CFA®受験ガイドブック〔レベルI〕【第3版】 学習の手引き&試験のポイント




はしがき

金融は一段と国際化し、加えてデリバティブに代表される金融工学の知識やポートフォリオ理論の理解が実務上不可欠になっている。
CFA(CFA協会認定証券アナリスト)は米国ではすでに確固たる評価を得ており、英、独、スイスといった欧州のほか中国、香港、シンガポール、韓国でも人気が高まっている。これは、ポートフォリオ・マネジメント、債券、株式、米国会計といった知識の体系的習得の証しとしてのCFAが国際的に評価されてきたためであると考えられる。CFAは2013年央現在で世界に11万人存在し、毎年約16万人がこの試験に挑戦している。CFAはファンドマネジャーや証券アナリストといった仕事のみならず、M&A、債券・株式引受け、トレーディング、貸付審査、ストラテジスト等金融のあらゆる分野で活躍している。

CFA試験はレベルIからレベルIIまでの三段階の試験(各6時間)からなり、証券分析、財務会計、計量分析、経済学、ポートフォリオ・マネジメント、倫理規範・職業行為基準等の分野から出題される。試験会場はニューヨーク、ロンドン、東京をはじめとして世界中にまたがっている。2003年からは従来年1回だった試験がレベルIに関しては6月、12月の年2回受験可能となったほか、それまでエッセイと多岐選択式の組合せであったレベルII試験が2004年以降100%多岐選択式になり(レベルII試験のみは依然50%がエッセイ)日本人にとっては一段と身近なものとなった。

CFA試験の合格率は各レベルで40~60%と決して難解な試験ではない。しかしながら、日本語の解説書がほとんど見当たらないうえ、英語による試験であることが障壁となって、日本人にはむずかしい試験だとみられている。この試験はCFA協会指定テキストの独習を前提としてプログラムが組み立てられている。通常は指定テキストと市販のスタディノート(テキストの要約版兼解説書)を読み進んでいく。たしかに、最初は大部の英文テキストを前に勉強方法、勉強ペースがつかめず絶望的な気持ちになる。勉強開始後は適当な日本語の解説書がないために些細なことが理解できず時間を浪費する。さらに大量の英文を読むのが精一杯で記憶に残らない。事実、私自身も悶々とした思いを抱いて試行錯誤を続けた。

たまたま、私がまだCFA受験生であったときに職場の同僚とファイナンス勉強会を始めた。毎週1回昼食時に弁当を食べながらの勉強会であったが、指定テキストとスタディノートをベースに日本語レジュメをつくり、ポートフォリオ理論、債券価格、デュレーション、オプション、バリューアットリスク……といった項目についてディスカッションと問題演習を続けた。幸運にも翌年には勉強会の仲間からレベルI合格者を出し、その後次々とレベルII、IIIの合格者を出すに至った。もちろん参加者の向学心の賜物ではあるがレジュメと問題練習を組み合わせたグループ学習がCFA試験に有効ではないかと考えるに至った。

本書執筆はこうした経験を背景としており、本書の内容もこのときの議論やレジュメをベースとしている。
本書はCFAを目指す人のためのガイドブックで、CFAレベルI試験合格に必要な項目、つまずきやすいポイントについて解説したものである。第I部ではCFAとは何か、勉強の進め方はどうするかを述べ、第II部では計量分析からコーポレートファイナンス、ポートフォリオ・マネジメント、倫理規範・職業行為基準等に至る計10章100余項目の必須項目について記かしている。各項目は重要ポイント、内容解説、例題という構成となっており、執筆にあたっては簡潔なまとめ、重要用語の日英併記、例題を使っての内容理解を心がけた。

この100余項目はCFA試験レベルIの試験範囲の出題範囲にほぼ対応したウェイトづけとなっており主要重要項目をカバーしている。英文の指定テキストやスタディノートを用いて勉強するにあたって本書とともに読み進めばいっそう理解が進むものと自負している。一人ひとりがプロフェッショナルとしての高い能力が求められている時代にあっても本書がCFA試験合格のための一助となれば幸いである。

