福祉事務管理技能検定のおすすめ参考書・テキスト(独学勉強法/対策)
福祉事務管理技能検定の概要
福祉事務管理技能検定は社会保障、社会福祉制度、老人・障害者の医学と心理、介護の基礎、介護保険制度、介護報酬請求事務などの能力を評価する試験です。医療・介護サービス付き高齢者住宅ができるなど、近年、医療と福祉・介護のつながりは強まってきています。医療機関に就職するにあたってもこの資格を持っていることは大きなメリットとなるでしょう。
福祉事務管理技能検定試験の公式テキスト
公式的なテキストはありませんが、試験運営をしている医療秘書教育全国協議会が監修したテキストが建帛社から出版されています。試験に完全準拠したテキストですので、ほとんど公式テキストと言っても過言ではないでしょう。試験を受けるうえで第一選択となるテキストです。
福祉事務管理技能検定のおすすめ参考書
1.「改訂 社会保障・社会福祉論」(建帛社)
「福祉事務管理技能検定試験」審査基準に完全準拠したテキストシリーズ。検定委員を執筆陣に迎え、最新動向を踏まえた全巻書き下ろし。平成26年度診療報酬改定に対応するとともに、構成も見直した改訂版。
2.「老人・障害者の医学と心理」(建帛社)
、出典:amazon.co.jp
福祉事務管理技能検定試験」審査基準に完全準拠したテキストシリーズ。検定委員を執筆陣に迎え,最新動向を踏まえた全巻書き下ろし。
3.「介護の基礎」(建帛社)
「福祉事務管理技能検定試験」審査基準に完全準拠したテキストシリーズ。検定委員を執筆陣に迎え,最新動向を踏まえた全巻書き下ろし。
4.「介護保険制度 第2版」(建帛社)
「福祉事務管理技能検定試験」審査基準に完全準拠したテキストシリーズ。検定委員を執筆陣に迎え、最新動向を踏まえた全巻書き下ろし。平成26年度診療報酬改定に対応した第2版。別冊『介護給付費請求の実際』(24ページ)付き。介護給付費を請求するプロセスを記入例に沿ってわかりやすく解説する。
目次 – 福祉事務管理技能検定テキスト〈1〉社会保障・社会福祉論 (福祉事務管理技能検定テキスト 1)
福祉事務管理技能検定テキストシリーズへの改訂にあたって
本シリーズの前身である「福祉事務管理シリーズ」(全7巻+別巻)は、2002(平成14)年7月に初版を刊行し、2006、2007年には介護保険法の改正(2005年)を受けて、内容の見回しならびに記述の大幅な改正を行って“新版”とし、今日に至ります。
高齢社会の急速な進展、財政の逼迫などを背景に、福祉諸施策・制度・基準等にかかわる近牛の動きはまことに急です。また、改正介護保険法は施行後3年を目途に改正の成果を検証することを定め、3年を1期とした制度見直しや財政運営の見直しを行って介護保険事業計画を定めるよう規定しています。
そこで、初版発行後10年を機に行う今回の改訂では、社会保障・福祉制度の動向、介護報酬制度の改定、介護福祉士養成カリキュラムの改定などの最新動向を盛り込むとともに、今後の動向にも柔軟に対応できるよう、構成・解説を全面的にリニューアルした新シリーズとするとしました。
新シリーズ刊行にあたっては、福祉事務管理技能検定2・3級の技能審査基準に沿って巻構成を大幅に整理・削減し、以下の4巻構成としました。
1社会保障・社会福祉論
2老人・障害者の医学と心理
3介護の基礎
4介護保険制度
(*旧シリーズ別巻の介護報酬早見表(『介護報酬請求事務」)は、新シリーズにはラインアップせず、他の成書を参照していただくこととしました。)
また、資格取得にかかわる教育に実際に携わっておられる現行検定委員の先生方を中心に執筆をお願いし、旧シリーズ以上に出題基準に沿った解説を行い、基礎的な理解を図れるよう意図しました。解説にあたっては、できるかぎり平易かつ簡潔な記述を心がけるとともに、イラスト・模式図などを多用し、ビジュアルな要素による理解を図れるよう配慮しました。
福祉現場の厳しい労働環境などが一部で喧伝され、介護福祉士養成校の定員割れ、経済連携協定(EPA)に基づく外国人介護福祉士候補の受け入れなどが話題になっていますが、福祉実践にかかわる諸資格や関連の実務技能を備えた人材の社会的需要が今後ますます増大することは論を待ちません。
新たに全面リニューアルした本シリーズで学ばれる諸兄が、将来の福祉を担う優秀な人材として活躍されることを確信しております。
2011年 2月
医療秘書教育全国協議会
福祉事務管理シリーズ刊行にあたって
2000年(平成12年)4月より介護保険制度が実施され、保健・医療・福祉の分邸高齢社会に対応する施策が計画的に進められています。各事業体では、ますます多様需要に対応するために、関係分野との連携を密にしながら、社会に提供する機能の内容を包括化する努力を行っています。
また一方で、社会保障制度における社会保険、公的扶助、公衆衛生、社会福祉の四つのそれぞれ独立したものではなく、密接な関係性を見据えることによって国民の生存権の確保へするという意味から、各制度の統合を推進し、包括的に保障する制度改革が予定されています。
このような状況のなかで、医療秘書教育全国協議会では、社会環境からの必然性、医療機関仙からの要請、就職先および職種の開拓、福祉関連職種養成の教育効果、医療秘書・福祉関連教育現場の期待、といったさまざまな側面からのニーズに鑑み、このたび「福祉事務管理技能検定」を創設しました。
具体的には、2級ならびに3級の資格取得を目標に、所定の技能審査基準に基づき、「領域I社会保障、社会福祉制度」、「領域老人・障害者の医学と心理、介護の基礎」、「領域II介護保険制度、介護報酬請求事務」の三領域による検定試験を実施するものであります。
「福祉事務管理シリーズ」は、上記の試験科目に対応した標準的なテキストとして企画・立案されたもので、以下の7巻で構成されます。
1 社会福祉論I
2 社会福祉論II
3 老人・障害者の心理
4 介護基礎論
5 医学一般・精神保健
6 介護保険制度論
7 介護福祉運営論
各巻ともに、福祉教育現場の第一線で活躍する先生方や、豊かな福祉実践経釈をもスペシャリストの方々にご執筆いただきました。
「福祉事務管理シリーズ」で学ばれた方々が、将来の福祉を担う実務家となられるよう期待して、発刊の言葉といたします。
2002年 7月
医療秘書教育全国協議会 検定試験委員長 橋本勝信
はじめに
日本の社会保障・社会福祉をめぐる現状は、制度的にも政策的にも急速かつ大きな動きをみせている。これは、1997(平成9)年に年少人口(0~14歳)が老年人口(65歳以上)を下回って以降、少子高齢化の傾向が続いていることが影響しているといえる。いまや、高齢化学か20%を超え、平均寿命もコンスタントに伸び、医療、介護を必要とする後期高齢者(75歳以上)の割合も増加している。
