金型を学ぶおすすめ本 – 金型設計者や金型製作技能士の参考書にも!
金型を知るうえでの知識を知ろう
「金型設計」は、多くの製品の部品のプロダクトに置いて欠かせないもので、製造上重要な課題の一つです。ここでは、金型設計に携わるにおいての仕組みや、その仕事内容だけでなく、資格(金型設計者や金型製作技能士など)にも役立つ書籍を紹介します。
図解 金型がわかる本
はじめに
金型はモノづくりの基盤ともいえるものです。身近な工業製品はもちろんのこと、最先端のハイテク機器に至るまで、ほとんど金型を使って製造されています。日本の最重要産業である自動車や情報家電の製造では、その重要な構成部品は金型による量産品ばかりです。日本製の工業製品の品質評価が高いのも、日本の「型」技術の優秀さによる面が大きいのです。
型を使って製造するものは、金属・プラスチック・セラミックをはじめ、ほとんどの工業材料にわたります。電子部品から工業素材、建造物、さらに繊維・食材までも、それらの製造工程では各所に型が使用され、まさに我々の生活の衣食住すべてにわたって関与しているのです。
ひと口に金型や型といっても、モノづくりの対象は広く、その使用方法も広範囲にわたっています。例えば自動車産業でも、車のエンジンや車体だけでなく、タイヤやガラスやシート、さらに制御用の電子部品に至るまで、その製造工程においてどのような形で金型が関与しているかを詳しくご存知の方は少ないのではないでしょうか。
本書の執筆に当たっては、金型にあまりなじみのない方にも、金型の役割と多様性を、できるだけ理解していただけるようにと意気込んで書き始めました。しかし筆者も長い間金型づくりの研究を行なってきたはずでしたが、書いているうちにあまりに広範囲にわたる型のことを十分に知っているわけではないことを思い知らされました。また極めて多くの型が存在するだけでなく、その技術の奥の深さを改めて実感することとなりました。
いうまでもなく、日本の富の源はモノづくりにあります。そのモノづくりに大いに貢献するものの、目立たない地味な裏方の存在が金型なのです。その一方で、「金型を制するものがモノづくりを制する」ともいわれています。型づくりには多くの最先端技術が続々と取り入れられ、日々進歩しています。同時に型づくりは、熟練技能者の活躍の場でもあるという側面もあります。
それぞれ独自に発達してきた金型について、その構造や機能を個々に説明しても、金型を十分理解していただくのは無理かも知れません。そのため金型で成形されている品物、さらにどのような特徴を持った型を使っているか、その型の技術的な工夫などに執筆の重点を置くこととしました。このほうが金型の本質を正確に理解していただけると思ったからです。
日本の製造業はグローバル化が進む中で、刻々と構造変化が起きています。その変化は日本のほとんどの産業や、我々の日常生活にも影響を与えつつあります。すべての産業に関与される方は、どこかで金型産業と何らかの接点をお持ちのはずです。モノづくりに関与される方は、ぜひこの程度の金型の知識を持ってほしいと思いながら本書を執筆しました。
また、立体的な金型を理解するには、図面を見るだけでは無理で、金型自体を手にとって分解して見るとよくわかるのですが、それも書物ではかなわないことです。できるだけ金型の理解の助けになるよう、多くの書物から図表や写真を引用したり、また新たに提供をいただきました。これらの貴重な資料のご提供なくしては本書の完成はありませんでした。資料掲載のご承諾いただいた各位に厚くお礼申し上げます。
2006年5月吉日
中川威雄
図解 金型がわかる本
目次
はじめに
第1章 モノづくり立国ニッポンを支える金型の現状
1 モノづくりの主役「変形加工」
2 衣食住すべてのモノづくりに活用されている型成形
3 日本の金型産業の過去・現在・未来
4 金型づくりに導入される高度技術
5 互いに競合している成形と金型
6 金型のライバル技術は?
7 匠の技が生きる金型づくり
8 新素材も金型成形が必須
9 逆方向からの型づくり――リバースエンジニアリング
10 同時進行の型づくり――コンカレントエンジニアリング
11 ますます厳しいリードタイムの短縮
12 成形機の進歩で金型も発展
Column “早く安く”が至上命令
第2章 製品が決まった後、最初に取りかかる金型
1 型づくりは製品設計と同時に始まっている
2 進む金型設計の3次元化
3 CAEによる成形実験を反映させた金型設計
4 進む金型部品の標準化
5 多品種少量生産を可能にする迅速金型交換
6 試作品づくりの積層造形(RP)
7 金属部品の積層造形(RP)
Column IT化の波紋
第3章 難加工材の高精度加工が求められる金型加工
1 ロボット的工具交換機能を持つマシニングセンター
2 加工時間を大幅に短縮する高速ミーリング
3 CAMデータに現われるエンジニアの技量
4 進歩を続ける金型加工用切削工具
5 高硬度・精密金型のための研削盤
6 硬質金型のための型彫り放電加工
7 精密切断の雄、ワイヤカット放電加工
8 高精度の金型づくりの必需品、3次元測定器
9 難しいカド部の成形、各種成形法の制約に挑戦
10 手作業が頼りの金型磨き
11 金型とバリ発生
12 加工は難しいが耐久性の高い超硬合金型
13 金型鋼の熱処理・表面処理
14 積層造形(RP)による簡易型
15 金属積層造形による迅速金型
Column 輸入金型と海外金型生産
第4章 溶解金属からのモノづくりには必須の鋳造型
1 使い棄ての鋳造用砂型
2 砂を固めるさまざまな方法
3 真空で鋳型を固めるVプロセス
4 加熱金型で固めるシェル鋳型
5 モデルを消失させての鋳型づくり
6 型を守る塗型や潤滑剤はノウハウの塊
7 型温度制御による指向性凝固
8 耐久性のある金型を使った鋳造
9 残留気泡が有害なダイカスト
10 高強度・高品質品を得るダイカスト
11 熱衝撃を受けるダイカスト金型
12 強くて破壊しやすい崩壊性中子
13 複雑形状を持つシリンダブロックの鋳造型
14 軽量金属マグネシウムのダイカスト
Column 金型技術とノウハウの流出
