アクチュアリー試験 合格へのストラテジー 生保数理
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監修者のことば
MAHさんによるアクチュアリー試験対応図書の発行プロジェクト第2冊目となる『アクチュアリー試験 合格へのストラテジー 生保数理』をお届けいたします。
ここ10年ばかりの間に保険数学関連の著書が何冊か日本語で出版されており、日本アクチュアリー会の指定教科書以外にはこの分野を知ることができなかったほんの10数年前とは隔世の感があります。その間に本当に多種多様な保険数理関連の図書が発行されました。
それら既に多くの関連図書が存在している中で新たな書籍を世に問うからには存在意義が明確でなければなりません。本書が他書と趣を大いに異にするポイントは、アクチュアリー試験に焦点を絞り、それ以外の要素を極力排除した極めてエッジのかかった内容であるという点でしょう。
監修者はかねがね生命保険数学の細部にわたった事柄を理解するために、アクチュアリー試験受験者が膨大な文脈の谷間から必要概念を探し出すためにとてつもなく多くの時間をかけている状況を大変残念に思っておりました。もちろん、プロフェッショナルとなるためにはどこか孤独ともいえる修練が必要ですが、日常業務も抱えた多忙な受験者にとっては文章に埋没した様々な概念はもちろんのこと、試験に直接関連する部分を際立たせた発行物があればもっと学習が楽になるだろうと思っておりましたが、まさにこの本はそのような「わがまま」な要請に応える本となっております。
生命保険数学の理解の為には100程度の定義式を記憶しなければなりまけんし、公式・関係式まで含めるともっと多くの式があり本書で取り上げたものでも400個程度のものが学習範囲となります。ただ、重要なことはその量に圧倒されないことです。そのためには本書第III部で展開される具体的な問題を解くことによって、これらの関係式がどのように使用されているかを理解すれことが肝要です。そうすれば量からくる圧迫感を打ち砕くことができるでしょう。
また、本書ではアクチュアリー教育に造詣の深い日本アクチュアリー会正会員の西林信幸氏による多くの文章を随所に頂戴している上に、演習の解説にも氏の深い知見をコメントとして頂いております。
そのほか、本書はMAHさんが主催するアクチュアリー受験研究会のまさに精鋭というべき方々が実際の原稿の作成にあたりました。
いずれにしましても、本書がアクチュアリー試験受験者にとりまして生保数理の勉強において信頼のおけるパートナーとなることを、そして、この本を手に取られた皆様が本書により1日でも早く生保数理の合格を手にされることを心よりお祈りしております。
2018年4月 山内恒人
推薦のことば
消費者の声を開発に活かしたすぐれた製品というものがあります。本書はその見事な一例です。
本書の場合の「消費者」はアクチュアリー試験の受験者であり、その受験者たちの声が、本書では随所に活かされています。その源となっているのは、第一著者であるMAH氏が立ち上げたアクチュアリー受験研究会の存在です。現役受験者および元受験者が集う同会の会員は、本書出版時点で2000名を超えています。MAH氏は、同会を通じて受験者たちの多様な声を収集する仕掛けを作り、その声を本書のいたるところに反映させました。また、著者の一人である寺内辰也氏は、(本書執筆時点で)生保数理の現役の受験者であり、いわば消費者の生の声の代表者です。
もちろん、消費者の声を盛り込んだだけですぐれた製品となるわけではありません。すぐれた製品の開発者は、その分野に関する高い専門性をも備えている必要があります。その点、もう一人の著者である西林信幸氏は、長年にわたって実際に生保数理の受験指導をしてきたアクチュアリーであり、生保数理の教科内容の隅々にまで精通しています。また、監修者である山内恒人先生といえば、試験範囲に限らぬ生保数理一生命保険数学全般に通じておられ、その知識と知見の広さと深さは国内随一です。
こうした強力な執筆・監修陣によって作られた本書は、最終的な完成度も高く、生保数理の受験者は、本書を使って安心して勉強を進めていくことができます。ただし、本書を開けばそこに何かきわめて安易な道が示されている、などとは期待しないでください。「暗記不要」だとか「算式なしてもわかる」だとかといったことは決して謳われていません。まじめで正々堂々たる受験のコツはいろいろ教えてくれますが、その場限りの抜け穴的な受験テクニックは書いてありません実のところ、アクチュアリーの世界でのみ通用する記号がいたるところに登場する生保数理というこの科目を習得するためには、ごく少数の秀才を除き、それなりの「覚悟」(本書第4章ご参照)が不可欠です。本書はそうした「覚悟」ができる方のための本です。