少子高齢化の進展によって社会保障給付の増大と負担の担い手の減少が同時に進み、その結果、社会保障財政の問題が生じてきている。さらに、景気の低迷による雇用不安、生古保護文箱西市の急増、児童虐待、介護疲れによる高齢者虐待など多様な生活問題が生じている。
近年、虐待などの児童・障害者・高齢者の権利侵害が社会問題化し、これらの人びとの尊厳ある暮らしを維持していくための権利擁護も大きな課題となっている。
このような状況の中、社会福祉に関する国民の意識も大きく変化し、少子高齢化の進展、家族機能の変化、障害者の自立と社会参加の進展に伴い、社会福祉制度についても、社会的弱者といわれる限られた人の保護、救済にとどまらず、すべての国民に機能し、生活の安定を支える役割が求められている。
こうした福祉ニーズの増大・多様化に対応できるよう、障害者総合支援法や介護保険制度などの見直しが進められてきている。社会保障・社会福祉は、新しい時代の状況を踏まえ、学びを深めてほしい学問である。
本書は、医療秘書教育全国協議会の監修による「福祉事務管理技能検定テキスト」の一冊として、福祉事務職をめざす方々、また福祉専門職のための国家試験・検定試験対策の基礎力養成テキストとしても活用が可能なように、『社会保障・社会福祉論』という書名で、新たな動向と知識を具体的に、できるだけわかりやすく説明してある。積極的な学習を進めていけるよう、本書を活用していただきたいと願うものである。
2014年 6月
大嶋泰子 鈴木嘉孝
目次
Chapter1 現代社会と社会福祉
1 現代社会と社会福祉の役割
1. 現代社会における社会福祉の意義
2. 社会福祉の役割
(1) 所得保障
(2) 対人福祉サービス
2 社会福祉の理念と原理
1. 歴史の中の「福祉」
(1) 慈善事業
(2) 救貧事業
(3) 社会事業
(4) 社会福祉
2. 社会福祉の原理
(1) 人間尊重の原理
(2) 社会的責任性の原理
(3) 生活の全体性の原理
3 社会福祉の概念
1. 社会福祉という言葉
2. 社会福祉と社会保障
4 福祉サービスの推進
1. 対人福祉サービスとは何か
2. 地方分権の推進
3. 地域福祉の充実
4. 社会福祉の主体
(1) 政策主体
(2) 経営主体
(3) 実践主体
Chapter2 社会福祉の分野と法制度
1 社会福祉法制度の変遷
1. 福祉法制度の歴史
2. 福祉三法・福祉六法および関連する法律
(1) 戦後の社会福祉制度~福祉三法体制
(2) 高度経済成長期~福祉六法体制
(3) 高度経済成長期以降~「福祉元年」から「福祉見直し政策」へ転換
(4) 平成の福祉改革
2 社会福祉法
3 公的扶助制度 生活保護法
1. 生活保護法の概要
4 児童福祉に関する法律
1. 児童とは
2. 児童福祉法
3. 児童福祉関連の法制度
(1) 児童扶養手当法
(2) 特別児童扶養手当等の支給に関する法律
(3) 母子及び寡婦福祉法
(4) 母子保健法
(5) 児童手当法
(6) 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(児童買春禁止法)
(7) 児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)
(8) 子ども・子育て支援新制度関連法
5 障害者福祉に関する法律
1. 障害および障害者とは
2. 障害者福祉に関する思想
3. 障害の種類と法制度
(1) 身体障害
(2) 知的障害
(3) 精神障害(発達障害を含む)
4. 身体障害者福祉法
5. 知的障害者福祉法
6. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)
7. 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (障害者総合支援法)
(1) 総合的な自立支援システムの内容
(2) 障害者福祉サービスの利用方法
(3) 障害者総合支援法における各組織の役割
(4) 障害者総合支援法に基づく主な専門職
6 高齢者福祉に関する法律
1. 高齢社会と課題
2. 高齢者福祉施策の概要
3. 在宅福祉対策
(1) 老人居宅介護等事業(ホームヘルブサービス事業)
(2) 老人デイサービス事業
(3) 老人短期入所事業
(4) 認知症対応型老人共同生活援助事業(認知症グループホーム事業)
(5) 小規模多機能型居宅介護事業
(6) 複合型サービス福祉事業
(7) 在宅介護支援センター運営事業
(8) 介護予防・地域支え合い事業
(9) 老人日常生活用具給付等事業
(10) 高齢者サービス総合調整推進事業
(11) 地域支援事業
4. 社会活動促進対策
(1) 高齢者の生きがいと健康づくり推進事業
(2) 老人クラブ活動等事業
(3) 都道府県高齢者総合相談センター運営事業(シルバー 110番)
(4) 高齢者能力開発情報センター運営事業
5. 施設福祉対策
(1) 特別養護老人ホーム
(2) 養護老人ホーム
(3) 軽費老人ホーム
(4) 老人福祉センター
(5) 老人デイサービスセンター
(6) 老人短期入所施設
(7) 老人介護支援センター(在宅介護支援センター)
(8) 老人休養ホーム
(9) 老人憩いの家
(10) 有料老人ホーム
(11) 生活支援ハウス
6. 後期高齢者医療制度
(1) 高齢者の医療の確保に関する法律
(2) 後期高齢者医療制度の概要
7. 高齢者虐待防止制度
(1) 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律 (高齢者虐待防止法)
(2) 高齢者虐待の定義
(3) 国および地方公共団体の義務など
(4) 国民の義務
(5) 高齢者虐待の早期発見
8. 老人福祉法
Chapter 3 社会保障
1 社会保障の変遷と概念
1. 社会保障制度の変遷
2. 社会保障の概念
2 社会保険の概要
1. 年金保険
(1) 年金保険制度の沿革
(2) 年金保険の概要
2. 医療保険
3. 労働者災害補償保険
4. 雇用保険
5. 介護保険
3 医療および公衆衛生の概要
Chapter 4 利用者保護制度の概要
1 権利と権利擁護
1. 権利擁護への注目の高まり
2. 権利(right) とは何か
3. 基本的人権と権利擁護
2 成年後見制度
1. 成年後見制度とは
2. 基本理念
3. 法定後見制度
(1) 法定後見制度の類型