第5章 金属の塊を力づくで成形する鍛造金型
1 材料配分が重要な熱間鍛造金型
2 量産される熱間鍛造金型
3 使いこなしが肝心の自由鍛造金型
4 破壊強度で決まる冷間鍛造金型
5 冷間鍛造で金型づくり、コールドホビング
6 アルミサッシ用の中空材の押出し金型
7 過酷な摩擦条件に曝される線引きダイス
Column 金型産業の振興策
第6章 ミクロン部品から自動車車体まで成形する金属プレス金型
1 金型のクリアランス(隙間)
2 高速加工のモータコア打抜き金型
3 エッチングと競争する微細打抜き金型
4 微細抜き金型のかす上がり
5 平滑切断面を得る精密打抜き金型
6 切削加工とプレス加工との融合
7 高精度を出すのが難しい曲げ成形
8 深さを競う絞り成形
9 省力化に貢献する量産用順送金型
10 飲料缶の多量生産用成形金型
11 空気や水や氷を型に使う
12 金型の雄、自動車車体プレス金型
13 フルモールド鋳造による車体成形金型づくり
14 試作用に使われる亜鉛合金金型
15 補給部品生産用の金型
16 金型と類似している組立て治具
17 電気自動車と金型需要
Column モノづくり産業と金型産業
第7章 原料粉末を固めて焼成する粉末成形金型
1 粉末の圧縮成形金型
2 粘性粉末の成形金型
3 泥しょう鋳込み用の石膏型
4 ゴム袋型を使う静水圧成形
5 炭素も型材として活用されるホットプレス型
Column 金型用生産財の発展
第8章 成形の容易さから広く用いられるプラスチック成型金型
1 熱交換器の機能も必要な樹脂成形金型
2 樹脂の流れを決める金型設計が肝心
3 異なる樹脂を使う2色成形金型
4 特殊構造の射出成形金型
5 天然模様をつける皮しぼ型
6 空気圧を利用するペットボトルの成形
7 ポリ袋の成形にも金型を使う
8 最高精度を要する非球面レンズ成形金型
9 プラスチック眼鏡レンズの成形型はガラス製
10 微細な繊維製造用の押出し金型
11 ゴムとガラスの成形の金型
12 半導体プロセスを使った微細金型
Column 工業デザインへの型技術の貢献
索引
カバー装丁/小沢宏樹(ダーツ)
カバー写真提供/小野産業
本文DTP/ダーツ
図解入門よくわかる 最新金型の基本と仕組み[第2版]
はじめに
この本は、仕事で初めて金型に関わることになった企業の方や、金型に興味をもった学生の皆さんなど、「金型初心者」の方が最初に読むことを想定して書いたものです。
自動車、家電、電子部品、精密機器、事務用品、日用品、玩具など、身の回りにある量産製品を見てみると、金型に関係しないものを探すことは難しいでしょう。
日本は金型の生産量でダントツの世界第1位。2位以下の国を大きく引き離しています。しかし、金型を利用して製造された製品を利用している人が、金型を意識することはほとんどありません。
私は現在所属している大学で生産システムの講義を担当していますが、設計から加工、検査までの工程を総合的に説明するための事例としては、金型を取り上げることが非常に便利です。3次元CADを利用した設計、3次元データを用いたさまざまなシミュレーション、工程・作業設計、機械工作法、工作機械と工具、CAMを利用した加工データの作成、3次元測定機による検査など、金型作製の各工程を掘り下げて学ぶことにより、既存の生産技術のほとんどを網羅することができるからです。
また、金型は構造が複雑なうえに高い精度が求められるため、製作が非常に難しいとされています。そのため、加工方法だけでなく、工作機械や製造系ソフトウェアといった加工要素技術などの進歩を強く牽引してきました。現在でも、金型製造を意識した工作機械やソフトウェアが多数提供されています。日本では製造業の海外流出が進み、技術の空洞化が懸念されていますが、金型は今後も国内での製造を維持すべき重要な「高付加価値製品」なのです。
金型はたくさんの種類がありますが、本書では合計で生産額のほぼ8割を占めている「三大金型」として、射出成形、プレス、ダイカストの3つの成形方法と金型の仕組みについて主に解説しました(2~4章)。また、金型を利用した日本の代表的な工業製品は、なんといっても自動車ですが、その部品の中から成形が特徴的なものを取り上げて説明しています(7章)。最後に、日本の金型産業の現状と今後の課題について述べています(8章)。
また本書では、公開が可能なもので最良の写真を数多く掲載するように努めました。金型はユーザーから受注して作る製品であるため、写真などのデータを公開しにくいという事情があります。貴重な写真やイラストを提供していただいた各企業の関係者の方々には心よりお礼申し上げます。
本書がきっかけとなって、読者の方が金型をより近くに感じていただけるようになり、今後の皆さんの活動に少しでも良い影響を与えることができれば、これに勝る喜びはありません。
最後になりましたが、本書の編集作業を担当していただいた秀和システム第一出版編集部の皆様にお礼申し上げます。
2018年6月
森重 功一
目次
はじめに
Chapter1 私たちの暮らしと金型
1-1 金型とは
「型」とは/「型」から「金型」へ/「金型」に支えられた社会/金型は素形材産業の基盤
1-2 金型を使った金属成形
鋳造/ダイカスト/鍛造/プレス加工
コラム 貨幣の作り方
1-3 金型を使ったプラスチック成形
プラスチックの種類/射出成形/押出し成形/フィルムやシートの押出し成形/ブロー成形/真空成形/圧縮成形
コラム アルミサッシ用の中空材
1-4 スマートフォンの生産にも欠かせない金型
リードフレーム/液晶ディスプレイの導光板/バッテリーのケース
1-5 どの金型が多く作られているのか
1位プレス型、2位プラスチック型
Chapter2 射出成形金型
2-1 射出成形機
射出成形機の種類/射出成形機の構造
コラム 軽くて静かなプラスチック歯車
2-2 射出成形金型に関する用語
キャビティとパーティングライン/スプルー、ランナー、ゲート
2-3 射出成形金型の構造
ツープレート(2枚構成)金型/スリープレート(3枚構成)金型/ホットランナー金型
