住友銀行米州審査部長、CFA)、福本健一氏(同行国際与信管理部部長、CFA)、花田信彦氏(同行本店法人営業部副部長、CFA)の諸兄には、草稿段階で目を通してもらい貴重なアドバイスをいただいた。また中外製薬株式会社からは小生の社会人大学院におけるファイナンス教育・統計教育活動に対して支援をいただいた。本書はその成果の一部である。あらためて感謝申し上げる。今回も金融財政車情研究会出版部佐藤友紀氏からは企画段階から暖かい励ましと丁寧なアドバイスをいただいた。ここに心より謝意を表する次第である。
2011年8月 茗荷谷にて
大野 忠士

<執筆者紹介>
大野忠士(おおのただし)
筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授(ファイナンス)1978年京都大学法学部卒業、1978年住友銀行(現三井住友銀行)入行、事業調査部次長、米州審査部長、国際企業投資部長等を歴任。2008年8月より現職。修士(経営学)(筑波大学)。コロンビア大学大学院(数理科学)中退。
資格:CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員
所属学会:日本統計学会、日本ファイナンス学会、日本金融・証券計量・工学学会(JAFEE)
著書:CFA受験ガイドブック[レベルⅡ](2006年)、CFA受験ガイド
ブック[レベルI]第2版(2007年)、CFA受験のためのファイナンス講義[株式・債券・デリバティブ編](2009年)CFA受験のためのファイナンス講義―計量分析編

大野 忠士 (著)
金融財政事情研究会 (2011/08)、出典:出版社HP

目次

第1講 時間価値
1 金利
2 将来価値(Future Value)
3 名目金利、実効金利、ボンド換算金利
4 年金の将来価値、現在価値(Future Value of Ordinary Annuity,
Present Value of Ordinary Annuity)

第2講 ディスカウント・キャッシュフロー
1 ネット・プレゼント・バリュー(Net Present Value)
2 内部収益率(Internal Rate of Return,IRR)
3 NPVとIRR
4 利回り

第3講 統計の基本概念
1 統計の基本概念
2 ばらつきを測る尺度
3 チェビシェフの不等式
4 シャープ・レシオ(Sharpe Ratio)
5 四分位点、パーセンタイル点
6 歪度(skewness)
7 尖度(kurtosis)

第4講 確率と集合
1 確率と集合に関する基本用語
2 確率に関する法則
3 ベン図(Venn Diagram)

第5講 条件付確率とベイズの定理
1 イベント・ダイアグラム
2 シナリオ分析
3 ベイズの定理(Bay’s Theorem)

第6講 共分散と相関係数
1 説明変数と被説明変数
2 散布図と相関係数
3 相関係数と共分散
4 ポートフォリオの期待値と分散
5 相関係数の検定
6 相関係数の限界

第7講 順列・組合せ
1 階乗(Factorial)
2 順列(Permutation)
3 組合せ(Combination)
4 ラベリング問題、多項係数(Labeling Problem.Multinomial Coefficient)

第8講 確率分布
1 確率分布
2 離散の一様分布(The Discrete Uniform Distribution)
3 二項分布(The Binomial Distribution)
4 連続一様分布(The Continuous Uniform Distribution)

第9講 正規分布
1 正規分布(Normal Distribution)
2 正規分布の信頼区間(Confidence Interval)
3 標準正規分布(Standard Normal Distribution)
4 正規分布を使っての確率計算
5 平均・分散分析(正規分布の応用)
6 対数正規分布(The Lognormal Distribution)
7 離散型収益率と連続型収益率
8 モンテカルロ・シミュレーションとヒストリカル・シミュレーションCFA受験のためのファイナンス講義―計量分析編

大野 忠士 (著)
金融財政事情研究会 (2011/08)、出典:出版社HP

第10講 標本抽出と推定
1 標本抽出(Sampling)
2 標本誤差と標本分布(Sampling Errorand Sampling Distribution)
3 よい推定量
4 中心極限定理(Central Limit Theorem)と標準誤差(Standard Error)
5 信頼区間と区間推定
6 t分布
7 標本に係るバイアス

第11講 仮説検定
1 仮説検定
2 片側検定(One-Tailed Test)と両側検定(Two-Tailed Test)
3 z検定かt検定か
4 仮説検定における2種類のエラー

第12講 平均の差の検定
1 母集団の平均が等しいかどうかを検定するためのt検定2 ペアになった標本の差のt検定

第13講 分散の検定【χ2 (カイ二乗)検定] 1 χ2(カイ二乗)検定(Chi-square testing)
2 χ2分布
3 χ2 (カイ二乗)分布を用いた母標準偏差の区間推定

第14講 等分散性の検定(F検定)
1 母分散比の検定とF分布
2 F分布32つの母分散が等しいときのF検定

第15講回帰分析
1 回帰係数
2 最小二乗法(Method of Least Squares)
3 回帰方程式の前提
4 推定値の標準誤差(Standard Error of Estinate,SEE)
5 予測誤差と信頼区間
6 回帰係数の信頼区間
7 回帰係数の検定

第16講 回帰分析における分散分析表*
1 分析分布表(ANOVA Table)
2 決定係数(Coefficient of Determination,R-square)
3 回帰分析におけるF検定
4 回帰分析の限界

第17講 回帰分析(その2)*
1 回帰分析における統計上の問題点
2 分散不均一性(Heteroskedasticity)
3 誤差項の自己相関/系列相関(Autocorrelation,Serial Correlation)
4 多重共線性(マルチコ、Multicolinearity)
5 ダミー変数(Dummy Variable)
6 被説明変数が質的変数の場合のモデル

第18講 時系列分析*
1 時系列モデルとは
2 時系列トレンドモデル(Time-series Trend Model)
3 対数線形モデル(Log-linear Trend Model)
4 自己回帰型時系列モデル(ARモデル、Autoregressive Time-series
Model)

第19講 時系列分析(その2)*
1 ランダムウォーク(Random Walk)
2 ランダム・ウォークに対する差分処理
3 非定常性の検討:単位根検定(Unit Root Test)
4 季節性ある時系列モデル

第20講 時系列分析(その3)*
1 移動平均モデル(Moving-average Models)、自己回帰移動平均モデル(Autoregressive Moving-average Models)
2 自己回帰不均一分散モデル(Autoregressive Conditional
Heteroskedasticity,ARCH)
3 多変量時系列のときの回帰分析
4 モデル選択

◆事項索引

(注) *印は応用項目(レベルII相当)

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