(2) 成年後見人の事務
4. 任意後見制度
3 日常生活自立支援事業(福祉サービス利用援助事業)
1. 事業の実施体制
2. 事業の対象者
3. 援助の内容
(1) 福祉サービスの利用援助
(2) 日常的金銭管理サービス
(3) 書類などの預かりサービス
4 成年後見制度利用支援事業の概要
1. 成年後見制度利用支援事業の対象者
2. 成年後見制度利用支援事業の内容
5 利用者の権利擁護のために
6 苦情解決制度
Chapter 5 社会福祉専門職
1 社会福祉従事者の概要と資格制度
1. 社会福祉従事者の活動している分野
2. 福祉・介護サービス従事者の現状
3. 社会福祉の職場、職種、仕事の内容
(1) 社会福祉施設
(2) 社会福祉行政機関
(3) 社会福祉協議会
(4) その他
4. 社会福祉従事者の資格制度
(1) 国家資格およびそれに準ずるもの
(2) 任用資格
2 社会福祉従事者の専門性と倫理
1. 社会福祉専門職化の経緯
2. 社会福祉専門職の専門性
3. 社会福祉専門職の倫理
3 保健・医療関係分野の専門職との連携
1. 保健・医療の動向
2. 保健・医療・福祉の連携
3. 保健・医療の専門職
Chapter 6 相談援助
1 ソーシャルワークの発展
1. ソーシャルワークの誕生以前
2. ソーシャルワークの萌芽期
3. ソーシャルワークの基礎確立期(1920年代まで)
4. ソーシャルワークの発展期(1950年まで)
5. ソーシャルワークの統合期(1960年まで)
6. ソーシャルワークの転換期(1970年代まで)
7. ソーシャルワークの再編期(1980年代以降)
8. 日本におけるソーシャルワークの発展
2 ソーシャルワークの体系と方法
1. ソーシャルワークの目的
2. ソーシャルワークの体系
(1) 直接援助技術
(2) 間接援助技術
(3) その他の関連技術
3. ソーシャルワークの方法 展開過程
(1) ケースワークの展開過程
(2) グループワークの展開過程
索引
目次 – 福祉事務管理技能検定テキスト〈2〉老人・障害者の医学と心理 (福祉事務管理技能検定テキスト 2)
福祉事務管理技能検定テキストシリーズへの改訂にあたって
本シリーズの前身である「福祉事務管理シリーズ」(全7巻+別巻)は、2002(平成14)年7月に初版を刊行し、2006、2007年には介護保険法の改正(2005年)を受けて、内容の見直しならびに記述の大幅な改正を行って“新版”とし、今日に至ります。
高齢社会の急速な進展、財政の逼迫などを背景に、福祉諸施策・制度・基準等にかかわる近年の動きはまことに急です。また、改正介護保険法は、施行後3年を目途に改正の成果を検証することを定め、3年を1期とした制度見直しや財政運営の見直しを行って介護保険事業計画を定めるよう規定しています。
そこで、初版発行後10年を機に行う今回の改訂では、社会保障・福祉制度の動向、介護保険・報酬制度の改定、介護福祉士養成カリキュラムの改定などの最新動向を盛り込むとともに、今後の動向にも柔軟に対応できるよう、構成・解説を全面的にリニューアルした新シリーズとすることとしました。
新シリーズ刊行にあたっては、福祉事務管理技能検定2・3級の技能審査基準に沿って巻構成を大幅に整理・削減し、以下の4巻構成としました。
1 社会保障・社会福祉論
2 老人・障害者の医学と心理
3 介護の基礎
4 介護保険制度
(*旧シリーズ別巻の介護報酬早見表(『介護報酬請求事務』)は、新シリーズにはラインアップせず、他の成書を参照していただくこととしました。)
また、資格取得にかかわる教育に実際に携わっておられる現行検定委員の先生方を中心に執筆をお願いし、旧シリーズ以上に出題基準に沿った解説を行い、基礎的な理解を図れるよう意図しました。解説にあたっては、できるかぎり平易かつ簡潔な記述を心がけるとともに、イラスト・模式図などを多用し、ビジュアルな要素による理解を図れるよう配慮しました。
福祉現場の厳しい労働環境などが一部で喧伝され、介護福祉士養成校の定員割れ、経済連携協定(EPA)に基づく外国人介護福祉士候補の受け入れなどが話題になっていますが、福祉実践にかかわる諸資格や関連の実務技能を備えた人材の社会的需要が今後ますます増大することは論を待ちません。
新たに全面リニューアルした本シリーズで学ばれる諸兄が、将来の福祉を担う優秀な人材として活躍されることを確信しております。
2011年2月 医療秘書教育全国協議会
福祉事務管理シリーズ刊行にあたって
2000年(平成12年)4月より介護保険制度が実施され、保健・医療・福祉の分野において超高齢社会に対応する施策が計画的に進められています。各事業体では、ますます多様化する社会需要に対応するために、関係分野との連携を密にしながら、社会に提供する機能の内容を包括化する努力を行っています。
また一方で、社会保障制度における社会保険、公的扶助、公衆衛生、社会福祉の四つの柱はそれぞれ独立したものではなく、密接な関係性を見据えることによって国民の生存権の確保へ連結するという意味から、各制度の統合を推進し、包括的に保障する制度改革が予定されています。
このような状況のなかで、医療秘書教育全国協議会では、社会環境からの必然性、医療機関側からの要請、就職先および職種の開拓、福祉関連職種養成の教育効果、医療秘書・福祉関連教育現場の期待、といったさまざまな側面からのニーズに鑑み、このたび「福祉事務管理技能検定」を創設しました。
具体的には、2級ならびに3級の資格取得を目標に、所定の技能審査基準に基づき、「領域I社会保障、社会福祉制度」、「領域II老人・障害者の医学と心理、介護の基礎」、「領域II介護保険制度、介護報酬請求事務」の三領域による検定試験を実施するものであります。
「福祉事務管理シリーズ」は、上記の試験科目に対応した標準的なテキストとして企画・立案されたもので、以下の7巻で構成されます。
1 社会福祉論I
2 社会福祉論II
3 老人・障害者の心理
4 介護基礎論
5 医学一般・精神保健
6 介護保險制度論
7 介護福祉運営論
各巻ともに、福祉教育現場の第一線で活躍する先生方や、豊かな福祉実践経験をもつ各分野のスペシャリストの方々にご執筆いただきました。「福祉事務管理シリーズ」で学ばれた方々が、将来の福祉を担う実務家となられるよう期待して、発刊の言葉といたします。
2002年7月
医療秘書教育全国協議会
検定試験委員長 橋本勝信
はじめに