とはいえ、「覚悟」をもって臨むからといって、無用な苦労までする必要はありません。そうした苦労を大幅に軽減してくれるヒント―それが満載されているのが本書です。それゆえ、生保数理を本気で習得しようと思っている方々にとって、本書の誕生は誠に朗報だと思います。
いかがでしょう。生保数理の習得が難しそうだと感じていますか? 「覚悟」はできそうですか?この二つの問いに対する答えが「イエス」であるすべての受験者に、私は本書を強くお薦めします。
2018年4月 岩沢宏和
はじめに
昨年、多くの皆様のご支援をいただき、『アクチュアリー試験 合格へのストラテジー数学』を発行することができました。おかげさまで、多くの初学者の方にご購入いただき、試験対策の一助にしていただけたと思っております。本書はその第2弾にあたり、1次試験科目で数学の次に受験をお勧めしている「生保数理」を取り上げました。私は1次試験の数学系科目の中で、一番「生保数理」が好きです。それは、保険料を計算している責任準備金を計算しているその仕組みに直接触れ、実際に計算できるところが非常に面白く、勉強のモチベーションになりました。
実はアクチュアリー試験の数学系科目の中では、微分積分の計算量は少ない方の部類に入ると思います。その代り、見慣れないアクチュアリー記号が登場いたします。とっつきにくい面はあるものの、その記号の意味や成り立ちを理解できるようになっていくと「うまく表現しているなあ」と感心することしきりです。意味がわかってくれば関連する公式自体も簡単に覚えることができ、すらすらと学習も進んでいくことでしょう。
このアクチュアリー記号の存在意義や生保数理を勉強していく意義・意味については、監修者の山内恒人先生から大変素晴らしい原稿をいただきました、特別寄稿として第4章に掲載いたしましたので、楽しんでお読みいただければと思います。初学者にとって、アクチュアリー試験「数学」は、教科書や参考書が複数あり、しかも広範囲で十分に整理されているわけではない、というところに難しさがありました。一方、「生保数理」に関しては、しっかりとした教科書があり、それだけでも十分な対策ができるとも言えます。それでも数学が苦手な初学者や他業界から転職を見すえた挑戦者など初受験者からしてみれば、どこまでどう進めれば合格ラインに届くのか、が見えづらい不安があります。
それというのも、アクチュアリー試験の難易度の高さの一つに、試験の問題の難易度自体が安定せず、一定の基礎学力があれば合格するはずなのに、その「一定」のラインが毎年同程度かというと必ずしもそうではないのではないか、という声もあがっています。そのため、合格レベルにあると思われる方でも、年1回と少ない本番でものすごい量の計算量にはまってしまったり、焦ってしまったりと、力が発揮できず不合格になったりする、独特の要因が存在するといっても過言ではありません。
試験を作る試験委員が毎年のように変わり、それもボランティアという事情があるので致し方ないのですが、受験者はこういったことも踏まえて、乗り越えていく力が求められています。こういう試験に対する諸情報の少なさをカバーするために、少しずつでもアクチュアリー試験に関する情報を蓄積していけば、きっとよりアクチュアリー試験にチャレンジしやすくなるに違いない、そういう思いから2009年に「アクチュアリー受験研究会」という勉強サークルを立ち上げました。アクチュアリー試験の受験生がより効率的に学習が進めていくことができれば、受験生の皆さんの早期合格=幸せにつながるのではないかと考えています。
本書は初学者を対象とし、アクチュアリー試験を受けるための基本情報、アクチュアリー試験「生保数理」合格までのステップ、過去問を解くために必要な公式・知識を網羅した必須公式集、公式を理解し定着させるための必須問題集で構成しています。本書のみでアクチュアリー試験「生保数理」の勉強を進めていくにあたって最低限必要な知識を習得することを目指しました。試験範囲外のことはそぎ落としていますので、1冊丸々やり込んでいただいてもまったく無駄が生じないように盛り込んであります。本書に出てくるすべての問題について、1問あたり5分、最大でも8分で常に解ける状熊にまで習熟すれば、過去問にも十分取り組んでいけると思います。本書をベースに、勉強を進めていくことで、確実に合格を果たせるのではないかと思います。
