2級筆記試験問題と解答例―2019年度版実題集(2014年秋~2018年春実施分)JIS Z 3410(ISO 14731)/WES 8103




まえがき

WES 8103による溶接技術者資格認定制度が開始して今年で40年になります。平成13年にISO 3834およびISO 14731がJIS 化(JIS Z 3400およびJIS Z 3410の制定)されたのに伴い、名称も溶接技術者から「溶接管理技術者」に変わりました。

いまやこのJIS Z 3410 (ISO 14731) /WES8103資格は建築鉄骨、橋梁、圧力容器、造船、海洋構造物、重機械、化学プラント、発電設備等エネルギー施設などあらゆる産業分野における溶接関係者必須のものとなっています。最近では工場認証あるいは官公庁における工事発注の際の要求事項として、 WES 8103 認証者の保有や常駐が要請されるケースも増えてきており、まさに社会に完全に定着した溶接資格といえるでしょう。

毎年春と秋の年2回、 JIS Z 3410 (ISO 14731)/WES8103に基づく「溶接管理技術者評価試験」が行われていますが、日本溶接協会の機関誌「溶接技術」では、この評価試験が行われるつど、実際に出題された筆記試験問題と解答例を速報の形で掲載していますが、本書は【2級】試験問題をとりまとめ全一冊にしたものです。

過去に出題された問題を知り、その対策を練ることは合格へのより近道となります。本書は実題集ということで、受験者にとっては評価試験の傾向を知る絶好の手引き書となっています。

この実題集によって一人でも多くの合格者が誕生し、全国各地で溶接管理技術者資格をもつ方々が活躍することを願ってやみません。

平成30年12月
産報出版

目次

2級試験問題

平成30年6月3日出題 実題問題
解答例

平成29年11月12日出題 実題問題
解答例

平成29年6月4日出題 実題問題
解答例

平成28年11月6日出題 実題問題
解答例

平成28年6月5日出題 実題問題
解答例

平成27年11月1日出題 実題問題
解答例

平成27年6月7日出題 実題問題
解答例

平成 26年11月2日出題 実題問題
解答例

平成30年6月3日出題
2級試験問題

次の設問【1】~【5】は、溶接の特徴・用語について述べている。正しいものを1つ選び、マークシートの解答欄の該当箇所にマークせよ。

【1】 ボルトによる機械的接合法と比較して、アーク溶接による接合法の長所はどれか。
a 工作に伴う変形や残留応力の発生が少ない。
b 工作に伴う材料の材質変化が生じにくい。
c 継手効率が高く、水密性・気密性に優れている。
d 継手の健全性が目視のみで判定できる。

【2】 ガスシールドアーク溶接に分類されるのはどれか。
a 被覆アーク溶接
b サブマージアーク溶接
c ミグ溶接
d ガス溶接

【3】 非溶極式アーク溶接に分類されるのはどれか。
a ミグ溶接
b プラズマアーク溶接
c エレクトロガスアーク溶接
d サブマージアーク溶接

【4】光エネルギーを加熱に利用した接合方法はどれか。
a 電子ビーム溶接
b 拡散接合
c レーザ溶接
d 誘導加熱ろう付

【5】 アルミニウム合金の溶接に用いられる非溶極式溶接法はどれか。
a マグ溶接
b ミグ溶接
c ティグ溶接
d エレクトロガスアーク溶接

次の設問【6】~【10】は、溶接アークの性質について述べている。正しいものを 1つ選び、 マークシートの解答欄の該当箇所にマークせよ。

【6】 アーク電圧を構成する組合せはどれか。
a アーク柱電圧、アーク長、アーク電流
b アーク柱電圧、陽極降下電圧、陰極降下電圧
c アーク長、陽極降下電圧、陰極降下電圧
d ケーブル降下電圧、陽極降下電圧、陰極降下電圧

【7】 溶接電流が一定の場合、アーク電圧とアーク長の関係はどれか。
a ほぼ比例する
b ほぼ反比例する
c アーク長が変化してもアーク電圧は変化しない
d 無関係に変化する