2007年の改訂以来7年を経て今般再び改訂することとなった。最近の動向を反映し、いくつかの項目を書き加えたほか英文例題を最新のものに差し替えた。

初版、第2版の出版企画から今回の改訂に至るまで多数のご支援、ご助力をいただいた。
石濱圭一氏、福本健一氏、花田信彦氏、伊藤文彦氏には草稿を精読したうえで貴重な助言をいただいた。また本書初版企画当時、執筆を勧めていただいた児玉龍三氏(元三井住友銀行常務取締役米州本部長、前中外製薬取締役副社長)をはじめ三井住友銀行の皆さんにはあらためて心より感謝申し上げる次第である。今回の改訂にあたっても金融財政事情研究会理事の谷川治生氏、出版部の伊藤雄介氏からは変わらぬ励ましをいただいた。この場を借りて心からお礼申し上げる。

2014年 6月
茗荷谷にて
大野 忠士CFA®受験ガイドブック〔レベルI〕【第3版】-学習の手引き&試験のポイント

大野 忠士 (著)
きんざい; 第3版 (2014/10/3)、出典:出版社HP

推薦の言葉

金融証券市場と資産運用業界を襲う国際化の波は、ますます高く、そして速くなっています。投資先市場は多様化し、運用手法も高度化しています。また、日本の金融機関でも海外展開に再び積極的に取り組むところが増えています。こうしたなか、グローバルマーケットに通用するプロの証しであるCFAプログラムに対する評価が高まっています。欧米ではCFAプログラムの高い専門性に対して確固たる評価が確立していますが、中国、インド、香港、シンガポール、韓国などアジアの国々でも投資運用業界におけるデファクト・スタンダードの地位を固めており、ここ数年のCFA受験者数の急拡大に結びついています。

日本では、重要性に比してそのプレゼンスは十分とはいえませんが、高い職業倫理に裏付けられた国際的なプロフェッショナルとしてのCFAチャーターホルダーに対するニーズ、期待は今後ますます高まると予想されています。

CFA協会(CFA Institute)のわが国における認可団体である日本CFA協会(CFAJ)では、1999年の設立以来、会員に向けての教育・研修事業や学生を対象としたCFA Institute Research Challengeに加え、CFAチャーターホルダーの育成に意欲的に取り組んできました。具体的には米ロスアンゼルスアナリスト協会と提携してのインターネット学習講座やCFA®試験向けスタディグループの組成など米国におけるカリキュラムと同じ内容の授業とサポートを日本で提供しています。

試験が英語で実施される以上、こうした英語での受験準備は避けることはできません。しかし、日本語の補助教材があれば、学習の効率が高まることもまた事実です。それだけに、日本語による入門書の重要性を、われわれ自身、痛感しています。

こうしたなか、大野忠士氏が本書を改訂され、最新の試験内容に対応したものとされました。CFAレベルI試験に頻出する重要なポイント、日本人の不得意な分野等を網羅した本書の刊行は、今後のわが国のCFAチャーターホルダーの育成に大きく寄与するものと考えています。知識はありながら英語による受験に躊躇されていた実務家のみならず、これから金融・証券および運用業務を目指す若い人も含め、幅広くCFAプログラムに挑戦していただくための強い味方となるものと思います。本書によってCFAプログラムが日本でもっと普及し、日本の金融投資業界の質的な向上につながることを期待してやみません。
日本CFA協会 会長 瀬尾周一 CFACFA®受験ガイドブック〔レベルI〕【第3版】-学習の手引き&試験のポイント

大野 忠士 (著)
きんざい; 第3版 (2014/10/3)、出典:出版社HP

目次

推薦の言葉
はしがき
第I部受験の手引き
1 CFAとはどういう資格か
2 CFA保持者のプロフィール
3 CFA受験資格と試験の概要、合格率、受験者推移等
4 CFA試験に必要な英語力
5 CFA試験に必要な数学
6 CFA合格に必要な勉強時間
7 勉強方法
8 勉強スケジュール
9 日本語の参考図書
10 参考インターネット・ホームページ