急速な高齢化が進む中、長寿国家としてのわが国では少子高齢化という言葉が聞かれるようになって久しい。長寿国家を支える仕組みとして2000(平成12)年に開始された介護保険制度も10年を過ぎた。2015年には団塊の世代が65歳を迎え、また2025年には現在1千万人といわれる後期高齢者が2千万人に達し、倍増する時代がくる。介護保険制度はわが国が経験したことのない高齢化に対応していくために、今後も改定されて継続されていく仕組みである。
このように変化する中、介護を取り巻く現状も変化している。第一に、介護保険制度の導入や障害者自立支援法の制度等により、認知症の介護など従来の身体介護にとどまらない新たな介護サービスへの対応が求められている。第二に、利用者がサービスを選択できる制度を導入したことに伴い、サービスの利用支援、成年後見、権利擁護等の新しい相談援助の業務が拡大してきていることがあげられる。このような中「社会福祉士及び介護福祉士法」が改正され、介護を支える人材養成の方法も変化してきている。
本書は、医療秘書教育全国協議会の監修による「福祉事務管理技能検定テキスト」の一冊として、福祉事務職をめざす方々のために『老人・障害者の医学と心理』という書名で、新たな教育内容をもとに全体を改訂した。その主な内容は、人のこころとからだはひとつのものであり、こころとからだの不都合が影響し疾患となり、生活に支障をきたすことを中心として構成されている。また、人が生活していく基本となるのは健康であることから、健康的な生活を支える保健医療対策についてもふれている。
本書を活用して福祉事務管理についての学びを深めながら、人として自分のこころとからだの仕組みを知ることができ、さらには健康的な生活をするための社会の仕組みを知ることができる。ひいてはわが国の現状に興味をもつための基礎知識になることが期待できる。
2011年2月
大谷佳子 白井孝子
目次
Chapter1 からだの理解
① からだの構造と機能
1. 脳・神経系
(1) 脳と脊髄
(2) 脳とそのはたらき
(3) 脳神経と脊椎神経
(4) 自律神経
2. 骨・筋系
(1) 骨と骨格
(2) 関節
(3) 筋肉
3. 血液循環器系
(1) 心臓
(2) 血液
4. 呼吸器系
(1) 呼吸器系器官と主なはたらき
5. 消化器系
(1) 消化器官と主なはたらき
6. 泌尿器系
(1) 泌尿器と主なはたらき
7. 内分泌系
8. 感覚器
Chapter2 からだと生活の関係
① 生活と健康の関係
1. 健康の定義
2. 健康寿命
② 身じたくに関連したからだの仕組み
1. 身じたくを整える効果
2. 爪
(1) 爪の構造と機能
(2) 爪の老化による変化
3. 毛髪
(1) 毛髪の構造と機能
(2) 毛髪の老化に伴う変化
4. 口腔
(1) 歯の構造と機能
(2) 舌の構造と機能
(3) 唾液と唾液腺の構造と機能
(4) 口臭
(5) 口腔の老化に伴う変化
(6) 口腔内の変化として予測されること
③ 移動に関連したからだの仕組み
1. 移動することの意義
2. からだを支える
3. 筋力・骨の強化の仕組み
4. よい姿勢の条件
5. 歩行の仕組み
6. 良肢位
7. 機能の低下・障害が及ぼす移動への影響
(1) 視力低下
(2) 聴力低下
(3) 運動機能低下
(4) 円背
(5) 片まひ
(6) 骨折
④ 食事に関連したからだの仕組み
1. 食事をすることの意義
2. からだをつくる栄養素
(1) 炭水化物
(2) 脂質
(3) たんぱく質
(4) 無機質(ミネラル)
(5) ビタミン
3. 空腹を感じる仕組み
4. 食事摂取の仕組み
5. 消化と吸収の仕組み
6. 食事に関連した機能の低下・障害が食事に及ぼす影響
(1) 食欲低下
(2) 姿勢
(3) 片まひ
(4) 窒息
(5) 誤嚥
(6) 低栄養
⑤ 入浴に関連したからだの仕組み
1. からだを清潔にすることの意義
2. 汗の出る仕組み
3. 皮膚の汚れ
4. 陰部の汚れ
5. 入浴の効果
6. 入浴の負担
7. 入浴と事故
8. 機能の低下・障害が及ぼすからだへの影響
(1) 視覚機能の低下
(2) かゆみ
(3) 脱水
⑥ 排泄に関連したからだの仕組み
1. 排泄することの意義
2. 排泄に関連するからだの仕組み
(1) 排尿の仕組み
(2) 排便の仕組み
(3) 便の形状
3. 機能の低下・障害が排泄に及ぼす影響
(1) 尿失禁
(2) 便秘
(3) 下痢
(4) 人工膀胱
(5) 人工肛門
(6) 人工透析
(7) 尿路感染症
⑦ 睡眠に関連したからだの仕組み
1. 睡眠の意義
2. 睡眠の仕組み
3. 機能の低下・障害が睡眠に及ぼす影響
(1) 不眠
(2) レストレスレッグス症候群
(3) 睡眠時無呼吸症候群
⑧ 死にゆく人に関連したからだの仕組み
1. 身体機能の変化
2. 死後のからだの変化
(1) 体温の変化
(2) 死斑
(3) 死後硬直
Chapter 3 高齢者の代表的な病気
① 高齢者の病気の特徴
② 高齢者に多い病気の特徴
1. 主なからだの変化
(1) 骨・筋系の主な変化
(2) 循環器系の主な変化
(3) 呼吸機能の主な変化
(4) 消化機能の主な変化
(5) 感覚機能の主な変化
2. 高齢者に多い病気
(1) 骨粗鬆症
(2) 骨折
(3) 脊柱管狭窄症
(4) 変形性脊椎症
(5) 変形性関節症
(6) 関節リウマチ
(7) 白内障
(8) 緑内障
(9) 加齢黄斑変性症
(10) 老人性難聴
(11) 慢性硬膜下血腫
(12) 心不全
(13) 胃・十二指腸潰瘍
(14) ウイルス性肝炎
(15) 糖尿病
(16) 前立腺肥大症
(17) 結核
(18) 感染性胃腸炎
(19) MRSA 感染症
3. 廃用症候群(生活不活発病)
(1) 褥瘡
(2) 起立性低血圧
(3) 老人性皮膚瘙痒症
Chapter 4 障害者(児)に多い疾患
① 遺伝子病
1. 主な遺伝子病
(1) 常染色体慢性遺伝
(2) 常染色体劣性遺伝
(3) 伴性劣性遺伝
2. その他の遺伝子病
② 染色体異常
③ その他の障害
Chapter 5 生活習慣病
① 成人病から生活習慣病へ
1. 食習慣に対して
2. 運動習慣に対して
3. 喫煙習慣に対して
4. 飲酒習慣に対して
② 生活習慣病とは
1. 生活習慣病の概要
(1) 動脈硬化症
(2) 高血圧症
(3) 脳血管疾患
(4) 虚血性心疾患
(5) 糖尿病
(6) 脂質異常症(高脂血症)
(7) 高尿酸血症(痛風)
(8) がん(悪性新生物)
(9) 肥満
(10) メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)
(11) 慢性気管支炎
(12) 慢性閉塞性肺疾患
