日経新聞の「本当の読み方」をご存じですか? – 日経新聞の「本当の読み方」がわかる本
はじめに – 日経新聞の「本当の読み方」をご存じですか?
私は新聞を読むとき、1つひとつの記事を独立した情報ととらえるのではなく、常にそのほかの情報との関連性を考えながら読んでいます。
そのほかの情報というのは、その記事とは別の記事や過去の重要な出来事(イベント)や、景気指係の数字などのことです。目の前の記事に書いてある内容が、そうした情報とどのように関連しているのかを考えながら、新聞を読んでいるのです。そうしないと、世の中の本当の動きが見えてこないからです。「深く読む」ということです。それにより、世の中がより「鮮明」に見えてきます。
とくに日本経済新聞(以下、日経新聞)を読むときには、経済や金融の動向、企業活動についてのニュースが中心になりますから、景気指標を中心とする数字やデータとの関連づけが重要になります。
たとえば、「住宅着工件数が年間100万件を切る」という記事を読んだとしても、予備知識が何もなければ、そのニュースの意味が分かりません。過去に住宅着工件数がどのように増減してきたのか、最近の住宅ローンの金利が下がっているのか上がっているのか、また、住宅取得を支援する税制優遇がどうなっているのか、といったさまざまな情報と関連づけてニュースの意味を考えないと、経済の動きを的確にとらえることができないのです。もちろん、景気指標の定義など、経済の基本的な知識も必要です。
こんなことを申し上げると、日経新聞がずいぶん難しく感じられるかもしれませんが、ご心配は無用です。ちょっとしたコツを覚えて、少しだけトレーニングを積んでいただければ、誰でも日経新聞を「関連づけて読む」ことができるようになります。そして、そうした新聞読みのコツやトレーニングの方法を1冊にまとめたのが本書です。
前著「日経新聞の数字がわかる本」では、日経新聞の月曜日朝刊に掲載される「景気指標」に焦点を絞り、「国内総生産(GDP)」をはじめとするさまざまな景気指標から経済の流れをつかむ方法をご説明しました(お読みいただいた多くの方から、メールやお葉書でこれまで以上に日経新聞をおもしろく読めるようになったというご連絡をいただきました)。
本書では少しアプローチを変えて、日経新聞の記事に書いてある内容を、ほかの記事や景気指標と関連づけながら、記事の背景にある経済の動きを読み解く方法を説明していきます。
本書のなかには、日経新聞を読むために必要な経済用語や会計用語などがたびたび出てきますが、その都度、言葉の定義や意味をできるだけ分かりやすく説明しながら話を進めていきますので、専門知識をお持ちでない方でも無理なく読み進んでいただけると思います。経済や経営を勉強する本としてもご活用いただけます。
また、巻末には、主要な気指標の時系列データ(過去3年分)を掲載しています。今後、日経新聞を読んで典味や疑問を感じる数字が出てきたら、これらの景気指標をチェックして、記事と関連づけてみてください(日経新聞の景気指標面と併せて便利に使っていただけると思います)。
本書をお読みいただければ、それだけで、日経新聞の読者としてのレベルが着実にアップすることでしょう。1つひとつの見出しや本文や数字の意味をより的確につかみ、より立体的にニュースを理解することができるようになります。そして、本書でごました読み方を日々の日経新聞で実践していただくことによって、ニュースや数字を関連づけて考えることが楽しくなり、経済全体の動きを感じ取ることができるようになるはずです。また、これから日経新聞を読もうと思っている方々にも、読み方の基本を提供していると思います。「日経新聞の数字がわかる本」同様、ご活用いただければと思います
なお、本書作成にあたり、前者同様に日経BP社出版局の西村裕さんには大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。彼のおかげで本当に良い本に仕上がったと思います。
また、本書の一部(パート1のケース001~006、パート3のケース007~016)は、日経BP社のウェブサイト「nikkeiBPnet」に連載した記事(2009年7~2月分)を配楽・加筆したものを使用しています。連載記事の作成については、同社の寺西芝さん、路早絵さんにお世話になりました。重ねて成謝いたします。
目次
はじめに日経新聞の「本当の読み方」をご存じですか?