第Ⅱ部
第1章 計量分析
1.1 時間価値
1.2 算術平均、幾何平均、加重平均、メディアン、モード
1.3 条件付確率
1.4 確率、期待収益率、分散、標準偏差
1.5 正規分布
1.6 標準化正規変数(z-value)
1.7歪度と尖度
1.8 標準誤差
1.9 区間推定と信頼限界
1.10 仮説検定
1.11 仮説検定(t-test)
1.12 仮説検定(x2-test)
1.13 仮説検定(F-test)
1.14 相関係数
1.15 回帰分析
1.16 決定係数
1.17 ANOVA分析(回帰分析における分散分析表)

第2章 経済
2.1 マクロ経済基本用語
2.2 総需要曲線、総供給曲線
2.3 ケインズ・モデル
2.4 財政政策
2.5 貨幣と銀行制度
2.6 金融政策
2.7 適応的期待と合理的期待、フィリップス曲線
2.8 コスト
2.9 独占と寡占
2.10 国際貿易と比較優位
2.11 外国為替―その1
2.12 外国為替一その2

第3章 会計・財務分析
3.1会計の基本原則
3.2 貸借対照表
3.3 損益計算書―その1(非継続部門損益・特別損益)一
3.4 損益計算書一その2(会計基準の変更)
3.5 キャッシュフロー
3.6 1株当り利益
3.7 在庫の評価方法一その1(FIFOとLIFO)一
3.8 在庫の評価方法一その2(低価法)一
3.9 固定資産―その1(費用の資産計上)一
3.10 固定資産―その2(減価償却)一
3.11 固定資産―その3(陳腐化)一
3.12 固定資産―その4(投資不動産、国際会計基準)一
3.13 税効果会計
3.14 社債
3.15 リース会計
3.16 市場性ある証券の会計処理
3.17 利益の質
3.18 財務比率分析

第4章 コーポレートファイナンス
4.1 資本コスト
4. 2 投資プロジェクト評価方法
4.3 資本構成とレバレッジーその1一
4.4 資本構成とレバレッジーその2―(参考)
4.5 配当政策(参考)

第5章 債券分析
5.1 債券の基礎用語
5.2 債券投資のリスク
5.3 債券価格
5.4 イールド、スポットレート、フォワードレート
5.5 金利の期間構造
5.6 デュレーション
5.7 コンベクシティ

第6章 株式分析
6.1 株式の基礎用語
6.2 株価指数
6.3 信用取引
6.4 効率的市場仮説
6.5 行動ファイナンス(Behaviora lfinance)
6.6 配当割引モデル(DDM)
6.7 株価収益率(PER、PE比率)
6.8 産業のライフサイクル
6.9 競争の戦略

第7章 デリバティブ
7.1 先渡取引と先物取引
7.2 先物による裁定取引
7.3 先物取引によるヘッジ
7.4 商品先物
7.5 スワップ
7.6 FRA
7.7 オプション
7.8 プット・コール・パリティ
7.9 カバード・コールとプロテクティブ・プット
7.10 オプションのリスク感応度
7.11 デルタヘッジ

第8章 オルタナティブ投資
8.1 不動産投資
8.2 投資信託
8.3 ETFs(Exchange-TradedFunds)
8.4 ベンチャー・キャピタル
8.5 ヘッジファンド

第9章 ポートフォリオ・マネジメント
9.1 リスクとリターン
9.2 アセットアロケーション決定
9.3 マーコウィッツのポートフォリオ理論
9.4 資本資産評価モデル(CAPM)…
9.5 システマティック・リスクとアンシステマティック・リスク
9.6 裁定価格理論(APT)
9.7 金額加重収益率と時間加重収益率
9.8 パフォーマンス測定

第10章 倫理規範・職業行為基準
10.1 倫理規範
10.2 専門家としての心構え
10.3 資本市場の健全性
10.4 顧客に対する義務
10.5 投資適合性
10.6 運用成果の提示
10.7 機密の保持
10.8 雇用主に対する忠実義務
10.9 追加的報酬に関する雇用主への開示
10.10 監督者の責務
10.11 投資分析、投資推奨ならびに投資行動
10.12 利益相反
10.13 取引の優先順位
10.14 紹介手数料の開示
10.15 CFAとしての責務
10.16 ソフト・ダラー
10.17 GIPS

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