(13) アルコール性肝疾患
Chapter 6 介護保険における特定疾病
① 特定疾病とは
1. 特定疾病の概要
(1) がん末期
(2) 筋萎縮性側索硬化症
(3) 後縦靭帯骨化症
(4) 骨折を伴う骨粗鬆症
(5) 多系統萎縮症
(6) 初老期における認知症
(7) 脊髄小脳変性症
(8) 脊柱管狭窄症
(9) 早老症(ウェルナー症候群など)
(10) 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症
(11) 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞など)
(12) 進行性核上性まひ、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
(13) 閉塞性動脈硬化症
(14) 関節リウマチ
(15) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
(16) 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
Chapter 7 こころの理解
① こころの仕組み
1. こころとは
2. 人間の欲求:マズローの欲求段 階説
3. 欲求とフラストレーション
(1) 欲求充足の障壁
(2) フラストレーション反応
(3) フラストレーション耐性
(4) 適応機制
② こころの健康:メンタルヘルス
1. メンタルヘルスとは
2. こころの問題とは
3. 精神病(精神障害)とは
③ 人の発達とメンタルヘルス
1. 乳幼児期・児童期
(1) 乳児期の特徴
(2) 幼児期の特徴
(3) 児童期の特徴
(4) 子どものこころの問題
2. 青年期
(1) 青年期の特徴
(2) 青年期のこころの問題
3. 成人期
(1) 成人期の特徴
(2) 成人期のこころの問題
④ 精神障害
1. 代表的な精神障害
(1) 統合失調症
(2) 気分障害(躁うつ病)
(3) 神経症性障害(神経症)
(4) ストレス関連障害(心因反応)
(5) 心身症
⑤ こころの問題への対応
1. ヒューマニスティック心理学的アプローチ
(1) 来談者中心療法(カウンセリング)
(2) フォーカシング
(3) エンカウンターグループ
2. 行動療法的アプローチ
3. 精神分析的アプローチ
(1) 精神分析
(2) 箱庭療法(サンドプレイセラピー)
Chapter 8 高齢者の心理特性
① 高齢者の理解
1. 老年期の特徴
(1) 老性自覚と喪失体験
(2) 老年期の発達課題
2. 老化とは
② 加齢に伴う精神機能の変化
1.認知機能
(1) 知的能力
2.記憶機能
3. パーソナリティ(人格)
③ 高齢者のこころの問題
1. 老年期のうつ病
2. せん妄
3. 幻覚・妄想
4. 高齢者の自殺
(1) 自殺の原因
(2) 自殺の予防
④ 認知症
1. 認知症とは
2. 認知症の原因疾患
(1) アルツハイマー型認知症
(2) 脳血管性認知症
(3) レビー小体型認知症
3. 認知症の症状
(1) 中核症状
(2) BPSD(認知症による行動症状・心理症状)
4. 認知症高齢者に対する心理的理解
(1) 不安、とまどい
(2) 孤独感
(3) 自信・自尊心の喪失
5. 認知症高齢者への対応
(1) 心理的援助
(2) 効果的なコミュニケーション
(3) 認知症高齢者に適用可能な心理療法
Chapter9 障害者の心理特性
① 障害者の理解
1. 障害の定義
(1) 日本の法制度における定義
(2) 国際生活機能分類(ICF)による定義
2. 手帳制度と障害の等級
(1) 身体障害者
(2) 知的障害者
(3) 精神障害者
② 障害者の心理
1. 障害者心理の2つの側面
2. 発生時期に基づく分類とその心理
(1) 先天性障害
(2) 中途障害
③ 障害形態別の心理
1. 身体障害者の心理
(1) 視覚障害
(2) 聴覚障害
(3) 肢体不自由
(4) 言語障害
(5) 内部障害
2. 精神障害者の心理
3. 重症心身障害者の心理
4. 知的障害者の心理
④ 障害者への心理的対応
1. 障害の受容
(1) 身体的な受容
(2) 心理的な受容
(3) 社会的な受容
2. 価値転換理論
3. ピアカウンセリング
Chapter 10 公衆衛生・保健医療対策の現状
① 公衆衛生の現状
1. 少子高齢化
2. 人口増加率と出生率
3. 平均寿命
② 保健医療対策の現状
1. 生活習慣病対策
(1) 21 世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)
(2) 健康増進法
2. 母子保健対策
3. 感染症対策
4. 難病対策
Chapter 11 高齢者のこころとからだを守る:高齢者虐待防止
① 高齢者虐待防止法
② 家族介護者(養護者)による虐待
③ 施設内介護従事者による虐待
索引
目次 – 福祉事務管理技能検定テキスト〈3〉介護の基礎 (福祉事務管理技能検定テキスト 3)
福祉事務管理技能検定テキストシリーズへの改訂にあたって
本シリーズの前身である「福祉事務管理シリーズ」(全7巻+別巻)は,2002(平成14)年7月に初版を刊行し,2006,2007年には介護保険法の改正(2005年)を受けて、内容の見直しならびに記述の大幅な改正を行って“新版”とし,今日に至ります。
高齢社会の急速な進展,財政の逼迫などを背景に,福祉諸施策・制度・基準等にかかわる近年の動きはまことに急です。また,改正介護保険法は、施行後3年を目途に改正の成果を検証することを定め,3年を1期とした制度見直しや財政運営の見直しを行って介護保険事業計画を定めるよう規定しています。
そこで,初版発行後10年を機に行う今回の改訂では,社会保障・福祉制度の動向,介護保険・報酬制度の改定,介護福祉士養成カリキュラムの改定などの最新動向を盛り込むとともに,今後の動向にも柔軟に対応できるよう,構成・解説を全面的にリニューアルした新シリーズとすることとしました。
新シリーズ刊行にあたっては,福祉事務管理技能検定2・3級の技能審査基準に沿って巻構成を大幅に整理・削減し,以下の4巻構成としました。
①社会保障・社会福祉論
②老人・障害者の医学と心理
③介護の基礎
④介護保険制度
(*旧シリーズ別巻の介護報酬早見表(『介護報酬請求事務』)は,新シリーズにはラインアップせず,他の成書を参照していただくこととしました。)