コラム 光ディスクやスマートフォンに用いられるプラスチックレンズ
コラム ガラスの型で作られるレンズ
2-4 射出成形金型の仕組み
成形品の離型/抜き勾配/金型温度の調整/アンダーカット処理/外側のアンダーカット部の処理(外側スライドコア方式)/内側のアンダーカット部の処理(傾斜スライド方式)
2-5 射出成形の不良と対策
表面がへこむ―ヒケ/成形品が曲がる―ソリ/成形品が欠ける―ショートショット/後処理が大変―バリ/割れ? ―ウェルドライン/表面に現れる縞模様―フローマーク/ジェッティング/難しい成形条件の設定
コラム 製品の表面にある微細な模様―シボ
Chapter3 プレス金型
3-1 プレス機械の構造
スライドの上下運動を支える/サーボ化が進むプレス機械
3-2 プレス機械の種類
フレーム構造によるプレス機械の分類
3-3 さまざまなプレス加工
せん断加工/曲げ加工/絞り加工/飲料缶の作り方
3-4 プレス金型の構成
プレス金型を構成する部品
コラム 高精度なせん断加工を実現するファインブランキング
3-5 プレス加工の自動化
トランスファ加工/ロボットを利用した自動化/順送加工/順送金型の仕組み
コラム 標準部品の利用による金型製造の効率化
コラム ガンプラを作るための4色射出成形機
Chapter4 ダイカスト金型
4-1 ダイカストマシン
ダイカストマシンの構造/コールドチャンバー式ダイカストマシン/ホットチャンバー式ダイカストマシン
4-2 ダイカスト金型の構造
ダイカスト金型の基本構造/湯口方案
コラム 金型の補修
4-3 ダイカスト金型の仕組み
成形品の離型/アンダーカット処理/金型温度の制御
4-4 ダイカスト成型の自動化
自動給湯装置/自動スプレー装置/自動製品取出装置
コラム 金型の保管
4-5 高品位な成形のための特殊ダイカスト法
成形品内部の空洞―「巣」/真空ダイカスト法/無孔法ダイカスト法/スクイーズキャスティング法/半溶融・半凝固ダイカスト法
Chapter5 金型の設計
5-1 金型設計の流れ
製品仕様の決定(発注側)/構想設計/各部の寸法や強度の検討/組立図の作成/部品図の作成
5-2 CADによる設計
複雑・多様化する製品/CADとは/2次元CADの登場/3次元CADの台頭/CAD情報のやりとり
コラム 3次元CADは設計のプラットホーム
5-3 CAEによる検証
CAEとは/CAEで扱うシミュレーション/CAEで使われる解析方法/有限要素法(FEM: Finite Element Method)/境界要素法(BEM: Boundary Element Method)/差分法(FDM: Finite Difference Method)/「定性的」な解を求める
5-4 積層造形法
ラピッドプロトタイピング/積層造形法の種類/アディティブマニュファクチャリングへ
5-5 コンカレント・エンジニアリン
コンカレント・エンジニアリングとは/コンカレント・エンジニアリングの利点
コラム 医療分野での活躍が期待されるRP
コラム バーチャル・マニュファクチャリング
5-6 ソフトウェアツールを利用した射出成形金型の設計
簡易的な充填解析/収縮を考慮した寸法・形状の修正/抜き勾配を付加する部分の自動抽出と設定/パーティングラインの検討と型割/アンダーカット部の自動抽出と修正/機構や部品の配置位置の検討/冷却水管の配置検討と成形シミュレーション/金型作製手順の検討/図面の出力
Chapter6 金型の加工
6-1 金型に使われる鋼材
一般構造用圧延鋼材(SS材)/機械構造用炭素鋼(S-C材)/炭素工具鋼鋼材(SK材)/合金工具鋼鋼材(SKS、SKD、SKT材)/高速度工具鋼鋼材(SKH材)/超硬合金
6-2 金型を加工する工作機械
工作機械とは/旋盤/ボール盤/フライス盤/研削盤
6-3 NC工作機械
NCとは/NCからCNCへ/マシニングセンタ/ターニングセンタ
6-4 放電加工
放電加工とは/形彫り放電加工/ワイヤ放電加工/金型の製造で活躍する放電加工
6-5 CAMによる加工データの作成
CAMとは
6-6 仕上げと組立
仕上げ/みがき/組立作業/試し加工(トライアウト)/検査して出荷
Chapter7 自動車に見る金型成形
7-1 車体―ボディ、エクステリア、インテリア
ボディ/外装―1つの金型で3色に成形されるテールランプ/内装―成形が難しいインパネ
7-2 エンジン―高音・高圧・高荷重に耐える部品の数々
エンジン本体―ダイカスト、低圧鋳造、プレス加工/エンジンの運動部品―精度と強度の両立を図る
7-3 自動車に使われる鍛造部品
パワートレイン/パワーステアリング
7-4 タイヤ―ゴムを成形する金型
生ゴムからゴムへ/タイヤ製造の流れ
Chapter8 金型の「いま」と「これから」
8-1 日本の金型産業の現状
景気に左右される金型産業
8-2 日本の金型産業の強み
総合的な工業力に支えられている金型産業/日本が誇る高付加価値金型
8-3 日本の金型産業の弱み
中小企業の比率が高い日本の金型産業/高い人件費、古い設備
コラム 大学における金型教育
8-4 金型産業の展望
アジア諸国の急速な追い上げ
8-5 これからの日本の金型産業
新たな取り組みが重要/日本の金型技術は世界一
参考文献
索引
金型のしくみ (図解雑学)
はじめに
本書は、ものづくりに興味のある方、これからものづくりを勉強しようとする学生、仕事で型に関わる技術者の方などが、型のはたらきと構造を、図解を通して短時間に理解できるように著したものです。ものづくりをさらに深く勉強するための入門書にもなります。
ご存知のように資源の少ない日本にとって、原材料を輸入し、製品にして輸出することは、経済活動の基本です。ものづくりは国づくりであり、そのものづくりを土台で支えているのが金型技術です。高品質の自動車や情報家電、精密機械、建材などは、世界に類を見ない優れた型技術によって生み出されているのです。
製造業がアジア諸国にシフトするといわれて20年以上経過しました。当初、アジア諸国の加工用素材や金型材料の品質、技術者のレベルには問題がありましたが、現在は優れた研究者、技術者が多く育っており、日本のお株が奪われかねない状況です。今も日本の金型技術は世界最高のレベルにありますが、これを維持し発展させるにはどうすればよいか、それがこれからの課題です。