【8】 アークの電極軸延長方向に発生しようとする性質は何と呼ばれているか。
a アークの硬直性
b アークの直進性
c アークの慣性
d アークの磁気吹き

【9】 アーク柱の中心部で生じる軸方向の圧力差によって発生する流れはどれか。
a 磁気吹き
b 電磁対流
c プラズマ気流
d アーク流

【10】 アークの磁気吹きに最も大きく関係するのはどれか。
a アーク電圧
b 溶接電流
c 溶接速度
d 溶接入熱

次の設問【11】~【15】は、ソリッドワイヤを用いるガスシールドアーク溶接の溶滴移行形態について述べている。正しいものを1つ選び、マークシートの解答欄の該当箇所にマークせよ。

【11】 シールドガスに混合ガス (80%アルゴン+ 20%炭酸ガス)を用いるマグ溶接の小電流、低電圧域での溶滴移行形態はどれか。
a スプレー移行
b グロビュール移行
c 短絡移行
d 爆発移行

【12】 シールドガスに混合ガス(80% アルゴン + 20%炭酸ガス)を用いるマグ溶接の大電流、高電圧域での溶滴移行形態はどれか。
a スプレー移行
b グロビュール移行
c 短絡移行
d 爆発移行

【13】 シールドガスに100%炭酸ガスを用いるマグ溶接の大電流、高電圧域での溶滴移行形態はどれか。
a スプレー移行
b グロビュール移行
c 短絡移行
d 爆発移行

【14】 溶滴がグロビュール移行からスプレー移行に変わる電流値を何というか。
a 短絡電流
b平均電流
c 定格電流
d 臨界電流

【15】 パルスマグ溶接の溶滴移行形態はどれか。
a スプレー移行
bグロビュール移行
c 壁面移行
d 爆発移行

次の設問【16】~【20】は、ティグ溶接について述べている。正しいものを1つ選び、 マークシートの解答欄の該当箇所にマークせよ。

【16】電極に用いる材料はどれか。
a銅
b ハフニウム
c タングステン
d アルミニウム

【17】 ティグ溶接に用いる標準的なシールドガスはどれか。
a 酸素
b 炭酸ガス
c アルゴン
d アルゴンと酸素の混合ガス

【18】 ティグ溶接の短所はどれか。
a 溶着速度が遅い
b 溶接金属の清浄度が低い
c スパッタ発生が多い
d 溶着量と入熱を独立に制御できない

【19】母材に対する入熱制御効果があるのはどれか。
a 高周波パルスティグ溶接
b 中周波パルスティグ溶接
c 低周波パルスティグ溶接
d 電磁波パルスティグ溶接

【20】 ティグアークの最高温度はどの程度か。
a 1,000℃
b 2,000℃
c 5,000℃
d 10,000℃以上

次の設問【21】~【25】 は、切断法について述べている。正しいものを1つ選び、 マークシートの解答欄の該当箇所にマークせよ。

【21】 極厚鋼板(板厚100mm程度)の切断に最も適したものはどれか。
a ガス切断
b プラズマ切断
cレーザ切断
d ウォータジェット切断

【22】 薄板の高速・精密切断に最も適したものはどれか。
a ガス切断
b プラズマ切断
c レーザ切断
d ウォータジェット切断

【23】軟鋼のガス切断で、主として利用されるエネルギーはどれか。
a 電気的エネルギー
b 化学的エネルギー
c 力学的エネルギー
d 光学的エネルギー

【24】 ステンレス鋼のプラズマ切断で、主として利用されるエネルギーはどれか。
a 電気的エネルギー
b 化学的エネルギー
c 力学的エネルギー
d 光学的エネルギー

【25】セラミックスのウォータジェット切断で、主として利用されるエネルギーはどれか。
a 電気的エネルギー
b 化学的エネルギー
c 力学的エネルギー
d 光学的エネルギー

次の設問【26】~【30】は、溶接ロボットおよび溶接用センサについて述べている。正しいものを1つ選び、 マークシートの解答欄の該当箇所にマークせよ。

【26】最も多く用いられているアーク溶接ロボットの動作機構はどれか。
a 円筒座標形
b 極座標形
c 多関節形
d パラレルリンク形

【27】 ロボットを動かすことなく、コンピュータ上で動作を教えることを何というか。
a インラインティーチング
b オンラインティーチングー
c オフラインティーチング
d コンピュータティーチング