一方で、本書だけでアクチュアリー試験「生保数理」に合格することを保証しているわけではありません。本書をクリアしたのち、過去問への取り組みや、未出問題への取り組み・準備・対策なども必要です。本書はそれらに 取り組んでいくための基礎的な知識を盛り込んでいますので、本書に掲載している公式集や解法を活用して、どんどん過去問に取り組まれるといいでしょう。
本書は、各教科書・参考書・過去問や、アクチュアリー受験研究会の会員の皆さまからお寄せいただいた情報を参考に、共著者であるジェネラル・リインシュアランス・エイジイの西林信幸さん、マーサージャパンの寺内辰也さんとともに、数か月の時間を掛けて作成いたしました。お二人の多大なるご協力が無ければ本書は生まれなかったでしょう。
また、本書の企画・制作において多大なるご指導をいただいた山内恒人先生、岩沢宏和先生に感謝を述べたいと思います。そして本書の作成にあたっては、公式集の作成を大いに手伝っていただいた横田大輔さん、全体構成、まとめ・仕上げ・各種チェックに多大に貢献いただいたアクサ生命の北村慶一さん、問題チェックや校正に協力いただいた藤澤陽介さん、あずさ監査法人の島本大輔さん、損保ジャパン日本興亜の相馬直樹さんと中島圭輔さん、プルデンシャルジブラルタファイナンシャル生命の鈴木理史さん、Eshallotさん、栗山太一さん、稲葉麻友子さん、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命の宮川祐紀さんをはじめとして、アクチュアリー受験研究会の皆さん、本当にありがとうございました。「生保数理」受験生の最初の一冊として、そして受験生の笑顔を見られてことを祈念しております。
2018年5月
アクチュアリー受験研究会代表 MAH
目次
監修者のことば
推薦のことば
はじめに
第I部 アクチュアリー試験「生保数理」受験ガイダンス
第1章 アクチュアリー試験の概要
1.1 なぜアクチュアリー?
1.2 アクチュアリー試験はどんな試験?
第2章 アクチュアリー試験「生保数理」概要
2.1 試験範囲について
2.2 教科書・演習書と試験範囲の関係
2.3 試験の形式と試験時間からの考察
2.4 アクチュアリー試験「生保数理」の沿革
第3章 初学者のための「生保数理」受験ガイダンス
3.1 1年間のスケジュール
3.2 西林式「生保数理」攻略法
3.3 お勧め受験対策
3.4 よくある質問
3.5 モチベーション維持法・疑問点解消法
3.6 アクチュアリー受験研究会の活用
3.7 試験直前の心得
第4章 特別寄稿 「アクチュアリー受験生に求められる覚悟」
第Ⅱ部 アクチュアリー試験「生保数理」必須公式集
第5章 保険料
5.1 利息の計算
5.2 生命表および生命関数
5.3 純保険料
5.4 営業保険料
第6章 責任準備金
6.1 責任準備金(純保険料式)
6.2 実務上の責任準備金
6.3 解約その他諸変更に伴う計算
第7章 連生・就業不能など
7.1 連合生命に関する生命保険および年金
7.2 脱退残存表
7.3 就業不能(または要介護)に対する諸給付
7.4 災害および疾病に関する保険
7.5 計算基礎の変更
第Ⅲ部 アクチュアリー試験「生保数理」必須問題集
第8章 保険料
8.1 利息の計算
8.2 生命表および生命関数.
8.3 純保険料
8.4 営業保険料
第9章 責任準備金
9.1 責任準備金(純保険料式)
9.2 実務上の責任準備金
9.3 解約その他諸変更に伴う計算
Tea Time アク研初期メンバーの合格体験記~正会員になって〜
第10章 連生・就業不能など
10.1 連合生命に関する生命保険および年金
10.2 脱退残存表
10.3 就業不能(または要介護)に対する諸給付
10.4 災害および疾病に関する保険
10.5 計算基礎の変更
付録A 生保数理のための数学基礎公式集
A.1 数列
A.2 重要関数
A.3 微分積分
A.4 テーラー展開
A.5 2次方程式の解
A.6 場合の数
A.7 確率変数
A.8 微分方程式
付録B 最後の確認! 生保数理 重要穴あき公式チェックシート
付録C 電卓の使いこなし術(生保数理編)
付録D 生保数理営業保険料分解図
付録E 生保数理記号集
参考文献
索引