本書は、金型を用いた加工法、金属の性質、金型材料、金型設計、金型のつくり方と金型の技術向上について述べた後、将来重要となるであろうマイクロ加工技術にも言及しています。本書を読み通されて、金型について理解を深める一助となれば幸いです。
おわりに、本書の内容について、貴重なご意見をいただいたアイシン軽金属株式会社の堂田丈士氏に感謝いたします。また、出版の機会をいただいたナツメ出版企画株式会社の山路和彦様、編集にご協力いただいた株式会社エディットの助田洋子様にお礼申し上げます。
2010年2月 堂田 邦明
目次
はじめに
Chapter1 ものづくりは金型づくり
ものづくりは金型づくり 〜金型でつくられるさまざまな製品〜
トランペット 〜美しい音色を生み出す曲がった管〜
注射針 〜細く長い穴〜
飲料缶 〜絞りしごきで缶づくり〜
自動車の車体 〜加工技術の集合体〜
コンロッド 〜車の心臓部を支える小さな部品〜
硬貨 〜延ばして打ち抜き、模様をつける〜
金箔 〜透けて見える金属〜
アルミ箔 〜紙のように薄い金属〜
アルミサッシ 〜押出しでつくる複雑な断面〜
日本刀 〜先端技術に優る伝統の技〜
梵鐘 〜巨大なつり鐘〜
コラム レアメタル
Chapter2 金型を用いたものづくり
金型を用いたものづくり 〜成形法を知って、金型を理解する〜
鋳造加工 その1 〜砂で型をつくる〜
鋳造加工 その2 〜あらゆる金属は鋳造できる〜
ダイカスト その1 〜複雑な3次元形状鋳物の高速製造〜
ダイカスト その2 〜金型寿命の向上〜
ダイカスト その3 〜軽量で高精度な製品を大量生産〜
圧延加工 その1 〜ロールで板を薄く引き延ばす〜
圧延加工 その2 〜さまざまな断面の板圧延〜
圧延加工 その3 〜パイプをつくる圧延〜
せん断加工 〜素材を切断分離する〜
曲げ加工 〜素材をいろいろな形に曲げる〜
深絞り加工 板からカップをつくる〜
張出し加工 〜風船のように金属材を膨らます〜
引抜き加工 〜極細線をつくる〜
しごき加工 〜しごいて板厚を薄くする〜
押出し加工 トコロテンのように押し出す〜
鍛造加工 〜粘土で鯛焼きをつくる〜
粉末の圧縮成形 〜粉を固めて形をつくる〜
粉末の静水圧成形 〜雪玉をつくる方法〜
粉末成形用金型 〜強度、耐摩耗性とも高く〜
コラム 摩擦攪拌接合
Chapter3 金属の特性を知る
金属の特性を知る 〜金属の性質の基本をつかむ〜
温度による金属の状態 〜温度によって姿を変える金属〜
結晶構造 〜金属の性質を決める金属結晶〜
変形のしやすさ 〜硬い金属も原子間のずれで形を変える〜
すべり系 〜特定の方向にすべりが生じる〜
転位の移動 〜3種類の転位〜
引張り変形と圧縮変形 〜応力とひずみの定義〜
弾性変形 〜変形しても元に戻る性質〜
塑性変形と加工硬化 〜変形すると硬くなる〜
合金化による金属の強化 〜異原子が混ざり込む〜
窒化処理 〜鋼の表面を硬く改質する〜
コラム アモルファス金属
Chapter4 さまざまな金型材料
さまざまな金型材料 〜加工条件に適した金型材料を選ぶ〜
材料特性 〜金型材料に求められる特性バランス〜
炭素工具鋼 〜最も幅広く用いられる工具鋼〜
高速度工具鋼 〜強力な切削能力をもつ工具鋼〜
合金工具鋼 〜用途に応じて合金元素を配合〜
超硬合金 〜最も硬い合金〜
ファインセラミックス 〜可能性を秘めた多機能材料〜
金型に用いられる鋳鋼 〜加工工程を短縮〜
コラム プリハードン鋼
Chapter5 金型設計の過程
金型設計の過程 〜金型づくりと製品づくり〜
製品のイメージ 〜製品の基本を考える〜
CAD/CAM(コンピュータを利用した設計/加工) 〜コンピュータで図面を書く〜
CAE(コンピュータを利用したエンジニアリング) 〜シミュレーションで性能チェック〜
試作 〜よりよい製品の完成のために〜
設計図 〜第3角法による製品の図面化〜
金型設計 〜金型製作にもコンピュータを活用〜
モジュール型 〜分けてつくって、組み合わせる〜
ラピッドプロトタイピング 〜型を使わずに試作する〜
コラム ニアネットシェイプ
Chapter6 金型のつくり方
金型のつくり方 〜最適な加工法によって金型をつくる〜
切削加工 〜素材を削って形をつくる〜
旋削加工とフライス加工 〜回転しながら切削加工〜
研削加工 〜砥石を用いて表面を平滑に〜
ラッピング加工 〜遊離砥粒による平滑化〜
バレル加工 〜小石をぶつけて磨き上げる〜
放電加工(EDM) 〜アーク放電で金属加工〜
ワイヤ放電加工 〜金属をワイヤで糸のこのように切る〜
マイクロ放電加工(MEDM) 〜極限まで小さい穴をつくる工具〜
電解加工(ECM) 〜電解液を流して金属を加工〜
レーザ加工 〜集光した人工光を利用〜
コラム ウォータージェット
Chapter7 これからの金型技術
これからの金型技術 〜求められる金型寿命の向上〜
液体潤滑剤(潤滑油) 〜塗るだけで使えて取り扱いが容易〜
グリース(半固体潤滑剤) 〜攪拌されて形態が変化〜
固体潤滑剤 〜宇宙でも使える潤滑剤〜
化成被膜 〜冷間鍛造技術の拡大に貢献〜
型成形の摩擦の特徴 〜変形しながらすべる〜
リング圧縮摩擦試験 〜寸法変化から摩擦係数を知る〜
塑性加工用トライボメータ 〜摩擦の程度を数字で表す〜
表面改質法 〜表面だけを高性能に変える〜
化学蒸着(CVD) 〜ガスとの反応膜をつくる〜
物理蒸着(PVD) 〜金属表面にイオンを打ち込む〜
TRD処理 〜塩浴中で硬質被膜をつくる〜
コラム ダイヤモンドライクカーボン(DLC)
Chapter8 プラスチックの成形
プラスチックの成形 〜金属成形との違いを考える〜
熱可塑性プラスチック 〜生活に欠かせない必需品〜
熱硬化性プラスチック 〜硬化したあとは、形が変わらない〜
FRP 〜軽量で強度が高いプラスチック〜
射出成形法 〜圧力で射出して成形する〜
ブロー成形法 〜風船を膨らますように成形〜