パート1基本テクニック編
日経新聞は「関連づけて」読む
ケース001記事を編呑みにしてはいけない
ケース002疑問を感じたらすぐに「数字」を確認する
ケース003過去のイベントを頭に入れておく
column読めなかった日の新聞は読まない
ケース004発言の真意を「数字」で確認するケース
005別の記事や「イベント」と関連づけて読むケース
006「歴史認識」や「仮説」をもって読む
パート2
小宮一慶が読む!日経新聞の1週間
●日経新聞は日曜日から始まる
●月曜日は「勝負の日」
column気になる記事は電車のなかで*ブックマーク”
●火曜日から金曜日は日々のニュースに集中
●土曜日朝刊でマーケットの動きをおさらい
columnテレビー読売新聞―日経新聞
パート3実践テクニック編
注目記事から経済の動きを読み解く
ケース007携帯電話を輸出するのは「国内で売れなくなった」から?
ケース008日本の財政を把握している人は、誰もいない
ケース009定額給付金の効果はあったのか?なかったのか?
column「0120」広告で景気の良し悪しを見る
ケース010景気低迷にあえぐ日本の通貨がなぜ高くなるのか?
ケース011「良いデフレ」と「悪いデフレ」が混在する日本経済
column水曜日の折り込みチラシに注目
ケース012中国の景気回復は本当か?ケース
013外需依存の日本が世界で生き残る道は
column日経新聞の紙面、最近どこが変わったでしょう?
ケース014_JALの再建は可能なのか?
ケース015政府はJALを救うべきか?
ケース016JALへの公的支援|誰が損をし、誰が得をするのか
columnブラジルの「ニッケイ新聞」をご存じですか?
パート4資料編
主要景気指標の時系列データ
●現在を読み解くために過去の数字を押さえる
●国内編
●海外編
パート1【基本テクニック編】 – 日経新聞は「関連づけて」読む
ケース001記事を鵜呑みにしてはいけない
最初に、ウォーミングアップのつもりで、私がいつも日経新聞をどのように読んでいるのかをざっとご説明します。
最近の日経新聞に掲載された記事を紹介して、そこに書いてある文章や数字から何が読み取れるのか、ほかのニュースや数字とどのように関連しているのかを、いっしょに考えていきましょう。
記事の引用部分を読むときには、その都度、まず自分なら何をどう思うか、連想するかを、考えてみてください。ご自身の考えや意見です。この繰り返しが、新聞を本当に読むための訓練となります。それから、本書で紹介する私の読み方を参考にしていただきたいのですが、これすら仮説です。そこを起点に、自分なりの解釈などを考えてください。そのような新聞の読み方を続けていけば、必ず情報のとらえ方や考え方が向上していきます。深く、ものごとを考えられるようになります。まずは「ボーナスが大幅に落ち込む」という記事から私が何を考えたかをご説明しましょう。
冬ボーナス4%減初の2ケタ機械・自動車2割超
日本経済新聞社が1日まとめた今冬のボーナス調査(中間集計)によると、全産業の1人当たりの支給額は昨冬の実績に比べ1.9%減で、1978年の調査開始以来、初めて2ケタのマイナスとなった。…… (2009年1月5日付日本経済新聞)
2009年は夏のボーナスも大幅な落ち込みとなりましたが、冬のボーナスも過去最大の落ち込みになるだろうという記事です。この記事を見たときに、皆さんは何を感じましたか?気になるニュースに出合ったり、疑問に思うことがあれば、まず、その裏づけとなる数字を確認することが大切です。
そこが新聞記事を深読みしたり、関連づけできるようになるスタート台です。経済に関する記事であれば、必ず「景気指標」をチェックしてみましょう。「景気指標」とは、国内総生産(GDP)や完全失業率のように、その国の経済動向や景気の良し悪しを表す各種の指標のことです。日経新聞では、月曜朝刊の「景気指標」面に主要な景気指標がまとめて掲載されています。
ボーナスや給料の記事なら、まず「現金給与総額」を確認します。2009年6月の数字は17.0%、7月は15.6%となっており、その前後の月と比べてもマイナス幅が大きくなっていますね。多くの企業では夏のボーナスは6月末から支給されますから、ボーナスが大きく減った影響が数字にちゃんと表れていることが見て取れます。2008年秋以降、企業の業績の悪化にともなって給与はずっと減少の一途をたどってきたのですが、この夏の賞与でその傾向が一段と鮮明になったということです。
ここまでが第1ステップです。記事を読み流すのではなく、少し立ち止まって、その記事に関連する景気指標などをチェックしてみることです。漠然とした感想を言うことは誰にだってできます。その記事に書いてある情報の裏づけを、景気指標という数字で確認することが重要なのです。最初は少し面倒に感じるかもしれませんが、この確認作業を続けることによって、より客観的な視点から、その記事の価値を判断できるようになります(ときには記事が間違っていることが分かるようになります)。
ボーナスの源泉は何か?