また,資格取得にかかわる教育に実際に携わっておられる現行検定委員の先生方を中心に執筆をお願いし,旧シリーズ以上に出題基準に沿った解説を行い,基礎的な理解を図れるよう意図しました。解説にあたっては,できるかぎり平易かつ簡潔な記述を心がけるとともに,イラスト・模式図などを多用し、ビジュアルな要素による理解を図れるよう配慮しました。
福祉現場の厳しい労働環境などが一部で喧伝され,介護福祉士養成校の定員割れ,経済連携協定(EPA)に基づく外国人介護福祉士候補の受け入れなどが話題になっていますが、福祉実践にかかわる諸資格や関連の実務技能を備えた人材の社会的需要が今後ますます増大することは論を待ちません。
新たに全面リニューアルした本シリーズで学ばれる諸兄が,将来の福祉を担う優秀な人材として活躍されることを確信しております。
2011年2月
医療秘書教育全国協議会
福祉事務管理シリーズ刊行にあたって
2000年(平成12年)4月より介護保険制度が実施され、保健・医療・福祉の分野において超高齢社会に対応する施策が計画的に進められています。各事業体では,ますます多様化する社会需要に対応するために,関係分野との連携を密にしながら,社会に提供する機能の内容を包括化する努力を行っています。
また一方で,社会保障制度における社会保険,公的扶助,公衆衛生,社会福祉の四つの柱はそれぞれ独立したものではなく,密接な関係性を見据えることによって国民の生存権の確保へ連結するという意味から,各制度の統合を推進し,包括的に保障する制度改革が予定されています。
このような状況のなかで,医療秘書教育全国協議会では、社会環境からの必然性,医療機関側からの要請,就職先および職種の開拓,福祉関連職種養成の教育効果,医療秘書・福祉関連教育現場の期待,といったさまざまな側面からのニーズに鑑み,このたび「福祉事務管理技能検定」を創設しました。
具体的には,2級ならびに3級の資格取得を目標に,所定の技能審査基準に基づき,「領域Ⅰ社会保障,社会福祉制度」,「領域Ⅱ 老人・障害者の医学と心理,介護の基礎」,「領域Ⅲ 介護保険制度,介護報酬請求事務」の三領域による検定試験を実施するものであります。
「福祉事務管理シリーズ」は,上記の試験科目に対応した標準的なテキストとして企画・立案されたもので,以下の7巻で構成されます。
①社会福祉論I
②社会福祉論I
③老人・障害者の心理
④介護基礎論
⑤医学一般・精神保健
⑥介護保険制度論
⑦介護福祉運営論
各巻ともに,福祉教育現場の第一線で活躍する先生方や,豊かな福祉実践経験をもつ各分野のスペシャリストの方々にご執筆いただきました。
「福祉事務管理シリーズ」で学ばれた方々が,将来の福祉を担う実務家となられるよう期待して,発刊の言葉といたします。
2002年7月
医療秘書教育全国協議会
検定試験委員長 橋本勝信
はじめに Introduction
日本の高齢化は,平均寿命・高齢者数・高齢化の進展の早さからみても世界一,まさに「長寿大国」である。高齢化が本格化したのは1980年台後半であるが,この状況に対応するため国は1989(平成元)年に,高齢社会になっても明るく活力のある長寿・福祉社会の構築をめざして「高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)」を策定し本格的に動き出したのである。
これまでの長い歴史の中では,介護は家庭で家族がになっていくことが普通と考えられていたが,急速な社会の変動の中で,「介護の社会化」の必要性が高まった。同時に介護に従事する人びとの専門教育も社会からの要請として必須の課題であった。このような動きから,福祉の増進を図り,介護の専門的能力を有する人材を養成・確保するため,1987(昭和62)年に「社会福祉士及び介護福祉士法」が制定され,介護福祉士養成の教育が始まったのである。そして,2000(平成12)年4月,介護保険制度が開始された。
その後も高齢化が加速する中で,2005(平成17)年には「明るく活力ある超高齢化社会の構築」などの視点で,介護予防を柱とした「改正介護保険法」が成立した。このような状況や時代の要請から,「社会福祉士及び介護福祉士法」が改正され,定義規定,義務規定などと,養成にかかわる制度が大きく見直された。養成にかかわる制度では,新たな介護福祉士養成課程のカリキュラムが示され,すでに,平成21年度の入学生から「新カリキュラム」に則しての養成教育が始められている。
本書は,医療秘書教育全国協議会の監修による「福祉事務管理技能検定テキスト」の一冊として,福祉事務職をめざす人のために『介護の基礎』という書名で,介護の起源から具体的な生活支援技術までをわかりやすく説明している。その内容は,「社会福祉士及び介護福祉士法」の改正で示された,新たな基本理念と教育内容でもって全体を改訂した。
第1章では太古の昔から行われてきた介護の本質と,介護を利用する人びとについて述べた。第2章では介護の変遷をあげ、第3章では介護の機能と役割について論じた。第4章では、介護を利用する人の住居環境と生きがい支援の技法を,第5章では介護職の専門性が最も問われるところとなる、日常生活を支える介護の技法,第6章「在宅の介護と施設の介護」では“生活する人”“その人らしい生活”などを支えるための支援技法を述べた。
2011年2月
佐藤紀子
白井孝子
寺島貴子
目次 Contents
Chapter 1 介護の概念
①介護の本質
1. 介護の始まり
(1) 人類の誕生から始まる
(2) 看護の確立
2. 介護の語義
3. ケアの語義
4. 介護の定義
②社会福祉と介護
1. 社会福祉の理念
2. 老人福祉法の制定と介護
3. 介護福祉士への道のり
③QOLと介護
1.「生活する」人.
2. 生活の成り立ちとQOL
3. 介護を必要とする人への理解
(1) 介護を必要とする高齢者への理解
(2) 障害のある人(子ども)への理解
Chapter 2 介護の歩み
①介護福祉の誕生
1. 看護から介護へ
②介護問題の背景
1. 介護の社会化の背景
2. 介護保険制度創設
③ 介護福祉の専門性
1. 専門職としての介護福祉士
(1) 求められる介護福祉士像
(2) 介護福祉士の養成
2. 専門職と倫理
Chapter 3 介護福祉の機能
① 専門職としての介護の機能
1. コミュニケーション
(1) 介護におけるコミュニケーショとは
(2) コミュニケーションの方法
(3) 介護者に求められるコミュニケーションの基本的態度
2.観察
3. 記録
(1) 記録の意義・目的
(2) 介護記録の種類・方法
4. 報告
(1) 報告の意義
(2) 報告の目的
(3) 報告の方法
5. 介護過程.
