CFA®受験のためのファイナンス講義 -経済編




はしがき

CFA®受験のためのファイナンス講義 -経済編

本書は、CFA試験レベルⅠとレベルⅡで問われる経済をカバーしている。本書は、「この講のポイント」「本文」「演習」「重要概念・重要公式まとめ」から構成されている。特に冒頭の「この講のポイント」は受験者に到達してもらいたい最終目的地を示しており、CFA協会が示すLearning Outcome Statement(LOS)に対応している。CFA試験ではこのLOSに掲げた部分が問われるのでこのポイントを意識して学習していただきたい。

CFA試験の経済は(特にレベルI)、4年制大学および欧米の経営大学院(MBA)で学ぶマクロ経済、ミクロ経済とオーバーラップしている(国際貿易・外国為替のところだけ少し詳しく聞かれるが)。実務家にとってはアカデミックに過ぎると思われるかもしれない。

しかしながら、経済学は国際金融の場で働く者にとっては必須の基礎知識である。経済問題を考える際、本質に迫るための分析ツールである。ファンドマネジャーであれ、証券アナリストであれ、CFAホルダーとなった暁には各人が現実問題を解決する際必ず役立つツールである。そういう意味でCFA試験の準備ではあるが体系的な知識を身につけるチャンスである、と頭のなかを切り替えていただきたい。

大学で経済学を学んだことのある者もすでに記憶のかなたであるかもしれない。法学部等経済学部出身者以外の者にとっては計量分析と並んで苦手な分野だと思われる。しかしながらCFA試験に必要な高度な内容まで、これだけを読めば必ず習得できると信じている。経済学になじみのない受験生でも1カ月弱で十分理解できるはずである。

この本を出版するにあたって、かつてのCFA受験勉強会(NY)の仲間である福本健一氏(三井住友銀行国際統括部、CFA)、花田信彦氏(三井住友銀行コーポレート・アドバイザリー本部、CFA)には草稿段階で目を通してもらい貴重なアドバイスをいただいた。また中外製薬からは社会人大学院における経済学教育に関する支援をいただいた。本書はその成果の一部である。あらためて感謝申し上げる。今回も金融財政事情研究会出版部伊藤雄介氏から励ましとアドバイスをいただいた。ここに心より謝意を表する次第である。

2015年7月 茗荷谷にて
大野 忠士CFA®受験のためのファイナンス講義 -経済編

大野 忠士 (著)
きんざい (2015/10/15)、出典:出版社HP

<執筆者紹介>

大野忠士(おおのただし)
筑波大学大学院ビジネス科学研究科国際経営プロフェッショナル専攻教授(ファイナンス)1978年京都大学法学部卒業、1978年住友銀行(現三井住友銀行)入行、事業調査部次長、米州審査部長、国際企業投資部長等を歴任。2008年8月より現職。修士(経営学)(筑波大学)。コロンビア大学大学院(数理科学)中退。博士(学術)(総合研究大学院大学)。
資格:CFA®協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員
所属学会:日本統計学会、日本ファイナンス学会、日本金融・証券計量・工学学会(JAFEE)
著書:CFA受験ガイドブック[レベルI](第3版)(2014年)、CFA受
験のためのファイナンス講義[計量分析編](2011年)、CFA『受験のためのファイナンス講義[株式・債券・デリバティブ編](2009年)、CFA受験ガイドブック[レベルII](2006年)

目次

第1部 ミクロ経済
第1講 需要と供給
1 需要関数
2 供給関数
3 価格変化と需要量・供給量の変化
4 超過需要と超過供給、均衡点
5 均衡点は連立方程式(需要関数と供給関数)の解
6 オークション
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第2講 消費者余剰と生産者余剰
1 消費者余剰(Consumer surplus)
2 生産者余剰(Producer surplus)
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第3講 規制と介入[後半はレベルⅡ] 1 価格規制
2 生産量上限の設定(Quota)
3 補助金(Subsidy)
4 課税(Tax)
5 規制の合理性ほか(レベルII)
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第4講 需要の価格弾力性
1 需要の価格弾力性(Price elasticity of demand)
2 需要曲線上の価格弾力性
3 需要の所得弾力性(Income elasticity of demand)
4 需要の交差価格弾力性(Crosspriceelasticityofdemand)
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第5講 消費者選択理論
1 効用と限界効用
2 予算制約線
3 最適消費点
4 代替効果と所得効果
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第6講 企業の収入・費用
1 利益、利潤、レント
2 総収入、平均収入、限界収入
3 生産要素
4 費用
5 完全競争市場下での企業の利潤最大化
6 不完全競争市場下での利潤最大化
7 完全競争市場下での長期均衡:長期的視点からみたコスト構造
8 長期均衡における利潤
9 産業による長期費用の違い
[演習] 【重要概念・重要公式まとめ】

第7講 生産力と限界生産力
1 労働の限界生産力と労働需要量の決定
2 資本の限界生産力と資本需要量の決定
3 費用最適状態での生産力(加重限界生産力均等の法則)
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第8講 完全競争市場
1 完全競争市場(Perfectly Competitive Market)
2 完全競争企業にとっての需要曲線
3 完全競争企業の利潤最大化
4 完全競争市場の均衡
5 完全競争市場での赤字操業と供給曲線
6 完全競争市場下での需要の変化
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第9講 独占的競争
1 独占的競争(Monopolistic competition)
2 独占的競争における需要曲線と短期均衡
3 独占的競争における長期均衡
4 独占的競争における効率性
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]CFA®受験のためのファイナンス講義 -経済編