ところで、給与や賞与の源はどこにあるのでしょうか?それは「国内総生産(GDP)」です。『日経新聞の数字がわかる本』でも何度も説明しましたが、GDPは「付加価値の合計」です。付加価値とは、各企業の売上高から仕入れを引いたもの、つまり、各企業で作りだされたもので、それを日本中で合計したものがGDPです。そして、その付加価値から支払われているものの大部分を占めるのが人件費、つまり私たちの給料なのです。
ですから、GDPが大きくなれば給料が増えますし、GDPが大きくならないと給料が増えないという関係にあるのです。そこで、次にGDPを確認してみましょう(というか、GDPの定義を知った上で、「給与」と聞いたら、GDPを確認したくなるようになればしめたものです)。GDPは、日経新聞の景気指標面の一番最初に掲載されている、最も重要な数字です。紙面には「名目GDP」と「実質GDP」の2つの数字が並んでいますが、実際に給与として労働者に配られているものの源泉は実額である「名目GDP」の数字ですから、ここでは名目GDPの数字に注目します。
2009年1-3月期の数字が前期比(年率)▲10.5%と大幅なマイナスになっていますね。続く4-6月期も、実質GDPの値は若干増えましたが、名目GDPの数字は減り続けています。
つまり、日本企業全体が生み出す付加価値が減っているのですから、その分、給与を減らそうとします。当然、賞与も減ってしまうわけです。とくに、毎月の給与をあまり大きく動かすと生活に影響を及ぼしますから、今回のように、GDPや企業業績が大きく落ち込む場合には、賞与で調整する傾向が強くなります。
これが第2ステップです。ここまで考えることができれば、世の中全体の動きと賞与のニュースの具体的な関連性が見えてきますね。では、私たちの給与(賞与)が減ると、どうなるでしょうか?これを考えるのが第3ステップです。
普段から景気指標の動きに注意を払っていると、ある数字がどう動いたら別の数字がどう動くかといった、数字と数字の関連性が自然と見えてくるようになります。
私なら、「現金給与総額」の変化に関連して、すぐに「消費支出」がどう変化しているかが気になります。給与が減れば、通常は消費も減るからです。数字を見てみましょう。日経新聞の景気指標面では、「消費支出2人以上世帯」の数字は「現金給与総額」と同じ3段目に掲載されています。2009年7月の「消費支出2人以上世帯」は▲2.0%です。やはり減っていますね。
4月までずっとマイナス続きだった数字が、5月に0.3%、6月に0.2%とプラスに転じたあとで7月に再びマイナスに変わっているのです。これを見ると、夏のボーナスが減った影響が消費にも表れているんだなという推測ができるわけです。
ここでさらに、5月と6月の数字がわずかですがプラスになっているのはなぜだろうか?と思いを巡らすことができれば、かなりの上級者と言えるでしょう。この時期に給与が増えたという話は聞いたことがありません。念のため「現金給与総額」の欄をもう一度確認してみると、5月は▲2.5%、6月は▲7.0%ですから、給与は減り続けているようです。それも大幅に減っています。
給与が減っているのに、なぜ消費は増えたのでしょうか。そこで思い当たるのが、麻生政権が経済対策として実施した「定額給付金」です。多くの自治体で給付金が実際に給付されたのは5月の連休ごろからでしたから、5月と6月の消費に反映されていてもおかしくありません。とはいえ定額給付金は一時的な増収なので、夏のボーナスが大幅に減ってしまったら、消費者は再び財布のヒモを締めるかもしれない。おそらく、そのことが7月の「消費支出」の▲2.0%という数字に反映されているのではないか、と関連づけができれば合格です(もちろん、これも仮説ですが、仮説を立てることが深読みの第一歩です)。
現金給与総額はその後も前年比マイナスが続いていますが、消費支出は8月、9月と前年比プラスに転じています。給与が減っているのに消費が増える?不思議ですね。皆さんで仮説を考えてください。