(1) 介護過程とは何か
(2) 介護過程の展開
② ケアマネジメントと多職種連携
1. ケアマネジメントとは
(1) ケアマネジメントの意義
(2) ケアマネジメントのプロセス
2. 利用者とかかわる多職種との 連携
(1) 多職種連携(チームアプローチ)とは
(2) チームとは
③介護者のこころとからだの健康 管理
1. 心身の健康管理
2. 感染の予防と対策
3. 腰痛の予防
(1) 介護職と腰痛
(2) 予防のポイント
Chapter 4 社会生活を支える介護の技法
①いきがい支援
1. いきがいとは
2. レクリエーション
(1) いろいろなレクリエーション
(2) レクリエーションの援助のポイント
3. 福祉用具の活用
(1) 福祉用具とは
(2) 福祉用具の種類と機能
② 住まいの整備
1. 住まいの役割
2. 利用者にとっての快適な住まい空間
Chapter 5 日常生活を支え
①姿勢,移動・移乗の介助
1. ボディメカニクス
(1) ボディメカニクスの原理
2. 安楽な体位
(1) 褥瘡の予防
(2) 基本的な安楽な体位
3. 体位変換の介助
(1) 仰臥位から側臥位への介助
(2) 仰臥位(側臥位)から端座位への介助
(3) 端座位から立位への介助
4. 車いすの介助
(1) 端座位から車いすへの介助
(2) 車いすの移動介助
5. 歩行の介助
②食事の介助
1. 食事の意味
2. 食事の介助について
(1) 食事の介助の流れ
(2) 食事の介助における確認のポイント
(3) 食事の介助の留意点
3. 身体状況に応じた介助
4. 誤嚥の予防
5. 脱水の予防
6. 便秘の予防
7. 献立・調理の工夫
③排泄の介助
1. 排泄の意義
2. 排泄の生理
(1) 排便・排尿の仕組み
(2) 排便・排尿の異常
3. 排泄の介助について
4. おむつの介助
④身体清潔の介助
1. 身体清潔の意義と目的
2. 入浴の介助
3. 部分浴の介助
4. 清拭の介助
(1) 全身清拭の介助
5. 口腔ケアの介助
⑤ 衣服着脱の介助
(1) 衣服を着る目的
(2) 衣服の種類と衣服選択の基本
(3) 衣服着脱の介助
(4) 自助具・補助具の活用
⑥終末期の介護
1. 終末期とは
2. 終末期の現状
3. 終末期を支えるための介護の基本
(1) 終末期介護の対象者
(2) 終末期を支えるために
(3) 終末期介護を支える介護職
4. 終末期の介護の実際
(1) からだの変化
(2) こころの変化
(3) 臨終期の支援
(4) グリーフケア
⑦応急手当
1. 応急手当の基本
2. 応急手当の方法
3. 協力者の要請,救急車を呼ぶ場合
(1) 協力者の要請
(2) 救急車を呼ぶ
Chapter 6 在宅の介護と施設の介護
①在宅の介護
1. 家族形態別による介護
2. 在宅介護の問題点
(1)女性の社会進出による家族内の介護力の低下
(2) 介護は先のみえないもの
(3) 介護者の高齢化
(4) 近隣とのつながりが薄い生活意識
(5) 自宅家屋の構造が介護に向いていない
(6) 厳しい経済状況
3. 介護保険制度における在宅サービス
(1) 居宅介護サービス
(2) 地域密着型サービス
(3) マネジメントサービス(居宅介護支援)
(4) 予防給付
②施設の介護
1. 介護保険法による施設
(1) 介護老人福祉施設
(2) 介護老人保健施設
(3) 介護療養型医療施設
2. 障害者自立支援法による施設
(1) 入所施設
(2) 施設介護の利点と欠点
索引
目次 – 福祉事務管理技能検定テキスト〈4〉介護保険制度 (福祉事務管理技能検定テキスト 4)
福祉事務管理技能検定テキストシリーズへの改訂にあたって
本シリーズの前身である「福祉事務管理シリーズ」(全7巻+別巻)は、2002(平成14)年7月に初版を刊行し、2006、2007年には介護保険法の改正(2005年)を受けて、内容の見直しならびに記述の大幅な改正を行って“新版”とし、今日に至ります。
高齢社会の急速な進展、財政の逼迫などを背景に、福祉諸施策・制度・基準等にかかわる近年の動きはまことに急です。また、改正介護保険法は、施行後3年を目途に改正の成果を検証することを定め、3年を1期とした制度見直しや財政運営の見直しを行って介護保険事業計画を定めるよう規定しています。
そこで、初版発行後10年を機に行う今回の改訂では、社会保障・福祉制度の動向、介護保険・報酬制度の改定、介護福祉士養成カリキュラムの改定などの最新動向を盛り込むとともに、今後の動向にも柔軟に対応できるよう、構成・解説を全面的にリニューアルした新シリーズとすることとしました。
新シリーズ刊行にあたっては、福祉事務管理技能検定2・3級の技能審査基準に沿って巻構成を大幅に整理・削減し、以下の4巻構成としました。
①社会保障・社会福祉論
②老人・障害者の医学と心理
③介護の基礎
④介護保険制度
(*旧シリーズ別巻の介護報酬早見表(『介護報酬請求事務』)は、新シリーズにはラインアップせず、他の成書を参照していただくこととしました。)
また、資格取得にかかわる教育に実際に携わっておられる現行検定委員の先生方を中心に執筆をお願いし、旧シリーズ以上に出題基準に沿った解説を行い、基礎的な理解を図れるよう意図しました。解説にあたっては、できるかぎり平易かつ簡潔な記述を心がけるとともに、イラスト・模式図などを多用し、ビジュアルな要素による理解を図れるよう配慮しました。
福祉現場の厳しい労働環境などが一部で喧伝され、介護福祉士養成校の定員割れ、経済連携協念(FDA)・建づく外国人介護福祉士候補の受け入れなどが話題になっていますが、福祉実践にかかわる諸資格や関連の実務技能を備えた人材の社会的需要が今後ますます増大することは論を待ちません。
新たに全面リニューアルした本シリーズで学ばれる諸兄が、将来の福祉を担う優秀な人材として活躍されることを確信しております。
2011年2月
医療秘書教育全国協議会
福祉事務管理シリーズ刊行にあたって
2000年(平成12年)4月より介護保険制度が実施され、保健・医療・福祉の分野において超高齢社会に対応する施策が計画的に進められています。各事業体では、ますます多様化する社会需要に対応するために、関係分野との連携を密にしながら、社会に提供する機能の内容を包括化する努力を行っています。
また一方で、社会保障制度における社会保険、公的扶助、公衆衛生、社会福祉の四つの柱はそれぞれ独立したものではなく、密接な関係性を見据えることによって国民の生存権の確保へ連結するという意味から、各制度の統合を推進し、包括的に保障する制度改革が予定されています。