プラスチックの熱成形 〜幅広く使われている成形法〜
プラスチック成形用金型 〜冷却機能を備えた金型〜
コラム 炭素繊維
Chapter9 マイクロメゾ成形
マイクロ・メゾ成形 〜金型も小型化・微細化の時代〜
微細領域と加工 〜期待されるマイクロ・メゾ加工〜
加工用材料 〜素材の中の結晶粒の数で加工性が決まる〜
マイクロ金型 〜求められる高性能〜
マイクロせん断加工 〜小さな穴をあける高い技術〜
マイクロピンの転造 〜直径1mm以下のねじ〜
マイクロ押出し加工 〜マイクロ部品を押し出してつくる〜
バルク材のマイクロ成形 〜小さい製品ほど摩擦の影響が大きい〜
マイクロ・メゾ成形のトライボロジー 〜マイクロプロセストライボロジー〜
微小機械の製作とマイクロの世界 〜未来へつながるマイクロ・メゾ加工〜
コラム マイクロの世界
索引
ニッポンものづくり研究「金型」入門
はじめに
日本の経済力は陰りを見せていると一部でいわれていますが、それでも国内総生産(実質GDP)において世界3位に君臨しています。経済産業省の2017年のデータによれば、GDP世界1位はアメリカで約17兆3500億ドル、2位は中国で約10兆1600億ドル、続く日本は約6兆1600億ドルです。
日本のGDPの約2割は、製造業によって支えられているのですが、そのなかには、年間売上高が1兆円以上となる製品分野が26もあります。なかでも自動車製品は世界シェアの2割以上を占めており、売上高にして年間約60兆円規模を誇っています。
また、日本が世界シェアの6割以上を占めている製品分野は270にも上ります。この数は、アメリカ(124)、欧州(47)、中国(73)をはるかに上回っており、日本の製造業が多岐にわたって世界的に支持されていることをよく示す事実といえるでしょう。日本が「ものづくり大国」と呼ばれるのは、「メイド・イン・ジャパン」のさまざまな製品が、世界中で重要な役割を担っているからなのです。
製造業で優れた業績を上げるには、高品質の製品を大量生産できる能力が必要とされます。例えば、トヨタは1カ月に68万台超ものペースで自動車を生産することが可能です(2019年8月データ)。単純計算すれば、毎日3万個以上もの同じ製品を、部品供給会社などの取引先と連携しながら日本各地、世界各地の工場で作り続けることができるのです。
では、「その大量生産の立役者は?」と聞かれたら、皆さんは、何をイメージするでしょうか。トヨタをはじめ、世界企業に成長した多くのメーカーを思い浮かべる人は多いかもしれません。
もちろん、そうした企業が効率的でムダの少ないものづくりの方法を長年研究、確立、改善し、「メイド・イン・ジャパン」の価値を高めてきたことは事実です。しかし、「効率的にものをつくる方法」だけが存在しても、大量生産が可能になるわけではありません。
大量生産を可能にする日本ものづくり産業の立役者――それは、本書のタイトルにもある「金型(かながた)」であり、金型を作る職人たちです。
金型とは、簡単にいえば、原材料を部品の形にする「型」のことです。鯛焼きは、開いた型の片方に生地を流し込み、パタンと型を閉じてまた開くと、何個も同じものが出来上がります。製品で使われるたくさんの部品もまた、このような考え方で金型を用いて大量に生産されているのです(実際には、さまざまな方法がありますが、それは本編で紹介します)。
つまり製品を作るためには部品が必要であり、部品を作るためには金型が必要ということです。
そしてこの金型こそ、製品がモノとして誕生する原点なのです。
当然、製造業で必要とされる金型は、鯛焼きの型とは比べものにならないほど精密です。例えば、自動車は3万点以上の部品で作られていますが、「走行中に振動でネジが外れた」といったアクシデントを身近で聞いたことがある人は、ほぼ皆無でしょう。それどころか、何年も乗っていても大きな故障がないことのほうが、多いのではないでしょうか。
私たちの暮らしは、もはや金型なしでは成り立ちません。マスクも、コンタクトレンズも、消しゴムも、金型から作られています。靴もカバンも化粧品も、金型がなかったら今の価格で買うことはできません。すべてが手作りなら、それらを手掛ける「○○作り職人」が1日数個といったペースで作ることになるでしょうから、現在は1個数百円で買えるものが、1万円、2万円、あるいはそれ以上の大変高価なものになってしまうはずです。
私たちの豊かな暮らしの、そして、日本製品のクオリティの源泉ともいえる金型業界は、金型を作る人、いわゆる金型職人によって支えられています。「職人」と聞くと、どこか古臭い感じがするかもしれませんが、もし皆さんが、そんなイメージでこの業界を敬遠してしまうとしたら、それは非常にもったいないことです。金型職人たちは、常に最先端の製品作りに関わりながら、同時に、0.1ミリの違いが指先で分かるような鋭敏な感覚を仕事を通して身に付けていきます。今やものづくりの最先端では、ナノ単位(0.000001ミリ)の精密さが問われており、日本の製造業はそのトップを走っています。そのチャレンジを可能にしているのが、金型職人というプロフェッショナルなのです。
私は、金型のメンテナンス機器を扱う会社を経営しています。仕事を通して日本中の金型工場に足を運び、その経営者や現場の職人たちと触れ合ってきました。そこで私は、知られざる金型業界の様子や魅力について皆さんにも知ってほしいと思い、この本を書くことにしました。金型を作る仕事がいかにクリエイティブでエキサイティングなのか、きっとお分かりいただけると思います。
実際、私の知る金型職人たちは、「次に仕事を選ぶとしたら……金型だな」と口をそろえて言います。それは金型という仕事には、自分のやり方で考える楽しさ、イチから作る楽しさ、そして、いつも新製品に関わっているというやりがいがあるからだと思います。
この本を通して、金型と金型職人について、少しでも興味を持ってもらえたら、著者としてうれしく思います。
ニッポンものづくり研究「金型」入門 目次
はじめに
[第1章] アナログなのに最先端!昔も今も日本のものづくりを支える「金型」とは
ペットボトルはどうして水漏れしないのか?