もうお分かりだと思いますが、経済の記事を読む場合も、「リーマン・ショック」などの経済の「イベント」をある程度記憶しておくことと同時に、景気対策などの政治的なイベントも覚えておかなければ、正しい関連づけができないことが少なくありません
さて、ここまでの説明を読んでいただいて、自分も同じような読み方をしているというのなら、これ以上本書を読んでいただく必要はないかもしれません。でも、おそらくそういう方は少ないのではないでしょうか。
私はセミナーや講演会でも、日経新聞の読み方について、経営者やビジネスマンの方に話をすることがよくありますが、ほとんどの方が、記事と数字を関連づけて読むという説明を聞いてけっこう感激してくださいます。ということは、普段から日経新聞を読んでいても、見出しや本文をただ読み流している方が多いということではないでしょうか。「冬ボーナス14%減」という見出しを見て、「不景気だから賞与を減らしているんだな」ということくらいなら誰でも分かります。
大切なのは、そこから一歩踏み込んで、実際の景気指標の動きやそのほかのニュースとの関連性を考えることです。そうしていろいろな情報と関連づけて考えていくことで、記事をより深く読み解き、自分なりの予測や仮説が立てられるようになります。そうなれば、新聞を読むこと自体が楽しくなってくるはずです。もちろん、論理的思考力も向上します。
キーワード
現金給与総額
全産業で支払われている現金給与の金額(全員の合計金額ではなく1人当たりの金額です)の増減を示す指標。所定内給与と所定外給与(残業代)に賞与(ボーナス)を加えた金額だから「総額」なのです。
国内総生産(GDP)
「国内で一定期間に産み出された付加価値の総額」。GDPの内訳は、民需(企業の投資と家計の消費支出)、政府支出(公共事業など)、外需(貿易黒字)ですが、家計の消費支出が全体の約55%を支えています。
消費支出 2人以上世帯
総務省が、全国の約8000世帯(単身世帯を除く2人以上の世帯)を対象に、毎月のモノやサービスの購入金額を調査し、1世帯当たりの支出金額を計算したもの。社会保障費や税金は含みません。
ケース002疑問を感じたらすぐに「数字」を確認する
別の事例を見ながら、もう少し記事の読み方について説明していきましょう。2009年11月3日付の朝刊に「賃金より雇用際立つ日本」という記事が掲載されていました。
実は私は、この記事を読んだときに少し違和感を覚えました。それは「失業率」についての見方が私と違っていたからです。なぜだか分かりますか?いっしょに記事を読んで考えていきましょう。
賃金より雇用 際立つ日本 給与16ヵ月連続減 欧米は上昇傾向
主要国の中で日本の賃金下落が際立っている。厚生労働省が2日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、従業員1人当たりの現金給与総額は9月まで16ヵ月連続で減少した。これに対し、米国や英国、ドイツでは賃金の上昇傾向が続く。……
雇用を重視する日本の失業率は、7月に過去最悪の5.7%まで上昇したが、9月には5.3%まで低下した。米国の9.8%(9月)やドイツの7.6%(同)、英国の7.8%(7月)に比べて低く、社会不安の緩和にある程度の効果を上げているとの見方がある。
(2009年11月3日付日本経済新聞)
記事の内容に少しでも疑問を感じたら、数字を確認することが大事です。景気指標面を見てみましょう。
2009年7月の「完全失業率」は5.7%、「有効求人倍率」は0.42倍で、ともに過去最悪の水準でした。その後、失業率は若干改善されつつあるものの、まだ企業は人を雇う状況ではないということです。
そうした状況のなかで、この記事は、日本は雇用を維持するために給与を減らしつつあると指摘しています。私は、これ自体は正しい指摘だと思いますが、「日本の失業率は先進国の中で低い」といった記述にはやや疑問を感じます。その理由は、「自然失業率」を考慮していないのではないかと思うからです。
「日本の失業率は低い」は本当か?