このような状況のなかで、医療秘書教育全国協議会では、社会環境からの必然性、医療機関側からの要請、就職先および職種の開拓、福祉関連職種養成の教育効果、医療秘書・福祉関連教育現場の期待、といったさまざまな側面からのニーズに鑑み、このたび「福祉事務管理技能検定」を創設しました。
具体的には、2級ならびに3級の資格取得を目標に、所定の技能審査基準に基づき、「領域I社会保障、社会福祉制度」、「領域I老人・障害者の医学と心理、介護の基礎」、「領域II介護保険制度、介護報酬請求事務」の三領域による検定試験を実施するものであります。
「福祉事務管理シリーズ」は、上記の試験科目に対応した標準的なテキストとして企画・立案されたもので、以下の7巻で構成されます。
①社会福祉論Ⅰ
②社会福祉論Ⅱ
③老人・障害者の心理
④介護基礎論
⑤医学一般・精神保健
⑥介護保險制度論
⑦介護福祉運営論
各巻ともに、福祉教育現場の第一線で活躍する先生方や、豊かな福祉実践経験をもつ各分野のスペシャリストの方々にご執筆いただきました。
「福祉事務管理シリーズ」で学ばれた方々が、将来の福祉を担う実務家となられるよう期待して、発刊の言葉といたします。
2002年7月
医療秘書教育全国協議会
検定試験委員長 橋本勝信
はじめに
2000(平成12)年4月より介護保険制度が実施されて10年以上が過ぎようとしている。制度導入時には多くの混乱があり、苦労したことを覚えている。現在はさまざまな問題点が指摘されているが、新しい保険制度として国民に周知されたのではないだろうか。
介護保険制度の中で「介護報酬知識」については、「医療機関の中での医療事務」のように専門職が身につけておけばよい知識というわけではない。私たちは1人でも多くの人にこの「介護報酬知識」を学び、身につけていただきたいと願っている。
例えば施設側では、請求する職員は当たり前だが、ケアマネジャーはもちろんのこと相談職の人などにも必要ではないだろうか。特に訪問系事業所では全職員に知識を身につけていただきたいと思っている。介護保険制度ではケアプランの作成から始まり、利用金額を要介護度にて設定された基準以内にしなければならない。
そのためには事前に介護報酬を導き出し、金額を確認する必要がある。利用者と最もよく接するのは実際に介護を行っている介護職員であり、介護保険についての質問をされることも多い。介護をする職員は介護業務のみ行っていればよいという時代はもう終わり、多くの知識を吸収してオールラウンドに対応できる人材が必要であると考える。
本書は、医療秘書教育全国協議会の監修による「福祉事務管理技能検定テキスト」の一冊として、福祉事務職をめざす方々のために『介護保険制度』という書名で、福祉の基礎知識や技能を学び、一般的業務が遂行できるようにわかりやすく説明している。
また、別冊『介護給付費請求の実際』では、介護給付費を請求するプロセスを、記入例に沿ってわかりやすく解説している。介護報酬単価については他の成書を参照いただき、請求事務の実際を学んでいただきたい。
本書を、検定取得のための教材としてのみならず、福祉の現場にて、介護報酬の導入教材として採用していただき、少しでもお役立ていただければと願っている。
2011年2月
安部正美 澄川良一
目次
Chapter 1 介護保険制度
1 介護保険制度の導入
1. 導入の背景
(1) 高齢化の進展とそれに伴う要介護高齢者の増加
(2) 介護の長期化・重度化
(3) 介護の家族機能の低下
(4) 個々の生活の問題
(5) 介護者の問題
(6) その他の問題
2. 導入前の制度およびその問題点
(1) 老人福祉制度
(2) 老人医療制度
(3) 老人福祉制度と老人医療制度の関係
3. 制度創設のねらい
4. 社会全体として取り組む必要性
5. それまでの制度の問題点の改善
6. 利用者本位の考え方
2 介護保険制度の目的
3 保険者と被保険者
1. 保険者について
2. 被保険者
4 介護保険の財源
5 保険者の役割(責務)と事務.
1. 国の役割
2.都道府県の役割
3. 市町村の役割と事務
(1)市町村の役割
(2)市町村の事務
6 介護保険制度の改正
1. 2005 年の制度改革
2. 介護保険事業計画の見直し
7 介護保険法
Chapter 2 介護サービス利用
1サービスを利用するには
(1) 居宅サービスと施設サービス
2介護サービスの種類
(1) 居宅サービス
(2) 施設サービス
(3) 地域密着型サービス
(4) 居宅介護支援
3 要介護(要支援)認定について
(1) 要介護(要支援)認定の申請
(2) 認定調査
(3) 一次判定
(4) 主治医意見書
(5) 介護認定審査会による二次判定
(6) 保険者による要介護(要支援)認定
4 居宅サービスの利用
5 施設サービスの利用
6 住宅改修
(1) 介護保険法による住宅改修
(2) 一般的な住宅改修の手順
Chapter 3 介護保険給付について
1介護保険給付の仕組み
1. 日本の公的保険
2. 保険給付の方法一現物給付と現金給付
3. 保険給付の種類
4. 介護給付、予防給付の支給限度額
5. 介護給付、予防給付の種類
(1) 介護給付の種類
(2) 予防給付の種類
(3) 介護保険における給付の考え方
6. 介護給付の種類の詳細
(1) 居宅サービス
(2) 施設サービス
(3) 地域密着型サービス
(4) 居宅介護支援
7. 予防給付の種類の詳細
(1) 予防給付
(2) 地域密着型介護予防サービス
(3) 介護予防支援
8. 地域支援事業について
2 介護保険と医療保険
3 介護保険と公費負担
1. 介護保険優先の場合
(1) 生活保護法
(2) 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(結核の通院医療)
(3) その他の介護保険と公費負担の関係
Chapter 4 介護保険請求について
1 介護給付費請求
1. 要介護者の居宅サービス費の請求
2. 要支援者の居宅サービス費の請求
3. 施設サービス費の請求
2 介護給付費の算定
1. 介護給付費算定の仕組み
2. 介護給付費算定の端数処理ルール
3. 介護給付費の単位数単価
4. 各サービスの基本構成
(1) 居宅サービス
(2) 居宅介護支援サービス
(3) 施設サービス
(4) 地域密着型サービス
(5) 介護予防サービス
(6) 介護予防支援サービス
5. 介護報酬費算定シミュレーション
(1) 居宅サービス 83
(2) 施設サービス 84
3 給付管理票と請求・審査・返戻・査定・
1. 介護給付費請求の流れ
2. 国保連合会での審査
3. 返戻・査定について
(1) 返戻
(2) 査定
4.請求の保留・過誤・月遅れ再請求
(1) 保留
(2) 再審査
(3) 過誤
索引