【28】 アーク溶接ロボットに用いられるワイヤタッチセンサの機能はどれか。
a 溶接速度を制御する
b 溶接電流を一定にする
cアーク長を一定にする
d 部材位置を検出する

【29】 アーク溶接ロボットに用いられるアークセンサの機能はどれか。
a 溶接開始位置を認識する
b 溶接線を追随する
c ビード幅を一定にする
d 電撃を防止する

【30】 アークセンサで利用しているものはどれか。
a 溶接速度
b ワイヤ送給速度
c 溶接電流
d 短絡回数

次の設問【31】~【35】は、材質と溶接電源の特性および極性の一般的な組み合わせについて述べている。正しいものを1つ選び、マークシートの解答欄の該当箇所にマークせよ。

【31】炭素鋼を被覆アーク溶接する場合の、溶接電源の特性と極性の組合せはどれか。
a 定電圧特性と直流・電極プラス (+)
b 定電圧特性と直流・電極マイナス(-)
c 上昇特性と交流
d 垂下特性と交流

【32】炭素鋼をマグ溶接する場合に多用される、 溶接電源の特性と極性の組合せはどれか。
a 定電圧特性と直流・電極プラス (+)
b 定電圧特性と直流・電極マイナス(-)
c 上昇特性と交流
d 垂下特性と交流

【33】ステンレス鋼をティグ溶接する場合の、溶接電源の特性と極性の組合せはどれか。
a 定電圧特性と直流・電極プラス(+)
b 定電圧特性と直流・電極マイナス(-)
c 定電流特性と直流・電極プラス(+)
d 定電流特性と直流・電極マイナス(-)

【34】 ステンレス鋼をマグ溶接する場合の、溶接電源の特性と極性の組合せはどれか。
a 定電圧特性と直流・電極プラス (+)
b 定電圧特性と直流・電極マイナス(-)
c 垂下特性と交流
d 定電流特性と直流・電極マイナス(-)

【35】 アルミニウム合金をティグ溶接する場合の、溶接電源の特性と極性の組合せはどれか。
a 定電流特性と直流・電極プラス(+)
b 定電流特性と直流・電極マイナス(-)
c 垂下特性と交流
d 定電圧特性と直流・電極プラス (+)

次の設問【36】~【40】は溶接機器の使用率について述べている。正しいものを1 の選び、 マークシートの解答欄の該当箇所にマークせよ。

【36】 JIS C 9300-1 で定義されている定格使用率はどれか。
a 定格出力電流を通電した時間の1分間に対する比の百分率
b 定格出力電流を通電した時間の10分間に対する比の百分率
c定格出力電流を通電した時間の30分間に対する比の百分率
d 定格出力電流を通電した時間の1時間に対する比の百分率

【37】 許容使用率の正しい式はどれか。
a (定格入力電流/使用溶接電流)× 定格使用率
b (定格入力電流/使用溶接電流)×定格使用率
c (定格出力電流/使用溶接電流) × 定格使用率
d (定格出力電流/使用溶接電流)×定格使用率

【38】 定格出力電流300A、定格使用率40%の溶接機で、溶接電流 200Aの溶接を行う場合の許容使用率はどれか。
a 20%
b 40%
c 60%
d 90%

【39】 定格出力電流300 A、 定格使用率40%のアーク溶接機を用いて連続溶接を行う場合、使用できる最大溶接電流はどれか。(必要であれば、 0.4 = 0.6 として計算せよ)
a 120A
b 180A
c200A
d300A

【40】 定格出力電流400A、定格使用率100%のインバータ制御アーク溶接機についての正しい記述はどれか。
a 使用率が50%以下であれば、400A以上の溶接電流でも問題なく使用できる
b 短時間であれば、400 A以上の溶接電流でも溶接機損傷の恐れは全くない
c どのような溶接電流値でも、10分以上の溶接には適用できない
d 溶接電流が400 A 以下であれば、10分を超える溶接にも適用できる。