「自然失業率」とは何でしょうか?それを説明する前に、まず「完全失業率」の定義をおさらいしておきましょう。完全失業率とは、「仕事をする意思がある人のなかで、仕事をしていない人がどれだけいるか」という割合です。対象者のなかには「仕事をしたいのだけれど仕事をしていない人」と「次の仕事の待機をしている人」が含まれます。たとえば、2ヵ月後に転職をする予定で、仕事は決まっているけれどもいまは働いていない人というのも失業率の中に含まれるわけです。
このような人たちの失業率のことを「自然失業率」といいます。これは、どんなに景気のいいときでも必ず発生するベースの失業率です。過去のデータを見ると、欧米の自然失業率の水準は元々高いということが分かります。なかでも米国は高くて、5%ほどだと言われています。その点を、景気指標で確認してみましょう。
米国の失業率は、景気指標面の「雇用」の欄に載っています。2006年と2007年の数字を見ると、いずれも4.6%です。この2年間、とくに2006年からサブプライム危機が一気に露呈するまでの2007年前半は米国の景気が絶好調のときで、雇用がどんどん増えていた時期です。
そのことは、「失業率」の隣にある「非農業部門増減数」の数字を見ても分かります。2006年は200万人以上、翌年も100万人以上も雇用が増えていますね(2007年8月にはサブプライム危機が露呈しましたが、年内は雇用が増加しました)。自然失業率は、その国の景気がすごく良いときの完全失業率とだいたい一致すると考えられているので、おそらくは、この4~5%を、米国の自然失業率とみなしても間違いではないと思います
では、日本経済が絶好調だったのはいつかというと、1980年代後半のバブル経済の頃と考えられます。当時、完全失業率は90年91年に2.1%まで下がっていますので、この水準が日本の自然失業率に近いと思われます。
つまり、米国と日本では、自然失業率に2~3%の開きがあるということです。その理由についてはいろいろな解釈がありますが、おそらく日本は米国より転職率が低いという雇用慣行の違いが大きいのでしょう。日本でも最近は転職が増えているので自然失業率は上昇傾向にあるとは思いますが、それでも欧米(とくに米国)に比べると、依然として日本の自然失業率は低い水準にとどまっています。
そして、この自然失業率の差を踏まえて改めて各国の失業率を比べてみると、現在の日本の失業率が必ずしも低いとは言えないことが分かっていただけるはずです。
このように、違う国の景気指標を比較するときには、その国の事情や、過去の傾向などを頭に入れたうえで、数字を見比べてみる必要があります。数字自体は客観的なものですが、目の前の数字だけを見て判断すると、事実を見誤ることにもなりかねませんので注意してください。
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有効求人倍率
仕事を求めている人に対して求人がどれだけあるのかを表した数字です。分子が求人数、分母が求職者数です。数字が1を超えていれば仕事のほうが多くて、1を割り込んでいれば求職者のほうが多いということです。
非農業部門増減数
米国政府が、全米の30万社以上の企業や事業所を対象に、雇用者数の増減をヒアリングしてまとめた数字。アメリカの企業は早い段階で雇用者数を増やしたり減らしたりするので、景気の先行指標として世界から注目されています。