すべての製品が手作りだったなら
大量生産を可能にする「金型」の存在
「型」を使えば立体のコピーを作れるの
「型」があれば、優れたアイデアを共有できるの
金型にはミクロン単位の精度が求められる病
「新商品が登場した」とは「新しい金型ができた」ということ
金型を専門に作る金型メーカー
主な金型の種類
型を一つ作るにはいくらかかる? [第2章] 日本の金型は世界最高品質!
メイド・イン・ジャパンの金型が世界のものづくりを支えている
製品の質が高い=金型の質が高Sとはどういうことか
日本製品は1/1000グラムの重さでクオリティを守る
金型は二重に品質が問われている
「指示どおり」の先に仕事の価値がある
「日本の金型がすごい」とは周辺の層も厚いということ
日本の金型を修理できるのは日本のメンテナンス業者だけ
「過剰品質」は日本の製造業にしかない概念 [第3章] ピンチをチャンスに変えろ!
グローバル化とコストカットに立ち向かう金型業界
衰退の危機!? 日本のものづくりが危ない本当のワケ的
リーマン・ショックでどん底を見た金型業界の
理由1 貪欲な営業が苦手
理由2 宣伝ができない
理由3 過剰品質の追求を止められない
理由4 技術に対するリスペクトが低い
理由5 技術の流出が止まらない?
理由6 金型職人は人が好い
理由7 現場の高齢化が進んでいる [第4章] 金型職人は腕一本で勝負する!
「金型を作る人」ってどんな人?
金型はどうやって作られる?
① 金型製作の依頼を受ける
② 金型の仕様と製作方法の決定
③ 金型の設計図の作成/材料の調達
複雑な問題をシンプルに解決するのが「腕」
④ 機械による加工
⑤ 確認・仕上げ・組み立て
⑥ 試し加工・調整
⑦ 納品
金型職人”あるある”
腕さえあれば世界を回れて、意外と儲かる [第5章] 機械化が進んでも金型の仕事はなくならない
時代を超えて生き残る金型職人とは
AI時代、どんな仕事が残るのか
AIは金型職人を駆逐するか
「過剰品質」が日本の金型を救う
ナノの世界の競争で勝つ!
会社のエキスパートになるか、技術のエキスパートになるか
金型を学ぶなら……
おわりに
金型が一番わかる (しくみ図解)
はじめに
型技術協会に金型本の企画をいただき、型技術協会会員が中心となり複数の専門家によって、金型に関するわかりやすい本を執筆しようということになりました。本書は、ものづくり、製造業に関心のある方、これからものづくり関連の勉強をする学生さん、型にかかわる技術者、開発者を志す方々へ型を知るための入門書として型技術協会会員が著したものです。
電気・情報機器や自動車などの代表的工業製品は、多くの部品から構成されています。これらの部品のほとんどは、「型」を用い転写(コピー)によって形をつけるのが特徴です。それぞれの部品形状に応じた型を準備すれば、同じ形状の部品を効率良く生産できるので大量生産に適しています。部品の形をつくる方法には鋳造、鍛造、板金プレス、粉末治金などの金属部品の製造法のほか、樹脂の射出成形やセラミック焼成まで多岐にわたっており、それぞれの加工法に応じた型が使用されます。
現在、わが国の製造業の多くが海外に製造拠点を移し、日本からだんだん製造業が減っており、日本の金型産業界は停滞・縮小傾向を示しています。例えば、家電や情報機器などの筐体や部品生産用の金型は、その生産量がかなり減りました。金型産業は、力をつけてきたアジア諸国とのグローバルな厳しい価格競争に直面しており、以前のようには利益の出ない産業になっています。このような状況の中、日本の金型産業はほかの製造業と同じく、他国では真似のできない高度な生産技術開発で対抗していかなければなりません。
また、韓国、中国、タイなどのアジア各国では金型学校が多く設立され、人材育成にも注力しています。わが国でも、ようやく金型関連の学科を教育する大学が設けられ始めていますが、圧倒的に少ないのが現状です。金型に関する入門書も最近良く見かけます。金型を知ってもらうには大変良いことだと思います。
本書は、金型とその製品例、金型の用途、金型製作前の作業、金型製作のCAD/CAM、金型の作り方、金型材料、金型技術の今後から構成されています。それぞれの章は、その分野の専門家や技術開発者が担当して執筆しました。今までの金型の本には無い複数の著者によって専門的でしかも分かりやすくまとめました。ページの制約により、型の仕上げ・組み立て、型計測などは割愛しました。ほかの金型に関する本で補完していただければより一層「型」を理解していただけると思います。
本書を通して、金型に興味をもっていただき、高度な技術開発ができる金型技術者の育成の一助になれば幸いです。
おわりに、出版の機会をいただいた(株)技術評論社、編集に協力いただいたジーグレイプ(株)堀田展弘さんに感謝いたします。
2011年8月吉日 著者を代表して 安齋正博
金型が一番わかる−製品の品質と性能を決定するものづくりの原点−
目次
はじめに
第1章 金型とその製品例
1 金型の機能
2 金型で生み出される製品例①
3 金型で生み出される製品例②
4 金型で生み出される製品例③
5 金型で生み出される製品例④
第2章 用途別に使われる金型
1 型の種類・型の呼び方
2 プレス用金型
3 プレス用金型(抜き型)
4 プレス用金型(曲げ型)
5 プレス用金型(絞り型)
6 プレス用金型(圧縮型)
7 鍛造用金型
8 鋳造用砂型
9 砂型の応用
10 鋳造用金型
11 ゴム成形用金型
12 プラスチック用圧縮成形金型
13 プラスチック用射出成形金型
14 ブロー成形金型
15 ガラス用金型
16 真空成形金型・圧空成形金型
17 押し出し成形金型
第3章 金型製作前の作業
1 自動車の金型ができるまで
2 エコな自動車をつくるには
3 自動車の2大金型
4 自動車の工程設計
5 自動車のモデル設計
6 自動車の金型設計
7 バーチャルプラント
8 樹脂金型のプロセス
9 デザインフェーズ
10 金型構想
11 成形プロセス
第4章 金型製作を支えるCAD/CAM
1 CADとは
2 金型製作のプロセス例① (プラスチック用金型)
3 金型製作のプロセス例② (プラスチック用金型)
4 金型製作のプロセス例③ (プラスチック用金型)
5 金型製作のプロセス例④ (プラスチック用金型)
6 CAMとは(マシニングセンタ用CAMの例)