大野 忠士 (著)
きんざい (2015/10/15)、出典:出版社HP

第10講 寡占
1 寡占市場(Oligopoly market)
2 屈折需要曲線理論(Kinked demand curve model)
3 クールノーの複占モデル(Cournot duopoly model)
4 ナッシュ均衡モデル(Nash equilibrium model)、囚人のジレンマ(prisoner’s dilemma)
5 共謀(Collusion)
6 シュタッケルベルク均衡モデル(Stackelberg dominant firm model)
7 低コストで規模の大きい企業がある場合の寡占(Dominant Firm Model)
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第11講 独占
1 独占(Monopoly)
2 Single priceのもとでの価格の決定
3 価格差別のもとでの独占
4 独占における余剰
5 自然独占(Natural monopolies)
6 市場構造比較
7 市場の集中度(Herfindahl-Hirschman Index)
[演習] [重要概念・重要公式まとめ] 第2部 マクロ経済

第12講 国内総生産(GDP)
1 国内総生産(GDP)
2 財政収支と国際収支
3 国内総生産、国民所得、個人所得、可処分所得
4 物価指数とGDPデフレーター
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第13講 ケインズ・モデル[CFA試験で直接問われることはないが当然知っておくべき内容]
1 ケインズの総支出モデル(Keynesian Aggregate Expenditure Model)
2 予想個人消費
3 予想投資、予想政府支出
4 予想純輸出
5 予想総支出(Planned Aggregate Expenditure)とケインズのマクロ均衡点(Keynesian Macroequilibrium)
6 投資乗数、政府支出乗数、租税乗数
[重要概念·重要公式まとめ]

第14講 IS-LM分析
1 IS曲線
2 LM曲線
[演習] [重要概念·重要公式まとめ]

第15講 総需要曲線と総供給曲線
1 総需要曲線(AD曲線、Aggregate Demand Curve)
2 総供給曲線(AS曲線、Aggregate Supply Curve)
3 AD-AS分析
[演習] [重要概念·重要公式まとめ]

第16講 景気循環、失業、インフレ
1 景気循環(Business Cycle)
2 景気循環を説明する理論
3 失業(Unemployment)
4 インフレ
5 経済指標
[演習] [重要概念·重要公式まとめ]

第17講 貨幣需要と貨幣供給
1 貨幣(Money)
2 貨幣数量説(Quantity theory of money)
3 貨幣需要
4 貨幣需要と貨幣供給
5 フィッシャー効果(Fisher effect)
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第18講 中央銀行
1 中央銀行(Central Bank)
2 信用創造と貨幣乗数
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第19講 金融政策と財政政策
1 金融政策(Monetary policy)
2 金利水準と拡張的金融政策/緊縮的金融政策
3 金融政策の限界
4 財政政策(Fiscal policy)
5 金融政策と財政政策の組合せ
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第20講 経済成長理論[主にレベルⅢ] 1 経済成長の要因(成長会計式)
2 新古典派成長理論
3 収斂仮説(Convergence hypothesis).
4 内生的成長理論(Endogenous Growth Theory)(ローマー・モデル)
5 経済成長を促す要因
[演習] [重要概念・重要公式まとめ] 第3部 国際貿易と外国為替

第21講 国際貿易と国際収支
1 絶対優位と比較優位
2 貿易制限と貿易保護(Trade restriction and trade protection)
3 貿易ブロック(Trading blocs or Regional trading agreement)
4 国際収支(Balance of payments, BOP)
5 テイラー・ルールと為替レート
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第22講 外国為替
1 為替用語
2 名目為替レートと実質為替レート
3 為替制度(Exchange regimes).
4 為替と国際収支
[重要概念・重要公式まとめ]

第23講 為替計算問題(3国間の為替裁定取引とフォワードポジション)[レベルⅡ] 1 3国間の為替裁定取引
2 為替フォワード契約におけるポジション計算
[重要概念・重要公式まとめ]

第24講 為替パリティ理論主に[レベルⅡ] 1 絶対的購買力平価説(Absolute Purchasing Power Parity)
2 相対的購買力平価説(Relative Purchasing Power Parity)
3 国際フィッシャー関係式(International Fisher Relation)
4 カバーなし金利平価(Uncovered Interest Rate Parity)
5 (カバー付き)金利平価(Interest Rate Parity)
6 為替に係るパリティ関係一覧
7 キャリー・トレード(Carry trade)
[演習] [重要概念・重要公式まとめ]

第25講 マンデル=フレミング・モデル
1 マンデル=フレミング・モデル(Mundell-Fleming model)[資金移動が自由な場合] 2 マンデル=フレミング・モデル【資金移動がない場合] 3 マネタリー・アプローチ(Monetary Approach)
4 アセット・マーケット・アプローチ(Asset Market Approach)
[演習]
[重要概念・重要公式まとめ]

第26講 為替介入と通貨危機
1 政府・中央銀行による為替介入
2 通貨危機の兆候
[重要概念・重要公式まとめ] 参考文献
事項索引

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