次の設問 【41】~【45】は炭素鋼について述べている。正しいものを1つ選び、 マークシートの解答欄の該当箇所にマークせよ。

【41】 低炭素鋼の炭素含有量の範囲はどれか。
a 0.7~1.2%
b0.5~0.7%
c0.3~0.5%
d002~0.3%

【42】 炭素含有量0.2%の鋼を1000°Cに加熱・保持したときに現れる組織は何か。
a フェライト
b パーライト
c オーステナイト
d マルテンサイト

【43】炭素含有量0.2%の鋼を1000°Cから徐冷したときに室温で観察される組織は何か。
a フェライトとパーライト
b オーステナイトとセメンタイト
c オーステナイトとフェライト
d マルテンサイトとオーステナイト

【44】炭素含有量0.2%の鋼を1000°Cから水冷したときに室温で観察される組織は何というか。
a フェライト
bパーライト
cオーステナイト
d マルテンサイト

【45】 炭素鋼におけるパーライト組織はどれか。
a フェライトとセメンタイトの混合組織
b オーステナイトとフェライトの混合組織
c オーステナイトとセメンタイトの混合組織
d マルテンサイトとフェライトの混合組織

次の設問【461~1501は鋼の熱処理について述べている。正しいものを1つ選 び、マークシートの解答欄の該当箇所にマークせよ。

【46】焼ならしとは、どのような熱処理か。
a 硬さや強度を増すため、オーステナイト温度域から急冷する処理
b 軟化などを目的に、 オーステナイト温度域から炉中で徐冷する処理
c 組織を微細化するために、オーステナイト温度域から空冷する処理
d 600°C程度の温度に再加熱した後、空冷する処理

【47】焼なまし(焼鈍)とは、どのような熱処理か。
a 硬さや強度を増すため、オーステナイト温度域から急冷する処理
b軟化などを目的に、オーステナイト温度域から炉中で徐冷する処理
c 組織を微細化するために、オーステナイト温度域から空冷する処理
d 600°C程度の温度に再加熱した後、空冷する処理

【48】 焼戻しとは、どのような処理か。
a 硬さや強度を増すため、オーステナイト温度域から急冷する処理
b 軟化などを目的に、 オーステナイト温度域から炉中で徐冷する処理
c 組織を微細化するために、オーステナイト温度域から空冷する処理
d 600°C程度の温度に再加熱した後、空冷する処理

【49】 焼入れとは、どのような熱処理か。
a 硬さや強度を増すため、オーステナイト温度域から急冷する処理
b 軟化などを目的に、オーステナイト温度域から炉中で徐冷する処理
c 組織を微細化するために、オーステナイト温度域から空冷する処理
d 600℃程度の温度に再加熱した後、空冷する処理

【50】 加工熱処理(熱加工制御法)とは、どのような処理か。
a 炭化物などの析出物や時効硬化相を固溶させ、急冷する処理
b ステンレス鋼などで炭素を安定化する目的で行われる処理
c 圧延温度や圧下量を適正に制御する圧延を行い、加速冷却する処理
d 焼入れ後に、さらに-40°C以下に冷却し、 マルテンサイトにする処理

次の設問【51】~【55】は鋼材規格について述べている。正しいものを1つ選び、 マークシートの解答欄の該当箇所にマークせよ。

【51】一般構造用圧延鋼材 SS400などで、記号のあとに続く数字が表すものはどれか。
a 疲れ強さ
b降伏点または耐力
c 引張強さ
d 硬さ

【52】 一般構造用圧延鋼材 SS400の化学成分の規定として、正しいものはどれか。
a 炭素要領(C)の範囲が規定されている
b 溶接割れ感受性組成(Pau)の上限値が規定されている
c PおよびS量の上限値が規定されている
d 化学成分についての規定はない。

【53】板厚方向の最小絞り値が規定されている鋼材はどれか。
a SS400
b SM400B
c SM400C
d SN400C

【54] 建築構造用圧延鋼材 SN400Cは降伏比をどのように規定しているか。
a 0.6以下
b 0.6以上
c 0.8以下
d 0.8以上

【55】SS材およびSM材には規定がなく、SN材BおよびC種に規定されているのはどれか。
a 引張強さ
b 伸び
c 降伏点または耐力
d 炭素当量

次の設問【56】~【60】は各種鋼材について述べている。正しいものを1つ選び、 マークシートの解答欄の該当箇所にマークせよ。

【56】 TMCP鋼の製造法はどれか。
a 調質処理
b 熱間圧延