通販エキスパート検定1級公式テキストEx13




はじめに

昨今の通販ビジネスほど先端的なマーケティング・キーワードが頻出する業界も珍しいのではないだろうか?オムニチャネル、ビッグ・データ、データ・ドリブン、顧客体験、カスタマー・ジャーニーあたりがすぐ頭に浮かぶ。

その背景には、もちろんスマートフォンを始めとするインターネット環境の普及と進化があるが、それと同時に顧客からダイレクトレスポンスが得られる通販の特性が、常に「テクノロジー進化」を「顧客コミュニケーション進化」に繋げて行くマインドを培ってきたからでもある。

一方で、マネジメントの複雑化は否めない。オムニチャネルを例にとってみても、シングルチャネル→マルチチャネル→クロスチャネル→オムニチャネルという進化のプロセスで、顧客データの一元化などの「データマネジメント」、商品企画・在庫管理などの「オペレーションマネジメント」、チャネルやブランドを跨いだ「組織・人材マネジメント」など、部門間連携が前提となるマネジメント課題が目白押しである。

また、カタログ通販由来ではない、EC専業のダイレクト・マーケティング企業、楽天などのネットモール、大手食品会社などのメーカー型通販、大手スーパーが運営するネットスーパーなどは、従来の通販愛好者以外の層への通販市場拡大の原動力となった一方、従来型通販企業にとって深刻な競合が生じている。

さらに、セブン&アイによるニッセンの完全子会社化など、店舗小売業界による通販企業の買収も、オムニチャネル時代の典型的な業界再編の動きと言える。

以上のような動きを、消費者の視点で見ると、選択肢が多様化し利便性が向上した一方で、集約化された顧客情報の漏洩やプライバシーに関する懸念も大きくなって来ている。今後の通販企業における顧客との関係構築においては、このような顧客の懸念について責任ある回答を提示する必要があるだろう。

この「通販エキスパート検定・マネジメント編」は、以上のような環境変化の下で通販ビジネスに携わる、主に部課長級のマネジャーの方々へ、一般的なマネジャーの役割と共に、「通販固有のマネジメント課題」について一定の指針となるものを提供することを意図して編集されている。今後更に変化が激しくなるであろう通販ビジネス業界において、マネジャー層の方々の意思決定やリスク対応の一助となれば幸いである。

通販エキスパート検定委員会

通販エキスパート検定委員会 (著)
出版社: 一般社団法人通販エキスパート協会 (2019/8/23)、出典:出版社HP

目次

はじめに

第1章 通販ビジネスにおけるマネジメントの役割

1-1 通販ビジネスにおける戦略策定の特徴
1-2 マネジメントの側面から見た通販ビジネスの特徴
練習問題

第2章 通販ビジネスの経営戦略

2-1 経営戦略のPDCA
2-2 KPIを設定する意味
練習問題

第3章 顧客マネジメント

3-1 顧客中心主義
3-2 顧客情報の収集と管理
3-3 顧客資産価値の把握
練習問題

第4章 業務オペレーションマネジメント

4-1 通販におけるオペレーションズ・マネジメント
練習問題

第5章 財務マネジメント

5-1 マーケティングと財務の融合
5-2 各種投資に対する効果測定指標の設定と管理
練習問題

第6章 組織変革・人材育成マネジメント

6-1 組織変革とマネジャーの役割
6-2 通販人材育成とマネジャーの役割
6-3 パートナー企業との関係構築と顧客満足
練習問題

第7章 リスクマネジメント

7-1 通販ビジネスにおけるリーガルリスク(法規制)
7-1 リスク対応型の組織づくり

練習問題
参考文献
試験ガイド・奥付

通販エキスパート検定委員会 (著)
出版社: 一般社団法人通販エキスパート協会 (2019/8/23)、出典:出版社HP