キャリアコンサルタントと産業カウンセラーの違いとは?仕事内容や試験内容まで比較




働き方の多様性についての関心が高まるにつれて、キャリア支援や職場の問題解決をする職業への関心も高まってきています。その際によく目にするキャリアコンサルタントと産業カウンセラーはそれぞれどのような資格なのでしょうか。今回は、2つの資格の概要や違いについてまとめていきます。キャリアについての資格に興味のある人はぜひ最後まで読んでみてください。

東京リーガルマインド LEC総合研究所 キャリアコンサルタント試験部 (著)
出版社: 東京リーガルマインド、出典:出版社HP

キャリアコンサルタントの概要

キャリアコンサルタントとは、労働者の職業の選択、職業生活設計に関する相談に応じ、助言や指導を行う人のことを言います。2016年からは国家資格となりより注目が集まっている資格です。

学科試験、実技論述、実技面接と3つの試験に合格して、名簿に登録するとキャリアコンサルタントとして働くことができます。実務経験者または講習受講者、キャリアコンサルティング技能検定合格者が受験対象になっているので、誰もが受験できるわけではありません。

合格率は学科と実技それぞれ60〜70%で推移しており、学科・実技同時合格率は55%ほどになります。一度に合格するのはやや難しいですが、しっかりと学習すれば合格できない試験ではありません。

産業カウンセラーの概要

産業カウンセラーとは、働く人の問題を解決するために職場でカウンセリングを行う人のことです。メンタルヘルスからキャリア開発、職場の人間関係などの問題にも幅広く介入していきます。また、産業カウンセラーの上級資格としてシニア産業カウンセラーという資格もあります。

学科試験、実技のロールプレイと口述試験に合格し、日本産業カウンセラー協会に登録することで産業カウンセラーという呼称を使用して働くことができます。受験には養成講座の修了者か書類審査で必要科目数・単位数の取得が認められた修士以上の人に限られています。

2020年度の合格率は学科試験が67.5%、実技試験が72.4%でした。例年これと同じような合格率で推移しているので、試験の難易度はそれほど高くないでしょう。

キャリアコンサルタントと産業カウンセラーの違い

キャリアコンサルタントと産業カウンセラーはどちらも働く人の悩みを解決する職業ですが、どのような違いがあるのでしょうか。2つの資格の違いについて紹介していきます。

仕事内容

キャリアコンサルタントと産業カウンセラーの最も大きな違いは仕事内容です。それぞれの主な仕事を表すと以下の通りになります。

キャリアコンサルタント:相談者が抱えるキャリアに関する悩みを聞き、助言や支援を行う
産業カウンセラー:相談者の悩みを聞き、その問題解決のサポートを行う

つまり、キャリアコンサルタントは助言や支援など具体的な解決まで示すことが求められており、産業カウンセラーは相談者の悩みを聞き寄り添うことが求められているのです。

また、キャリアコンサルタントはキャリアの専門家として就職や転職の際のアドバイスを具体的にすることができることから、ハローワークや大学の就職課などで重宝されています。産業カウンセラーは相談者の立場でサポートができることから、企業内で相談室を立ち上げたり、働いたりするのに役立ちます。

試験内容

2つの資格の試験内容は全く異なります。
キャリアコンサルタントは相談者のキャリア選択や計画への悩みに的確に助言や指導ができるように、キャリアコンサルティングの理論やキャリアコンサルタントの行動について出題されます。また、実技試験では相談者のキャリアについての悩みの理解と相談者の成長を目指してロールプレイを行います。

産業カウンセラーは相手に寄り添いながら問題解決をサポートすることができるように、カウンセリングの基本や傾聴の技法の対話分析能力を問う問題が出題されます。実技試験では、仕事だけではなく、家族や性格についてなどのテーマでもロールプレイを行います。あくまでも相談者に寄り添って傾聴できるかどうかが重視されています。

就職・転職などキャリアについての専門的な理解が必要とされるのがキャリアコンサルタント、傾聴して寄り添うことが最重要とされるのが産業カウンセラーということが試験内容からもわかります。

どちらを取得すべきか

仕事内容が大きく違うため、どのような仕事をしたいかでどちらの資格を取得するか選ぶというのが最も良いと思います。しかし、キャリアコンサルタントと産業カウンセラーのどちらにも魅力を感じているという人がいるかもしれません。その際にどちらを取得する方が良いのでしょうか。

結論から言うと、キャリアコンサルタントの方をおすすめします。理由としては、国家資格であることや幅広く活躍できることなどが挙げられます。

キャリアコンサルタントは国家資格です。民間資格よりも印象良く感じられるでしょう。
また、産業カウンセラーは企業内相談室など自分の職場で働くことが多いのに対し、キャリアコンサルタントは企業内だけではなくハローワークなどの公的機関や人材派遣会社でも活躍できます。

どちらを取得しようか迷っている人や将来的にどちらも取得したいと考えている人は、まずキャリアコンサルタントの取得を目指すことをおすすめします。

まとめ

キャリアコンサルタントと産業カウンセラーは似ているようで全く違う資格です。どちらも短期間で取得できる資格というわけではないので、自分が何をやりたいのかをよく考えて、それに合った資格を選択しましょう。