システムアーキテクト 合格論文の書き方・事例集 第5版 (情報処理技術者試験対策書)
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はじめに
筆者が仕事として初めて文章を書いたのは,1980年のことです。
当時はワープロなどもまだ普及しておらず,手書きの文章を何度も書き直して上司にレビューをお願いしました。書類を見たときの上司の顔,短い文章にもかかわらずコメントするまでの時間の長さは,今でも忘れられません。
情報処理技術者試験対策のセミナーの案内を見て, システム監査技術者試験の受験勉強を始めたのは,今から30年ほど前です。添削用の論文を 1 本書けばよいのに3本も書いて講師を困らせていました。
その後,ワープロが普及し,「おまえは字が汚いから書類はワープロで書け」と上司に言われ,システム本部に1台しかないパソコンを占有して仕事をしていました。
日本語を知らない,あるいは,字が汚いにもかかわらず,論文対策の講義や, 論文の書き方の本を出版するという仕事がいただけるのは,情報処理技術者試験のおかげです。試験勉強は,情報処理に関する能力の向上にとどまらず,日本語力や他人を納得させる力も併わせて向上させ,社外における人間関係も広がりました。このような効果は筆者だけでなく,他の受験者にもいえます。毎年,情報処理技術者試験をきっかけにして勉強が好きになり,上級の試験に合格した方からメールをいただいています。
近年,情報処理技術者試験の受験者数が低下しています。この試験によって社会に出てからの勉強の楽しさを知った者にとって,この傾向は残念なことです。情報処理技術者試験の受験者数の減少傾向については,筆者の力の及ぶところではありませんが,論述式試験のもつイメージの敷居を低くすることによって,既に情報処理技術者試験に合格している方に,更に上級の試験にチャレンジしてもらいたいと考え,この本を執筆しています。
上級の情報処理技術者試験の合格者が増え,合格者が組織で活躍することによって,必ずこの試験が見直され,受験者数の減少傾向が反転します。読者と情報処理技術者試験に携わる全ての人が幸せになることを願っています。
字がきれいに書けない方も安心してください。筆者の講師経験から100.人中98人は,筆者よりも読みやすい字を書きます。ワープロを使って手書きで文章を書くことに慣れていない方も安心してください。この本は作文を書くことから始めています。この本に書かれた訓練を繰り返すことによって,合格レベルの論文が書けるようになります。
この本は,通勤時などの電車内での学習を考慮し,必要な章だけを切り離して読んでも支障がないように,重要なポイントを各章で繰返し書いています。また,本試験問題に対応した,専門の先生方による論文事例を収録しています。一つの問題に対して専門知識や経験をどのように表現すればよいか,ぜひ参考にしてください。
この本を出版するに当たって,論文事例を執筆してくださった先生方,並びにアイテックIT人材教育研究部の皆様に感謝します。
2018年5月吉日
岡山昌二
目次
はじめに
第1部 合格論文の書き方
第1章 本書を手にしたら読んでみる
1.1 効果を出すことに急いでいる方は読んでみる
1.2 大人の学習を後押しする理由をもってみる
1.3 情報処理技術者試験のマイナスイメージを払拭してみる
1.4 “小論文なんて書けない”について考えてみる
1.5 本書の第一印象を変えてみる
第2章 論述式試験を突破する
2.1 論述式試験とは何なのか
2.2 採点者を意識して論述する
2.3 論述式試験突破に必要な要素を明らかにする
2.4 論文を評価する
第3章 基礎編
3.1 五つの訓練で論文が書けるようになる
3.2 【訓練1】「作文」や「論文ふう」の文章を書く
3.3 【訓練2】 トピックを詳細化して段落にする
第4章 論文を作成する際の約束ごとを確認する
4.1 試験で指示された約束ごとを確認する
4.2 全試験区分に共通する論述の約束ごとを確認する
第5章 論文を設計して書く演習をする
5.1 【訓練3】問題文にトピックを書き込む
5.2 【訓練4】ワークシートに記入する
5.3 【訓練5】ワークシートを基に論述する
第6章 書き直してみる
6.1 添削を受けて論文を書き直す
第7章 午後I問題を使って論文を書いてみる
7.1 問題の出題趣旨を確認する
7.2 論述式問題を確認する
7.3 論文ネタの収集演習をする
7.4 論文ネタを確認する
第8章 本試験に備える
8.1 2時間で論述を終了させるために決めておくこと
8.2 試験前日にすること
8.3 本試験中に困ったときにすること
第9章 受験者の問題を解消する
9.1 学習を始めるに当たっての不明な点を解消する
9.2 学習中の問題を解消する
9.3 試験前の問題を解消する
9.4 不合格への対策を講じる
第2章 論文事例
第1章 要件定義
平成29年度 問1
非機能要件を定義するプロセスについて
論文事例1:岡山昌
論文事例2:北條 武
平成28年度 問1
業務要件の優先順位付けについて
論文事例1:岡山 昌二
論文事例2:長嶋 仁
平成26年度 問1
業務プロセスの見直しにおける情報システムの活用について
論文事例1:岡山 昌二
論文事例2:長嶋 仁
平成25年度 問1
要求を実現する上での問題を解消するための業務部門への 提案について
論文事例1:岡山昌二
論文事例2:長嶋 仁
第2章 開発(機能の設計)
平成29年度 問2
柔軟性をもたせた機能の設計について
論文事例1:鈴木久
論文事例2:満川 一彦
平成 27 年度 問1
システム方式設計について
論文事例1:岡山 昌
論文事例2:鈴木久
平成27年度 問2
業務の課題に対応するための業務機能の変更又は追加について
論文事例1:岡山 昌二
論文事例2:満川 一彦
平成25年度 問2
設計内容の説明責任について
論文事例1:岡山 昌二
論文事例2:満川一彦
第3章 開発(ソフトウェアの設計)
平成 26年度 問2
データ交換を利用する情報システムの設計について
論文事例1:岡山昌二
論文事例2:満川 一彦
平成 24年度 問1
業務の変化を見込んだソフトウェア構造の設計について
論文事例1:満川 一彦
論文事例2:長嶋 仁
平成 24年度 問2
障害時にもサービスを継続させる業務ソフトウェアの設計について
論文事例1:岡山昌二
論文事例2:満川一彦
第4章 システムテスト・システム移行
平成 28年度 問2
情報システムの移行方法について
論文事例1:岡山 昌二
論文事例2:鈴木久
第5章 組込みシステム
平成29年度 問3
IoTの進展と組込みシステムのセキュリティ対応について
論文事例1:長嶋仁
論文事例2:北條武
平成 28年度 問3
組込みシステムにおけるオープンソースソフトウェアの導入について
論文事例1:北條武
論文事例2:満川 一彦
平成 27 年度 問3
組込みシステム製品を構築する際のモジュール間インタフェースの仕様決定について
論文事例1:北條武
論文事例2:満川 一彦
平成26年度 問3
組込みシステムの開発における機能分割について
論文事例1:鈴木久
論文事例2:樺沢祐二
平成 25年度 問3
組込みシステムの開発における信頼性設計について
論文事例1:鈴木久
論文事例2:樺沢祐二
平成 24年度 問3
組込みシステムの開発プロセスモデルについて
論文事例1:岡山 昌二
論文事例2:樺沢祐二
事例作成者の紹介と一言アドバイス
参考文献
巻末ワークシート