第5章 金型製作
1 金型はどうやってつくるのか①
2 金型はどうやってつくるのか②
3 切削加工の基礎
4 切削条件の要素
5 NC加工とその特徴
6 マシニングセンタによる金型加工
7 放電加工による金型つくり
8 ワイヤカット放電加工
9 砥石による加工
10 レーザによる金型加工
第6章 金型材料
1 鉄と鋼①
2 鉄と鋼②
3 金型材料の製造
4 金型材料の選び方
5 プラスチック成形用工具鋼
6 プラスチック成形用ステンレス鋼
7 表面処理と溶接
8 冷間用工具鋼
9 粉末冷間用工具鋼
10 熱間用工具鋼
11 ダイカスト用金型の熱疲労と溶損
12 熱間用工具鋼の熱処理技術
13 鍛造用工具鋼
14 表面処理・改質技術
第7章 今後の金型技術
1 金型事情あれこれ① これからの金型技術
2 金型事情あれこれ② バイオプラスチック
3 金型に使用される新技術① ホットランナー
4 金型に使用される新技術② 樹脂圧力センサと樹脂温度センサ
5 金型に使用される新技術③ 超臨界微細発砲成形
用語索引
コラム|目次
世界の金型事情が分かる見本市
究極の加工:減らない工具
金型の自動化
ラピッド・プロトタイピング(Rapid Prototyping)
これからの金型加工:多軸マシニングセンタによる金型加工
金型の表面処理技術:DLCコーティング金型
トコトンやさしい金型の本 (B&Tブックス 今日からモノ知りシリーズ)
はじめに
金型は現在の工業を支えている非常に重要なものです。本文でも詳しく述べてありますが、金型がなくては自動車も、テレビも作れません。
たとえ作れても値段は数十倍から数百倍になり、品質も不安定になると思われます。このように重要な金型ですが、一般の人が金型を知る機会は少なく、見たことがない人も大勢いると思います。学校でもほとんど教えておらず勉強をした人もほとんどいないでしょう。パソコンなどのように専門書は一般の本屋さんでも見かけず、個人で勉強をすることもないでしょう。
金型製作技術の向上には世界中の国々が力を入れていますが、日本は国や学校があまり熱心ではありません。このため日本の金型技術は大部分が中小企業を中心とする、企業の中で努力をして進歩をし、世界のトップレベルを維持してきています。
金型は需要先の産業を支えるだけでなく、金型とその技術も輸出されており、海外に指導に行っている人も大勢います。逆に日本に金型の勉強に来ている人もいます。
これまでの金型製作は、企業ごとのノウハウが多く、人も多くの経験と熟練を必要としていました。しかし現在はコンピュータを使った設計方法(CAD)や熟練した腕がなくても容易に加工できるNC(数値制御)工作機械およびCAM(コンピュータによる製造)があります。これらを活用することで、コンピュータゲームやパソコンを使うのと同じように、金型の設計や加工ができるようになりました。もちろん女性の金型設計者や金型製作者も増えています。
金型の製作は一人ひとりの創造性を生かせること、モノづくりの面白さが溢れていること、これからも発展の余地が大きいこと、世界的に職業として優遇されていることなどさまざまな魅力があります。金型はこれからもさらに製品の高精度・高品質化、小型化と高性能化などのニーズに応えるように進歩と発展を続けることと思われます。
これを機会にぜひ金型に興味を持ってください。身の回りには金型で作ったものが溢れていると思います。
2007年1月
吉田 弘美
トコトンやさしい金型の本 目次
はじめに
第1章 いろいろな型と金型について
1 もしも金型がなかったら「現在の生活は金型があって成り立っている」
2 金型以外のいろいろな「型」「身の回りのさまざまな型とその種類」
3 金型とほかの型との違い「さまざまな型の材質とその用途」
4 型を使うのはなぜ?「モノづくりの進歩と型の関わり」
5 型と金型の歴史「古代文明の時代にも型はあった」
6 たったひとつの製品を作るための型「製品をひとつ作ったら、壊してしまう型がある」
7 金型で何ができるの?「金型は専門の工場で大活躍をしている」
8 日本で最初に作られた多量生産用の金型「お金(硬貨)の作り方は、明治時代に変わった」
9 製品素材の変化と金型「製品の材料が変わると型も変わる」
第2章 金型ってどういうもの?
10 金型はどこでどのように作っているの?「金型はいろいろな会社で作られている」
11 金型はどこで誰が使っているの?「部品を作る工場で、専用の機械に付けて使う」
12 金型なぜお店で売っていないの?「金型を店で買う人はなく、店では売れない」
13 金型を使うと精度の高いものができる「金型は製品の精度より高い精度で作る」
14 自動車は金型でできている「自動車の部品で金型を使わないものは、非常に少ない」
15 電器・電子機器と金型「使用する部品の変化が激しい」
16 厨房機器および食器と金型「台所にはプレス加工品が多い」
17 文房具、雑貨などと金型「なぜ百円ショップの製品は、こんなに安いの」
18 船、鉄道車両、航空機などの輸送機と金型「航空機にも金型で作った製品が詰まっている」
19 金型の種類別の生産量と金額「金型は種類によって値段が大きく変わる」
20 金型製作者に必要な技術と技能「金型製作者はいろいろな専門の知識と経験が必要」
第3章 金型の種類と特徴
21 穴明けパンチを見ればプレス加工用金型が分かる「両方とも同じ原理と構造になっている」
22 ハンマーから進化した鍛造用金型「村の鍛冶屋は鍛造と鍛造型のルーツ」
23 鯛焼きとプラスチック成形型「鯛焼き用の型はプラスチック成形型に似ている」
24 ゴム風船と同じように膨らませて作る金型「入り口より奥が大きい容器を作る」
25 金型の経済性(金型を作ったほうが得かどうか)「金型を使う場合、金型製作費がかかる」26 金型にはダイとモールドのグループがある「多くの工程と金型を使うダイと、一発成形のモールド」
27 プレス加工用金型の機能と構造「加工以外にもさまざまな役割がある」
28 プレス加工用金型の種類と特徴「プレス加工法には五種類の方法と金型がある」
29 プレス金型を使った製品の生産「プレス機械その他との共同作業で生産をする」
30 鍛造用金型の構造と特徴「鍛造用金型は、強くて頑丈」
31 プラスチック成形用金型の機能と構造「溶かした材料を金型の中に押し込んで成形する」
32 プラスチックの射出成形と金型「射出成形機と金型の共同作業で製品を作る」
33 ダイカストとダイカスト型「低い温度で溶ける金属材料を鋳造する」
34 ゴムの成形と金型「剛性ゴムを作るための装置と金型との役割」
第4章 金型の製作工程
35 金型ができるまでの工程「金型はそのつど設計し、多くの工程を経て作られる」
36 金型に使われている材料「金型に使われる材料は特殊鋼が多い」
37 金型を作るための機械「「機械を作る機械」と言われる工作機械で加工をする」
38 市販されている金型用の部品「金型部品には購入して使うものが多くある」
39 金型を作るためのコンピュータシステム「設計にも機械加工にもコンピュータが使われている」
第5章 金型設計
40 金型の仕様の決定「金型は仕様に合わせて作られる」
41 金型設計の内容と手順「金型の種類とCADの使い方」
42 金型図面の書き方と見方「金型は投影法の三角法で書く」
43 コンピュータで図面を書く「CADを使えば、製図道具は必要ない」
44 CADで金型図面を書く例「設計のポイントは、データベースの活用」
45 組立図の作成「平面図と断面図の表現の方法」
46 プレス金型設計の事例「平面図、断面図および部品表」
47 プラスチック成形型の設計「製品形状と材料の通路の組み合わせが重要」
48 金型の機能を部品に展開する「金型全体の機能はそれぞれの部品が担当する」
49 金型部品の設計事例「部品図は部品ごとに1枚ずつ作る」
第6章 金型部品の加工
50 加工方法と金型部品「使用する機械と刃物」
51 金型部品の熱処理「熱処理で鋼はたくましく変身する」
52 金型部品の切削加工「切削加工は刃物で少しずつ削る」
53 マシニングセンタでの金型部品の加工「マシニングセンタは金型加工の万能選手」
54 金型部品の研削加工「研削は砥石が刃物であり、これで削る」
55 放電加工による金型部品の加工「放電加工は小さな雷をくり返す」
56 金型部品の加工工程①(平板部品)「金型は平板の加工が多い」
57 金型部品の加工工程②(小物ブロック状部品)「小物部品は形状も加工内容もさまざま」
58 金型部品の加工工程③(円筒形の部品)「円筒形の部品は標準部品が多い」
第7章 金型の仕上げと組立、その他
59 経験と熟練の仕上げ作業「さまざまな作業の多くは手工具で行う」
60 宝石と金型はみがけば光る(みがき作業)「みがきで金型のできばえが大きく変わる」
61 金型の組立「組立は順序正しく、作業は正確に」
62 金型の組立に必要な工具「正規の工具を正しく使う」
63 組立中の調整および修正作業「調整と修正は最後の手段」
64 組み立てた金型の検査と確認「試し加工ができることの確認」
65 試し加工「金型に問題がないことを保証する」
66 金型の検収と納品「金型の完成と引き渡し」
【コラム】
●まだまだ型はある
●金型は見えにくい
●金型は種類で大きく変わる
●金型作りは素晴らしい
●金型設計とアナログ情報の壁
●金型加工は道具で変わる
●金型の何でも屋さん
参考文献
索引
金型設計者1年目の教科書
はじめに
自分は金型設計会社の2代目です。今から約10年前に父の会社に入りました。
学生時代は化学を専攻していたこともあって、入社当時は金型のかの字も知らないド素人からのスタートでした。勉強のために金型関係の書籍をいろいろと読み漁りました。ところが、自分の理解力がないせいでしょうか、どの本を読んでもなかなか頭にすんなりとは入ってきませんでした。
今回、金型設計を一から学ぶ人のための本の企画をいただき、そんな当時の自分だったらどのような本が読みたかったのか、そのようなことを考えながら本書を執筆しました。
自動車、家電、文具、雑貨など、世に出回っているプラスチック製品の多くは射出成形という手法で成形された製品であり、射出成形をするためには金型が必要になります。
射出成形金型そのものが表に出ることはめったにありませんが、産業にとって非常に重要な分野といえます。
そんな重要な分野である金型の設計について限りなく内容を噛み砕いて、正真正銘一から金型を学ぶ人が理解できるような内容をこころがけました。
本書がこれから金型設計を学ぶ人のお役に立てば幸いです。
なお、この本を執筆するにあたり、(株)ミヨシ、アイティメディア(株)MONOist編集部をはじめ、非常に多くの方からご助言をいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。
2014年3月
落合 孝明
目次
はじめに
序章 金型設計という仕事
0-1 さあ、新製品を作ろう!
0-2 そもそも金型って何だ?−金型の種類と役割
0-3 製品ができるまでと金型設計者の役割
1章 射出成形金型って何?
1-1 金型にはどのくらいの力がかかるのか?
1-2 2プレート金型のしくみ
1-3 2プレート金型の動作
1-4 3プレート金型のしくみと動作
2章 用途にあった樹脂材料を選定する
2-1 樹脂の種類を把握しよう
3章 金型を考慮した製品設計とは?
3-1 試作品と量産品の違いは?−製品設計における注意点
3-2 抜き勾配
3-3 肉厚
3-4 パーティングライン
3-5 アンダーカット
3-6 角R
3-7 公差
4章 はじめての金型設計
4-1 最低限これだけは確認してから設計する−金型設計前の確認事項
4-2 樹脂の通り道を設計する
4-3 製品の分割位置を設計する
4-4 金型の温度調節を設計する
4-5 製品を取り出すための設計をする
4-6 普通では抜けない形状を処理する
4-7 その他の部品を設計する
4-8 最後に完成した図面をチェックしてみる
5章 設計者のための加工の基礎知識
5-1 その形状は金型で加工できるのか?
5-2 工作機械の種類
6章 金型が完成、いよいよ成形
6-1 ついに量産へ
6-2 不具合対策について検討してみよう
索引
参考文献
登場人物紹介
滑川(なめりかわ)
モノづくり系ベンチャー企業に勤める新人デザイナー
金型メーカー「エム金型」
落守(おちもり)
金型メーカー「エム金型|に勤める金型設計者。10年目の中堅
木杉(きすぎ)
新人金型設計者。落守の部下
剛山(ごうやま)
金型メーカー「エム金型」に勤めるベテラン成形技術者